ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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今回の主要キャラ

【共存派】
リリルカ・アーデ
レナ・タリー
アイシャ・ベルガ

【反対派】
カヌゥ・ベルウェイ
ゲド・ライッシュ
カヌゥの取り巻き
小人族達


小人族

『あー、あー! えー、みなさん、おはようございます。今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)実況を務めさせていただきます何時もニコニコあなたの後ろに這い寄る後輩ミィシャ・フロットです。解説は同じくギルド所属、叱られたい人続出中、エイナ・チュールです。では一言』

『え、何その紹介文………あ、えっと……が、頑張ります!』

 

 

 

「………静かだねえ」

 

 ミアは何時にまして大人しい客達を見ながら呟く。

 

「皆、気になってるんでしょうね。この戦いを……」

「にゃー。参加したかったにゃー」

 

 二人だけ残った店番のシルとアーニャも注文がたまにしか飛んでこないので暇していた。

 

「せっかくだからゼノス? さんたちがどんなご飯喜ぶか考えましょう」

「勝つ前提かい……」

 

 と、シルの言葉に肩を竦めるミア。アーニャはんー、と顎に手を当てる。

 

「取り敢えずシルの料理は犬も食わないってのは解るにゃ」

 

 

 

「………兄ちゃん、姉ちゃん」

 

 『マリア』の孤児院の子供達は空に映された巨大な鏡を見つめる。いよいよ始まるのだ。彼等の家族が地上に住めるかという大勝負が。

 

「……ライ」

「ん……」

 

 と、不意にマリアが話しかけてきた。そして、ニッコリと微笑む。

 

「全部終わったら、ウィーネちゃん達を本格的に案内しよっか」

「…………うん」

 

 

「………行くぞ」

 

 鐘が鳴る。開始の合図だ。両陣営が即座に飛び出す。

 陣地に残り、大将を装うように部下に守られる者、考えなしに突撃する者。せめて遊撃ぐらいはしようと走り回る者など、宣言通りやりたいようにやる一同。

 リリは機動力と力とスキルが気に入られたのかアイシャやレナ達とともに行動していた。

 

「………止まってください。敵です………数は……」

 

 と、犬耳を地面に当て目閉じる。重い足音が少し、軽い足音が複数。女性か、子供……或いは小人族(パルゥム)。それから、重い物を引きずる音。

 

「10………18程ですかね?」

「おおー、リリちゃんやるねー」

「便利な魔法だよねそれ。私等みたいにアマゾネスに化けたら力が上がったりするのかい?」

 

 レナとアイシャが感心するも直ぐに武器を構えるあたり、流石冒険者と言ったところだろう。

 

「統率は?」

「なってませんね。駆け足の者も居ますし……即席のチームかと」

「なら、低Lv.の冒険者達が集まったのかね………レナ、構えな。あんたもね」

「ほーい」

「はい」

 

 曲刀を構えるレナとハルバードを構えるリリ。

 相手は索敵などしていなかったのか構えていたリリ達を見て驚愕に目を見開き、しかしリリを見て先頭の男達はニヤリと笑う。

 

「よぉ~、久し振りだなぁ、アーデェ?」

「………カヌゥさん……」

「元気そうじゃねーかくそチビ」

「……………………ゲド様」

 

 現れたのは嘗ての【ファミリア】所属のカヌゥ・ベルウェイとその取り巻き、そして元雇い主にして標的だったゲド・ライッシュ。

 その後ろには大きな武器を背負った小人族(パルゥム)達。リリを睨んできている。

 心当たりがないわけではない。リリはフィンと違い、人に恵まれた結果有名になれた。尊敬する者にも負けないほど快く思わない者も居る。

 

「ちょうどてめぇーをぶち殺したくって参加したんだよ俺達は」

「てめーのせいで俺は借金生活だよ糞が!」

「はぁ………ですがゲド様が先に契約違反を起こしたわけですし、カヌゥさん達はそもそもベル様の物を盗もうとするから今までの盗みがバレたのでは? リリの正当性はギルドが認めましたし、リリが先に契約違反した相手にはきちんと謝罪金を払いましたよ?」

 

 と、リリが返すとブチィとカヌゥ達がキレる。

 

「おいてめぇ等、やっちまえ!」

「「「───!!」」」

 

 カヌゥの叫びに小人族(パルゥム)達が一斉に重量鈍器を振り下ろしてくる。

 Lv.が高いように見えないが、リリと同じく力補正か一定重量に対して反映される補正スキルを持っているのだろう。

 が───

 

「ほいっと」

「はん」

「………」

 

 所詮カヌゥ達如きでも揃えてやれる安物。Lv.3のレナやアイシャ、補正スキル持ちのリリの力と上等な武器にあっさり砕かれる。

 

「………は?」

「や、そんな顔をされても……どうせリリと同じスキルだからって理由で集めたサポーターでしょ? リリ、これでも此処数ヶ月冒険者としてダンジョン中層に潜っていたんですけど……」

「まあ傍目から見てもそいつ等が戦闘慣れしてないのは解るねぇ」

「え? う、うん! もちろん解ってたよ!」

 

 と、そんな三人の反応にカヌゥ達が震え、砕けた武器を見て呆然としている小人族(パルゥム)達を蹴りつけた。

 

「この役立たずが! 高い金払わせてなんだこのていたらくは!」

「ご、ごめ………ごめんなさい!」

「これだからてめぇらチビは!」

 

 それは間接的にリリに対する暴言も含めているのだろう。

 

「くだらないですね」

「………あ?」

「あなた達はもちろん、其方のサポーター達も……」

 

 と、リリは小人族(パルゥム)達を睨み──()()()

 

「確かにリリは冒険者を嫌ってました。嫌悪してました、憎んでいました、妬んでいました………けど、自分の不幸を誰かのせいにしてそこから逃げ出すのは無理だなんて諦めたことはありません」

 

 一歩違えば彼等の姿こそ、リリがなっていたかもしれない姿だ。だが、リリはああなると知る前から、そこから逃げようと努力した。それが人を騙し金を盗む行為であろうと、現状から抜け出ることを諦めはしなかった。

 

「自分で諦めたくせに他人に押しつけないでください。少なくとも()は、誰もが諦めるような馬鹿げた目的を実行しようとする大馬鹿についていった女ですよ? そのリリの前でそんな事するなんて、すっごく腹が立ちます」

 

 ほんの一瞬、何時もの幼げな顔から凛々しさすら感じさせる表情になり、忌々しげに睨んでくる小人族(パルゥム)達を前に堂々と言い切るリリ。彼らは圧倒されたように怯む。

 

「チッ、くそチビが、偉そうにほざいてんじゃねー!」

 

 と、ゲドが切りかかる。リリはハルバードの槍の部分を地面に突き刺しポールダンスのように棒の周りを回りながら剣を避けて遠心力を加えた蹴りを放つ。

 顎の骨が砕け吹き飛ぶゲド。唖然と固まるカヌゥ達にリリは地面から引き抜いたハルバードを肩に担ぎながら一歩近づく。

 

「ああ、そういえばリリ、カヌゥさん達のお世話になりましたね。何でしたっけ、耐久を上げるお手伝い? 僭越ながらその時のお礼をしてあげます」

「ひぃ!?」

 

 と、腰を抜かすカヌゥにリリは小人族(パルゥム)達をみる。

 

「それで、あなた達はどうします?」

「………へ?」

「これは経験則ですけど。逃げることを諦めないのと強くなるのを諦めないのは別です……そして、強くなるのを諦めるのは簡単で、再びなろうとするには半端な覚悟じゃ足りない………今、リリを妬んでますよね? なら、それを行動に示さなくて良いんですか?」

「……………」

 

 カヌゥに蹴られていた小人族(パルゥム)の少年が立ち上がり、リリの正面に立つ。

 

「お、おお良いぞサポーター! その生意気なガキをぶっ殺せ! 料金はサービスしてやるか──おごぇ!?」

 

 喉を蹴られ咳き込むカヌゥ。少年はそのままリリを睨みつけた。

 

「……ふざけんな、フィン・ディムナと言い……お前と言い、何なんだ! 頑張れば報われるとか、小人族(パルゥム)でも強くなれるとか、証明するんじゃねーよ! 俺等の()()をさらけ出すな!」

「なら、どうします?」

「ぶっ飛ばしてやる!」

 

 と、突っ込んでくる少年にリリは笑う。

 

「そうですよ。そうやって、殻を破ってください……()()()()()………少なくともあのオヤジもリリも、その条件を越えてみましたよ!」

 

 

 

「ふぅん……残念だねぇ、あんたがアマゾネスに生まれてりゃさぞ強い戦士になったろうに」

「リリちゃんお疲れー」

「そこまで疲れてません。それとアイシャさん、リリは別に弱い理由を生まれた種族のせいにしません。このまま強くなってやります」

 

 その場の小人族(パルゥム)達をたった一人でのしたリリにアイシャが賞賛する。逃げたり不意うちしようとしていたカヌゥとその取り巻き達はアイシャとレナがぶっ飛ばした。

 

「さて、じゃあ進もうか! うへへ、ベート・ローガから良いの貰えるかなぁ」

「………アイシャさん、レナさんって………」

「ああ、重度の変態さ………」

 

 と、先に進もうとした時突然目の前の建物がぶっ壊れる。建物を破壊した砲弾はそのまま三人の真横を通り抜け地面を抉る。

 

「……ぐ、う………やはり、重い……」

「アルガナ!?」

 

 と、アイシャは新しい団長であるアルガナが砲弾の正体と知り驚愕する。時折フィン・ディムナに殴り飛ばされたことを思い出し身をくねらせるレナの同類(重度の変態)とはいえその実力は折り紙付き。それが、こんなに早い段階で………

 

「流石に、同Lv.となると手こずったね……」

「………な」

 

 と、リリが目を見開く。よりによって、こんな早く接触するか。

 

「あれ、君は………リリか………こんな所で、こんな早く会うなんてね。運命を感じてしまうよ」

「………フィン……ディムナ」

「良ければ降伏してくれるかな? あまり同胞は傷つけたくないんだ」

 

 と、笑うフィンにリリは目を細める。

 

「お断りします」

「そうか、残念だよ」

「────!?」

 

 次の瞬間俊敏補正のあるリリすらギリギリ反応出来るというレベルの拳が放たれる。ハルバードで受けるもビリビリと腕が痺れる。

 

「へぇ、思ったより速いね………手加減しすぎたか」

 

 手加減。そう、手加減したのだ。向こうは……。

 その言葉に嘘偽りがないことを察したリリの表情が歪む。

 

「この!」

「【来れ、蛮勇の覇者】!」

 

 レナが飛び出しアイシャは詠唱を開始する。フィンはレナの曲刀を槍の先端であっさり弾き返すと無防備な腹を槍で殴りつける。

 

「──!?【雄々しき戦士よ、たくましき豪傑よ、欲深き非道の英傑よ】」

 

 歌いながら踊るように『平行詠唱』を行うアイシャにフィンの視線が向けられる。が、詠唱を続ける。

 

「【女帝(おう)帝帯(おび)が欲しくば証明せよ。我が身を満たし我が身を貫き、我が身を殺し証明せよ】!」

「アイシャさん!」

 

 眼前に迫る槍。少しでも早く詠唱を完成させようとするも間に合わない、そう思った瞬間フィンの槍がはじかれる。

 

「フィン、お前の血を味わわせろ!」

「ッ!」

 

 アルガナの猛攻。フィンの血を味わおうと剣を振るい、頬に走った傷に向かって舌を伸ばす。が、彼女の【呪詛】(カース)を知るフィンは全力で反撃した。顔を逸らした勢いそのままに回転し放たれた回し蹴りがアルガナの肩を砕き蹴り飛ばす。

 

「【飢える我が()はヒッポリュテー】!!」

 

 が、同時に詠唱が完成した。

 

「【ヘル・カイオス】!!」

「───!!」

 

 放たれた紅色の斬撃波。地面を砕きながら進むそれは、たとえ魔術師でなくとも長文詠唱の魔法に相応しい、自分よりも格上の相手を下す事も出来る威力だった。

 だが、Lv.3の格上はLv.4でしかない。

 

「ふっ!」

「───な」

 

 槍の一薙ぎで霧散する己の魔法を見て驚愕するアイシャ。その腹にフィンが靴裏を突き刺し吹っ飛ばす。残るはリリだけ。

 

「くっ!?」

「やはり速いね。でも、精々Lv.3上位か4下位に届くか程度だ」

 

 と、リリに追いつき槍を振るう。リリも咄嗟にハルバードを振るうがやはり弾かれる。

 

「念のためもう一度聞くけど、降伏してくれるかな? 君に勝ち目はないよ。経験が足りない、ステイタスも足りない。何よりLv.が足りない」

 

 と、降伏を促すフィンにリリはニヤリと笑う。

 

「?」

「Lv.が上がればいいんですね?」

「何を───?」

「どんな冒険者も魔法を覚えていれば、基本それが切り札って事ですよ」

「───【大きくなれ】」

 

 何処からともなく聞こえる詠唱。声が反響し、声の主の姿も見えない。だが、確かに詠唱が紡がれていた。




指が、指が勝手に頭の中のストーリーを文にしろと動いてしまう………!


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