ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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おかしい。FGO合間合間に少し書く気が、指が止まらない………!!(戦慄)


開戦

 カナカナカナと鳴く蝉の声。

 世界を橙色に染める沈みゆく太陽。チリンと鳴る風鈴の音が心地良い。

 

「■■、スイカを切ったぞ」

「はーい」

 

 奥から現れるのは色が薄れてきた金髪に、空のように青い瞳をした老人。老人だというのに筋肉質なその体は老いを感じさせない。

 

「なあ爺ちゃん」

「ん?」

「クォーターって、アメリカに住まなきゃいけないのか?」

「ああ、また喧嘩したんだってな。それが理由か? 良いか■■、気にするな。むしろアメリカのネズミーワールドにいけないなんてかわいそうな奴だ、とでも言ってやれ」

 

 と、自分譲りの娘から僅かに受け継いだくすんだ金髪を撫でる祖父に、少年は目を細めた。

 

「爺ちゃんは何で日本に永住してまで婆ちゃんと結婚したんだ? 爺ちゃん、戦争時代のアメリカ兵だろ?」

 

 シャクシャクスイカを食いながら尋ねてくる孫に、祖父は隣に座りスイカをガブリと食らいつく。

 

「婆さんはな、ワシの英雄なんじゃ」

「英雄? 爺ちゃんの? 婆ちゃんただの村娘だったんだろ?」

 

 まさかあの優しい祖母が生涯現役を貫きそうな祖父すら追い詰められた出来事をひっくり返したのだろうか? 確かに猪が現れても慌てないような人だったが。

 

「お前にも何時か解る日が来る。つまり教えん。自分で考えろ」

「ジジィ………あー、じゃあ俺の名前の由来。爺ちゃんがつけたんだろ?」

「うむ。それぐらいならば良いだろう」

 

 実を言うとこの二文字の名前、あまり好きではない。女みたいだし

 

 

 

 

 

 祖父の畑仕事を手伝う少年。

 子供の身には鍬を振り下ろすのも土に突き刺すのも逆に抜くのも一苦労。だがおかげで体力と筋力がつく。

 

「終わったぞ爺ちゃん。早く英雄の伝説。そして修行だ」

「うむ。しかしベルよ、ワシこの後デートの約束しちゃったからまた今度……」

「玉を潰すぞ」

「むう……」

「拗ねるな気持ち悪い………はぁ、解ったよ。俺はその辺の森で鍛えている」

「うむ。危なくなったら儂が直ぐに飛んでいこう」

 

 と、グシャグシャ乱暴に()()()を撫でてくる。

 女好きだが何処か憎めないこの祖父は、前の祖父を思い出す。だからだろうか? 二つほど気になる事を聞いた………

 

「なあ爺ちゃん、英雄って何だ? 爺ちゃんは、俺にそれになって欲しいんだよな」

「うむ。だが教えん……」

「……………」

「ふはは。拗ねるなベル。これはそもそも、知ってしまえば、そうなろうとすればそれは最早英雄とは言えんのでな。英雄とは目指した時点である意味ではなれない。が、真に英雄とは何か知らずとも無意識にこなせるならそれは英雄だ」

「?」

「まあ強さは必要だ。だから、鍛えてやるわけだしな」

 

 それは確かに助かっているが定期的に女を連れ込むのはやめて欲しい。何で複数の女を連れて一度も刺されないんだろうかこの老人は。

 

「ワシは神造……もとい人工の英雄には興味ない。お前なら、きっと本当の英雄になれる………」

「俺が、英雄の条件をこなせるって事か?」

「まあ、世界が認める英雄とは違うかもしれんがな。というか、英雄なんて主観で変わる。お前はお前の英雄のあり方を見つけるが良い」

 

 そう言ってニカッと笑う祖父。そして真面目な顔になる。

 

「ベルよ、ワシには何故お前がそこまで強くなろうとしているのか解らんが、それが追い詰められているからだというのはわかる。だが、ワシはお前を救えない。救えるとは言えない………だがな、お前が助けを求めるなら別だ。助け方は分からん、知らないくせに何を勝手にと言おうと構わん。だが、一度でも助けてと口にしたら嫌がられようと嫌われようとストーカー扱いされようと、お前を助けてやる……」

「………もう一つ聞きたいんだけど、俺の名前の由来って、何?」

「うむ。それはな」

 

 この名前の由来は、ずっと気になっていた。それが原作で決まっていたとしても、だってこの名前は───

 

 

 

「────ベル、べ~ル……起きてください」

「……………」

「………爺ちゃん……?」

「誰がお爺さんですか。せめてお婆さんにしてください………」

 

 もぅ、と拗ねたように頬を膨らませるレフィーヤ。

 ガタガタと揺れる床、布に包まれた天井と壁。外の景色は流れていく。

 

「…………ああ、夢か」

 

 此処は馬車の中。今は戦争遊戯(ウォーゲーム)の会場に向かって移動中なのだ。

 向かっている先はオラリオから馬車でほぼ一日かかる距離にある国の跡地。フェルズの皮肉か、()()()()()()()()()()国だ。

 

 

 

 

「さて、まずは此方についてくれてありがとうと言うべきか」

 

 国の半分がベル達の陣地。その端でベルが集まった冒険者達に頭を下げる。

 

「皆、本当にありがとよ!」

「ま、モンスター達には助けられたからな」

「それにレイちゃんやフィアちゃん、ラーニャ様達可愛いしな」

「お義父さん! ウィーネたんを俺にくれー!」

「私は、贖罪だ……」

「手前は面白そうだからだ」

 

 と、リドの言葉に様々な反応を返す冒険者達。それに対し、代表たるベルは固まる。

 

「もう、何してるんですかベル。少しは喜んで笑うぐらいしてあげましょうよ」

「あ、ああ………改めて、ここまで集まってくれるのは意外すぎてな。ありがとう」

 

 と、レフィーヤの言葉にぎこちない笑みを浮かべるベル。

 

「今回のルールは決戦。分かり易い戦争のルール……大将を討ち取った方の勝ちだ」

 

 異端児(ゼノス)側のリーダーは当然ベル。が、向こうはそれを知らないしベルも向こう側の大将を知らない。

 

「で、作戦は何だベル?」

 

 と、ボールスが尋ねてくる。その言葉に他の冒険者達もベルの言葉を待つ。

 

「俺から言えることは二つだ。一つ、誰も殺すな。殺せば、世界はやはりモンスターは危険だと判断する」

「ヤリニクイナ………」

「仕方ないだろう、地上に繁栄しているのは人間側だ」

 

 グロスの言葉にラーニャが呟く。

 

「まあ、俺なんかは昔地下に住んでたけどな」

「お前はただの馬鹿だ。ベルと同じ、な……」

 

 ヘラヘラと笑うディックスにラーニャは視線を合わせずふん、と鼻を鳴らす。

 

「二つ目。誰も死ぬな……」

「………え、それだけ? もっとこう、作戦とか………」

「俺は元傭兵。戦争の経験はあるが、基本的に軍師の命令を聞いてるだけだ。先の読み合いでフィンに勝てる訳ないだろ」

 

 それは単なる事実。下手な作戦で先を読まれるより、各々が好き勝手に動いていた方がフィンも読み難いだろう。

 

「誰も死なせない、誰も死なない。以上、これだけ………後は、やりたいようにやる」

 

 

 

 

 

「って、考えてるだろうね向こうは」

 

 フィンの発言に各反対派【ファミリア】のリーダーや、【ファミリア】の方針を無視して此方に付いたチームのリーダー達が首を傾げる。

 

「ならどうするんですか?」

「残念ながら、此方も似たような作戦を取らざるを得ない。数百人の動き全てを読むなんて不可能だからね……ある程度の数では纏まっているけど、全てではないだろうし……」

 

 そこが厄介なところだ。フィールドが狭ければ、ベルもある程度指示はしただろうが今回は滅んだ後とは言え国の首都がフィールド。好き勝手動き回れる。

 

「ただ、アイズは此処で見張りをしていてくれ」

「何で?」

「君の速度なら、この位置にいればある程度の場所に直ぐ移動できるからね。同様の理由でベートもここだ」

「ああ」

「私は───」

「攻めたい、というなら無しだ。今回のゲームに参加させない」

「……………」

 

 と、フィンの言葉にアイズが剣を抜く。ティオネがすぐさま反応し双剣を構えた。

 

「取り消して」

「アイズ……! てめぇ、今すぐその剣しまいやがれ!」

「フィンが取り消してくれたら……」

 

 睨みつけてくるティオネに物怖じせずアイズは淡々と返す。その目には、ベルの所にいかせなければ斬る、という意志が見てとれる。

 

「落ち着け」

 

 が、そんな彼女達もその言葉で否応なしに固まる。

 発言者は腕を組んでいたオッタル。組まれていた手は何時の間にか解かれ背負った二つの大剣の内一つの柄に手を伸ばしていた。

 

「ここで揉めるなら、俺は開始と同時にリタイアする」

「……………」

 

 此方のリーダーはオッタル。そのオッタルが開始と同時にリタイアすれば問答無用で負けだ。

 オッタルはある異端児(ゼノス)と決着をつけられればそれで良いので、ゲームに拘る理由はない。向こうも乗り気なのだから。

 が、ベルは違う。恐らく異端児(ゼノス)達の永住権を得た後殺されそうになれば確実に逃げる。

 

「それか、ここで殺す……」

「「「────ッ!!」」」

 

 怒りに燃えていたティオネも自分では制御しきれない感情に飲まれていたアイズもオッタルの殺気にゾワリと悪寒を感じ飛び退く。何名かは気絶し、何名かは武器に手をかけていたが実行に移せた者はいない。

 

「…………わか、った………」

 

 アイズが渋々納得した。

 

 

 

 

「なんか、意外ですね。ベートさんが見張りなんて」

 

 所定の位置に移動したベートについてきたリーネが声をかけた。ベートはふん、と鼻を鳴らした。

 

「あの馬鹿をアイズに会わせるわけにはいかねーからな。アイズより先に戦って、手足折ってでも止めるためだ」

「………ベル君の事、怒ってないんですか?」

「…………確かに俺はモンスターが大っ嫌いだ。憎んでる……俺の部族も家族も、恋人だって殺された………けど、あのガキどもはモンスターを守ろうと俺等に吼えた……」

 

 手を出すなと、家族だからと吼えてみせた子供達を思い出し目を細める。

 

「あのミノタウロスが現れた時によ、俺は安心したんだ。やっぱりモンスターは倒すべきだ、俺は間違っちゃいねーってよ……まあ、蓋を開けてみれば喋るわ人間のガキを守ろうとするわベルと彼奴の娘とやらを会わせる時間稼ぎするわで訳わかんねーが……」

 

 解ることは彼等も吼え、そして今はベルも吼え、その咆哮に感化された者達が集った。

 

「吼えるだけの雑魚なんざ否定されて終わりだ。が、『守る者』の咆哮だけは否定しちゃならねー」

 

 それは嘗て仲間想いで勇敢だった獣民(かぞく)を否定することになるから。

 もし彼等が子を庇わなければ、言葉を発さなければ、ベルや子供達が守ると吼えなければ、ベルとベートがそこまで親しくなかったら、そんなもしもが揃っていれば、きっと苛立ち憎むだけだったろう。

 けど、見てしまった。聞いてしまった。

 

「俺は彼奴等を殺したいとは思わねーよ。闇派閥(イヴィルス)共より百倍マシだ」

 

 人を殺し、世を混乱させようとする()()より()()()()()がましだと言い切るベートは、しかし苛立ったように頭を掻く。

 

「だが知ってるだけの彼奴等より、俺はベルの方が大事だ。彼奴が勝とうと足掻いてアイズに殺されるぐれーなら、彼奴に恨まれようと俺は彼奴の夢見る世界を殺す」

「………不器用ですね」

「………はん」

 

 リーネの言葉にベートは再び鼻を鳴らした。

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