ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「ねえロキ………」
鏡に映される光景を見ながらフレイヤが呟く。
「あの子何時の間にランクアップしたの?」
「してへんよ。ああいうスキルや」
「ふぅん……」
と、ロキの言葉にフレイヤが笑みを深める。
アイズは圧倒的な力で冒険者達を倒していた。Lv.6というのは確かに強力な存在だが、明らかにそれだけでは説明が付かない強さ。
「ねえロキ、貴方はアビリティの限界値っていったいなんだと思う?」
「なんや藪から棒に……」
「あれって、同じ値でも個人によっては違うじゃない?」
「せやな………なら、その個人が成長できる限界値なんやないの?」
「そう、それを越えるために器を昇華させる………まあ、ベルみたいに限界を超えちゃう子もいるけど、きっと殆ど、それこそベルしか居ないんじゃないかしら………まあ、ベルもその後直ぐにランクアップして器を昇華させてきたわけだけど」
「何が言いたいんや?」
ベルのことを全部調べているらしいフレイヤにロキが不機嫌そうに聞き返すがフレイヤは微笑を浮かべたまま鏡に映るアイズを見る。何時の間にかベルが彼女の前に現れていた。
「じゃあ、器を破らず殻の中で大きくなろうとしている雛鳥は、果たしてどうなるのかしらね?」
「──────」
「あの子のスキル………彼処まで強力なら条件付きよね? 何かしら?」
「………………」
「当てて上げましょうか? ベルの事でしょう?」
言葉に詰まるロキに対してフレイヤはクスクス笑う。
「ねぇ、ロキは『人魚姫』を知ってる?」
「『人魚姫』ェ?」
「そう。まだモンスターが地上に蔓延るよりも遥かに昔の『古代』よりも前の物語」
内容としては、この時代からすればあまりにも馬鹿らしい物語。故に廃れ、最早誰の記憶にも残らない物語。
「人の王子に恋をした人魚が魔女に頼み人の姿を得て王子に会いに行く。でも対価に声を差しだし、思いを伝えることが出来ずに王子は隣国の姫と結婚してしまう」
「なんやバッドエンドかい………」
「どちらかというとデッドエンドね。だって、人魚姫は王子と結ばれなければ泡となって死んでしまうんだもの。もちろん、助かる方法はあったのよ? 王子と会うためだもの、その王子が居なければ契約は破棄できる」
けど人魚姫は愛する王子を殺すことが出来ず、海に飛び込み泡となって消えた。その心の優しさ故か風の精になって飛んでいったという。
「
美神の微笑にロキは鏡を見る。
「………そんな事、起きへんよ…」
「起きて欲しくないだけでしょう?」
「……………………」
あの蛇は………この感覚は、知っている。
他でもない、己が持っていたスキルの気配。
「……ッ!」
体に這う蛇の紋様。だが、自分のスキルだったからこそ
「……………」
「…………?」
ゾワリと気配が広がる。しかしベルの体に異変はない。ベルには───
「────?」
ウィーネはガクリと膝を突く。唐突に、体から力が抜ける。何かに巻き付かれたような違和感、体を見れば蛇の様な紋様が巻き付いていた。
「が───!?」
「ベートさん!? 何、この蛇?」
ベートが突如苦しみだし、その体に蛇の紋様が走る。リーネが慌てて治癒魔法を使うが効果はない。
「っ───」
「リド!? ドウシ、グ──」
「つぅ──」
「何だ、これは……」
「何じゃ、お主等急にどうした?」
「おい、ヴェル吉………動けるか?」
「無理だ、この妙な紋様出てる奴、全員動けねー……」
突然倒れ込んだ敵に困惑するガレス。彼等の肌には黒い蛇が走っていた。
「…………?」
「レフィーヤ?」
今まさに魔法を重ね合わせて発動しようとしていたレフィーヤがその場で膝を突く。
「何だ、何が起きた……」
と、リヴェリアもまた脱力感に膝を突く。この場では、後はフィルヴィスが倒れていた。
三人の共通点は肌に現れた呪印のような黒い蛇。
「これ、は………ベル? でも、無くしたって……」
「ティオナ!? これって……ベルの?」
体に巻き付く蛇の紋様。嘗て経験のあるそれにベルの姿が思い浮かぶが、彼はこのスキルを失っていたはず。
彼等だけではない。ボールスが、気絶したリリ達にもその紋様が現れていた。
羨ましい。
彼に救われる怪物達が。
妬ましい。
彼を理解し共に歩む者達が。
憎らしい。
彼に娘と呼ばれたヴィーヴルが。
彼と仲の良い、彼を理解していたであろう人狼が、彼を理解しようとしていたハイエルフが、彼と共に歩き世界を、自分達を敵に回した少女達が、嫉ましい。
「………何だ、それは……」
感じる圧倒的な気配。ベルは目を見開き問い掛ける。
明らかに一人から奪った力ではない。断じて、一人から奪った程度で得られる力ではない。
「──行くよ」
「─────」
左胸から右脇腹にかけて、その下からの感触が消えた。見れば切り裂かれていた。
「────!!?」
即座に再生し繋げると同時にアイズの突きが迫る。
「
即座に雷速の移動。暴風が街並みを破壊する。
距離は取った。だが、あの速さにはあってないようなもの。即座にチャージを開始するベル。と、アイズが剣を振るう。再び起こる暴風。ベルの目の前に瓦礫を含んだ風の津波が迫り即座に上空に飛ぶ。
「【
──………は?
紡がれた歌に思考が固まるベル。彼もよく知る詠唱。ベル以上に
「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】」
「そうか、
力、耐久、器用、俊敏、魔力を指すアビリティではなく、ステイタス………。
「【アルクス・レイ】」
「───!?」
光速の矢が放たれる。
数多く、それこそ魔力に秀でたエルフの女王やその弟子からもステイタスを奪った『魔力』と、発展アビリティの魔導に魔法効果増幅のスキル。
長文詠唱に匹敵する圧倒的な破壊力を秘めた魔法。
「───づぁ……あぁぁぁぁ!!」
左腕を突き出す。
一瞬で指が蒸発して掌が消える。
「凄いね、蜥蜴みたい」
「ぐっ!?」
迫り来る暴風に塵屑のように吹き飛ばされる。が、落下せずその場で浮き上がる。同時にアイズが迫ってきた。
剣を振り下ろし、下向きの風が地面を陥没させた。
「
黒雷を纏うベル。身体能力を大幅に増加させ、発展アビリティの格上特攻で攻撃力を増し、アイズの一撃をなんとか逸らす。
「ふっ!」
「があ!!」
逸らされた勢いをそのまま蹴りを放つアイズ。背骨が折れ吹き飛ばされる。
吹き飛んだベルに追いつき、ベルを蹴り落とし、地面に接触する前にベルの体が浮き上がる。アイズがすぐさま追う。
再び雷速で飛び距離を取るベル。チャージを行い、アイズと反対方向に駆ける。
とにかく距離を取れ、距離を取って力を溜めろ。あれを使った自分だからこそ解る。規格外の力は、本人の肉体が耐えられない。風よりは自分の方が疾い。とにかく時間を稼げ──
勝てる可能性はそれしかない。
魔法なら詠唱で先に来ることが解る。先程は驚愕し遅れを取ったが………
そして、アイズは───
「
この
「─────」
破壊の
因みにこのスキル、確かに干渉関係なくアイズがこの世界に再顕現させたスキルだけど、元はベルのなのよね
アイズ「今のはエアリアルじゃない、剣圧だ………」