ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
ドン! と巨体が山にぶつかり山が崩れる。
その土砂から飛び出した衝撃波は別の巨体を吹き飛ばし山の一部を両断する。
轟音、轟撃、轟爆。
遙か離れたオラリオにまでその生の音を届かせかねない爆音を轟かせ不幸にも戦場になった山は数合の打ち合いで崩れただの土が盛り上がった丘へとなり果てた。
「オオ!」
「ブオオ!」
ゴガァァァンッ!! と大気を揺する音。隣の山が衝撃波で震える様は次は己が破壊されるのではないかと恐れているようにも見える。
「………その武器は、自分のラピスと同じ……」
「ああ、重量増加と雷の魔剣だ……」
アステリオスの疑問にオッタルは答える。
なるほど、それでかと納得するアステリオス。如何に強靱な膂力を持っていようとトンに迫る一撃を防ぐのには違和感があった。同様に相手もそれだけの重量の武器を持っていたのなら、話は分かる。
「貴様とは同じ条件で戦い、叩き潰してこそ………そう思ったからな」
「………嬉しいことを言ってくれる」
再び大戦斧と大剣がぶつかり合う。その衝撃に積み上がっていた土砂が吹き飛び硬い地層が剥き出しにされ、しかしそれもひび割れる。
「ヌゥン!」
「ぐぅ!?」
オッタルがアステリオスの首めがけて大剣を振るい、アステリオスが身を反らしかわせばその衝撃波で後ろの山に新たな崖が生まれる。
アステリオスが弓のように曲げた身から足、腹筋、首の筋肉全て使い打ち出した頭突きはオッタルの大剣に防がれるがオッタルの足元から後ろに向かって大地がひび割れ奥の方など小山と言っても差し支えない巨大な土の塊が盛り上がり、しかしそれも直ぐに二人の戦闘によって砕かれる。
「ブモォォォ!」
「ぐ!?」
アステリオスがかち上げるように斧を振るいオッタルの巨大が宙に浮く。その余波で新たな崖が生まれた。
オッタルは空中回転すると剣の重量を増し雷を纏う。
「ハァ!」
「グオウ!?」
遠心力と重量、オッタルの膂力が追加された一撃をラピスで防ぐが地面が陥没する。
「ぐ、う………がああ!」
ミシミシと悲鳴を上げる腕に背骨に足。膝を曲げ、肘を曲げながら威力を殺したつもりでもその威力は地面を見れば一目瞭然。だが、防いだ。防げばただ重いだけ。力任せに振り払う。
「…………は」
「………ふっ」
距離を取った一人と一匹、どちらとも知らず笑いが漏れる。
「はーはっはっはっ!」
「ふはははは!」
一撃一撃が必殺の威力を持つ爆合が行われる。その衝撃は山々を砕き生まれたばかりの崖を崩し均された地面を暴風で吹き飛ばし遙か太古の地盤が剥き出しになり歴史的価値があるそれらも戦いの余波で粉々に吹き飛ぶ。
この時代入り混じった地層を数万年後の誰かが見て、果たしてこのかき回された地層が天災によるものではなく、個と個の争いと想像できようか。
嗚呼、嗚呼!
血が滾る!
肉が震える!
骨が軋む!
神経が剥き出しになったかのように、自分に匹敵するはずの速度を持つ相手の一挙手一投足が見える。
これだ! これこそ命を懸けた闘争だ!
長らく忘れていた、本物の闘争。
ベル・クラネルの時、遙か格下に傷を付けられた不甲斐ない自身に怒りを覚えたが、あれは自分に重傷こそ与えたものの、殺し合いというには余りに相手が弱い。
だが、違う。今の相手は互角の相手。
女神に見初められ、女神を敬愛し、彼女の一番になるために己を鍛えた。
自分より強い者は数多くいた。強くなっても、互角の者も数多くいた。
誰よりも強くなっても知恵による罠で追い詰められたこともある。だがオッタルはその知謀を誉めこそすれ得ようとはしなかった。
今まで己の身を鍛えていたのだ、今更知恵を得たところで敵う筈など無いのだから。ならばこそ、如何なる策も正面から叩き潰せる力を求めた。
そのせいで、忘れていた。命のやり取りを、ただ一つの個に、お前より強いのだと吼える行為を。
この感覚には覚えがある。
ああ、そうだ。負けたくないのだ!
あの時とは違う。
格下であるはずの相手に負けた時とは違う。力も、速さも、しぶとさも、武器の性能も全て互角。
自分はお前より上だ! そう叫びたくて仕方ない。
その戦闘により地面が砕け吹き飛び、巨大なクレーターが出来上がる。
一人と一匹の戦闘が街から離れるように移動し続けていなければ今頃この
確実に地図が描き直される。地盤沈下、大地震、噴火、地殻変動。
あらゆる地を揺らす大災害の果てに起こる大地の変化が二つの強力な個によって行われる。
と、大地がひび割れ大量のマグマが吹き出した。
二人の戦闘に大地が耐えられなかったのだ。その光景はまるで大地が外敵に対して行う反撃。だが──
「「邪魔だ……」」
抑えつける。
噴火とは大地の奥に存在するマントルが圧力をかけられ出口を求め噴き出す現象。
ひび割れた大地から吹き出そうとしたマグマは上から加えられた圧力で地面深くに押し込められ、流れ出した溶岩は暴風により一瞬で固められる。
マントルの流れが逆流し、関係ない海底火山などから噴き出す。
星の裁きすら力業で黙らせた彼等はしかしそんなことなどどうでもよく、直ぐに目の前の敵を見る。
アステリオスは斧を盾のように使いオッタルの猛攻を防ぐ。オッタルはアステリオスの攻撃を技術を以て捌く。
「ウオオオオオオオッ!!」
「ヌ────ッ!」
アステリオスが放つ
「…………流石」
「貴様も……」
どちらも最早満身創痍と言える状態。だが、その目の闘志はいっさい揺るがない。
「賞賛しようアステリオス。お前は間違いなく
「そちらも、自分が見てきた人間の中で最も強い」
「で、あろうさ。俺は最強、故に
「それは、些か心苦しいな………自分にとっての最大最強の好敵手は、既に決まっている」
「ほう?」
と、目を細めるオッタル。
彼の者が認める好敵手と言ったら、実力なら心当たりは多々あるが、おそらく
「彼は、自分より弱かった。だが戦い、挑み、そして勝った。だからこそ尊い、我が好敵手だ」
「寝言は寝て言え。如何に身体能力で、知謀で、心意気で劣っていようと………勝った方が強い。
「………違いない。嗚呼、なればこそ貴方は彼に匹敵する我が好敵手だ。故に倒そう、今度は勝つために……」
ズン! とアステリオスが掲げた斧がその質量を増す。バチバチと黒雷を纏い、隙をさらす。
だが、オッタルはその隙をつかない。アステリオス同様に己の剣を掲げ魔力を込めて黄金の雷を纏わせる。
その重量が、質量が増し周囲の空間が、世界が軋みを上げる。
「アルデバラン!」
「ヒルディスヴィーニ!」
黒雷と黄金の雷を纏った獲物がぶつかり合い、轟音。
周辺の国どころか大陸そのものを揺るがす大爆発は星の外からでさえ観測できた。
そして───
「魔力が切れたか………」
限界を迎え砕け散る魔剣を捨てるオッタル。
「ギ、ギィ……」
「休め、ラピス」
甲殻が砕けピクピク震える
「オオオオ!」
「ブオオオオ!」
ドゴッ! と互いの拳が互いの頬を殴る。仰け反るも、同時に頭突きをかます。
額の皮膚が破け混じり合う血液。ほぼ同時に身を仰け反らせ頭突き。オッタルが押し負ける。
追撃に拳を伸ばせば半身を下げかわされると肘が頭に打ち付けられる。が、直ぐに身を持ち上げながら拳を腹に打ち込む。
オッタルの足が浮かび上がり、オッタルはその腕をつかみ放り投げる。
「「───────────ッ!!」」
そのまま殴り合い、最初のやり直しのように互いの拳が再び頬に打ち込まれる。仰け反り、そしてアステリオスだけが勢いそのまま倒れる。
「ぐ、が───」
ハッ、ハッと浅い呼吸を繰り返す。指先が僅かに動くだけ。立ち上がれない。
「…………嗚呼、負けだ………また、負けた」
「だが今度は生きている。ならば、また鍛えろ」
「……………」
「俺だってそうした。何度負けようと、立ち上がればいい………最終的に勝てるなら、其奴が勝者だ」
「……そうか、そうだな…………」
「……………」
アステリオスが目を閉じ意識を手放す、それを確認したオッタルはその場で腰を下ろす。
ポーションを飲むが、暫くは無理だ。戦えない。
休んでから、また戦う。
「………降ってきたな」
先程まで二人の戦闘により追い払われていた雲と風が戻ってきた。激しい豪雨が降り注ぐ。
火照った体を冷やすのには丁度良かった。
Lv.7のオッタルがイシュタルの反応見る限り公式チートなんだから、それより上の今作のオッタルと互角のアステリオスが戦えばそりゃ地図描き直す必要も出てくるわな。そして邪魔者扱いされた星………