ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
──彼女達に縋る気?──
──救われて良いと思っているの?──
──そんな事は許さない──
「………………」
囁かれる幻聴は何時もより大きい。ベルの心が追い詰められている証拠だろう。
二人から逃げるように先を歩くベルの隣を歩いていたウィーネはベルの顔を見て指を掴む。
「おとうさん、だいじょうぶ?」
「………ああ」
「あのねあのね……わたしね、あのお姉ちゃんたち信じても良いと思うの………」
「………解ってるよ。でも、怖いんだ」
ウィーネは、弱っている自分を見て同じだと思ったと言った。レフィーヤも今のベルを見ていると言ってくれたが、知り合った切っ掛けはウィーネと異なる。だから怖い……。真実を知られるのが………。
第一ウィーネにも話せていないヘタレには壁が高すぎる。
「よっと………」
「オオオオオ!?」
「……………」
「ガビャ!?」
「やぁ!」
「────!!」
「あれ?」
ウィーネは花の盾を持ったリザードマンに殴りかかるが防がれる。インパクトの瞬間に盾を動かし威力を殺したのだ。
「シャアアアア!」
「ウィーネちゃん! この、【アルクス・レイ】!」
「グギャア!!」
閃光に貫かれ胸から上が地面に落ちる。グワ! と起きあがりウィーネに襲いかかるがベルがその頭を踏みつぶす。
「………モンスターが剣技か………」
「リザードマンじゃ珍しくもないよ~。少し長く生きるとね………」
「いや、それは知ってるが………ウィーネに会った後だとな………」
「あー………」
「まあ襲ってくるなら殺すが」
「ありゃ……」
案外あっさりしてると拍子抜けするティオナ。が、考えてみれば元は戦争屋だ。その程度割り切っているのだろう。
「…………」
「ん? どうしたんですかウィーネちゃん……」
と、レフィーヤはジっとモンスターの死体を見ているウィーネに気付いた。そのまま胸に手を突っ込み魔石を取り出すと口に放り込む。
「わ!? な、何してるんですかウィーネちゃん! ぺっ! ぺってしてください!」
「お腹壊しちゃうよ!」
「………お前等二人ともウィーネがモンスターって忘れてないか?」
「え? あ………」
「あ、じゃあ『強化種』?」
モンスターは魔石を喰うことでより強い力を手に入れる。ベルが戦ったミノタウロスや天の牡牛もこれに該当する。
ウィーネはガリガリ魔石を噛み砕くと飲み込んだ。
「だ、大丈夫なんですか?」
「うん。おとうさんが出来るだけ食べろって……」
人前では喰わないように言っておいたが、モンスターだと知る二人の前なら良いと判断したのだろう。その辺りを自己判断できる辺り、やはり精神の成長が早い。
「もちろん様子を見てから決めてる。今の所、精神に影響は……まあ少し成長が早いが関連してるのかわからん」
そう説明するベルは、先程より二人へ近いような気がする。ウィーネはティオナとレフィーヤ、ベルを見比べ、離れなくはなったが近付きもしないベルに呆れたような視線を向けた。
「そろそろの筈だが………」
と、地図を見るベル。苔と
「聞こえる………」
その呟きにベルは口に指を当て静かにするようジェスチャーするとティオナもレフィーヤもその場で音を立てぬようジッとし耳を澄ませる。
「………歌?」
「……綺麗な声……」
レフィーヤがうっとりと聞き惚れティオナも目を粒って歌に聴き入る。ベルは密集した
ガシャンと割れ、塞がれていた穴が露わになる。
「わ、もう直って来てる………」
ティオナが言うように、自己修復するダンジョンの中でも異彩を放つ速度で元の大きさに戻ろうとする
こんな道、
少なくとも
「………まさか、ダンジョンか?」
モンスターを無限に生み出し、破損さえ修復するダンジョン。それの力の由来は解らないが、それならスキルの干渉を抑えることが出来るかもしれない。しかしダンジョンがわざわざ隠すものなら何故こんなにも入りやすいのか。罠? ならスキルに反応するようになるはず。むしろ引っかかるようにするべきなのだから。
つまり冒険者以外、隠された場所を利用する何かのためということになる。
チラリとウィーネを見る。
「………潮時か」
元々彼女とベルは違う。彼女にはきちんと同胞がいるのだ。
その事に嫉妬していたことは否定しないが、ならば一生そのままにするのかと言われればベルはそこまで自分本位になれない。
「行くぞ……」
直りかけの
大した準備もせずに潜ってしまったベルは暗い道を進むために先にとっておいたアカリゴケを入れたガラス瓶を光源代わりに使う。
「………泉?」
「い、行き止まり?」
暫く進んだところには綺麗な泉があるだけだった。が、今回はマップにも映ったので慌てることはしないベル。どうやら入り口を抜ければ後はスキルに干渉してこないらしい。
「中に穴がある。そこから先に空間もな………さっきの歌、呼んでいるんだろう………行くぞ」
ウィーネとレフィーヤの手を掴むベル。ティオナはウルガの重みで泉の底を歩きながら進む。
泉の中の横穴はやがて壁が立ちふさがり代わりに上から光が射し込む。
樹洞から様変わりした鍾乳洞。ベルは薄暗くなった道を再び進む。やがて現れたのは広大な
「「「───!?」」」
唐突な光源に驚くのは多種多様のモンスター。
その異常な光景に固まる冒険者。先に復活したのはやはり先に驚愕していたモンスター達。
狙いは、ウィーネ………。
「─────」
「!?」
反射的にベルがリザードマンの持っていた曲刀を受ける。
ゴボリと血が溢れる。内臓まで達したのか口から血を吐きながら即座に回復しリザードマンを蹴り飛ばす。
「が───!?」
「ベル!? この、良くも!」
反応が遅れたティオナは顔色を変えウルガを持って飛びかかる。が、それを弾く黒い骨を繋ぎ合わせたような巨大な戦斧。
ガァァン! とウルガとぶつかり合い、ウルガが弾かれる。
「────いったぁぁ!?」
ビリビリと痺れる腕。思わずウルガを落としそうになるほどの感覚に涙目になるティオナ。レフィーヤが慌てて魔法を解放しようとするも、その前に真横を影が通り過ぎる。ウィーネだ。憤怒の表情でリザードマンに襲いかかる。
「ガアァァァァッ!!」
「くっ!」
「ウィーネ、待て」
「リド、やめろ」
そのウィーネの足をベルが掴み剣を構えようとしたリザードマンの腕に斧の持ち主であるミノタウロスがそっと手を置く。
「………しゃ、喋った………」
「ウィーネちゃんと、同じ?」
流暢に人の言葉を発する黒いミノタウロスに目をむくティオナとレフィーヤ。ベルは腕の中で暴れリザードマンに食ってかかろうとするウィーネの頭を撫で落ち着かせながらミノタウロスを見る。
「………成る程な。モンスター達が何故知恵なんて持てたか気になっていたが、そういうことか………繰り返してたんだな、お前等」
それはある意味ではベルと似ている。そう思った。
ミノタウロスは何処か嬉しそうな笑みを浮かべ戦斧を地面に置く。カサカサとまるでカブトガニのように動いた戦斧には流石にベルも目を見開いた。
「名前を、聞かせて欲しい。嘗て自分を打ち破った
「………ベルだ。ベル・クラネル」
「自分の名はアステリオス。嘗て我が身を滅ぼした黒き『雷光』に因んでつけた」
「え、黒い雷光って………それに、ミノタウロスって……」
「ていうかあの斧………」
と、レフィーヤやティオナが信じられないモノを見たような顔する。ウィーネで慣れていたつもりだが、これは予想外すぎたらしい。
逆にベルは嘗て全てを忘れ戦った相手との再会に何とも言えぬ顔をする。喜べば良いのだろうか? あの戦いだけは、たとえ正史通りだったとしても今更誰にも譲る気はないが。
「おいおいアステリオス、何だよお前『前』の記憶があったのか?」
「む、言っていなかったか?」
「聞いてねーよ」
バンバンとアステリオスの背を叩くリザードマン。やはり彼も流暢な人の言葉を話す。
それはまるで人のようだ。
「………あ、貴方達はいったい」
「そっちの噛みつこうとしてる奴と一緒だよ。オレっち達は
最近感想が減ってきて寂しい