ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
蛇の紋様が消えティオナ達に力が戻ってくる。
ティオネは手を開閉し肩を回し感覚が戻ったことを確認する。
「妙な感覚だったわね。ティオナは戻った?………ティオナ?」
「え?あ、な……何?」
「だから力は戻ったの?」
「あ、う、うん!ほら……」
そう言ってその場でピョンピョン跳ねるティオナは不意に黒焦げの地面の前に立つベルを見る。その頬が上気し、目が潤む。
思い起こすのは先程の圧倒的な蹂躙。強い雄の姿。
まあ要するに、ティオナ・ヒリュテはベルに惹かれてしまったのだ。
「─────」
と、そのベルが膝を突き口から血を吐き出した。
「ベル!?」
「ベル君!」
ヘスティアとティオナが慌ててベルに駆け寄る。口からだけでなく目や耳、鼻からも血を流し目は充血して白目の部分も赤く染まる。
「か──はっ!ヒュー、ヒュー!」
ゴホゴホと血を吐きながら咳き込むベル。支えていた手からも力が抜けたのかガクリと肘を折り、ゴン!と頭を地面にぶつける。そのまま気絶した。
「ちょ、ちょっとベル!しっかり!」
「どうしたんだいベル君!」
「ティ、ティオネ!どうしよう!?」
「落ち着きなさい!とりあえずエリクサーを……」
内出血を起こしているのか白い肌が斑に赤く染まっている。
本来Lv.1のベルがLv.5の力を、しかも二人分をその身に宿せば器が耐えきれず壊れるのはある意味当然だ。
「ティオネ、エリクサー飲んでも治らないよ!?」
「だから落ち着きなさいって!少しずつ治ってるわよ、量がたりない」
「そんな、何とかしておくれよ!」
「ほんならホームに運ぼか。あそこならエリクサー置いてあるし」
と、慌てる二人に声をかけるものが居た。ロキだ。
その後ろからアイズがトッと駆けてくる。
「ティオネ、ティオナ、レフィーヤ…………ベル!」
アイズは見るからに満身創痍のベルを見て目を見開いた。
「ほれレフィーヤ………立てるか?」
「は、はい……何とか」
「ほんならアイズたん、ベルっち運んでや」
「うん」
レフィーヤにポーションを渡し手を貸すとアイズに頼む。アイズはロキの言葉に頷きベルを抱える。
「ちょ、ちょっと!ベル君に何をする気だ!」
「何って治すに決まっとるやろ。ベルっちにゃ武勇伝聞かせて貰った礼と、レフィーヤやティオネ、ティオナを助けて貰った恩もあるしなー」
「な!?べ、ベル君は連れて行かせないぞ!」
「黙れドチビ。なんや?なら、お前にベルっち治せるんか?」
「う、それは………」
「わーったらおとなしくついてきぃ」
ロキが歩き出すと【ロキ・ファミリア】の面々も歩き出す。ヘスティアはぬぬぬ、と唸ったが自分にベルを治す手立てが無いので大人しくついて行った。
「それで、ドチビ一つ聞くけどお前ベルっちに神の力を使うたか?」
「…………僕がベル君に
ロキの言葉にヘスティアがギロリと睨みつけてくる。神威すら漏れ出す怒りにロキは肩をすくめた。
「ま、そこまで大事に思ってんのやったら逆にないやろ。すまんな」
「………まあ、今回はベル君を助けてくれたし許すけど」
と、ヘスティアが怒りを収めると扉がトントン、と叩かれる。入ってきたのは美しいエルフの女性。
「ロキ、あの子の回復が終わったぞ。スキルもあるとはいえ、驚異的な回復速度だ」
「そか。ならドチビ、ついてきぃ」
「なんだい、何をさせる気だい?」
「ベルっちのステイタス更新。それと、ステイタス偽りなく全部見せぃ。嫌なら治療費請求するで」
「ぬぐ!僕が借金持ってるからって足元見て………」
とはいえ治療されたのは事実だし、金を払えと言われてもヘスティアには払える金はない。ベルの手持ちなら足りるかもしれないが
「口外しないって約束できる?」
「内容次第やな」
「おいロキ」
「冗談やんか~。そう怒らんといてぇなママ」
「誰がママだ誰が。はぁ、申し訳ないヘスティア様。この馬鹿が口外でもしてそちらの不利益を生んだときは【ロキ・ファミリア】副団長として責任をとることを約束する」
「あ、うん……」
なんかこの人苦労してそうだな、それがヘスティアの感想だった。
『Lv.1
力:D502→S999(+497)
耐久:S912→S999(+87)
器用:D561→S999(+438)
敏捷:A872→S999(+127)
魔力:S905→S999(+94)
対異常:F
精神安定:D
技能修得:C
鍛冶:E
《魔法》
・
・発動対象は術者限定
・発動後、半日の
・詠唱式【呪われろ呪われろ偽りの英雄。救えもしない無力な力で試練に抗い煉獄へ堕ちろ】
【エルトール】
・
・雷属性
・速攻魔法
《スキル》
・早熟する。
・羨望の続く限り効果持続
・無力感を感じるほど効果向上
・敵対時に於けるチャージ実行権
・敵対時に於ける相手のステイタス一時簒奪
・自己ステイタスの閲覧可能
・討伐モンスター図鑑自動作成
・マップ表示
・索敵
・アイテム収納空間作成
・肉体の修復
・体力、魔力を消費する 』
「はぁぁぁぁ!?」
半月でカンストしているベルのステイタスを見て叫ぶロキ。いや、それよりも気になることがある。
「何で発展アビリティがあんねん!しかも高ランク!?」
「僕だって知りたいぐらいだよ!」
詰め寄ってくるロキに離せーと暴れるヘスティア。その際ヘスティアの豊満な胸が揺れロキが涙目になりながら揺らすのをやめた。
「ちぃと調べて良いか?」
「な、何をする気だぃ?」
「別に解剖とかせぇへんよ、ちっと探るだけや」
そういうとロキはベルの背中に手を当てる。透明な器の中に宿るどす黒い執念の炎。フレイヤが興味を持つのも解るその魂のさらに奥を見つめる。
ベルの魂とは違った反応。これはヘスティアの恩恵。これは無視だ。もっと奥。
「────!?」
ロキは目を見開きベルから距離を取る。しりもちをつきベルに触れていた己の手を見る。
「ど、どうしたんだいロキ?ベル君に何か?」
「何か、何てもんや無いぞこれ………」
弾かれた。
だが一瞬だけ魂の奥、黒い炎に触れた。その感想から言えば、あれは色が分かれているのでなく透き通った魂とは別の魂が中にあった。しかも、明らかに手を加えられた改造された。質も人というよりは神に近いが、小さい。神造精霊とでも言うべきか。
「何なんやこれ………」
それが人と肉体と魂に植え付けられている。本来の肉体の持ち主である魂に意志などない。生まれた時から中の魂が主導権を握り続けていたのだろう。
「ロキ、本当にどうしたんだい?」
「ベルっちの魂の奥を覗こうとしたら弾かれた」
「ええ!?
「単純にウチより神格が上か、或いは
「僕達以上?それは何かの冗談かい?」
神以上の存在など、見たことも聞いたこともない。可能性があるとしたらダンジョンの力だが、それならヘスティアの恩恵を刻めるとは思えない。
「冗談やったら良かったんやけどな。恐らくベルっちの発展アビリティはソイツの影響やろ………何者か知らんが、気に食わん」
何となく解った。発展アビリティをLv.1の時点で発現させた何者かはベルを思ってやったわけではないと。昔の自分と同じ楽しむためか、フレイヤのように試すため。
この精神安定もランクこそ高いがベルで遊ぶかベルを試すためなら機能をあえて停止させるだろう。
「………おいドチビ」
「なんだい?」
「お前ウチの傘下ファミリアになりぃ」
「………は?はぁぁ!何で僕が君の───」
「早熟スキルは何時か絶対バレるで?そうでなくても、感づかれる。お前みたいに貧乏で眷属もおらんドチビにベルっち守れんのか?」
「ぬ───!」
それは、確かに否定できない。下界では一般人程度の力しか持たない自分ではたった一人の眷属を守る術など存在しない。
「その点ウチやったら大手のトップクラス。手を出そうと考える馬鹿はそうそうおらへん」
「………何が目的だい」
「んー?ドチビがウチの下につくのも面白いし今回やらかしてくれた色ボケに一泡吹かせられるのも面白い」
「くぅー!」
「それにな、ウチ気に入ってんよベルっち。ウチが直接誘ったのに、誰もが入団を夢見る【ロキ・ファミリア】の推薦を『考えとく』やぞ?めっちゃ面白い子やん!それにウチの
そう言って未だ眠るベルの頭を撫でるロキ。フワフワの髪の毛は普段は剣呑な気配を放つ人物のものとは思えず兎の毛でも撫でているようだ。
「………じゃあ、せめて僕の借金が返し終わるまで待っておくれよ」
これはヘスティアなりの抵抗だ。この借金は早々返せる額ではない。
「あー、んなこと言っとったな。んなもんウチが払ったる!」
「!?本当かい!」
「……なんやヤケに反応したな。ホンマホンマ。さっきも言ったようにウチは大手のトップクラスやで?」
「その言葉に二言はないね!」
「おう!アイズたんの胸に誓って!」
「………何故ヴァレンシュタイン君の胸に………まあいいよ。解った。僕も早く借金返済したいし、ベル君を守るには癪だけど僕個神では不可能だからね」
「おう!これからウチのことはロキ様って呼んでええんやで」
「誰が呼ぶか!」
ケラケラ笑うロキに噛み付くように叫ぶヘスティア。が、この後のことを考え怒りを静める。
「んで、どんくらいなん借金」
「二億ヴァリス」
「………………は?」
この後ロキが勝手に金のやりとりをしたこととアイズの胸をかけたことをリヴェリア達に相談せざるを得なくなり、叱られ禁酒令を言い渡された。
ヘスティアは酒が飲めずぐずっているロキをからかうために拠点を【ロキ・ファミリア】の中に移した。
ベルが目覚めたのはそれから三日後だった。
と言うわけでベル君の発展アビリティの秘密は此方。
所謂転生特典でした。
そしてヘスティア・ファミリアがロキ・ファミリアの傘下に。つーかこれタグにソード・オラトリア足した方がいいかな?