ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「ベルぐううぅぅぅん!」
ベルの帰還の報告を受けるなり第二級冒険者もかくやという速度で飛んできたヘスティア。そのままベルに抱きつく。
「心配したんだぞぉ!? 生きてるのは解ってたけど、ずっと姿をくらまじでぇ!」
「悪かった。次からは気を付ける」
「家出に次なんてつぐるなあ!」
もっともである。
胸に顔を押しつけ涙で胸をぬらしてくるヘスティアの頭を撫でて落ち着ける。
「……………」
「……ベート」
団員達が集まる中、無言でベートがやって来た。暫く睨んだ後、無言で頭を叩いて来た。
「いて──」
「ふん……」
鼻を鳴らし去っていくベート。心配をかけるな、そう言いたいのだろうか?
「………………」
良い人達だ。ここは、やはり好きだ。
長くとどまりすぎた、深く浸かりすぎた。
彼等を騙している罪悪感に胸が痛くなる。
「………ベル君………」
「ん?」
「ダンジョンに潜っていたんだろ? 更新、しようか………」
ステイタスの閲覧は主神以外NG。ベルは例外として【ロキ・ファミリア】の三古参とロキにのみ公開されるが、 更新の際いる必要はない。
ようするに、この場から離れる口実だ。気を使ってくれたのだろう。
「……………あれ?」
「どうした?」
「ん、あ………や……伸びしろがいまいちだなぁって思ったけどそもそもこれが普通だよね。いや、これも十分早いのかな………? 今までが異常すぎたからなぁ………」
と、羊皮紙を見て頭をかくヘスティア。と、何を思ったのか不意にベルを抱き締める。
「………ヘスティア?」
「僕は君の秘密は解らないけど、君は僕の子供なんだ……だから、大丈夫。もう家出しちゃ駄目だよ?」
「………心配かけた……」
「全くだぜ。心配したんだからね」
ベルの頭を撫でながら反対の手の指で額を叩く。
「ほーん。ま、成長は確かに早いが普通やな………」
「アビリティの数値だけならね……」
「……………」
『Lv.5
力:H162
耐久:G254
器用:G203
敏捷:F380
魔力:I0
耐異常:C
精神安定:S
技能習得:S
鍛冶:E
精癒:F
幸運:F
思考加速:F
狩人:F
火傷無効:G
格上特攻:I
《魔法》
・
・発動対象は術者限定
・発動後、半日の
・詠唱式【呪われろ呪われろ偽りの英雄。救えもしない無力な力で試練に抗い煉獄へ堕ちろ】
【エルトール】
・
・雷属性
・速攻魔法
【アンチ・カース】
・解呪魔法
・呪詛、結界魔法の破壊
・詠唱式【砕け散れ邪法の理】
《スキル》
・早熟する。
・向上心の続く限り効果持続
・力を欲する理由を感じるほど効果向上
・敵対時に於けるチャージ実行権
・自己ステイタスの閲覧可能
・討伐モンスター図鑑自動作成
・マップ表示
・索敵
・アイテム収納空間作成
・肉体の修復
・体力、魔力を消費する
・精神への干渉を拒絶する
・術者との実力差によって変動
・受ける、受けない選択可能 』
伸び率は異常ではあるが、今までのカンスト数値に比べればマシだ。まあ階層主や都市最強、強化種に精霊の分身などと戦ったわけではないからなのだろう。
「問題はこっちやな………」
ステイタスには本人の真名が刻まれる。これは偽ることなどできない。
結婚などして名が変わるなら別だが………。
「………けど、これどういう事なんやろうなぁ……」
『べ■・r鈴ァdg』
真名の部分が文字化けしていた。いったい何がどうしてこうなったのだろうか……?
聡明なフィンにも解らない。ステイタスに異常など普通は起きないし、仮に起きるなら
「………………」
リヴェリアはそれを見て、考え込む
「………ロキ、ヘスティア殿……おかしな事を聞いて良いか?」
「んー? なんや?」
「おかしな事?」
「例えば、だ………己を認識できない場合はどうだ?」
「………その可能性は僕も考えたよ。けど、僕は何者でもベル君を受け入れるつもりだよ」
良い
返答はなかったが、あの態度を見れば解る。ベルは間違いなく異なる世界からの来訪者だ。ベル・クラネルと言う名は此方で付いたのだろう。
真名に異常というのはつまりその名を己の名だと思えなくなったと考えるべきだろうが、なら前の名前になるのが普通だ。
「…………ロキ、ヘスティア殿……カサンドラの力は本物なんだな?」
「ん? まあ、せやな。ウチらも視えん何かが『視えとる』」
「僕達すら知らぬ『未知』………地上に神々が夢中になる由縁さ。それがどうしたの?」
「………つまり、運命はある程度定まっていると言えるのか?」
「まあそういうことになるね。カサンドラ君の
運命が定まっているなら、ベルの運命も決まっていたんだろう。
「ベルは、それを知っていた? いや、違う………備えるだけなら、あんな………まて、この魔法………
「お、おい一人で納得しないでくれよ。つまり、どういう事なんだい?」
「………ベルは、異世界の住人。これは間違いないだろう………可能性の話だが、ベルの世界ではこの世界の未来をすでに記されているのではないか?」
もちろんそれだけではない。だが、だとしたら………
「ベルは、本来生まれてくるベルに成り代わったのではないか?」
「成り代わった……? それが真名の影響?」
「成り代わった、代わりにならねばと思っていたのだろう。けど、私の指摘で、崩れてしまった………」
ベル・クラネルであり続けようとして、しかしリヴェリアに異世界から来たことを尋ねられ、偽物だと思われたと思ってしまった。正体を知られたと思ってしまった。
「きっと本来彼が知るベル・クラネルとは違うのだろう。未来を知る云々ではなく、存在が………」
「成り代わってしまって、罪悪感を感じて、なろうとしていたって事か?」
フィンが瞠目する。
しかし彼のやり方を考えるに、ベル・クラネルが偉業を成すことのみを知っていてどんな人物かは知らないのだろう。どんな人間関係を持っていたのかすら………。
知っているなら自分達を見る目がもっと変わるはずだ。知らないからこそ必死になっていた。
「………この事は僕達の胸に秘めておこう。きっと、ベル君をまた傷つける」
「だろうね………こういう言い方は良くないけど、僕らが知るベル・クラネルは彼で本来のベル・クラネルなんて知らないんだけどね……」
「それを言ったところであの坊主は納得せんだろうな………むしろ、本当なら儂等と会っていたかもしれんのに、と余計考える」
「ええ子何やけどなぁ………むしろええ子すぎたからこそなんやろうなぁ………」
他人の人生なんて知ったこっちゃないと割り切れない。
その人がどう生きたか大して知らないくせに、偉業をなしたなら多くを救うはずだと代わりになろうとする。
「どうやって救えばいいんだろうね、そんな責任感の強すぎる子……」
欲しているのは許しだ。けどそれはヘスティアが、ロキが、リヴェリアが……他の誰かが与えて良いものではない。
「自分で自分を許せる時だろうさ………何時になるかは解らないが……」
チリリと腕に巻いた鈴が鳴る。
ベルはそれを無言で見つめる。
「………お前なら、あの子をどうしたベル・クラネル………」
ウィーネに縋ったのは、自分の弱さのせいだ。原作の、本物のベル・クラネルならそんなことはしなかった筈だ。
ではどうしたのだろうか? モンスターである彼女に、どう接したのだろうか。
チリン、と鈴の音が耳を撫でる。
「俺はこれから、あの子とどう接していけばいい……」
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