ミシェルとマグマ星人は路地裏に移動していた。フードをしているとはいえ、この人間離れした容姿のマグマ星人と一緒にいるところを他の誰かに見られるわけには行かないからだ。路地裏に入るなりミシェルは剣を抜きマグマ星人の首元に突きを繰り出す。
「おっと!」
しかし、マグマ星人は危なげもなく横に十センチほどずれ躱してしまう。ミシェルは隠すも無く舌打ちする。
「おいおい、随分なご挨拶じゃないか?」
ミシェルは少しへらへらした態度のマグマ星人にイラつきを隠さない。もう一度突きを繰り出そうとしたところでマグマ星人が手で制す。
「止めとけ、生命体としての戦闘力が根本的に違うんだからなぁ?…ところで、いつまで人間の恰好してるんだ?脳波でわかるぜ?」
どうやらマグマ星人はミシェルの正体に気が付いてるようだ。全て分かった上での接触らしい。
「性悪が…」
ミシェルは両手を重ね頭の上から下に降ろす。それだけでミシェルの見た目が完全に変わる。面影が一つもない。(服装は変わらないが)
「やっぱりな…俺の宇宙船のモニターに入ったノイズを解析したら特徴的な脳波パターンだったのさ…その複眼、その横並びの牙、間違いねぇ」
「変身怪人、ピット星人!」
ピット星人は怪人呼ばわりよりも、容姿を解説されたことに更にイラつきを募らせる。
「…で、何でお前の様な奴がこの星にいるんだ?」
愚問だな、とマグマ星人は嘲笑する。
「っふ!…おいおい、俺たちは同じ穴のムジナだろ?侵略以外で来る奴がいんのか?」
ここでついにピット星人は限界が来る。
「あんな奴らと一緒にするな!」
ピット星人の怒鳴りに思わずマグマ星人はたじろぎする。
「分かった、分かった!…じゃあどうだ?ゲームに参加しないか?」
ゲームという単語にピット星人は警戒心を更に高める。
「…ゲーム?」
ああ、とマグマ星人は相槌を打つと説明を始める。
「今この星でゲームを開いてるのさ!制限時間内に決められた数の人間をぶっ殺すんだ。報奨金がごまんと出る、ところが残り一人でね。なぁ~に…『○○』インだろ?楽勝さ…」
『○○』の単語を聞いた時、ピット星人は完全に理性を失う。右手に剣を、左手に杖から出した『ブレイド』を構えて飛び掛かる。
「その名を口にするなぁ!」
「おっと!」
二つの刃が交差するが、すでにマグマ星人は後ろに跳んでいた。本来壁のある場所が揺らぎ、虚空に消えていく。
「ハハハハハ!お前が何故この星にいるのかは知らんが、気が変わったら何時でも来い!ハハハハハ!」
ピット星人は暫く警戒を解かないが、完全にマグマ星人の気配が消えるとミシェルの姿に戻り、急いでその場を後にした。
マグマ星人は自分の宇宙船に戻るとドカっと椅子に座る。そして、一人物思いにふける。
(あいつ…『○○』に異常に反応したな…調べさせるか)
「コンピュータ!この星の巨大な生命エネルギーの中で『○○』を探索しろ!」
その間マグマ星人はアトラー星人、ツルク星人兄弟に殺害させた人間のリストを整理する。このゲームには人数のノルマの他にある程度の標的が存在する。主に宮廷関係者や軍務に携わる者たちばかりだ。これはゲームの賞金を餌にして実力者を集め、大量の被害者を作る中に政府要人を紛れ込ませ、徐々に内側から食い破る。マグマ星人の侵略作戦の一つなのだ。
(そうとも知らずに…バカな連中だな。こいつら…)
マグマ星人は一人暗闇でほくそ笑んだ。すると急に通信が入る。
「隊長!失礼します!」
通信してきたのは、このマグマ星人を隊長と呼ぶマグマ星人だ。
「少尉か。作戦の首尾は上々だ、まぁ、アクシデントはあったがな!」
少尉と呼ばれたマグマ星人は疑問を持つ。
「アクシデント?」
ああ、とマグマ星人隊長は答える。
「ウルトラマンがいた」
それを聞いた少尉とその後ろにいるであろうマグマ星人の同胞からどよめきが上がる。
「なっ!?大丈夫なのですか!」
「うろたえるな…あのウルトラマン少しはやるようだがそこまででは無い。お前たちは安心して高みの見物をしてろ」
この少尉や他のマグマ星人は、ハルケギニアより一惑星分離れた所にいる。ゲームの参加者にこの作戦を悟らせない為にだ。
「分かりました、ご武運を!」
少尉が通信を切った後、隊長のマグマ星人は少し冷や汗をかく。
(大丈夫、大丈夫さ…まだ『アイツ』と『最終兵器』がある…なぁに…心配する必要は、無い!)
マグマ星人はこの時、少し焦っていた。部下の手前ああは言うが、現状は好ましくはないのだ。暗い船内に独り言が響く。
「大丈夫…大丈夫…大丈夫…大丈夫…」
ツルク星人の襲撃事件で魔法学院の復興支援はやむなく中止となった。全員が複数の馬車に乗って学院に帰還する。犠牲者が出ている以上、致し方の無い事だ。才人はルイズやキュルケ、タバサ達の乗る馬車の手綱を握らされていた。が、マチルダが呼びに来る。
「才人!副長さんがお呼びだよ!」
才人はミシェルさんが?と疑問に思うがすぐに忘れる。マチルダのふくれっ面が目に入ったからだ。
「…マチルダ?」
「何!ほら、手綱は変わるから早く行ってきな!」
膨らんだほっぺが可愛らしい。
「ふん!もて男は辛いね!別れ際に女から呼び出しなんてさ!」
才人は何か誤解してるな?と思い、一応と思い言っておく。
「俺とミシェルさんはそんな関係じゃないよ?お別れの一言くらいじゃないかな?」
マチルダはジト目になる。
「…告白かもね…しかも副長さん今暗い路地裏にいるし…」
才人はおちゃらけて返す。
「まさか!」
才人はマチルダに手綱を渡すとミシェルがいるという路地裏に行く。確かにそこにはミシェルがいた。しかし、俯いている。
(告白って雰囲気じゃなさそう…だな)
ミシェルは顔を上げると同時に剣を抜き、突如として切りかかってきた。才人はとっさにデルフリンガーを盾にして防ぐ。
「みっ!ミシェルさん!?何を!」
ミシェルは黙ったまま連続で確実に急所を狙い、突きや斬撃を繰り出してくる。才人は狭い路地で上手くデルフリンガーを振り回せない中、何とか防いでいた。
「はっ!」
ミシェルが気合の一突きを放ったのを避けた時、突如としてミシェルの左の裾から出てきた杖が『ブレイド』を生み出し、才人の首をはねようとする。才人は驚きを隠せない。
(なぁ!?『ブレイド』?!ミシェルさんがメイジ!?)
ツルク星人のような二連撃が次々に才人の首を狙ってくる。才人は完全に気おされ劣勢になってしまった。
(そういえば…マチルダも事情があってメイジって事を秘密にしてたもんな…不思議じゃないのっうわあぶねっ!)
才人は首を引っ込め『ブレイド』と剣の同時攻撃をかわす。このままではまずい、そう思い路地から出ようと全力で後ろに飛びのくが、凄まじい電撃が才人を襲う。
「グワァァ!?」
バリアだろうか?突然のダメージに才人は戸惑う。しかし、すぐに理解する。この星の技術じゃこんなものを、こんな限定的な場所に使う事が出来ない。しかし、ルイズに聞いた話では二つの魔法を同時に使う事は出来ないらしい。しかし、ミシェルは今のところ常に『ブレイド』を展開している。
(魔法でも…ない…!ミシェルの正体はいったい…?)
才人はバリアを背に構える。やるしかない、と覚悟をする。ミシェルは正確な『ブレイド』を放ってくるが、才人はデルフリンガーを離し右手で表面を撫でるように受け流す。手の平が焼けるように痛い。しかし、かまっていられない。
「だぁぁ!」
ミシェルの剣が振りかぶられる前に懐に入り込み腕を押さえつけ押し倒す。しかし、どうしたことか押し倒した途端にミシェルはおとなしくなる。
「…ふう、やはり無理か…」
「ミシェルさん、教えてくれ!何で急にこんな事を!あなたはいったい…」
ミシェルは分かったと頷き、衝撃の言葉を口にする。
「全部教えるよ…ウルトラマン」
「なぁ!?」
この短い時間で才人は何度も驚愕するのであった。
ミシェルと並んで向き合った才人は、ミシェルの話を真剣に聞いていた。
「こんな事をしてすまなかった。ヒラガ、まずは私の正体についてだ、お前の察したとおり、私はこの星の人間じゃ無い。ピット星の生命体なんだ」
「ピット星人!?」
ピット星。才人は自身が集めていたウルトラ兄弟の写真データの中で、ウルトラセブンが三日月状の角を持つ怪獣『エレキング』と戦っている物を持っていた事を思い出す。その時、地球に侵略に来たのがピット星人だ。
「この星に侵略に来た!…のなら、正体をばらさない…よな?」
「事情を話すよ、私はこことは別次元の宇宙出身なんだ」
才人はそれを聞いて「自分も同じ世界から来た」と、ある程度の事情を説明する。ミシェルはこの事に心底驚いていた。ウルトラマンが同じ世界から来ていた事は知らなかったようだ。
「そうだったのか…話を戻すが、私は元々軍人でも何でもない唯の一般人だった。しかし姉が軍人でね。この世界が見つかった時、調査任務を受けたんだ。それで私の育てていたエレキングを護衛、土木作業用の為に連れていく事が決まってね、一緒についてきたんだ」
才人はエレキングがペット感覚で飼育されていることに驚きを隠せないが、ぐっとこらえ話を聞く。
「ピット星人は女しかいない、繁栄には他の種族の男が必要なのさ。そういうのを攫うための任務でもあった…が、時空を超えた時のダメージが大きすぎて宇宙船は爆発、仲間は全員死んだ」
しかし、と更に続ける。
「姉がギリギリのところで私とエレキングを助けてくれたんだ。…それが姉の最後だった。その後、私とエレキングは離れ離れになってしまった」
ミシェルは自らの肩を強く握りしめる。思い出したくは無い様だ。
「そこで私はこの『ミシェル』という存在を殺してしまったんだ」
才人には意味がよくわからない。
「存在?殺した?」
「ああ、元々いた『ミシェル』を不時着時の事故で死なせてしまったんだ。私も重傷を負って…生き残るにはお互いを融合するしかなかった。そして、私たちは完全に一体化した。互いの記憶は残ってるが…」
それで、とミシェルは本題を切り出す。
「実は、ウルトラマン。私の『リム』を見つけ出して欲しいんだ。」
「…『リム』って…誰?」
次回に続きます。皆さん気長にお待ちください。なるべく早く次回を書きます。