ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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【共存派】
【ヘスティア・ファミリア】
ベル・クラネル
【ロキ・ファミリア】
ティオナ・ヒリュテ
【異端児】
ウィーネ


【反対派】
【ロキ・ファミリア】
ベート・ローガ
ティオネ・ヒリュテ
リーネ・アルシェ
アイズ・ヴァレンシュタイン


凶狼と殺戮兎

 雨が降る中ティオネとティオナが対峙していた。

 

「バカティオナ、覚悟は出来てんでしょうね」

「出来てないよ!」

 

 あっけらかんと言い切るティオナにティオネが頭を押さえる。

 

「何時も何時もヘラヘラ笑って………本当に変わらないわね」

「メレンで言われた~!」

 

 そういえば、あの時も殴り合ったっけ、とほんの少し前のこと懐かしむ。

 

「……まあ、良いわ。構えなさい」

「やだ!」

「…………はぁ?」

 

 今こいつ、何つった? と間の抜けた声を出すティオネ。

 

「今回は黙ってた私が悪いのは解ってるし、だからやだ……」

「…………」

 

 何だその理論は、やはり我が妹ながら何考えているのかさっぱりだ。と、呆れているとティオナはそれに、と笑う。

 

「ティオネ怒ってないじゃん。憤化招乱(スキル)発動してないよ?」

「………………」

 

 怒りの丈で効果を向上させるスキル、憤化招乱(バーサーク)が発動していないのは、つまりティオネが怒りを感じていないことに他ならない。

 

「ティオネもあの子達が普通のモンスターじゃないって解ってるんでしょ?」

「それでも、私は団長に従うまでよ………そうね、ならこうしましょう」

「?」

「お互い、好きな男のために戦う。シンプルでしょ?」

「………………」

 

 姉の言葉にティオナは目を見開きポカンと口を開ける。そして、直ぐに腹を抱えて笑いだす。

 

「あははは! 何それ、た、確かに解りやすいけどさぁ!」

「返答は?」

「OK。そういうことなら……黙ってたのは悪いと思うけど、ベルのために戦うんなら少しも悪いなんて思ってないもん」

 

 と、姉妹が己の得物を構えると同時に遠くで爆音が響いた。それが何の音かは解らないが、二人は同時に飛び出した。

 ポツンと水滴が地面に辺り弾け、雨が強くなっていった。

 

 

 

 

「ルゥオオオオオオオッ!!」

「ガアアアアア!」

 

 ベートとベルは獣の様に吼え互いを喰らわんと己の(得物)を振るう。

 ベートは炎の四肢を、ベルは二振りの短剣を。

 炎に包まれたメタルブーツとナイフが、炎を纏った籠手とショートソードがぶつかり合う度に炎が辺りにまき散らされる。

 高熱に曝されてもある程度の温度には火傷を負わないベルは燃やされながらも迫る。

 

「らぁ!」

「が!?」

 

 炎の蹴りが入り民家の一つを吹き飛ばす。すぐさま迫った蹴りをかわすと地面を炎が舐め赤く溶ける。

 

「ガルア!」

「オオオ!」

 

 兎の牙(ヴォーパル・ファング)狼王の牙(フェンリル・ファング)

 互いを喰らわんと放たれる牙の応酬。

 どちらも俊敏がオラリオでもトップクラスの二人の戦いは並の冒険者には視認すら出来ず炎の蛇が時折一部を弾けさせている様にしか見えないだろう。

 

【駆けろ】(エルトール)!」

 

 ベルが地場を操り地面を滑る。と、ベートが炎を広範囲に振りまくと魔力が食われる。

 

「捕まえたぞ」

「────!!」

 

 ベートに腕を掴まれジュウゥと腕が焼かれる。火傷こそしないが掴まれ続けるのは得策ではない───

 

「ごあ──が!?」

 

 反対の腕で切りかかるも掴まれ、腹を蹴られる。傷を治そうにも魔力は炎に包まれている以上完全に使えない。体力を回復に回そうにも次々攻撃されている今体力を無意味に消費するだけ。

 炎狼の牙に捕らえられた兎はギチギチと漆黒のオーラを纏う。

 【英雄義務】(アルゴノゥト)の代わりに現れたスキル【反英雄】(ビースター)

 人類敵対時に行われるチャージ。魔力が使えない今、物理攻撃に使用する。

 

「アァ!」

「ガ!?」

 

 ドゴォ! と腹に打ち込まれ膝打ち。捕らえていた兎の思わぬ反撃に狼王は加えていた牙を離してしまう。

 

「これで、少しは───!?」

「ルァアア!」

 

 傷を癒そうとした瞬間蹴り飛ばされる。砕けた顎を空中で回復させ、異空間から取り出したナイフを磁力で音速の数倍で飛ばす。既に加速したナイフは魔力を奪ったところで加速は止まらない。だが──

 

「舐めんな!」

 

 既に溶け始めているナイフは高温の炎で一瞬で溶かされる。

 

「諦めろベル。Lv.5(てめぇ)じゃLv.7()にゃ勝てねぇよ……」

 

 或いは階位昇華(レベルブースト)を失う前なら可能性はあったろう。だが、その魔法は現在文字化けを起こして発動しない。正確にはキチンと発動しない、だ。魔力暴発(イグニス・ファトゥス)を利用した自爆技に利用できるが、あれは魔力の暴走。吸収されるだけ。

 

「………いや、階位昇華(レベルブースト)、か……」

 

 バチチと()()が迸る。

 

【轟け】(エルトール)!」

「気でも触れたか? 俺にんなもん効かねーんだよぉ!」

【轟け】(エルトール)!」

【猛け狂え】(エルトォォォル)!!」

 

 数秒のチャージによる黒雷が放たれる。炎に飲まれ、炎が黒く染まっていく。

 

「無駄なんだ───あ?」

 

 ジリッと四肢に熱が走る。炎が意志に反して荒ぶる。制御しにくい………。

 ベートの魔力は高くない。長い間、己の魔法を嫌っていたのだから当然だ。そこで大量の魔力を吸収し、魔法が暴走し始めたのだ。

 

「ケラウノス」

「───ぐぅ!?」

 

 黒雷の槍が炎の牙に飲み込まれ、炎が荒々しく燃え上がる。成長しすぎた牙が己の顎を貫く様にベートの身も焼き始める。

 

【轟──(エルトー)!?」

「だから、舐めんじゃねぇぇぇ!」

「───!?」

 

 黒雷を飲み込み迫る黒炎。

 息をすると炎が鼻から溢れ、その炎は山々を薙ぎ払うと言われる狼王の息(フェンリル・ブレス)。それを彷彿とさせる炎の奔流に飲み込まれるベル。

 

「─────!!」

 

 火傷無効でも無効化しきれず火傷を負うほどの高熱。しかも魔力が食われて真面に回復できない。

 

 

 

 

「………何だ?」

 

 黒炎の柱を見てベートは眉をひそめる。何か可笑しい。炎の流れが、ただ上に上がる筈の炎が渦巻いている。

 

 

 その剣は神の恩恵が刻まれた成長する剣。

 付与魔法(エンチャント)により魔法を何度も取り込んできた剣であり、ベートの《フロスヴィルト》と同じ材質、魔力伝導率の優れたミスリル。

 だからこそ、神の眷属たるその剣がその『()()()』に目覚めるのはある意味当然といえよう。

 

「────!?」

 

 黒炎が渦巻きショートソードに吸い込まれていく。

 

魔法吸収(マジックドレイン)!?」

「喰い尽くしてみろ!」

 

 炎を飲み込んだショートソードに更に黒雷を付与(エンチャント)する。黒雷炎が溢れ出し、ベルがショートソードを振り下ろす。

 

「ファイアボルトォォォォォッ!!」

「─────!!」

 

 すぐさま炎雷を喰らおうとするベートの四肢()。炎雷を飲み込み黒い()が膨れ上がる。己の身すら喰らうほどに。

 

「ぐ、おおおおおおおっ!!」

 

 膨れ上がる炎を、弾く。

 周囲一帯に散らばり街並みを焼き尽くす黒炎。

 

「────!」

「く──!?」

 

 両手を広げたベートの前に降り立つベル。鉄の軋む音を響かせ、拳を引き絞る。

 

「オオオオォォォ!」

「ガアァォォァ!」

 

 ベートの振るった拳がベルの頭上を掠り、ベルの拳がベートの腹にめり込む。

 

「ご、あ──」

「があ!」

「────!」

 

 ドン! と吹き飛ばされるベート。瓦礫の山を吹き飛ばし尚も突き進み数十メドル吹き飛び漸く止まる。

 

「───ハ───ハァ──! はぁ」

 

 意識は失わなかったが、体が動かない。視線だけ動かせば熱せられた地面が雨を蒸発させ湯気を作っていた。

 その白い煙から現れるベル。傷が徐々に治り始めている。

 

「──────!」

 

 と、ベートに近づくベルの前に立ちはだかる影があった。リーネだ。大して力も持ってないくせに、ベートを庇うように両手を広げ立ちはだかっていた。

 

「………リーネ、どけ」

 

 と、そう言ったのはベートだ。

 

「お前の勝ちだベル………リーネ、お前が持ってるマジックポーション渡せ」

「………良いのか?」

「そんな状態のてめぇがやられて、誰が俺達を勝者と認める……」

 

 ベートが言うとリーネは少し迷ったように交互に見てからマジックポーションを渡す。高級品なのか、魔力がすっかり回復した。そのまま人魚の生き血も飲み傷も回復させる。

 

 

 

 

「………止められなかったか」

 

 ベートは降り注ぐ雨に濡れながら曇天を見上げる。風が強くなり、雷も鳴り出した。

 

「止める?」

「彼奴とアイズを、会わせる前に終わらせたかったんだよ………」

「…………」

 

 きっとアイズはベルを殺そうとするだろう。アイズが、ベルに何かを重ね特別な感情を抱いているのには気付いていた。

 そしてベルは異端児(ゼノス)達を助けると決めた。

 ベルは全てを救おうなんて考えない。救うと決めた方しか救おうとしないだろう。そして、救うと決めたら命を懸ける。ひょっとしたらどちらかが死ぬかもしれない。

 

「………俺は、昔よりずっと強くなった」

「はい……Lv.7ですしね」

「けど、守れねーもんもある………」

 

 治療師(ヒーラー)のリーネに癒された腕を顔の上に持って行くベート。頬を濡らすのは雨か、或いは───

 

「強くなりてぇ……! こんなんじゃ、全然たりねー………全部守れるぐらい、強く」

「………なれますよ、ベートさんなら……」

 

 と、リーネが微笑む。

 

「………で、何してんだお前」

「い、いや……ですか?」

「………………」

 

 ベートに膝枕したリーネは不安そうに聞いてくる。ベートは暫く空を見上げ、いや、と呟く。

 

「石に頭乗せるよりかはましだ………」

 

 

 

 

 雨風が強くなり雷も鳴り始めたが、アイズの表情は崩れない。

 その周囲には数人の冒険者達が転がっていた。死んではいないが、それは彼等が人間だった故だろう。

 

「……………あれは」

 

 と、巨大な黒炎の柱を見上げるアイズ。黒い炎……見覚えがある。そちらに向かおうとするアイズ………と、不意に金属音が聞こえてきた。

 

「……………」

 

 戦闘が発生しているということは【共存派】と【反対派】が争っているという事。

 あの炎がそうだという確証はない。そちらに向かうアイズは、そこで見た。

 

「──────」

 

 以前ベルが家出した時、ベルと共に歩いていた少女と瓜二つの竜人(ヴィーヴル)

 

「………ヴィーヴル」

 

 あの日ダイダロス通りで暴れたモンスター。()()()()()()()()()()()()()()

 ()()が居なければ………。

 

「どいて……」

「が!?」

 

 ヴィーヴルと戦っていた冒険者を蹴り飛ばす。

 突然目の前の敵が別の敵に吹き飛ばされ呆然とするヴィーヴル。アイズは、その隙だらけのヴィーヴルに切りかかり───

 

 防がれた。

 

「……………ベル」

「……よお……俺の娘に、何してる」

 

 雷が近くに落ちる。元は街路樹だったであろう大きく育った木に落ち粉々に砕く。それを合図に、雨風が強くなる。本格的に、嵐がやってきた。




次回、猛者vs猛牛
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