ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
三日の猶予。それにより、オラリオの住民は荒れていた。
参加しようとする者、しない者。どちらに参加するかで揉める者。ただ、前提条件として騒ぎを起こせないので殴り合いまでには発展しないが。
「待機でいいんですか?」
「フレイヤ様に見張られてるからねぇ……ベル君を擁護する噂を流すくらいしか出来ないし。いや、そもそもベル君があんな大胆な行動に出た時点で俺に出来る事なんてたかが知れてる」
「さて、自由参加となったがどうなることやら………」
カンカンと鉄を打つ音が響く。
鉄を打つヴェルフは汗を拭い、赤く燃える鉄を水に浸す。
「………ふぅ」
「終わったか?」
「うお!?」
一息つくと不意に声がかけられる。慌てて振り向けばそこには腕を組んだオッタルが居た。
「剣が出来たと報告を受けたのでな。取りに来たのだが、取り込み中だったようなので待たせてもらった」
「ああ。悪いな、呼んだのはこっちなのに………剣は、ほれ、そこだ……」
と、壁に立てかけてあった布に巻かれた剣を指さす。オッタルが布を取り払うと巨大な黒剣が現れた。
「お望み通り過重と雷の魔法入りだ」
「………悪くない」
剣を持っただけで善し悪しが分かるのか、満足そうに頷くオッタル。
「結局、椿にも手伝ってらった。銘は『牛魔王』か『牛若丸・雷式』……」
「後者で頼む」
「そうか?」
「………それで、呼び出しておいて仕事とは、考え事か?」
「………悪かったよ。でもま、そうだな……鉄を打ってると、それだけに集中出来る」
ヴェルフはそういって壁に立て掛けられた剣や防具を見る。悩んでいるのは、後二日後に迫った
「ベルは、きっと正しいんだろうよ。友と喜びを分かち合いたいってのは、誰だって持ってる思いだ。それがたまたまモンスターだっただけ」
そう、モンスターなのだ、ベルが庇おうとしているのは。
「……あんたは、あのミノタウロスと決着をつけたいって理由で参加してたよな? モンスターだから、じゃなくて、決着をつけたいから」
「自分の判断を他人に委ねるな」
ヴェルフが何を言いたいのか察したのか、オッタルはあっさり一言だけ言い放つ。
「……そっか、そうだな………ようするに、俺がどうしたいかだ!」
「ヘファイストス様! と、椿も居たのか………」
ヴェルフがヘファイストスの部屋に赴くと先客に団長の椿が居た。が、寧ろ都合が良い。
「どうしたヴェル吉?」
「何か用かしら?」
「ヘファイストス様、俺に
「
と、真意を問うヘファイストス。
「馬鹿なことを言ってるのは解ってます。けど、俺はベルの為に戦いたい……」
「良いわよ」
「………へ?」
ヘファイストスの言葉にヴェルフは唖然とする。そんなヴェルフを可笑しそうにクスクスと笑うヘファイストス。椿もニヤリと笑う。
「そうかそうか! お主も其方を選んだか!」
「いて! お前、レベル差考えろ!」
Lv.5の椿にバシバシ叩かれ顔をしかめるLv.2のヴェルフ。が、気になる発言があった。
「お主も? お前もか?」
「うむ。そもそも鍛冶師として貴重なドロップアイテムが手に入るというなら、言葉が通じる以上彼等を拒む理由がないからな」
鍛冶師として、確かにドロップアイテムが定期的に手に入るのはありがたいが、それだけではない気がする。
「それに、人間以外に鎧を作るのは初めてだ。奴等め体に合わぬ防具ばかり着よって、手前達が各々の体にあった鎧を作ってやるわ」
「………達?」
「もちろんお主もやるだろう?」
「ああ、まあ………」
「……………」
「リュー、ボーッとしすぎニャー」
「あ、ごめんなさい………」
アーニャの言葉にリューがハッとする。
昨日からずっとこの様子だ。原因は聞くまでもなく昨日の一件だろう。
「………モンスターは、人類の敵。そんなの常識でしょ?」
と、ルノアが呆れたように返す。が、直ぐに目を細め虚空を見つめる。
「けどま、喋ってる時点で常識なんて関係ない、か………」
言葉を発し心を持つモンスター。知能が高い、だけでは片付かない。何せ、多少知能が高くともモンスターは人を襲う。現に武器の使い方を知っているリザードマンも居るのだ。
しかし、ベルが引き連れた
「モンスターは敵と、切り捨てるのは簡単です。ですが、心を持つ彼等を切り捨てるのには正義があるのでしょうか?」
「さあ? それを他人に尋ねるのは違うんじゃない? でも、迷うって事はあれがただのモンスターじゃないから、味方してあげたいって思ってるんでしょ?」
「………ええ、ベルさんは、きっと間違っていないんでしょうね……」
と、目を瞑り、そして意を決したように目を開く。
「ミア母さん、休暇を頂けないでしょうか」
「………はぁ、あんたもかい」
リューの言葉にミアは呆れたようにため息を吐き肩をすくめ、リューは『あんた
「おかげでその日はあたしを含めた四人だけだよ。全く、【フレイヤ・ファミリア】にも参加資格があったら接客が一人になるところだった」
ミアとアーニャは半脱退状態とはいえフレイヤの眷属。故に今回の戦いには出れないのだろう。シルはそもそも戦闘向きではない。が、それはつまり……
「あ、もちろん参加するよ? ベル側で」
「ニャーも同じく!」
ふふん、と悪戯が成功した子供のようにニヤリと笑うルノア、元気良く手を挙げるクロエ。
リューは暫し呆然として、しかし柔らかく微笑んだ。
「感謝します、ルノア、クロエ」
「皆に聞いてもらいたいことがある」
と、真剣な面持ちでガネーシャが己の眷属達を見据える。
背後に立つ団長のシャクティは無言で立っていた。
内容は、きっと
「俺は前々から
だが、放たれた言葉は予想外の言葉。誰もが目を見開く中、ガネーシャは誤魔化すことなく全てを告げる。
「辞めたいというなら、抜けてくれてかまわない。ステイタスも封印しない。だが、残ってくれるというなら力を貸してくれ。彼等を助けたいと思いながらも、思っていただけで……人類全てを敵に回そうとも彼等を家族と言った幼い子供やベル・クラネル達にも劣る俺に力を貸してくれ!」
シン、と静まりかえる。頭を下げたガネーシャはゆっくりと顔を上げた。
「下らんことを聞くな、ガネーシャ……」
「シャクティ?」
と、呆れたようにシャクティが呟く。
「元より我らはガネーシャの眷属。その神意に従う。そうだろう?」
「「「「おおおおおおお!!!」」」
シャクティの言葉に団員達は笑顔で叫んだ。
少しずつ、各所の方針が定まっていく。
「そうか、少し意外だな、まさか全員残るとは………」
「ああ、上手くすれば、またフィンの拳が……」
「………なあ、やっぱりアマゾネスって………」
「あたしは違うから。それに、だったら向こうにも流れてたはずだよ」
「それで、君は迷わないのかい?」
「はい。私は、見てしまいました。子を守ろうとするヴィーヴルを………私は、彼女を傷つけた。彼女と少年の絆を見ようともせず…………だから、これは私に出来る償いのつもりです」
「後悔はしないか?」
「いざとなれば、彼等と同じように地下にでも住みますよ。幸い、向こうには友も二人います」
「あまり、無理してほしくはないのだが……」
「でも、ベルは良い子だって言うのは知ってますし……」
「うむ。主神同士が知り合い、というだけで、手伝ってくれたな………しかし、モンスターはお前にとって」
「彼等ならきっと襲ってこない。だから、むしろリハビリの相手にちょうど良いと思います。私も、またダンジョンに潜れるようになりたいので……」
「そうか、ならば止めはしない……しかし、ベルは良い子、か……お前にもとうとう春が……痛!? 何故蹴る!?」
それはモンスターを擁護すれば、否定する声も挙がる。単純に、モンスターを率いて巷で魔王などと呼ばれ始めた少年の為に腰を上げる者も居る。
そして、そんな彼等と対峙する面々の中核である【ロキ・ファミリア】では………。
「アイズは、まだ起きないのか?」
「ん。ミアハには、夢に依存しすぎる可能性もあるが、最終的には目覚めるって言われたんやけどなぁ」
元より依存性が高いものなど、健康面に害が無かろうとあのミアハやミアハの眷属であるナァーザが売るはずがない。
「それほど、夢にのめり込んでいるのか………」
「うーん。結局夢やし、起こすか?」
と、ベッドで眠る金色の少女に目を向けた時、計ったかのようなタイミングでアイズが金色の瞳を開く。
「アイズたんおは………よ──?」
「アイズ、体は平気か?………アイズ?」
早速声をかけた二人は違和感に気づく。何時もの様に無表情なのに、黒い何かを感じる。長年の付き合いのうち薄れていったはずの黒い炎を感じる。
「………ロキ、ステイタスを更新してほしい」
「え? あ、あぁ……」
躊躇いもなく服を脱ぎ、背中を晒す。その背に触れ、ステイタスを更新するロキ。
「…………あ?」
それを見て、固まった。
『Lv.6
力:H161
耐久:G204
器用:H194
俊敏:F307
魔力:H188
狩人:G
耐異常:G
剣士:H
精癒:I
《魔法》
【エアリアル】
・
・風属性
・詠唱式
《スキル》
・
・怪物種に対し攻撃力高域強化
・竜種に対し攻撃力超域強化
・憎悪の丈により効果向上 』
ここまでは良い。いや、ステイタスの上がり幅が少し高いがベルと比べれば些細なもの。問題は……
『
・
・
・ベル・クラネル対峙時全アビリティ高域強化
・想いの丈により効果向上
・ベル・クラネルが死ぬまで効果継続
・敵対時に置ける相手のステイタス一時簒奪 』
新しく目覚めた二つのスキル。片方には見覚えがある……。
だが、
とりあえずこのスキルは隠してステイタスを見せる。
「……………」
「お、おいどこに行く!?」
と、固まっているとアイズが立ち上がり部屋から出ていこうとする。
「ベルの所……」
「………アイズ、今のお前を、外に出すのは──」
と、そこまで言い掛けてアイズの殺気に当てられる。
「邪魔しないで………私は、ベルの所にいくの……邪魔するなら、誰であろうと殺す」
「…………」
本物の殺気。本気の殺意。気圧されそうになる圧迫感に後ずさるリヴェリア。ロキがうっすらと目を開く。
「後二日待ちぃやアイズたん」
「何で?」
「二日後に
「…………待機は、やだ。ダンジョンには潜らないけど、鍛えたい」
「………まあ、それだけならええけど」
アイズが見た夢は次回