暗く閉ざされた空間。そこに彼らはいた。
「おい!アトラー星人がやられたぞ!」
「この世界にウルトラマンはいないんじゃないのか!」
こんな抗議の声が聞こえるが、後ろで座っている影が制する。
「まぁ待て、あのウルトラマン、そこまで強くないじゃないか。特別点としてはねらい目なんじゃないか?それに…このゲームに参加してるくせに自信が無いのか?」
その言葉に彼らは激昂する。
「バカな!宇宙最強の我々を愚弄するか!次は私が行く!」
影はほくそ笑む。
「一週間で8000人特別点は2000」
「いいだろう!我々ゲーム参加者は強者ばかりと聞く!それくらい余裕だ!」
「いい意気込みだ…では、ゲームスタート!」
才人はその日もトレーニングに精を出していた。アトラー星人に手も足も出なかった事、何者かの手助けが無ければ負けていた事が才人を精神的に追い詰めていた。
「おい相棒、もう素振り止めたらどうだい?俺っち酔って来たぜ」
「まだ、もっと…もっと…」
もう50000回を過ぎてるのに…とデルフリンガーが考えていると「ダ~リ~ン!」とキュルケが走ってくる。
「今日も頑張ってるわねぇ~!休憩にお茶でもどうかしら~!」
と言いながら、才人にタックルをかまして押し倒す。カエルがつぶれた時のような声が聞こえるがキュルケは気にしない。
「ダ~リ~ン、何を焦っているのか知らないけど、無理は禁物よ?このままじゃ体壊すわよ」
「キュルケ…」
才人はキュルケの突然の神妙な顔に冷静さを取り戻す。そして疲労がどっと押し寄せてくる。
「休むか…」
それを聞いたキュルケの目が豹のように鋭くなる。一瞬で関節を決めて押さえつける。疲れている為か才人は抜ける事が出来ない。
「さ~あ!ダ~リ~ン!私の部屋で!お茶しましょ!できればベットの上なんてどう!さあ!さあ!さあ!」
「ちょっ痛い!痛い!痛い!てかベッド!?待って待って待って!」
才人は少し身の危険を感じるがそこで助けが入る。
「こら~!キュルケ~!」
ルイズが鬼の形相で走ってくる。キュルケは軽く舌打ちをすると才人を開放する。
「人の使い魔に何してんのよ!アンタもアンタよ!デレデレしちゃってぇ~!」
才人がキュルケのメロンににやけていたのは否定できない。が、キュルケが言い返す。
「な~に?無い物ねだり?それにしても…そんなにムキになるなんてよっぽどダーリンの事が好きなのねぇ~?」
その言葉でルイズは真っ赤になる。
「なっ!?誰が使い魔に!そりゃぁ…なんだかんだ一緒にいると楽しいし?けっこう頼りになるけど…」
ごにょごにょと話すルイズにキュルケは少し呆れる。
(ルイズの奴…ガチじゃん…素直になればいいのに…)
そんなこんなで騒いでいるとマチルダが走ってくる。何か焦っているのか全力疾走だ。
「はぁ、はぁ、ああいた!ミス・ヴァリエール!ミス・ツェルプストー!急いで学院長室に!」
学院長で二人が話している間マチルダと才人は部屋の前で待っていた。
「なぁマチルダ?二人に何があったんだ?」
「二人というよりは、二人の実家だね」
「実家?」
どうやら二人の実家のある土地で連続通り魔事件が多発しているらしい。
「通り魔って…」
「そっ、こないだのと同じようなことがね、起きてるんだと。手口は刃物らしいけど…最初はツェルプルトー領、次はヴァリエール領でね」
「手口が刃物…」
考え込む才人にマチルダが口を寄せる。思わずドキリとするがマチルダはいたって真面目だ。
「また、あんなやつなのかい?」
「いや、手口だけじゃ予想がつかない。けど…もしかするとアトラー星人と同じ一派かもしれない。あいつゲームだって言ってたから、他にいてもおかしくない」
「ゲーム…まさか、あの殺戮がゲーム?」
だとしたらいかれてやがる。とマチルダは呟く。
「ああ、それから」
「えっ?」
「例の奴だけど…」
才人はメイジであるマチルダにアトラー星人戦の『錬金』について調べてもらったのだ。
「あんなのが出来るのは最低限トライアングルクラスのメイジだ。だがあの場に私はいなかった…魔法衛士隊にもあんな事が出来る奴がいるなんて聞いたことも無い。お手上げだよ」
「そっか…ありがとう、マチルダ」
「仲良さそうねぇお二人とも」
才人とマチルダが振り向くとルイズがイライラした様子で鞭を持っている。しかしマチルダは動じず切り換えす。
「お話は終わりましたか?ミス・ヴァリエール?」
「ちっ…行くわよ!バカ犬!」
「わっこら引っ張んな!」
マチルダが才人が連れていかれるのを見届けるとキュルケが出てくる。
「お疲れ様です。ミス・ツェルプルトー」
「ありがとっ…私たちに暫く帰ってこないで欲しいですって。危ないから」
「そうですか」
キュルケも行ってしまった後マチルダは考え込む。
(今回の通り魔、時間と場所を計算すると確実に領地を移動している。進行方向は確実にトリステイン…)
「また厄介な事にならなければいいけど」
数日後、全校生徒が集められ緊急集会が行われていた。
「諸君、先の怪物騒ぎでトリステインの町は甚大な被害が出ている。そこで我々魔法学院からボランティアとして復興の援助に行くことが決定した。今日から三日間授業を臨時休校とし、町での復興作業に従事する!」
マチルダからも説明が入る。
「宿泊施設などは…」
その様子を才人はルイズの横で聞いていた。周りの生徒は嫌な顔をしているが才人は賛成だった。
(俺がもっと強かったら、守れた街だもんなぁ…)
ルイズも少し嫌な顔をしているが仕方ない、という様子だった。
町に着くとその凄惨な状況が目に入る。瓦礫の撤去が始まるとその下から行方不明者の死体が見つかったり蝋になった人間が見つかったりと地獄の様相だった。才人はサボるキュルケや取り巻きの男どもをしり目にひたすら作業に集中した。そこで最近見知った顔に出会う。
「お前は…確か、ヒラガ、サイト?」
「っ!ミシェル副隊長!アニエス隊長!」
復興作業に従事している銃士隊の二人だった。アニエスは口元を緩め照れ臭そうにする。
「隊でない者に隊長と呼ばれるのはなんだか照れ臭いな…」
それを聞いてミシェルが釘を刺す。
「そう恥ずかしがらないでください、これからもいろいろな人に呼ばれるのですから」
「分かっているさ」
アニエスは顔を引き締めると改めて敬礼する。
「「ご協力感謝いたします」」
二人はまた歩いて別の場所にいる学院生に挨拶に行く。才人は立派な大人達だなと思った。命を懸けてアトラー星人を追い、避難誘導をして民間人を守る。出来る限りを尽くして戦っている。才人の目にはただただかっこよく映った。
アニエスとミシェルは二人で挨拶回りをした後、銃士隊全員に指示を出して回っていた。
「初任務からのこれとは、なかなかやりごたえがありますね隊長」
「ああ、姫殿下がお戻りになるまである程度はめどを立てたいな」
今アンリエッタはゲルマニアに復興の援助を依頼するために訪問中だった。その間の国政はマザリーニ卿が取り仕切っている。
「もうこんな事件が起きない事を願うよ」
アニエスが言った時…女性の叫び声が聞こえる。
「「そうはいかないか(ですね)」」
二人は声の方へ走り出した。
二人が到着すると首を飛ばされた銃士隊隊員が倒れている。その中心には大きな複眼を持ち両手が刃物になっている怪人がいた。
「貴様!何者だ!」
「キェーー!」
怪人は答えず襲い掛かってくる。アニエス、ミシェルはとっさに剣で受け止めるが段々と押し負ける。
「私たち二人がかりで押し負けるなんて、何て力だ!」
少しずつ刃物が二人に迫る、その時…
「おりゃぁぁーー!」
叫びを聞いた才人が飛び込んで怪人を突き飛ばす。顔面に蹴りを入れその場で一回転し着地する。
「大丈夫ですか!」
「君は!」
三人は剣を怪人に構える。ミシェルは才人に怪人の正体を問いかける。
「奴は分かるか!ヒラガ!」
「ああ!知ってる!…こんな奴まで…」
才人はその正体に震えあがる。
「奴は奇怪宇宙人ツルク星人…ウルトラマンを倒した事のある奴だ…」
アニエスは驚きを隠せない。この小さな奴が?…と。しかしミシェルは納得する。
「奴も大きくなれるのか?」
「あ…!」
才人が返事をする前にツルク星人が切りかかってくる。その早い斬撃に三人は防戦一方になる。才人の首を狙ったと思えば、次はミシェルの心臓を、アニエスの脳天を狙ってくる。
「でりゃぁぁ!」
アニエスの一撃が右の剣を弾くが、すぐさま左の剣に狙われる。それをミシェルが弾くがツルク星人は高く飛び上がり距離を取る。
「くそっ!強い!」
「隊長!このままでは!」
その時ミシェルの首を狙った一撃を才人が受け止める。しかし蹴りをくらい吹き飛ばされてしまう。
「うわぁ!」
今度は才人に凶刃が向けられる。才人が「殺られる」そう思った時…
「はぁ!」
『ブレイド』を構えたマチルダが割って入る。意外な人物の登場に驚く三人をよそにマチルダはブレイドを突き出す。しかしそれを右の剣で受け止めたツルク星人は左の剣で突きを出す。
「ふっ!」
殺られる。三人がそう思った時、マチルダは刀身に手を添え流れるように受け流し、腹部に蹴りを入れる。その拍子にツルク星人はバランスを崩す。
「っ!今だ!相棒!」
デルフリンガーの叫びに寸分たがわず答えた才人はツルク星人の懐に潜り込み一気にデルフリンガーを胸に突き刺す。
「キェェァァー!?」
ツルク星人はそのダメージに苦しみ、慌てて逃げ出す。ミシェルとアニエスは後を追おうとするが、疲れた体は言うことを聞かない。
「ありがとうマチルダ」
「才人は無茶するねぇ…無事でよかった」
マチルダはアニエス、ミシェルにはばからず才人を抱きしめる。その柔らかい二つに才人はにやけるが、そんなことよりと気を持ち直す。
「マチルダ、さっきの技は…?」
「あぁ、あれかい?私の家に伝わる古武術みたいなもんさ」
アニエスが立ち上がり駆け寄ってくる。
「ありがとうございます。ミス・ロングビル、あそこまでお強いとは…」
「いやいや!護身程度さ!」
元フーケだとばらすわけにもいかず、マチルダは適当にはぐらかす。すると今度はミシェルが来る。
「あの、マチルダというのは…?」
「そう言えばあの怪人は!?」
マチルダは話題を変える。才人はその問いに困る。
「どうだろう?また来るかもしれない…あれが通り魔なら、今回もゲームかも…」
黙り込む四人。その時才人はマチルダに向き合う。
「マチルダ!お願いがある!」
「え?」
「俺を鍛えてくれ!」
次回に続きます。アニエス、ミシェルのキャラが崩壊していると思いますが私の力不足です。申し訳ないです。