翌日。
朝から与野小隊は村の外に展開し、警備を行っていた。あちこちに、しかし互いに援護が出来るようにしゃがめば身を隠せる程の深さの塹壕や蛸壺を掘り、その中に身を潜めている。既に陽は直上へと高く昇り、熱帯雨林の木々に遮られて直射日光は当たらないものの、気温は体温を軽く超える程になっていた。そこに追い討ちを掛けるような湿度の高さである。
「こんなの、人間が住んでられる環境じゃないな。」
幾度も豪雨に曝されて痩せこけた赤い土が覗く塹壕で立ち上がり、頭だけを外に出している与野が呟いた。軍服は勿論、鉄帽と頭に挟まれた戦闘帽も汗によって水に浸したかのように濡れている。
「中尉殿、罠の設置が完了しました。」
近くの蛸壺から森田がやって来て報告した。与野小隊陣地から数百メートル前方に何箇所か設置を指示していたのだ。ワイヤーに手榴弾を繋げ、木々の間に膝下程の高さで張った罠であり、足が引っ掛かろうものなら爆発する仕組みだ。生い茂る地表の植物に遮られて視界は悪い。こちらにも不利だが、相手も同じなら利用しない手は無い。
「うむ。あまりアテにはならんが、無いよりはマシだ。」
彼はそう言うと後ろを振り返った。視線の先にある蛸壺からは九九式軽機関銃が突き出ており、3名の兵が敵の襲来に備えている。彼らはそれぞれ射手、装填手、予備兼掩護の小銃手であり、与野小隊の主力だ。元々は無かったが、小銃だけでは心細いと鎌田に訴えて一挺分けてもらったのだ。
「まぁ機関銃を出して貰えたのは有難いし大きいな。」
「無駄撃ちは厳禁ですがね。」
与野が視線を森田に戻す。確かに鎌田からそのように厳命され、了承の上で分けてもらったのだが。
「あれ?狙撃眼鏡あったっけ?」
「いえ。」
「じゃあ始まったら無駄撃ちもクソも無い。ゆっくり狙うのは狙撃手の仕事だろ。」
「しかし補給が途絶し掛かってますし、贅沢は…おや?」
話の途中で森田は村の方向を見た。釣られて与野も首を巡らせるとガサガサと草が揺れ、ひょっこりと美代が顔を出した。
「やっほー。」
間が抜けた声を掛けてきた彼女に、森田が笑っておどける。
「これはこれはお嬢様、如何されたので?」
「えへへー、お兄ちゃんに会いに来たの!」
上機嫌極まりない美代を前に、与野は深い溜息を吐いた。
「危ないから村の中に居ろと言っただろう。雪女にも一緒に居てしっかり見張ってろと言っておいたのに…。」
彼の発言に美代が反論する。
「だって、これは作戦だから行けってお姉ちゃんが…。」
彼女が言いかけたその時、背後から雪女が現れて口を塞いだ。
「もごっ。」
「正章様、申し訳ございません。私が目を離した隙に…。でも折角ここまで来ましたので、少しばかり居ても良いですよね?その後でちゃんと連れ帰りますから。」
やたら早口で言った雪女が目を輝かせて返答を待っている。与野は呆れ返った。
「駄目に決まってるだろ。早く戻れ。」
一瞬、美代と雪女が互いに目を合わせ、与野に向き直る。
「これの使い方を教えて!」
塹壕内に掘って作られた棚に転がる手榴弾を指差し、美代が言った。
「…教えたらすぐ帰れよ。」
与野は諦めたように手榴弾を手に取った。
「いいか、これは九九式手榴弾(甲)という手投げ爆弾だ。この安全索を引き抜いて頭の信管を叩くと4秒後に爆発する。」
「信管なんて叩いたっけ…?」
前日の失態を思い返す美代。雪女が指摘する。
「落とした時に信管が当たって作動したのよ。」
美代はハッとした。
「あっ…なるほど。じゃあ安全索を抜かなければ爆発しない?」
「まぁ不良品でもなければ大丈夫だ。反対に、安全索を抜いただけでも駄目だからな。使う時は必ず安全索と信管をやらなきゃ。」
「うんうん。」
与野の補足を理解した美代。そうしている間に雪女は後ろの軽機関銃を見ていた。
「機関銃、分けてもらったんですか?」
「あぁ。だが弾があんまり無いから無駄撃ちは厳禁だとさ。狙撃眼鏡も無しに無理言うよな。」
雪女は首を傾げた。
「あれ、九九式軽機関銃ですよね?九九式小銃と同じ弾薬じゃないんですか?」
「同じ九九式実包でも小銃弾じゃ強過ぎるから、機関銃には減装弾を使うんだ。あとは九二式実包を使えんことも無いが、旧規格の弾だと使えん。」
「ややこしいですね…。」
彼女は顔を顰めた。全くだと頷きながら与野が言う。
「兵隊さんもそこまでは言ってなかったんだな。」
「兵隊さん…?」
キョトンとする雪女。まるで何の話なのか分からないという風である。
「雪女に武器の使い方を教えた人だよ。」
「あぁ、確かにそこまでは言ってませんでした。」
会話を横で聴いていた森田が目を丸くした。
「えっ、君は武器を扱えるのか?」
「小銃や拳銃、手榴弾ぐらいまでなら使えます。機関銃とかになると知識はあまりありませんが…。」
「これは驚いた…。」
感心する森田。とその時、突然手榴弾の炸裂音が響き渡った。何かが罠に掛かったのだ。
「構えろ構えろ構えろ!」
小声で与野が指示すると、森田が隣の元いた蛸壺に転がり込んで小銃を構えた。背後では軽機関銃が薬室に弾丸を送り込み、他の塹壕などに身を隠している兵は各々小銃を手に様子を窺う。
「正章様、私たちは?」
とりあえず与野の塹壕に飛び込んだ雪女が言った。美代も一緒である。
「伝令を頼む。指揮所に敵襲を伝えるんだ。すぐに行け!」
「お傍を離れろと?」
「これは任務であり俺の頼みでもある。無意味では無い。さぁ早く行け!」
真剣に言われた上に肩を押された雪女が美代の手を引いて塹壕から出る。そして名残惜しく振り返りながらも駆け出した。
「これで良し、と。」
与野は塹壕から地面の高さで小銃を構え、前を見据えた。まだ何も見えず、まるで先程の爆発が居眠りの内に見た夢であったかのように静まり返っている。しかしそれが紛れもない現実であったのは明白だ。
「動物か、誤作動か…?」
密林を駆けるのは人だけでなく、他の多種多様な動物たちも同じだ。寧ろ人間の方が少ないかも知れず、それらの内の1つが掛かったとしても不思議では無い。或いは手榴弾自体の不具合による爆発の可能性も捨てきれない。
「誰かに確認させるか…?」
そう思った矢先、前方で何かが動く音がした。最早躊躇している余裕は無い。与野は手榴弾を掴み、安全索を引き抜いて信管を鉄帽で叩くと、思い切り音のした方へ投げた。数秒の後に爆発音と人間の悲鳴が響くと、それを合図に雨霰と銃弾が飛んで来た。
「うわっぶ!」
塹壕に身を隠しつつ、指示を飛ばす。
「撃ち方始め!」
九九式軽機関銃が銃弾をバラ撒き、青色の曳光弾が扇形に広がって密林を薙ぎ払った。銃口の消炎器のお陰で昼間なら容易には射点を悟られない。撃たれた敵は位置の判然としない、しかし確かに存在する日本兵を潰そうと躍起になって撃ってくる。生い茂る緑の向こうに発砲炎がチラホラと光った。
「そこか!」
与野は光った場所に向かって小銃を撃った。あちこちに伏し隠れた味方が呼応し、各々射撃する。しかし九九式小銃には消炎器が無く、発砲炎も三八式歩兵銃のように控え目では無い。つまり位置が割れてしまうのだ。
「雪女が無事に援軍を連れて来てくれれば…!」
敵の戦力は判然としないが、味方は多いに越したことはない。村へと向かわせた二人が頼みだ。
ポンポンと音がしたかと思うと、近くに砲弾が落ちた。反射的に身を伏せて爆風と破片を避ける。敵が迫撃砲を使ったのだ。与野が居る塹壕を狙ったらしく、前後の地面に穴が空けられていた。
「夾叉されたか!」
砲弾が前後に落ちたとなれば次弾はその間をとれば良い。こうなると遠からず塹壕は吹き飛ばされてしまう。長居は危険と考えた彼は手榴弾をポケットに詰め込み、銃撃が控え目になった一瞬を狙って塹壕を飛び出した。自分を狙った銃弾が間近の木の葉を擦り、チュンと音を立てる。目に入った蛸壺へ急いで飛び込むと、先に居た兵に体当たりをかましてしまった。
「すまん!」
咄嗟に謝りながら彼を見て、与野は言葉を失った。迫撃砲の破片にやられたのだろうか蛸壺にぐったりと座り込む兵の首は半分ほど裂かれており、流れ出たばかりの鮮血が軍服を紅く染め上げている。
「くそっ!」
与野が頭を上げて射撃しようとしたその時、背後から小銃の一斉射撃が行われた。耳朶を叩く銃声。振り向くと、そこには味方の増援が来てくれていた。次々と塹壕や蛸壺に滑り込み、各々射撃を開始する。
「正章様、御無事で!」
小銃を手にした雪女が駆け寄って蛸壺に滑り込んだ。靡く白髪が目立ったからか彼女を追って雨のように銃弾が飛来し、大地を抉って土煙がもうもうと上がる。
「よくやった!美代はどうした?」
与野の問いに雪女があからさまに嫌そうな顔をした。
「村内に残置して来ました。…そんなに心配ですか?」
「まぁ巻き込まれて死なれても困るでな。とりあえず村内ならば俺たちが食い止めさえすれば安全だ。ありがとう。」
「…いえ。」
雪女は小さく返して頭を上げ、小銃を構えて引き金を引いた。銃口の軸線上に居た敵兵が崩れ落ちる。お返しと言わんばかりに機関銃が叩き込まれ、すんでのところで身を引っ込めた彼女の頭上を掃射が突き抜けた。
「誰か機関銃を黙らせてくれんか。」
「擲弾筒分隊を付けてもらったので、彼らに頼めば上手くいくかもしれません。」
「それだ!」
銃声が幾重にも重なる喧騒の中、与野が声を張り上げる。
「擲弾筒、機関銃を潰せ!」
しかし待てども返事も無ければ発射音もしない。聞こえてなかったのだろうかと頭を上げる与野。そこで彼は信じ難い状況を目にした。村内に居る筈の美代が匍匐前進で敵の近くまで迫っていたのだ。見間違いだと思って目を凝らすが、やはり間違い無い。
「待て待て待て!何やってんだ!」
「如何されました?」
「お前、美代は村内に置いてきたんだよな?」
「はい。確かに。」
「ありゃ何だ?」
言われた雪女も頭を上げ、目を疑った。
「えっ?あの馬鹿…!」
雪女が歯軋りする。しかし助けようにも近付くなど不可能だ。美代は小柄なお陰で上手く見つからずに居るに過ぎない。
「何をするつもりなんだ…?」
もう一度美代を見ると、丁度彼女は何か行動を起こそうとしていた。手にしている物から何かを引き抜き、地面で叩く。与野は彼女の意図を理解した。
「手榴弾を投げるつもりだ!援護してやれ!」
小銃を構えて機関銃へと撃ち掛ける。雪女もそれに倣った。敵がこちらの位置を把握して掃射を掛けてくる。これならまず美代には気付かない。そうしている内に彼女が手榴弾を投げた。ボンッと炸裂し、機関銃が沈黙する。
「着剣、前進!」
すかさず与野が号令し、小銃に銃剣を取り付けて蛸壺から這い出た。他の塹壕や蛸壺からも次々に復唱が上がると兵が這い出て撃ちまくりながら前進し、敵が頭を上げられないように軽機関銃が背後から制圧射撃を行った。あっという間に彼我の距離は詰められ、壮絶で前時代的な白兵戦へと移行した。至近距離で発砲し、銃剣を振るい、取っ組み合う。体格に劣る日本兵だが、鍛えた技はそれを補って余りある。
「見つけた!」
同じように前進した雪女が敵兵を見つけ、飛び掛かった。腹部に深々と銃剣が突き立てられる。苦し紛れに彼が何かを叫ぶと、周りから敵が数人やって来た。小銃を引く抜くと素早く、そして正確に2人を撃ち倒し、排莢が間に合わぬと見るや拳銃を抜いて更に2人を撃った。
雪女が健闘している間に与野は美代へと駆け寄った。
「村に居たんじゃないのか!」
彼が問うと、美代は萎縮した。
「少しでも助けになりたくて…。」
「実際に助かった。君が今回の戦闘の功労者と言っても過言じゃない。だが一歩間違えれば死んでいたかも知れないんだぞ。」
美代は押し黙った。ともかく、こんな所で無防備な状態でいるのは危険過ぎる。与野は彼女を連れて蛸壺に入った。
「今回は上手く行ったから良かったようなものの、見つかったらどうするつもりだったんだ?」
「…分からない。ただお兄ちゃんを助けたくて、力になりたくて、そう思ったら我慢できなかったの。」
俯いて語る美代。言い訳とはいえ、嘘ではないようだ。純粋な気持ちに理解を示しつつも、しかし彼は叱った。
「いいか、君は民間人だ。兵隊じゃない。だから戦う必要は無いんだ。」
「でも、お兄ちゃんが死んじゃうかもって思ったら…いてもたっても居られなくて。」
とうとう彼女は目に涙を浮かべた。与野がそっと頭を撫でる。
「気持ちは分かった。嬉しいよ。」
「ほんと…?」
潤んだ幼い双眸が与野を見上げる。
「でも、君は自分がする事に責任を持てるかい?仮にさっき敵に見つかっていたら、俺は君を助けなくちゃならない。それはとんでもなく危険だ。君が良かれとやった事で、俺は余計に危険な状態になったかも知れない。…分かるね?」
美代はコクリと頷いた。与野が再び口を開く。
「それに、戦争という状況下とは言えど君は取り返しのつかない事をした。人の命を奪ったんだぞ。」
自分が偉そうに言える立場の人間でない事は分かっている。しかし、まだ幼い彼女に、この戦争の先を生きるだろう彼女に、自らの行いをしっかりと理解して欲しかった。しかしそんな思いをよそに、当の美代は口を尖らせた。
「そんな事、言われなくても分かるよ。でも向こうはお兄ちゃんを殺すつもりでいた。だから先に殺したの。」
「お前…!」
与野は目を丸くした。
「兵隊でも無いお前はそんな事を経験する必要は無いんだ!それに自分の身を危険に晒してまで俺の身を案じる必要も…。」
「無くない!あるもん!」
美代の叫びに彼の言葉は遮られた。
「お姉ちゃんを宥めてくれたし、それ以前にお兄ちゃんが助けてくれなかったら今頃どうなっていたか分からない!私は役立たずなんかじゃない
!今度は私が助けるの!!」
与野は愕然とした。まさか彼女が雪女のような考えを起こしているとは夢にも思っていなかった。
「中尉殿ー!」
どこかで森田の声がした。現実に引き戻される。
「こっちだ!どうした?」
与野が頭を上げると、気付いた森田が駆け寄って来た。
「敵を撃退しました。現在武器等の鹵獲作業中です。」
「分かった、すぐ行く。…お前はここに居ろ。」
与野は彼女が頷くのを見届けてから蛸壺を出た。
森田に付いていくと、そこには敵味方の遺体が散乱していた。息のある者は居ないらしく、どれも全く動かない。その間を兵がうろつき、武器弾薬を拾い集めている。
辺りを眺める与野の目に少々変わった敵兵の遺体が留まった。通信兵だろうか、うつ伏せで大きな箱を背負っている。近付いて行くと雪女がやって来た。
「正章様!9人殺りましたよ!」
開口一番、恐ろしい事を言う。犬であれば尻尾を振り回すであろうはしゃぎようだ。
「お、おぅ…。」
反応に困る与野。戦果は戦果だが、人として誇れるものでは無い。
「…褒めてくださらないのですか?」
雪女が下から覗き込む。思わず彼は目を逸らした。すると逸らした先に雪女が移動する。
「美代には撫でたり抱き締めたりするのに、私は無視ですか?」
「そんな訳じゃ…。」
言い淀む彼の軍服の袖を雪女がそっと掴んだ。しなやかな動作に似合わない、ギチッという音を生地が立てる。
「ならどうして何もしてくださらないのですか?私は何か足りないのですか?正章様が望むなら、仰ってさえ頂ければそのようになります!それとも…。」
一度区切り、消え入りそうな声で言った。
「それとも、私が…嫌いなのですか…?」
雪女は俯いた。可憐な小さな花が萎れ、枯れ果ててしまうかのように。与野はそんな彼女をじっと見た。何故か彼女は関心外に置かれる事を異常なまでに恐れ、一時的なものであっても忠誠心を見せて見放されない保証を求め、例え自らの身を危険に晒してでも助けになろうとする。恩返しと言うには度が過ぎる、違和感の拭い切れない献身的な態度。そこまでする彼女の心理が分からないが、嫌いという訳では無い。
「…嫌いじゃないよ。」
彼はゆっくりと、言葉を選んで言った。
「それに俺は何も求めない 。今の雪女のまま変わらなくていい。ただ、殺しを褒めていいか迷っただけだ。」
「ですが、向こうは殺すつもりで来ているのですから…。」
彼女の言わんとしている事は分かっていた。殺さなければ、殺される。
「分かってる。仕方無いよな…良くやった。」
雪女の頭を撫でてやった。彼女は何とも表現し難いうっとりとした面持ちにを浮かべ、袖を放し、今度は撫でる手を優しく握った。
「嬉しい、です。」
握った手を仄かに赤らめた頬に寄せ、ピタリと付けた。彼女の熱がじわりと伝わる。ここまで幸せそうにする雪女を、与野は初めて見た。
「すまん、その遺体を検分したくて。」
彼がおずおずと言うと、雪女は慌てて手を放した。
「申し訳ございません!嬉しくてつい…!」
「あ、いや、構わんが。」
言いながら数歩、遺体の横まで移動した。改めて見ると、手にアンテナのような物が握られている。その取っ手からは導線が延びており、頭から外れかかっているヘッドホンへと繋がっていた。
「何に使うんだろうな。」
ヘッドホンを遺体から外して自分の頭に着け、アンテナを奪った。何の音もしない。
「壊れてるのか…おっ。」
アンテナをしげしげと観察していると、小さなスイッチが付いている事に気付いた。何の気なしに押してみる。すると途端に甲高い大音量の電子音が耳をつんざいた。
「うるっせ!」
反射的にヘッドホンを毟り取って投げ捨てる。雪女が飛び上がって驚いた。
「わっ!どうされました?」
「ものすんごくうるさい音が鳴ってな。つい投げてしまった。」
再びヘッドホンを拾い上げ、耳に近付ける。しかし今度は何の音もしない。アンテナのスイッチを弄っても、叩いてみても音が出ない。どうやら本当に壊れたようだった。
「駄目だ…何だったんだろう。何をする為の物なのかも分からん。」
腕を組み、首を捻る。地雷探査機かも知れないとも考えたが、普通に持てば地面からアンテナが離れ過ぎてしまう。まさか前屈みになって田植えのような姿勢で歩き回るとは思えない。それか性能が向上し、地表付近に近付けなくても探知できるようになった物という可能性もある。或いは別の何かを探す為だろうか。与野には見当もつかなかった。
この戦闘で戦死6、戦傷5の損害を被った与野小隊は警備の任を解かれ、村内へと引き下がった。駆け付けた増援は計40名であったが、こちらも戦死15、戦傷2の損害を受けた。しかし米軍遺棄死体も20を数え、結果としては痛み分け、良く言えば陣地を守り切って武器弾薬を鹵獲した日本側の辛勝と言えた。
最後までお読み頂きありがとうございます。
何かと心配事が多くてストレスに潰されそうになってますが、近所に子猫が来るようになって少しだけ癒されています。あと鼻炎が辛いです。
さて何とかワジャブラ村を防衛できましたね。しかし敵の総戦力は圧倒的。本気になれば一瞬で潰されてしまいます。これから帝国陸軍は、そして与野たちはどうするのでしょうか…?
因みに私め、ミリタリーファンではありますがミリオタでは無いので、あちこちに変な部分があるかとは思いますが何卒御容赦を…。
御意見御感想、お待ちしております。