ゼロの使い魔~真心~   作:へドラ2

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続きです。最近仕事の都合で書くペースが遅くなっています。気長にお待ちいただけると幸いです。



ゼロの使い魔~真心~第16話

 才人は再びキュルケを抱えると迫る巨大化したツルク星人の凶刃から必死に逃れていた。蝋化しひしゃげていた家屋の中に滑り込みツルク星人の目から一時期的に逃れる。

「足音は…よし、遠ざかってる、大丈夫か?…キュルケ?」

 才人が振り返ると、キュルケはいつもの元気が無く静かに震えていた。しかし次の瞬間才人に全力で抱き着いてくる。

「きゅっ?!キュルケ?!」

 才人は狼狽するが、すぐに気が付いた。ひたすらにキュルケが呟いている。

「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い…」

 よほどの恐怖だったのだろう。一時的に逃れた今でさえ恐怖に支配されているようだ。

「キュルケ!キュルケ!」

 才人はひたすらキュルケに呼び掛ける。キュルケは少しずつ正気に戻り目の前の才人に気が付く。

「さい…と?才人!、才人!才人!…うわぁぁぁ…」

 泣き崩れ才人の胸に顔をうずめるキュルケ。才人は泣き崩れるキュルケに、いつもの妖艶な雰囲気とは違う年相応の少女の姿を見た。

(こんなに震えて…ほっとけねぇな…)

 才人は小さな隙間からツルク星人の姿が遠くにあるのを確認すると、キュルケを抱えて家から飛び出し走っていく。本来学院生が復興作業をしていた場所にまで戻るがそこにはすでに誰もいない。避難した後だろう。しかし…

「「ヒラガ!(サイト!)」」

 二人の女性が走ってくる。ミシェルとルイズだ。ミシェルはツルク星人巨大化後はぐれていたが無事だったようだ。

「無事だったか二人と…」

「バカ!バカ犬!」

 突然ルイズの罵倒が飛んでくる。才人は訳も分からず狼狽する。

「突然いなくなって心配させないでよ!急にあんな化け物が出てくるし!」

 ルイズは心配していたのだ。突然いなくなってしまった才人に。その目じりには涙が溜まっている。

「ルイズ…ごめん…」

「もう何回目よ…私に心配ばかりさせて…!私の気持ち考えた事ある…?」

 才人はルイズが震えている事に気が付く。

「あんたを無理やり呼び出したのは私…なのにあんたは恨みごとも言わず毎日私の使い魔やって、笑顔が絶えなくて…一緒にいると、楽しくて…でも、無茶ばっかりして」

 ルイズには罪悪感があったのだろう。日々言葉にしなかった感情が今爆発しているのだ。ルイズはその場に崩れそうになるが、横にいたミシェルが肩を支える。

「ミス・ツェルプストーとミス・ヴァリエールは私に任せろ、ヒラガ、セニカを探してくれないか?」

「えっ?」

「まだ合流していないんだ、頼む…」

「…わかった」

 それを聞いてルイズは叫ぶ。

「ちょっとサイト!?」

 大丈夫、と才人はルイズに向き直る。

「必ず、戻るから、俺を信じろ!」

 才人はそう言うと全力で町の方へ走っていく。才人は走りながらマチルダの話を思い出していた。

(二つの領地での通り魔事件、ツルク星人が二人いたからなのか…それとも、まだ他に?)

 考えた所で誰にも見られない建物の影に来る。セニカを探したいのは山々だが、根本の元凶を絶たねばならない。

「行くぞ!デルフ!」

「おうよ!相棒!」

 才人はデルフリンガーを引き抜き頭上に掲げる。

「コスモーーーース!」

 蝋化した町に巨大な光の柱が立ち上る。

 

 

 

「見つけたぞっ!兄者のカタキィ!」

 ツルク星人は逃げるセニカを見つけ狙いを定めていた。刃を地面に突き刺しながら執拗に追ってくる。

「はぁはぁ…こんなの…聞いてないよ…」

 セニカは今回の作戦に選ばれた事を少し後悔していた。銃士隊員としての責任感はあるが、自分の身の方が大事だ。

「死ねぇ!」

 ツルク星人が大きく振りかぶる。ここまでか、と思いセニカは目をつぶる。響く轟音。しかし生きてる。何故だろうとセニカは目を開ける。

 

 

「デヤァ!」

 

 

 そこにはコスモスが構えを取って立ちふさがっていた。右手を前に出し左手を頭上に掲げる独特の構えだ。先ほどの轟音は、コスモスがツルク星人に体当たりして遠くまで吹き飛ばした音だったようだ。

(ツルク星人…マチルダに習った拳法なら、こいつを倒せるはずだ!)

「よくも兄者を!兄者は私と一心同体、二人で一人!この恨み!はらさでおくべきかぁ!」

 どうやらツルク星人は二人だけらしい…そうコスモスが考えていると素早い剣撃が繰り出される。側転、バク転、を繰り返し何とか有効範囲から逃れる。

(何て速さだ…危ない!)

 コスモスの首を狙う一撃を慌てて上体をそらしてかわす。そのまま足を全力で振り上げツルク星人の肘を打ち付ける。

「ギャォォ!?」

 ツルク星人は不意の一撃に対応できず、狼狽する。その隙を付いてコスモスはツルク星人を押し倒し首筋、肩口、眉間に連続でチョップを叩き込む。ツルク星人はたまらずもがき暴れる。

「デァァ!?」

 コスモスはバランスを崩し落とされてしまった。しかし即座に前転、ツルク星人に向き直る。ツルク星人は息を荒くし雄たけびを上げ、刃を水平に構え突撃体勢になる。

「グギャォォ!」

 走り出したツルク星人は凄まじい速度で刺突を繰り出す。コスモスは紙一重で避けるが、二撃目が一撃目を超える速度で繰り出されカラータイマーギリギリを掠めていく。

「デァァ!」

 コスモスはたたらを踏んで膝をつく。が、改めて構え直す。

(普通に避けようとしても駄目だ!マチルダとの特訓を思い出せ!)

 ツルク星人は再びコスモスに向かって突撃してくる。二連撃の刺突攻撃。コスモスはギリギリまで自身に引き付けその時を狙う。ツルク星人の刃が指の先端にまで近ずいた時…

「セャァッ!(今だ!)」

 コスモスはツルク星人の左の刃を手のひらで受けると、突き刺さる前に手首をひねり刃の側面に触れて受け流し、体を前に出す。迫るニ撃目を構えた左手で上から叩き落とし、がら空きになったツルク星人の腹部目掛け、コスモスは両手を合わせた掌底を叩き込む。

 

 

 グシャア!

 

 

「グギャァァ!?」

 ツルク星人の肉を叩き潰す音が響く。ツルク星人はダメージよりも自身の得意技、必勝戦法が破られた事に戸惑いと怒りが入り混じった怒号を上げる。ツルク星人は何かの間違いだ、偶然だ、と思い再度攻撃をしようと身構える。

「グシャァー!」

 身を低くかがめ、タックルのように走り出してコスモスの心臓を狙う。しかしコスモスは両手を胸の前でクロスさせながら左、右の順に払いのけ全力で蹴り上げる。ツルク星人の顎を正確に打ち抜いた蹴りはその巨体をはるか後方に吹き飛ばす。

「グゴガァァ!」

 

 

 

 その光景を見ていたトリステイン国民が歓声を上げる。

「いいぞ!でっかいの!」

「トカゲ野郎をぶっ飛ばせ!」

 マチルダは学院生を避難させながらその光景を見ていた。心の中で歓喜のガッツポーズをする。

(やったじゃないか!流石だよ才人!)

 そこからはコスモスの大攻勢が始まった。放たれ続ける斬撃を全て受け流し次々と打撃を叩き込む。顎、脇腹、脳天に連続で攻撃を叩き込む。ツルク星人の懐に入り込むと首と下腹部を掴み、地面に投げつける。

「兄者…兄者の…敵を…」

 ツルク星人はなおも立ち上がろうとしてくる。コスモスはツルク星人にテレパシーで語りかける。

(この星から去るんだツルク星人、これ以上悪行を重ねてはいけない)

 ツルク星人は激昂する。

「貴様…この俺を侮辱するかぁ!」

 ツルク星人は全力で刃を振り回す。そこにはもはや二段攻撃をしていた戦士のツルク星人はいない。半狂乱になった哀れな姿が目に余る。その時コスモスのカラータイマーが警告音を鳴らし始める。

(デルフ、両手から同時に光線を撃つぞ!)

(よーし!俺っちがサポートしてやっから全力でやれ!)

 コスモスは迫る刃を受け流し懐に入り込む。両手をツルク星人の顔面に叩きつける。

「デュアアァァ!」

 両手から放たれた二つのルナストライクはツルク星人の上半身にゼロ距離で放たれ、木端微塵に吹き飛ばした。

 その時、トリステインの国民全員が大歓声を上げた。

 

 

 暗い空間で影が立ち上がり、座っていたイスを蹴り壊す。

「畜生!何だあいつ!急に強くなりやがった!…これは計算外だ、やべぇぞ…」

 影はあれほどまでに見せつけていた冷静さを失い取り乱す。しかし見ている映像に奇妙なノイズが走る。

「これは…?ほうほう、はっ!こんなところにこんな奴が!こいつは使えるぞ」

 影は不敵にほほ笑み、暗い空間から出ていった。

 

 

 

 蝋化した町から避難してきたルイズ、ミシェルは銃士隊が作った臨時の避難所にキュルケを連れてきていた。

「よし!ヒラガとセニカを…」

「大丈夫だよ」

 急に話しかけられ驚いて二人が振り返るとセニカをおぶった才人が歩いてくる。

「サイト!無事だったのね!」

「ヒラガ!それにセニカ!」

 ミシェルがセニカを預かるとルイズは才人に抱き着く。よほど嬉しかったのか嬉し涙を流している。

「心配したじゃないの!」

「信じろって言っただろ?」

 才人はルイズを落ち着かせるとミシェルの方へ向き直る。そこに到着を見つけたアニエス、マチルダが駆けてきた。

「ヒラガ!よくやったぞ!セニカを助けてくれたか!」

 頭を撫でてくるアニエスに才人は赤面するが、マチルダが自身の胸に才人を抱き寄せた事で耳まで真っ赤になる。

「才人!才人!よくやったよ、頑張ったよ!ありがとう!」

 それを見てまた大騒ぎするルイズをしり目にミシェルはその場を後にする。まだ被害状況の確認、被害者、行方不明者の捜索等する事は数えきれないほどある。書類仕事が苦手なアニエスに変わり私がしなくては。と考えた所で低い声に呼び止められる。

「よう」

 聞いたことの無い声に振り向き剣を構える。そこには土気色のローブを着た男がいた。

「誰だ!」

 男はローブをめくるとその顔を明らかにする。その顔を見てミシェルは後ずさりして驚いている。

「何故こんなところに貴様が!」

「ほう…ツルク星人、アトラー星人は知らずとも、俺の存在は流石に知っているか」

 ミシェルは男の名を叫ぶ。

「知っているさ!知らない奴の方が少ないよ!」

 

 

「サーベル暴君、マグマ星人!」

 

 

 




次回に続きます。ミシェルの設定で一番入れたかった事を次回から加えます。
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