ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「らあああ!」
「ぬお、と…! くっ!?」
ティオネの攻撃を曲剣でしのぐリド。人間と異なる造形のせいで表情は解りにくいが恐らく焦っているのだろう。
「ッチ、蜥蜴風情が!」
「うおお!?」
ティオネの双剣がバギャァァン! と大きな音を立てリドの曲剣を砕く。リドは刀身を失ったそれをティオネの顔に向かって投げつけると距離を取る。
「ふぃ~、クソ強ぇ………」
もし18階層で魔石の食い放題がなければ瞬殺されていただろう。そういう意味では、ただでさえ強かったアステリオスがどの程度強くなったのか気になる。
「ぬがぁぁぁ!」
「ぬぅん!」
ガレスとアステリオスの斧がぶつかり周囲の空気と共にガレスが吹っ飛ぶ。
斧を振り抜いた状態のアステリオスにフィンが槍を振るうが角で弾き、そのまま目を見開くフィンの腹を殴りつける。
「───が!!」
「団長!? この牛野郎、挽き肉にしてやらぁ!」
フィンが吹き飛びティオネが目の前のリザードマンを無視して最愛の団長を吹き飛ばした漆黒のミノタウロスに殴りかかる。
怒りの丈により攻撃力を上昇させるスキル
「ぐっ!?」
「ラァ!」
と、ティオネに替わるようにベートが蹴りかかる。炎を纏ったメタルブーツで蹴りかかると同時に黒い雷を纏った斧で防がれる。
「あぐ!?」
黒雷が体に巻き付き全身が痺れる。そのままとどめだってさせたろうにアステリオスは蹴り飛ばしただけで追撃はしない。
が、軒並みやられたということに
「やってくれたね………」
「ぬう、頭一つ飛び抜けておるのぉ……」
と、瓦礫をどけ立ち上がったフィンとガレスを見て何とかその場に踏みとどまることは出来たが……。
「ど、どうしましょう……」
「どうしましょうって………どうしよう……」
完全に敵対する
彼等が以前言っていた
「リド、アステリオス!」
と、さらに場を混乱させるようにベルがやってきた。その背には少年がしがみついており腕の中には元の姿に戻ったウィーネが眠っている。
「目的は果たした。ダンジョンに帰るぞ」
「コノ者達ハドウスル?」
「フィンは何も知らない奴らに拷問なんてしない。ダンジョンまで護衛するのはむしろ危険だ。置いていく」
「そこまで信用してくれるなら、事情を話してほしいもんだけどね」
と、フィンが苦笑しながらベルを見る。殺気はないが威圧感のある笑みにベルは怯えず地面に下りライをマリアの下まで連れて行く。
「信用してるさ。お前は悲願のために、モンスターとの融和なんか認めないってこともな」
「君は望むのかい?」
「ああ」
迷いのない言葉にフィンが目を細め
「………ベル」
「ベル……」
娘のために、友のために人類を平然と敵に回したベルを見てレフィーヤとティオナはぐっと拳を握る。
「しかし、目的ね………そのヴィーヴルのことかな?」
「………………」
「あ、ああそうだ! 地上に出てきたのは、仲間を取り戻したかったからなんだ。人を襲いたい訳じゃねぇ、殺したいわけでもねぇ!」
事実、彼等による死者は出ていない。それどころかただのモンスターを殺していたほどだ。
「何よリ……私達ハ、ベルの言うヨウに、話ガしたイ。戦うのではなク、言葉ヲ交わしたイ……」
「モンスターが、何を………!」
「で、でも彼等の言うことが本当なら私達は彼等にも劣る蛮族と言うことに……」
「…………エルフ共は昔から考えすぎるな……まあ思考して立ち止まっているなら好都合だ。アステリオス、殿を任せる」
「………どこから戻る?」
「正面から堂々帰る」
と、背を向けたベルに向かって矢が飛んでくる。見ずに首だけ動かしかわしたベルは振り返り矢を放ったエルフを睨む。
「ふざけるな、貴様……人間でありながら怪物に与するのか!?」
「恥を知れ!」
「───ッ! おいこらてめぇら、あんまベルっちを──」
「黙れ! 怪物が、人を庇うな! 人の言葉を話すな、我々を惑わすな!」
「………………」
彼等もまた揺れているのだろう。人の言葉を発し、人と共に歩むモンスター達を見てモンスターは凶悪で残忍で凶暴な存在という価値観が崩された。少なくとも、子供達の心配をするガーゴイルなどお目にかかれるものではないだろうし。
それでも彼等は認めない。認められない。人類の歴史を振り返り、怪物と言葉を交わすなど。
「この裏切り者が!」
「凶悪なバケモノと手を組み、何を企む!?」
「今までの功績も、全部八百長だったのか!?」
「何とかいえ!」
「どうして残忍なバケモンと仲良くしてやがる!」
故にベルに向かって罵倒罵声を飛ばす。ベルとて解っていたことだ。気にした様子もない。だが、それを見ていたティオナはムッと表情を歪める。彼等を知る故に、彼等が罵倒され彼等を守ろうとするベルが咎められるのが我慢できなかった。
「うっ、るせぇぇぇぇぇぇ!」
「うる───へ?」
しかしティオナは周りを止めることが出来なかった。先に
「レ、レフィーヤ?」
「ちょ、ちょっとどうしたのよ……」
レフィーヤの周りのエルフ達が恐る恐る訪ねるとレフィーヤはキッと周りを睨みつけた。
「さっきから聞いてれば何なんですか!? 蛮族だの凶悪だの残忍だの! 彼等は、理性的に話してたじゃありませんか!」
「い、いや蛮族は違──」
「相手が野蛮だと思っていたからそんな言葉出たんでしょう!?」
反論の余地もない。相手が野蛮と決めつけなければその言葉を聞かないだけで自分達が蛮族になる、などと言わないだろう。
「貴方達エルフっていっつもそうですよね! やれドワーフは汗くさくて野蛮だ、やれ獣人は凶暴だ、やれ
「いや、あの………貴方もエルフ………」
「今ここにある光景をちゃんと見てください! 子供達の心配をする怪物が居ますか? 友人とその娘を会わせるためだけに【ロキ・ファミリア】と相対しようとする怪物が居ますか!? 今、彼等が何をしているのか、モンスターだからという先入観なしでちゃんと見ろぉぉぉ!」
はぁはぁ、と肩で息をするレフィーヤはそのまま唖然とする団員達の間を通り過ぎベルの隣に立つと【ロキ・ファミリア】と相対する。
「レフィーヤ、お前まで………」
と、リヴェリアが困惑したようにレフィーヤを見つめる。
「ぷは、あははは!」
そしてティオナが吹き出す。今度は何だと視線が集まる中ティオナはとん、と地面を蹴るとベルの眼前まで飛びクルリと振り返る。
「決ぃめーた! あたしもこっちにつく!」
「………ティオナ、君までも………ああ、そうか。このメンツ……君達全員知っていたのか」
「ごめーん。内緒って言われてたから」
「な!? あんたねぇ!」
頭をかく妹に叫ぶティオネ。ティオナはニコニコ笑っていた。
「お前等……」
「ん? 何ベル、別にお礼なんて」
「馬鹿じゃねぇの! 人類敵に回すとか何やってんだ!」
「貴方に言われたくありません!」
「俺は良いんだよ!」
「何でですか!?」
「そーだそーだ!」
言い争う三人にフィンははぁ、とため息を吐いた。
「君達の仲は良く解った。取り敢えず、おとなしく捕まってもらう──」
「断る」
「お断りします」
「ことわーる!」
と、三人が拒否すると同時に巨大な金属の固まりが地下から現れる。
「行くぞ」
「逃がさないよ」
と、フィンが槍を片手に襲いかかるがアステリオスがそれを軽々弾いた。その隙に、ベルが駆け出し
大通りを突き進む武装したモンスターの群。その先頭に走るのは白髪赤目の
バベルに向かってかけるモンスターを止めようとする冒険者達だが巨大な武器を持ったアマゾネスと兎に吹き飛ばされる。
「───ベル君?」
「────」
バベルに避難指示を出していたギルドの職員の一人が呟き兎と目が合う。が、直ぐに逸らされモンスターの群はバベルの地下、ダンジョンの奥に消えていった。
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