ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
森の中にモンスター普通に住んでるし、殺されてたらどうしたんだろ?
後異端児達に偽の地図渡して行き止まりに誘った後ベルに恩を返したければエイナを殺そうとしてベルに殺されろとか、一匹殺せば割り切れるとか、俺やフレイヤ様が君を退屈させないとか言ってたけど見逃して良かったのか原作のベル君
アマゾネスの姉妹が、獣人の青年が、金色の剣士が駆ける。
ほんの擦れ違いざまにモンスター達が吹き飛んだ。
「チッ、バケモン共が大人しく地下にこもってりゃ良いのによぉ…」
「ボヤいている暇があったら足を動かしなさい。数だけ居るんだから……」
面倒くさそうなモンスターを蹴り飛ばすベートをティオネが睨む。
ティオナは狭い路地などを避け開けた場所でウルガを振るい、アイズは場所問わずにモンスターを狩っていく。
「極彩色のモンスターを除けば全部中層のモンスター………襲撃にしては弱い」
これで毒を持つモンスターが居たなら話は変わるがそれらしいのは見あたらない。現状多くの【ファミリア】がクノッソスの存在するダイダロス通りを警戒しているというのに………やはり混乱だけが目的なのだろうか?
「オオオオオオオオッ!!」
「「「────!?」」」
と、突如響き渡る咆哮。明らかに中層のモンスターのモノではない。と、さらに叫び声の聞こえた方向から慌てた様子の一般人が飛び出してきた。
「だ、誰か! 向こうにバケモンが、子供達が……!」
顔を青くして叫ぶ男の声にフィンは目を細める。
「複数居たら事だ………ラウル、指揮を頼む。アイズ、ティオネ、ティオナ、ベート、リヴェリア、ガレス……行くぞ」
フィンの言葉に駆け出す一同。迷いやすい道は走らず屋根の上を飛び越える。と、シルバーエイプが大口開け飛んでくる。
「────」
アイズが剣を振るうと魔石ごと切り裂かれ灰になるシルバーエイプ。
「………?」
今のは襲いかかって来たというより、飛ばされてきたような。
「「「ゴホオオオオオ!!」」」
「「「ガルアアアアア!!」」」
「「「ブオオオオオオ!!」」」
「オオオオオオッ!!」
シルバーエイプ、ミノタウロス、バグベアー。
中層の大型モンスターの群。それに相対するのは子供達と年輩の女性を包み込むように蜷局を巻くヴィーヴル。
「モンスター達が、争ってる?」
「あー………ヴィーヴルかぁ」
「やりにくいですね……」
ヴィーヴルを見て頭をかくティオナに、その言葉に同意するレフィーヤ。
ヴィーヴルはミノタウロスの胸を鋭い爪で貫き魔石を抜き取る。
「ゴアアアア!」
「ガァ!」
子供達を狙うように飛び込んできたバグベアーを尾で叩き吹き飛ばすヴィーヴル。
太く長い尾で叩かれたバグベアーはそのまま壁にぶつかり潰れる。
「ガアアァ!」
ヴィーヴルが叫びミノタウロスの角を掴み振り回す。壁に叩きつけ纏めて爪で貫き、引き抜くと複数の魔石を喰らう。
「………額の宝石がない、それに……強化種か………モンスターが居なくなると子供達が狙われる。先にヴィーヴルから
「うん……」
強化種は魔石を喰う際の万能感に酔いしれモンスターを狙う。だからこそ、凶暴化状態のあのヴィーヴルもモンスターだけを狙っているのだろう。だが、モンスターが居なくなれば周囲を無作為に破壊するはずだ。そういうモンスターなのだ。
フィンは槍を構える。と、その時………
トン、とアイズが屋上の角を蹴り跳ぶ───否、
「
「アイズ!? 全く……」
槍を投擲しようとしていたフィンは呆れたようにため息をはく。その瞬間にはアイズは金糸の軌跡を残す金の風となってヴィーヴルに迫っていた。
子を守ろうとしている女性を見て助けなければと思ったのだ。それに、何より………ヴィーヴルは
怪物に対して攻撃力を高域強化、竜種に至っては
「─────!?」
が、このヴィーヴルは仮にも強化種。ギリギリで身を反らす。
しかし剣先が僅かに触れ、風の刃と超域強化された威力で振るわれ発生した剣圧に腕が吹き飛ぶ。
「────アアアアアアアアッ!」
「─────!!」
ゴゥ! と体に襲いかかる重圧。絶叫をそのまま
「────え」
「────ッ!」
震えながらヴィーヴルに背を向け、手を広げる子供達。まるでモンスターであるヴィーヴルを庇うように。
「ゴオア!」
「ヴゥ───アアアッ!」
モンスターがそんな無防備な子供達を狙いヴィーヴルが爪を振るう。片腕を失いバランスが上手くとれないのかそのまま地面に横たわった。
「………何を、してるの………」
「手、手を出すな………」
「……どう、して……それはモンスター、危険なの」
「ウィーネお姉ちゃんに手を出すな! 俺達の家族だ!」
少年は叫んだ。
言い切った。
ヴィーヴルが、モンスターを家族だと。
「お、お願いです冒険者様! ウィーネお姉ちゃんは、私達を守って……」
「…………ウィーネ?」
「え、じゃあ………」
ある少女が叫ぶとその名にレフィーヤとティオナが反応する。
「ウィーネ姉ちゃん、逃げて!」
「ヴ……ウゥ…」
「逃げろって、早く!」
「こっち!」
「グギ、アアア───!」
と、少年の一人が手を引く。本来なら引きずることなど出来ないだろうがヴィーヴルは大人しくついて行き、それどころか残った片腕で少年を抱き寄せた。
「………えっと………つまり、どういう事なのかしら?」
と、戸惑うように呟くティオネ。
「それより先にモンスター共ぶっ殺すぞ」
ヴィーヴルが居なくなったが【ロキ・ファミリア】に警戒して動かないモンスター達を見ながらベートがゴキリと首と鳴らす。
「………例えば、あのヴィーヴルが
「額の石を失っていたのにか?」
「確かに………それに
「………るはずない」
「アイズ?」
フィンが命令を下そうとすると、アイズが呟く。
「そんなこと、あるはずない………モンスターが、人を助けようとするなんて、人がモンスターを助けるなんて、あるはずない」
アイズはそれだけは認められなかった。
モンスターは凶悪で、凶暴で、残忍で、だから倒さなくちゃいけない。なのに、どうして彼等は助け合っている?
「「……………」」
アイズ程ではないがフィンもベートも似たような心境だった。フィンは両親を、ベートは一族と嘗ての仲間をモンスターに殺されているのだから……。
「………それでも今は飲み込んでくれ。あのヴィーヴルは、生け捕りだ。僕らは此方のモンスターに対処する」
「………………」
不満そうなアイズはヴィーヴルの気配を追おうと足に力を込める。と、その時、稲光がモンスターの群を飲み込む。
「…………ベル」
「ベルお兄ちゃん!」
稲光が飛んできた方向を見れば息を切らせたベルが居た。知り合いなのか、ベルは子供達に駆け寄る。
「お前等、無事か?」
「はい。でも、ウィーネちゃんが……」
「ウィーネ!? 見たのか、どこだ!?」
と、女性の肩を掴むベル。焦るように叫ぶベルはしかし子供達が飛びついてきたことで落ち着く。
「ベル兄ちゃん、大変なの……このままじゃ、ウィーネ姉ちゃんが……」
「私達助けようとしてくれてたのに、いっぱい傷ついてたのに……」
「助けようと? 石を失っていたのに、か? それは、本当なのか?」
「うん……」
「…………そうか………すごいな、彼奴は……」
子供達をそっと離し居場所を聞く。指さされた方向に走ろうとするベルにフィンが声をかけた。
「あのモンスターについて何か知っているようだけど、あれは……何だ?」
【ロキ・ファミリア】の、冒険者の、そして彼等の活躍を一目見ようと窓から顔を出すダイダロス通りの住人の視線を浴びるベル。見られているわけでもないのに子供達が後ずさる重圧の中、ベルは口を開いた。
「俺の家族だ」
人類を敵に回し英雄を捨てる『愚者』の言葉と共に。