ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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感想で色々かかれてたので一言。
そもそも主人公は最初っから罪悪感で行動してたわけでここ最近ウジウジするのはキャラが変わったのではなく限界が近づいてきた。
でもこの悩みもゼノス編で無くなるのでもうしばらくお待ちください


ダイダロスの騒動

「ワウワウ!」

 

 ヘルガが鼻を地面に押し付けスンスンと匂いを嗅ぐと振り返り吠える。

 

「案内しろ」

「ワン!」

 

 ベルの言葉に返事をすると背中にアルルを乗せたまま走る。

 現在地はクノッソス。散らばる灰はモンスターの死骸だろうが、彼等の反応を見る限り異端児(ゼノス)の死骸はないようだ。

 

「──ッ! バウ!」

 

 ヘルガが吠えると警戒心を高めるベル達。レーダーに人影を見つける。が、これは………

 

「ヘルガ、此奴は死んでる。先に行くぞ」

「クウ?」

「キィー!」

 

 良いの? と言いたげに首を傾げるヘルガはアルルに急かされ慌てて走り出す。

 

 

 

「随分と、派手にやったものだね……」

「ひひひひ。俺じゃねぇよ? 俺は可愛い眷属(我が子)のためにちぃっと手を貸しただけだからなぁ………」

 

 眼下の光景を見下ろすヘルメスの言葉に彼に保護されたイケロスはヘラヘラ笑う。全く反省の色がない。

 

「けどよぉ~~、なら何で俺保護したんだ~~? モンスター共に殺させりゃ良かったのによ」

「俺が目を付けている彼が君達の『商品』に接触してしまってね………君の力を貸りたいんだよ」

「ひひひひひ! 相変わらずだな~~。で、何をしろって?」

「なに、どうせ今回の騒ぎは【ロキ・ファミリア】が動く以上は直ぐに終わる。その後、彼等が二度と人間に歩み寄ろうと思えなくしてくれればいいさ」

 

 にこやかな笑顔で言い放つヘルメス。後ろに控えたアスフィは何も言わない。目を閉じ無言を貫く。

 

「………お前、ウラヌス側じゃなかったのか?」

「俺は中立だよ。別に、ウラヌスの味方ってわけじゃない……だいたい」

 

 と、ヘルメスは群がってくる水黽型のモンスターを殺し、中層のモンスターを殺しその魔石を喰らうヴィーヴルに目を向ける。

 

「モンスターとの共存? 馬鹿を言うんじゃないぜ。『怪物』との融和なんて───絵空事だ。何十世紀にも及ぶ憎しみの因縁を覆して何になる? 大神(ゼウス)も言うだろう、無茶を言うなと……」

 

 もしも彼が苦しむモンスター達を助けようとしたら、それはもはや英雄とは言えない。人類の敵だ。

 

「なぁに、向こうが敵対するならベル君なら容赦なく殺すさ。英雄を導くことにかけては自信がある俺が言うんだから間違いない」

 

 ふーん、と興味なさげに言うイケロス。

 

「ちっと見ただけの俺が言うのもなんだけどよぉ………あんま過信しない方が良いぜぇ、あのガキはちっと追い詰められてるだけのただのガキ、どっちに転ぶかたとえ神でも解らねーだろうぜ」

 

 

 

 【ロキ・ファミリア】はその知らせを聞いて真っ先に行動した。

 ダイダロス通りから現れたモンスターと聞いて、その地下の迷宮を拠点にしている闇派閥(イヴィルス)が動いたと判断したからだ。

 

「っう……」

 

 レフィーヤが顔をしかめる。

 ダイダロス通りを蔓延る無数のモンスターを見つけたからだ。

 中層辺りのモンスターが多く、あの水黽型のモンスターに群がられて戦っている。その余波で建物が傷つき近くにいて騒ぎを聞きつけたのであろう冒険者達もやられている。

 

「一般人の身の安全を最優先。モンスターを殲滅するぞ」

 

 水黽型のモンスターが居るということはやはり闇派閥(イヴィルス)が関わっているのだろうか? しかし目的が解らない。『鍵』をダイダロス通りで無くしたとか?

 

「………そんな間抜けなら楽なんだけどね」

 

 フィンはふっと笑いモンスターに向かって駆け出した。

 

 

 

「アアアアアアアアッ!」

「ひ………ひぃ!!」

 

 【イケロス・ファミリア】のグランは情けない声を上げながらヴィーヴルから逃げる。時折モンスターが襲っていくおかげで何とか逃げられているが、直ぐに殺して魔石を奪い、少しずつ『俊敏』が上がるヴィーヴルは追いかける速度も速くなっていく。

 

「くそ! ほ、ほら! もう返してやるよぉ!」

 

 と、『ヴィーヴルの涙』を入れていた皮袋を投げつける。ヴィーヴルが止まりその皮袋を手に取ろうと伸ばす。

 

「ははは! 死にやがれ!」

 

 と、ヴィーヴルの伸ばされた手に向かって剣を叩きつける。

 ギィン! と音が鳴り弾かれる。

 

「…………へ」

「……………」

「うひぃ!?」

 

 ギロリと睨み付けられ腰を抜かすグラン。ズボンが濡れ涙を流しながら後ずさる。

 

「ま、ま待て! 紅石(いし)はもう返したろぉ!? 見逃してくれよぉ、なぁ!?」

「…………………」

「ひぁ………! ………あ?」

 

 涙目になるグランの横を通り過ぎる。彼の存在などどうでも良いというように、紅石(いし)すら無視して。

 

 

 

 

 突如地下から大量に現れたモンスターに慌てて避難するダイダロス通りの住人達。

 子供ばかりのマリアの孤児院はどうしたって動くのに遅れる。ましてやここは住人ですら迷うこともあるダイダロス通り。

 

「皆、ちゃんと居る?」

「う、うん……」

「……お母さん」

「────ッ!」

 

 聞こえてくるモンスターの鳴き声に身を震わせそうになるが、子供達を安心させるために気丈に振る舞う。

 

「皆………行きましょう」

「…………」

 

 と、その時だった。

 

「グウゥゥ……」

 

 目の前に現れたのは白銀の毛を持った巨大な猿。目の前の一匹だけでなく、屋根からも数匹現れる。

 

「お、お母さん………」

「だ、大丈夫………大丈夫だから……」

 

 震える子供達を抱き締めるマリア。

 モンスター、シルバーエイプの群は涎を垂らしながら迫る。

 震える子供達やマリアの腕にかけられた鈴がチリチリと音を奏でる。

 

「オアアア!」

「─────!!」

 

 シルバーエイプが腕を振り上げ、マリアが目を瞑る。もしこの光景を見る者が居たら誰もが彼等が潰れて肉塊になる未来を想像するだろう。が──

 

「アアアアアアアアッ!」

「───ウギョ!?」

 

 突如現れたヴィーヴルがシルバーエイプに襲いかかる。細い腕のどこにそんな力があるのか、首をへし折り死体を仲間に投げつける。

 

「………え?」

 

 モンスター同士の殺し合い?

 冒険者に憧れるライは、モンスター達が基本的に争わないのを知っている故に混乱する。さらに混乱は続く。

 

「アアアアアア!」

「ゴオオオオオオオッ!!」

 

 ヴィーヴルは長い尾でマリア達の周りを覆うとシルバーエイプ達を睨みつける。まるで彼等に手を出すなと言うように。

 

「…………ウィーネお姉ちゃん?」

 

 誰もが混乱する中、ハーフエルフのルゥが呟く。チリンとヴィーヴルの腕に巻き付いた青い紐についた鈴が音を奏でた。

 

 

 

 守らなくては。

 この子達を守らなくては。

 何故だろう? 何でそう思った?

 ……………ああ、そうだ。彼等は大切な存在だ。あの人が笑顔を向けていた。自分を受け入れてくれた。

 守らなくては。必ず守らなくては。この子達は、この人達は、あの人と同じくらい大切な存在なのだから。

 

「オオオオオオオオッ!!」

 

 ヴィーヴルは、ウィーネは叫ぶ。

 理性を失い獣となり果てても、鈴の音が聞こえる。その音色が彼女の守るべき存在を教えてくれる。

 

 

 

「ふ、ふざけやがって! 何なんだよ、何だよバケモノがよぉ!」

 

 グランは叫ぶ。自分をまるでどうでも良いモノを見るような目で見て横を通り過ぎた怪物が、まるで大切なモノを守ろうとするように子供達を庇っているのを。

 

「バケモノだろ!? てめぇは何も考えねぇ、獣だろうが! ふざけんな、俺を無視して、んなそこらにいるガキ共を庇おうなんて、人間みてぇな行動してんじゃねーぞ!」

 

 気に入らない。バケモノはただ脅えていればいいのだ、金になって絶望していればいいのだ。あんな、路傍の石をみるような目で自分を見て良いわけがない。

 

「ふざけやがってふざけやがってふざけやがってふざけやがってふざけやがってふざけやがってふざけやがってふざけやがって!! 殺す、殺してやるぞ蛇女がぁ……バケモノの分際で俺に恥かかせやがって、てめぇの守ろうとしてるもん全部ぶっ壊してやる!」

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