ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「おいおいおい! またかよ、畜生!」
立て続けに起こる
しかも今度は階層主だ。それも、37層にいるはずのウダイオス。Lv.6のモンスター。
「オオオオオオオオオオッ!!」
と、ウダイオスが吼えると同時に大量の
ウダイオスは地面から生えた角持ちの人骨のようなモンスターという印象を受けるが、生えたというのに間違いはない。
彼のモンスターの下半身は植物の根のように地面を巡り、様々な場所から
自らが生み出した剣山の奥に隠れる。
それと同時に、王の号令に従うように無数の下層モンスターのスパルトイ。適性Lv.は3から4。リヴィラの街の住人からすればこの数はもはや絶望でしかない。
「もう、終わりだ………」
階層を移動できる出入り口は全て崩落していた。逃げ場は、無い。
だが戦力はある。
「でりゃああああ!!」
「…………は?」
突如戦っていたリザードマンとミノタウロスが反転。スパルトイ達を吹き飛ばした。というか今、リザードマンが人のような叫び声をあげたような………。
「おいアンタらぁ! ありゃアンタ等に取っても敵だろぉ!手伝ってくれ!」
「も、モンスターが喋ったぁ!?」
「あ、やべ……」
「何ヲシテイルコノ馬鹿者!」
「お前もだろ!?」
さらに上空のガーゴイルまで喋った。
ボールス達も混乱していたが、それはモンスター達も同様だ。突然の
「落ち着け二人とも。すまない冒険者殿、混乱するのは解るが自分達も貴方方同様に殺されるつもりはない。一時的に協力しないか?」
「モ、モンスターが何を!?」
と、エルフの冒険者が叫ぶ。
するとミノタウロスはその冒険者に迫り拳を振り抜く。直ぐ横を通り抜けた拳は背後から迫っていたスパルトイの顔を砕く。
「協力しないのは結構だ。ならば隠れていてくれ………これは、どうも自分達に原因がありそうなのでな、戦士でないというなら身の安全は守ろう」
ミノタウロスはそう言うと戦斧を構える。バチバチと黒い雷を纏う戦斧、気のせいか感じる重圧があがる。
「ぬぅん!」
ミノタウロスが戦斧を振るうと発生した黒雷を纏う衝撃波がスパルトイ達を吹き飛ばす。
「オオオオオオオオ!!」
「「「─────!?」」」
迫り来るミノタウロスの咆哮に動きを止め、斧に砕かれる。
「オオオオオオオッ!!」
ウダイオスが叫び大量の杭をミノタウロスに向けて放つ。それは飛来したオレンジの光線によって地面事抉り取られる。
「無事かアステリオス?」
「うむ」
黒紫のオーラを纏った白髪赤目の少年──ベル・クラネルの言葉にミノタウロス、アステリオスが頷く。
「レイ!」
「は、はイ!」
「な、今度はセイレーンまで!?」
ベルの言葉に現れたのはモンスターとは思えない、エルフにも劣らぬ美貌を持ったセイレーン。ベルが何かを投げると器用に口で咥える。
「それ使って向こうの森の奥を目指せ。扉がある、それで開けられる」
「解りまシた!」
端的に言うとセイレーンはそちらの方向に向かって飛び去る。
「戦う自信のねえ冒険者はセイレーンに続け! この階層から逃げられるぞ!」
「え、お……おう?」
モンスターについていけという命令に困惑するもモンスターも素直に従っているし、それに滅茶苦茶美人だしもう訳が分からない。
「ど、どういう事か説明しろ兎ぃ!」
「此奴等は知恵が発達した突然変異。人の言葉が通じる故にモンスターにも狙われる。だからこそ協力できる。解ったな? 解ったら行動に移せ」
ベルとしても余裕はない。どうも向こうはスパルトイを無限に召還できるらしい。
「モ、モンスターに組みするなど───!」
と、高潔なエルフが叫んだ瞬間騒ぎに森から出てきたモンスターが現れ、ハーピィが羽のバレットで貫く。
「あの、大丈夫ですか……? 信用しなくても良いから、せめて自分の身を守って………」
「─────ッ!!」
その目に宿るのは此方を気遣う確かな意志。言葉に詰まるエルフを前にハーピィは別の冒険者を助けるために飛び去る。
「ボールス、お前は残れ! アルル、ヘルガ護衛してやれ、森のモンスターはお前等なら余裕だろ!」
「バウ!」
「きゅー!」
ベルの号令に駆け出すアルミラージとヘルハウンド。彼等が開けた道を走るLv.2や一部のLv.3の冒険者達。
「っておい! 何でてめーに命じられてんだよ!? 俺だって逃げてーよ!」
「何故貴様ガ我々
抗議をあげるボールスやガーゴイルのグロスが叫ぶと同時に高く跳ぶベル。その足下から杭が飛び出す。
「ボールスは街の支配者だろうが……」
「グロス! 人間は信用できないから死んじまえって思ってんなら、モンスターだから死ねって言ってきた奴らと同じと思わねー?」
「「…………」」
ベルとリドの言葉に固まる一人と一匹はくそ! と叫んでスパルトイ達に向かって駆け出した。
「ちくしょおおお! こうなりゃ自棄だ! おいこらてめぇら! ここは俺らの街だろうが、モンスターに助けられてねーでてめぇ等も戦いやがれぇぇ!」
ボールスの叫び声に何名かが立ち止まり、踵を返す。
それを呼び水に多くの冒険者達が踵を返した。
「皆さん!? どうして逃げないんですか────!?」
バレットを放っていたハーピィは目を見開き叫ぶ。
強化種である彼女からすれば、ボールス以外の冒険者達は弱いし、どうして逃げないのかと驚愕した瞬間肩に骨で形成された斧が突き刺さる。
スパルトイの一体が投げつけてきたのだ。
「──くっ!」
地面に落ちた彼女にスパルトイ達が殺到するが冒険者達が飛びかかる。一体に数人で当たり確実に倒す。と、ハーピィの腕に液体がかかり傷が治っていく。
「………あ、ありがとうございます……」
「……私が恩人に報いず同胞の名を汚すわけには行かないだけだ」
ふん、と鼻を鳴らすエルフはそのまま杖を構え詠唱を始める。スパルトイ達が殺到するがバレットの雨に動きを止める。
何体かは盾で防ぐが背後から冒険者達が襲いかかる。
「離れろ!」
エルフが叫ぶと同時に冒険者達が飛び退き長文詠唱の魔法がスパルトイ達を飲み込んだ。
「……まあ、数は居た方が助かるな」
「ベルっち案外冷静だな……」
「まさか……さっさと目の前の此奴ぶっ殺してウィーネを追いたいだけだ」
「そうかい。なら、頑張ろうぜ!」
と、リドが叫びスパルトイに向かってかける。
「オオオオオオオオオオオオッ!!」
「来るぞ、アステリオス!」
「ああ!」
ウダイオスが叫ぶと同時にベルは黒紫のオーラを纏った拳を、アステリオスは超重量になった斧を地面に叩きつける。
地面が大きくひび割れ地中に張られていたウダイオスの根がズタズタに千切れる。
「アアアアアアアアッ!?」
絶叫し、すぐさま新しい根を張ろうとするウダイオスの胸の前にリドが迫る。
「でいりゃあ!」
「グウ!?」
「うお、かってぇ!?」
肋の隙間から剥き出しの魔石を狙うが流石階層主、身を反らしリドの曲剣は肋に当たり弾かれる。そのまま豪腕が振るわれリドが吹き飛ぶ。
「リド! ───何ダ?」
リドが吹き飛ばされ激突した壁に向かって飛ぼうとしたグロスはウダイオスの関節に存在する魔石のような色合いの球体が光るのに気づく。
四本の腕が空に向かって掲げられる。その手に握られているのは、大剣。
「ッ! 避ケロォ!」
「──────!!」
ウダイオスが四本の腕を振り下ろす。
四方に先程のアステリオス達の一撃と遜色ない威力の衝撃波が地面を砕きながら突き進む。
「グウゥ!」
アステリオスはラピスを盾のように構える。
ラピスの甲殻は衝撃波に耐えるが規格外の力を持つはずのアステリオスが押される。
「この、くたばれ──」
上空に跳んで回避していたベルが放った黒雷の槍がウダイオスに迫るが地面から大量に生えた杭に防がれる。
「チッ、チャージが足りねーか………」
着地場所から生えてきた杭を蹴りつけ後退するベル。
「オオオオオオオオオオッ!!」
再び叫ぶウダイオス。また地面からスパルトイ達が現れる。
「………あ?」
と、そのスパルトイ達が地面に転がった同胞の亡骸に手を伸ばし魔石を喰らい始める。気配が重くなる。
「成る程、部下は補充可能。しかも強化のおまけ付きか………だが」
「強化に関しては此方も同じ事………」
と、アステリオスが大きな手で掴めるだけの魔石を掴み口に持って行き噛み砕く。さらに残りをラピスの昆虫を思わせる口に喰わせる。
「さっさとぶち殺してウィーネを追うぞ」
「心得た」