ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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骸の軍勢

「「「オオオオオオオッ!!」」」

「「「らああああ!!」」」

 

 スパルトイの軍勢と冒険者と異端児(ゼノス)の連合軍がぶつかり合う。とはいえ、スパルトイ()()()達の推定Lv.はおよそ4上位か5下位。リヴィラの冒険者達では歯が立たない。

 彼等だけなら。

 

「ヌウゥン!」

 

 石に覆われた巨体が通過しスパルトイ達を挽き殺す。

 

「──────────ッ!!」

 

 上空から放たれる怪音波にスパルトイ達が地に膝を突き全身に細かい罅を作る。

 

「ガウゥ!」

「きゅー!」

 

 黒い影に乗った白い影が地面を這うように駆け抜けスパルトイ達を転ばせていく。

 

「魔石は武装したモンスター達に渡せぇ! 骸骨共には一つたりともくれてやるな!」

 

 冒険者達は落ちた魔石を近くの異端児(ゼノス)に、投擲が得意な冒険者は空を飛ぶ異端児(ゼノス)達に投げ渡す。

 それを喰らい更に力を高めた異端児(ゼノス)達がスパルトイ達に殺到する。

 

 

 

 

「リド、下がっていろ……」

「お前は雑兵(スパルトイ)の相手を頼む……」

 

 ラピスを構えるアステリオスと全身からバチバチ紫電を走らせ身を屈め黒紫のオーラを纏うベル。

 

「え!? ま、まさか2人で相手する気か!?」

「───」

 

 リドが驚愕する中、目の前で雷が核関節に魔力を溜めているウダイオスに向かって飛んだ。

 

「──え」

 

 雷鳴が響き渡りウダイオスの周りに雷の蛇が巻き付く。

 

「オオオオオオ!?」

 

 雷が体を撫でる度に火花が散り、雷の熱を食らうウダイオスが叫ぶ。振り払おうと腕を振り回すも全て避けられる。

 

「────硬いな」

「わ!?」

 

 ドォン! と目の前に雷が落ち、しかも雷の正体はベルで目を見開くリド。ウダイオスは雷の落ちた場所に立つベルに眼窩の奥で輝く赤い光を向けた。

 

「ルゥオオオオオオオオオオッ!!」

 

 核関節が光り輝く。

 関節を曲げ、上から見ると卍のような形を取るウダイオス。

 

「アステリオス」

「迎え撃つ……ラピス!」

 

 ベルの言葉にアステリオスが前に出てラピスを掲げるように構える。ギィィと鳴くラピスの身を細かい黒雷が覆い、アステリオスの足下がズン、と沈む。

 

「オアアアア!!」

 

 核関節に魔力を纏めることで放てるウダイオスの渾身の斬撃。四本の腕から同時に放たれた横凪は360度余すことなく迫る暴風を生み出した。が………

 

「アルデバラン!!」

 

 アステリオスが生み出した黒雷混じりの衝撃波が迫り来る暴風の壁を穿つ。

 

「──!?」

 

 それだけではとどまらず地面を抉りながら進む衝撃波はウダイオスの右腕全てを吹き飛ばした。

 

「オ、オオオオオオオオ!?」

 

 怒りか恐怖か、絶叫を上げて右肩を押さえるウダイオス。すぐさまベルが駆け出そうとするとウダイオスは全体を覆い隠すように杭の森を生み出す。

 

「オオオオオオオオオオオッ!!」

「「「─────」」」

 

 冒険者や異端児(ゼノス)達と戦っていたスパルトイ達が止まり、背を向け走り出す。そのうち何体かはベルとアステリオスに殺到するも殆どが杭の森に向かっている。

 

「まさか、くそ! どけ!」

「ガ──!」

「グペ!」

 

 ベルがウダイオスに向かって駆け出そうとするもスパルトイ達が手を伸ばし捕らえようとしてくる。

 即座に雷速に至ったベルは伸ばされた腕をかわすもその速度故に杭の森を抜けることができず目前で速度を落としてしまう。その瞬間、杭の森を突き破り黒い剣が突き出てくる。

 

「くっ!」

 

 慌てて距離を取る。

 黒い剣は高い硬度を持つはずの杭の森を細い氷柱でも砕くかのように破壊し、中からウダイオスが現れる。

 関節を人形のように付け替えたのか左腕が一つになっており、無くなったはずの右腕の代わりに指の向きがおかしい右腕があった。気のせいでなければ体が一回りほど肥大化している。

 

「強化種か!」

 

 アステリオスが叫ぶ。恐らく先ほどのスパルトイ達は己を主に捧げたのだろう。

 大量のスパルトイを喰らい強化種となったウダイオスは手を振り上げる。

 

「────!?」

 

 先程とは比べ物にならない速度で根が伸び、すぐさま杭が生えてくる。それだけではない。木のように枝分かれして逃げるベルを追う。

 

「ぬぅん!」

 

 アステリオスが衝撃波を放ち地面を砕くも根は健在。ウダイオスの意識がアステリオスに向く。

 

「────!?」

 

 地面の中を高速で移動する気配を掴んだ瞬間には杭がアステリオスに向かって伸ばされる。元より強靱な種族であり強化され並の、どころか大概のモンスターや上級冒険者の攻撃にも耐えられる皮膚が、肉の鎧が貫かれる。

 

「ぐぶ──!」

「───────」

 

 ウダイオスが笑った………様な気がした。瞬間、杭に魔力が満たされ、しかし枝分かれする前にアステリオスが握り砕く。

 

「ぐふ………はぁ!」

 

 杭を抜き傷を回復させるアステリオス。威圧感を増したウダイオスに、しかしアステリオスは駆ける。

 ここで殺されるつもりは毛頭無い。まだ決着をつけなくてはならない相手がいる。まだ、ベルと少ししか話していない。

 死なないために、敵を殺す。

 

「───!?」

 

 腹を貫いたはずのアステリオスが平然と向かってきた事に驚愕するウダイオス。関節に光を溜め振り下ろす。

 

「ブオオオオオオ!」

「────!!」

 

 しかし咄嗟に溜めた一撃など軽い。ラピスで弾き飛ばす。だが、それはウダイオスも予想していた。本命はもう片方の一撃。

 だが、敵はアステリオスだけではない。

 

『消魔』(しょうま)

 

 精霊の血を引く鍛冶師が打った魔法殺しの魔剣がウダイオスの核関節に突き刺さり溜めていた魔力がパアンと弾ける。

 

「離れろアステリオス!」

「────ッ!!」

 

 その言葉に離れる敵を無視してウダイオスは目の前の黒雷の槍を持つ冒険者から目を逸らせない。

 

「───オ」

 

 あれは自分の命を貫く槍だ。

 

「──オオ」

 

 自分には流れていない血のように赤いあの瞳は自分に死を運ぶ者の瞳だ。

 

「─オオオ」

 

 怖い。死ぬ。殺される。

 生まれたばかりの怪物が初めて感じる恐怖。だが、死にたくないという思いは限界を超えさせる。それはモンスターにも言える。

 賭けに出た。

 地に張られていた根が朽ちる。右腕が落ちる。眼窩の奥の光が暗くなる。

 全身に満ちていた魔力を左腕に集め放たれる決死の一撃。黒雷の槍はそれを砕く。

 死を間際にウダイオスは嘗て単身で己を討ち滅ぼした金髪の風を思い出す。

 今回、(ダンジョン)の恩恵により一層強くなった今の自分なら勝てたかもしれない。けど、どれだけ強くなり生まれ変わったとしても彼女と、そして目の前の兎には二度と関わりたくない。

 

「ケラウノス」

「オオオオオオオオオオオッ!!」

 

 恐怖の絶叫をあげながらウダイオスは黒雷に飲まれ消滅した。

 

 

 

 

「───ッハァ───ハッ───かはぁ!」

 

 膝を突き呼吸を整えるベル。【英雄義務】(アルゴノゥト)で削り取られた体力と魔力を回復するべく主神の交友関係で知り合ったあるファミリア特製の『二属性回復薬』(デュアル・ポーション)を飲み込む。

 

「───ふぅ、よし……」

 

 呼吸を整え立ち上がるベル。

 

「レイ! 『鍵』寄越せ!」

「こ、これですか?」 

 

 と、先程ベルから受け取った球状の物体を渡すレイ。駆け出そうとしたベルに声がかかる。

 

「お、おい待て兎! 結局、此奴等は何なんだ? 何が起きてる!」

「………此奴等が敵か味方かは自分で判断しろとしか言えない。それと、今すぐ階層を移動したいなら抜け道を知ってる」

 

 そう言うと森に向かって駆け出すベル。

 叫んだ男、モルドは頭をかきむしる。

 

「おいそこの牛! お前等あれだろ、隠れてたんだろ? 何で急に出てきた」

「………我等の同胞ウィーネを救うためだ」

「何だと!? ウィーネたんもモンスターだったのか!? どうりで人間離れして可愛いと思った!」

 

 アステリオスの言葉に一人の男が叫びウンウンと頷く数名の男達。

 

「ん、待て……救う?」

「ウィーネは竜女(ヴィーヴル)。我等異端児(ゼノス)を捕らえ売りさばく密猟者達が、我らへの嫌がらせのために額の石を抜き暴走させた。だが、彼女が貴方達に危害を加えたのは事実だ。謝罪する」

「オレっちからも、すまねぇ………」

 

 本来なら襲いかかってくるモンスター達が、傷つけたことに謝罪してくる。その奇妙な行動に何とも言えなくなる冒険者達。

 

「それで、お前等の目的は………?」

「今回は同胞を助けに。しかし、そうだな………最終的には、あなた方とこうして話し合ってみたいな……」

 

 そう言うとアステリオスはベルの駆けた方向に向かって走る。他の異端児(ゼノス)達もその後を追う。

 

「………ど、どうするよボールス」

「……ギルドの救助を待つぞ。彼奴等を信用できねーわけじゃねぇけど………少し頭を冷やす時間が欲しい」

「……なあ、ところであのミノタウロスが持ってた斧って……」

「あ、気づいた? 俺も思ったけど………」

 

 あの斧は嘗てリヴィラを切断した斧だ。あの戦いを知る者なら誰一人忘れたことはない。だからこそ、彼らは思う。彼等の主神に聞いても決して知りたい情報は返ってこないであろう疑問。

 

「ダンジョンって、何なんだ?」




次回は皆大好きウィーネたん
感想お待ちしております。


そろそろ原作に追いついてしまう
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