ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
地下に引きこもり既に一週間がたった。
「俄には信じがたい光景だね……」
モンスターと人が酒を飲み言葉を交わす光景。神々の殆どが面白がりそうな光景ではあるが……。
この光景が、ウラヌスが夢見てベルがある意味では実行しかけている光景。
「だっていうのにベル君、なーんで元気ないのかな?」
朝起きる度に少しずつ元気がなくなっているように見える。
この光景を見て少しは回復するが、徐々に徐々にマイナスに傾いている。
「うーん、でもなぁ……こういうのって素直に聞いて良いもんか」
「また逃げちゃうかもしれませんしね」
「で、でもやっぱり心配ですよ~」
ヘスティアが唸りリリが頭を抱えカサンドラが俯く。
しかしベルは一度、過去の一端に触れられ逃げ出した事実を持つ。下手に刺激して、ここから逃げたら今度はどこに行くか皆目見当も付かない。
「けどもどかしいなぁ………何とか出来ないものか」
「………………」
「………その……あ、でも………」
ヘスティアの呟きにリリが黙り込み、カサンドラが思わず声を出す。しかし言い出せなかった。これは夢に見たわけではないから、確信もない。しかしこのまま手を拱いていても下手をすればそのまま夢の内容に一直線だ。
「レフィーヤさんなら、何とか出来るんじゃ……」
「んー……レフィーヤ君かぁ……でもなぁ……」
彼女はベルと恐らく一番親しい異性だ。まあ、今回はリードされるとか、そういう事はどうでも良い。
問題は親しいからこそより心に深い傷を負ってしまうのではないかという心配だ。
「ん? レフィーヤがどうしたって?」
と、そこへティオナがやってくる。さっきまでレイの歌にあわせて楽しそうに踊っていたのに何時の間に。
「あ、その……ベルを元気づけられないかなぁ、と……」
「あ、それならさっき『ウジウジしてるベルにガツンと言ってやります!』って……」
「「「………へ?」」」
「………………」
気が重い。
闘志によって肉体の状態を維持する故に、己の感情の状態がそのまま肉体に反映されるという副作用もある
「でも相談してくれないんですね」
「───!?」
ギョッと振り返るとレフィーヤがジト目で資材の上に座っていた。
「レフィーヤ………?」
「はい。レフィーヤですよ………」
にっこりと笑い立ち上がるレフィーヤは、そのままベルの前に立つ。
「最近ベル元気ありませんよね? 悩み事ですか?」
「いや、そういう訳じゃ……」
「嘘ですね」
即答された。たじろぐベルにレフィーヤははぁ、とため息を吐く。
「まあ聞きませんよ。予想は出来ますけど、どうせ答えないでしょうし……」
と、拗ねたように言ったレフィーヤ。そのままベルの両頬を掴む。
「ベル、今何が見えますか?」
「レフィー………ヤ?」
「はい。今、目の前にいるのは私です」
瞳にベルを映すレフィーヤは笑みを浮かべ頷く。
「ベル、私はあなたを救うなんて出来ません。救えるなんて、軽々しく口に出来ません。してはいけないでしょうね………」
そう言うとベルから手を離しくるりと翻り、首だけを回しベルと目を合わせる。
「ですが今だけは無責任に、無神経に、無遠慮にこう言います。今は忘れてください」
「な………」
「そうでなければ、助けようとした
「…………」
「今は前を見てください。過去を振り返ろうと、無かったことにならない……けど未来は今しか作れません。だから、今は彼等を助ける事に集中してください」
首を前に戻し歩き出すレフィーヤ。ある程度歩くと振り返り手を伸ばす。
「彼らを救おうとした貴方には、彼等を救う義務がある。だからそっちに集中しましょう……過去を振り返ってしまいそうになるなら、前を向いて歩けないなら、私が手を引いてあげます。だから今は前を見ましょう?」
「……………」
ベルは躊躇い、手を伸ばす。届かないので歩く。レフィーヤの居る前に向かって。
「……♪」
レフィーヤがニコリと笑い、手を引いて歩き出した。
「ぐぬぬ……なんだいなんだい! あの雰囲気は」
「むう~」
「いいなぁ」
「おー、ベル元気出たみたい」
木陰からこっそり見ていたヘスティアとリリがぐぬぬと呻き、カサンドラが羨ましそうに見つめティオナが笑みを浮かべる。
「何暢気なことを言ってるんだいティオナ君! このままじゃベル君が取られちゃうよ!」
「あたしはベルが元気ならそれで良いしー。それにほら、物語の英雄だって沢山お嫁さんいるじゃん?」
「それとこれとは話が別だよ! だいたい、ベル君が僕の眷属である以上、そんなふしだらな事は認めないぞぉ!」
「えー? でもさぁ、ベルの事好きな子沢山居るし、フられるのは悲しくない?」
「何でフられる前提なんだよ………」
「それは……だって、私じゃベルに寄り添えても、支え方が解らないもん」
と、ティオナは寂しそうに答えた。
「おう、なんかすっきりした顔してんな」
「モス・ヒュージやウダイオスの時と同じだよ。取り敢えず、目の前のことだけに集中することにした」
ボールスの言葉にベルがそう返す。
改めて現状を確認する。ちょうどここには情報を伝えにきたフェルズと、物資を運びにきたシャクティも居る。
「フェルズ、シャクティ、外の様子は? 各【ファミリア】としての様子じゃなく、一般人達の
「うむ。賛否両論と言ったところか……ウィーネの目撃者は少ないからな」
「しかし事実だ。故に、半々……」
「なら決めるのは今しかないな。どのみち、時間が経ち過ぎればギルドに不満がたまるし共存派の数も減るだろうからな」
一度はモンスターを信用したとしても、それはきっと一時的なものだ。早い段階で手を打たなければ共存を望んで………いや、受け入れている者も減るだろう。
「そうなると問題は【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】か………」
「フレイヤは……まあ俺が頼めば何とかなるだろう。【ロキ・ファミリア】も、ほぼほぼ大丈夫だ」
「………何?」
その意外な言葉にフェルズが首を傾げシャクティも動揺する。
「むしろ問題は一般人の反対派………けど、これも一つだけ手がある。まあこっちは賭けと言っても良いが、
「その手とは?」
「あるだろ? たとえ無名の冒険者でもそれ一つで一躍人気者になれるゲームが」
その言葉に最初に気づいたのはシャクティだった。冒険者として、大手として経験がある。自身の名が広まるのに一躍買っている神々の娯楽。
「
「ああ」
「しかし、受けるか、彼奴が」
「受けないだろうな。少なくとも賛成派と反対派の力が拮抗している今は無利益でモンスターを受け入れるなんてフィン・ディムナは、
その辺はきっちり理解している。
「では前提条件が叶わないではないか」
と、現実性のある話をしろと言いたげに睨んでくるシャクティ。ベルはその視線に気にせず机の上に赤い液体が入った瓶を置く。
「言ったろ? 無利益なら、だ………利益ならある。俺達しか持たない財産、
【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】の
「……………」
手紙の内容に目を通し、フィンは目を細める。
「フィン、それはベルからか? レフィーヤやティオナ達も、大丈夫なのか?」
「その辺に関しては書かれてない。ただ、日程と集合場所だけが書かれてる。交渉でもする気かな」
「乗るのか?」
「現状じゃ乗れない。
「フレイヤ様、手紙の内容は?」
「デートの誘いよ」
オッタルの言葉にフレイヤは頬を染めはぁ、と熱い吐息をはく。
「なぁんて、ようするに交渉するから顔だけ出して邪魔をするな、という内容よ。何をするつもりなのかしらね?」
「交渉?」
「ロキ達と……いいえ、オラリオと言った方がいいかしら。楽しみね、あの子は、どんな時代を私に魅せてくれるのかしら?」
あれ、ヒロインってベルだっけ?