フリッグの舞踏会から数日、才人は一人芝生の上でデルフリンガーの素振りをしていた。今の時間授業に使い魔がいらないので才人はトレーニングをしていた。
「せいがでるねぇ相棒!体鍛えてもてたいのかい?」
才人が鍛えたい理由は二つある。一つ目は自分自身のウルトラマンの力を制御する事、いつまでもデルフリンガーに頼る訳にもいかない。二つ目は純粋な戦闘力の強化。ベムラーには力負けし、ドロボンには手も足も出なかった。真正面からカラータイマーを奪われてしまった。これから先何とかなる可能性は限りなく低い。強くなる必要がある。
「今何回目だ?デルフ?」
「この次で30000回!」
「よし、きゅうけ~い…」
才人はばたりと倒れ込む。流石に疲れたようだ。そこにシエスタがやって来る。
「才人さんお疲れ様!はい!賄いのシチューとパンです!」
シエスタは才人を労いに来てくれたようだ。しかし少し恥ずかしそうに頬を赤らめている。才人は何かを察する。
「お酒の事は気にしてないから」
「ほんとに…ごめんなさい…」
才人とシエスタは談笑しながら食事をしていた。ルイズに貰う餌より断然いいものを食べられるので最近はシエスタによく恵んでもらっていた。
「悪いね、シエスタ」
「いいえ!唯の余りものですから気にしないでください!」
ここで一つ嘘がある。才人の分だけはシエスタが他の賄い食とは別に丹精込めて作った手作りである。そこまでする理由は秘めたる想いからか。
「才人さん腕疲れてるでしょう?はい、あ~ん!」
「いいって、うんいいよ大丈夫だよ!?」
赤面する才人をかわいいと思いながらシエスタは思い出したかのようにああっ!と手を鳴らす。
「そうだっ!才人さんくらい強ければあの事件も!」
「事件?」
「最近町でメイジの通り魔事件が多いそうなんです。手口もバラバラで複数犯いるんじゃないかって言われてるんですけど、才人さんなら簡単にやっつけちゃいますね!」
「そんなっ、俺はそんなに強くないよ?」
「いいえ!メイジを倒せる才人さんなら簡単ですよ!最近では相手を蝋人形に変えてしまうっていうメイジもいるらしいですよ?」
ここで才人は蝋人形に引っかかる。そういえば…そんな奴が昔地球に来たような…?
そのころ王宮ではアンリエッタの直属部隊銃士隊が発足され任命式が執り行われていた。これは魔法衛士隊がベムラーによる攻撃で甚大な被害を受けた為、再編を行った際にアンリエッタが自身の身辺警護の為に作ったのだ。
「アニエス・シュヴァリエ・ド・ミランあなたを近衛隊長に任命します」
杖を肩に置かれたシュヴァリエを拝命した女性、アニエスは通る声で言う。
「はっ!このアニエス、姫様に全てを捧げましょう!」
しかし内心アンリエッタは不安と罪悪感で一杯だった。
(初任務がこれとは…彼女たちに苦行を強いる事になりますね…)
現在、王宮内では混乱が続いている。ウルトラマンの存在、怪獣災害による不安感が大きい要因だ。更にこの混乱に乗じて王女の命を狙うものまで現れている。アンリエッタには身を守る物が必要だった。それが銃士隊である。しかし今起きている問題は簡単には解決できないものだった。
次の虚無の曜日の朝、ルイズの部屋のドアに一通の手紙が挟んであった。見つけたのは才人だが字が読めないので起きたルイズに読んでもらう。
「ふ~ん…」
読み終えたルイズは呆れた表情で手紙を才人に投げ捨てる。
「これ、あんたあてよ?しかもギーシュから」
ギーシュ?誰だっけ?と才人は見当がつかない。ルイズが可哀そうに…と呟き才人に教える。
「あんたと決闘した相手よ、不意打ちしたら首飛びそうになった奴」
「ああ!あいつか!」
あの時は痛みで朦朧としていたとはいえ、すまない事をしたなと才人はようやく思い出した。
「決闘じゃないけど…呼び出しみたいね…一時間前に」
「…マジで…?」
「あたしじゃないと字読めないのに…知らなかったみたいね…」
「…一応、行ってみる…」
才人の足取りは重かった。呼び出されたのは学園の裏手の木の下、人目に付きにくい所である。仕返しをされないか少し心配になりながらドアを開けた時、
「やあ」
目の前にギーシュがいた。
「「わぁぁぁ!」」
「来ないからこっちから来たよ!」
ギーシュの話によると、才人の力を借りたいという事だった。何と頭を下げ床にこすりつけんばかりだ。
「君に不意打ちをしたことはとても恥じている、すまなかった。それと…それが原因で完全にモンモランシーに愛想をつかされてしまって…」
「で、何かしらの手柄を立ててよりを戻したいと?」
「都合よすぎない?」
ルイズと才人に見下ろされながら頭を下げたギーシュは懇願する。
「お願いだ!もう他に頼れる人はいないんだよ!それに、これは才人!君の実力を見込んでのことだ!」
才人は分かったよ…と渋々了承する。
「頼むよ!相手は今町を騒がせている通り魔だ、君なら大丈夫さ!何せこの僕を倒したんだからね!」
不安が膨らむサイトであった。
数時間後、才人とギーシュはトリステインの町を散策していた。町はベムラーの被害から立ち直りかけていたところでの通り魔騒ぎで活気はあまりなかった。
「この雰囲気を僕らで払拭してやろうじゃないか!なぁ!才人!」
「はいはい…元気なこって…」
この時才人は今回の手口がかつて地球でも起きた事件と酷似している事に不安を覚えていた。この世界に似たような魔法があるのかそれとも…と考えていると女性の叫び声が聞こえた!
「きゃぁぁぁぁ~!」
「っ!こっちだ!」
ギーシュが言うが、それを聞かずに才人は駆けだしていた。急いで走っているが間に合わないのではないかと焦燥感に駆られる。だからだろう、周りを見れていなかった。近くの横道から出てきた女性に気付かなかったのだ。
ドン!
「うわぁ!」
「うっ!」
女性は兵隊なのか全身に鎧を着こんでいたのだろう、ぶつかった才人の方が激しく吹き飛ばされる。それに対して女性は多少よろめいた程度だ。
「副長!大丈夫ですか!」
同じような服装をした女性が気にかけている。遅れてきたギーシュは何が起きたのかわからずほけっている。才人がぶつかった青い髪をした凛々しい女性が怒鳴りつけてくる。
「何をしている!素人が首を突っ込むんじゃない!」
恐らく才人の背中のデルフリンガーを見て大体の事を察したのだろう。才人はすいません…としか言えなかった。
「急げ!」
女性たちは悲鳴の方角へ走って行ってしまった。嵐のような出来事に男二人はボーッとしていたがギーシュが我に返る。
「美しい女性だったなぁ…じゃなくて!才人立て!このままでは手柄を逃すぞ!」
そう言って走って行ってしまった。しかしここで才人は地球での事件の詳細を思い出したのだ。
「美しい女性…そうか思い出した!…ちょっと待て…本当にそうだとしたら…やべぇ!」
才人はデルフリンガーを握りガンダールヴの力を発動させ全力で走り出す。
「どうした?相棒。必死じゃねぇか」
「必死にもなるぜ!相手はもしかすると…っ!」
なぜ今の今まで思い出せなかったんだろうと悔しさが溢れる。才人はその事件の事を図書館にある昔の新聞でしか見たことが無かったが、その恐ろしさは鮮明に覚えている。この世界には色々な侵入者がいる事はウルトラの父が言っていたことだ。しかしここまで凶悪な存在がいるとは思っていなかった。
「おりゃあああ!」
家一軒を気合のジャンプで飛び越える。才人はなりふり構っていられなかった。
ギーシュは全力で女性の後を追っていたが途中でスタミナ負けしてしまいワルキューレの背中に負ぶってもらいながら追いかけていた。ようやく広い所に出ると三人の女性がにらみ合っていた。二人は先ほど才人とぶつかった女性、もう一人は白い服を着た不気味な雰囲気の女性だった。
「…キヒヒっ!」
不気味に笑った女の髪飾りの花から突如怪光線が放たれる。青髪の女性は華麗に飛び上がり逃れるがもう一人の女性には直撃してしまう。
「なっなにこれ…いやっ、そんな!…う…そ…」
何と女性は体が完全に蝋となりその場に崩れてしまった。あまりの光景に青髪の女性はその場に立ち尽くしてしまう。このまま隙だらけの姿をさらせば次に狙われるのは道理。ギーシュは助けようとワルキューレを走らせるがすでに放たれた光線が青髪の女性に直撃する。
寸前、才人が飛び込みデルフリンガーの鞘を身代わりにと投げつけ、盾にする。蝋になった鞘が砕け散る前に青髪の女性を抱えて飛びのきギーシュ同様影に隠れる。
「何て恐ろしい奴なんだ…想像以上だよ…」
「やっぱり…」
「才人、あいつを知っているのかい?」
「あぁ…思い出したくなかったぜ…あんな奴…」
その時第三者の声がする。先ほど助けた女性だ。酷くショックを受けていたようだが早くも立ち直ったようだ。
「奴は何者だ?あんな力どんなに高名なメイジでもありえない!」
才人は言うか迷ったが言わざるを得なかった。
「奴はアトラー星人、かつて俺の故郷で大勢の人間を殺したやつさっ!」
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