コスモスはラグドリアン湖に飛び込み、ムルチとエレキングを探す。水はとても澄んでいるが、広く深いためすぐには見つけられない。コスモスは体をなるべく動かさないようにしエネルギーの消費を抑える。
(どこだ…リム、ムルチ…)
そうしていると全身を謎の違和感が包み込んでいく。それはついに全身に広がり、コスモスは指一つ動かせなくなる。
(なっ!?何だこれは!?)
単なるものよ…何故我が世界を侵す…
この時、コスモスはテレパシーでもない、口語による会話でもない不思議な声を聴く。この時コスモスは村の住民やミシェルから聞いていた水の精霊の話を思い出した。
(まさかこいつが、水の精霊!?)
出ていけ…単なるものよ
(待ってくれ!俺はエレキングを迎えに来ただけだ!あなたには危害は何も加えない!)
エレキング…この世ならざるものか…
この世ならざるもの、確かにエレキングはこの星の生命体ではない。水の精霊の表現はある意味正しいだろう。
(そうだ!そいつを迎えに来ただけだ!絶対に危害を加えない!)
水の精霊は突然黙り込む。その時コスモスのカラータイマーが警告音を鳴らし始める。コスモスが焦りを隠せなくなってきた時、水の精霊が話しかけてくる。
単なるものよ…異なるもの達を滅せるか…
異なるもの、恐らくムルチの事だろう。ムルチは才人のいた地球では公害、大気汚染によって生まれた怪獣だ。この星のムルチもそうなのかは分からないが、以前学院を襲った魚の怪獣と同じ経緯だろう。それにしても達とは、他にもムルチがいるのだろうか?
異なるものが来てから…月が二回交わった…その間…奴らは私の世界を荒らしまわっている…
(ああ!任せろ!俺なら浄化して助ける事が出来る!)
ならば…我が世界を侵す異なるもの達を…滅してほしい…残念だが…我は異なるものを滅する力が無い。滅するならば…その代わりに…この世ならざるものの所まで…案内しよう。
水の精霊がそう言うとコスモスを拘束していた水が解ける。そしていつの間にかコスモスのカラータイマーに青い光が灯っていた。警告音も止まっている
失っていた力を戻しておいた。…単なるものよ、この先に異なるものがいる。奴らを滅して欲しい、頼んだぞ…。
コスモスは水の精霊が作り出した水流に乗り一気に水底に向かう。水流に身を任せ、瞬く間に湖底に到着する。そこではエレキングとムルチ達が死闘を繰り広げていた。そこに割って入ろうとするが、急に目の前を影が通り過ぎ驚いてしまう。
(うわぁ!?)
目の前に覆い被さったのは首の骨をへし折られたムルチの死体だった。よく見ると他にも多数のムルチの死骸が漂っている。
(ムルチがこんなに…これだけの数をエレキングが!?)
凄まじいタフネスだ。昨日から戦い続けているのか、それよりももっと前からか、どちらにせよ、尋常じゃない。電撃を使わないのは湖の他の生命体を傷つけない為か。その戦闘能力の高さが伺える。
(リム、すごいな…)
見てばかりはいられないとコスモスは両腕にエネルギーを溜め、エレキングを襲うムルチ達に肉薄する。
「デェァァァ!(フルムーンレクト!)」
一度に複数のムルチを包み込み、体内の有害物質や不純細胞を排除、浄化していく。光が消え去るとムルチは全て元の魚に戻っていた。
(よしっ!)
キィィィィ!
(ッ!?)
コスモスはエレキングの苦痛の咆哮を聞き慌てて振り向く。エレキングの肩口・首・腕にムルチが三匹噛みついていた。コスモスは助けに飛び出そうとするが横っ腹にムルチの体当たりを受け吹き飛ばされる。
(しまった!)
このままではエレキングが危ない!そう思うコスモスの前で、首に噛みついているムルチの首が突如260度回転する。エレキングが尻尾を巻き付け首を捻じ曲げたのだろう。首が自由になったエレキングは肩口のムルチを乱雑に振りほどき、腕のムルチを湖底に叩きつけ絶命させる。
コスモスは振りほどかれたムルチを浄化し魚に戻す。エレキングに向き直り改めてその力に感服する。
(こいつは凄い。昔、地球に来たエレキングとは比べ物にならないな…っとあぶねっ!?)
突如エレキングの尻尾がコスモスの首目掛け伸びてくる。どうやらエレキングに敵と思われてしまっているらしい。すぐさま避けるが、今度は体当たりを繰り出してくる。その速さに追い付けずもろに食らってしまう。
「デハァッ…(かはぁっ…)」
そのままコスモスに組み付いたエレキングは尻尾をコスモスに巻き付け絞め殺そうとしてくる。
(このままじゃ…マジでやば…いかも…)
コスモスは尻尾から抜け出そうと全力で上へと飛び出す。エレキングはその場で踏ん張るが、連戦の疲れもあったんだろう。浮かび上がり一緒に湖面へと連れていかれる。コスモスはラグドリアン湖から巨大な水柱と共に飛び出ると、そこでついに力尽き地面に向けて落下する。
「ヒラガ!、リムゥゥゥ!」
ミシェルは地面に叩きつけられたコスモスとエレキングに慌てて駆け寄った。その間にコスモスは瞬く間に才人に戻る。エレキングの尻尾を潜り抜けミシェルは才人に駆け寄り、抱き起こす。
「ヒラガッ!しっかりしろ!ヒラガァッ!」
才人は頭に柔らかい感触を感じながら目を覚ます。しかし、上は見えない。大きな丸いふくらみが二つ、才人の視線を遮っている。
「凶悪宇宙人、おっぱい星人二代目…」
才人のつぶやきを聞いて、起きた事にミシェルが気付き覗き込んでくる。
「ヒラガ!目が覚めたか!」
「すいませんごめんなさい」
「え?」
「いえ、何でも」
才人はミシェルに膝枕してもらっていた。その柔らかさ、眼福に思わず頬がにやける。しかし、気になる事があった。
「あれ?エレキング…リムは?」
ミシェルはあっけらかんと答える。
「ああ、ヒラガの腹の上にいるよ」
「えぇ!?」
才人はとても驚く。自分の上にエレキングがいる?そんなバカな!思わずその場で起き上がろうとして、ミシェルの左の胸に顔をうずめてしまう。
「あっ…」
「ヒラガ…お前はぁ!」
ミシェルの拳が高く振り上げられた時、突如として電撃が才人の体を貫いていく。
「「あばばばば!」」
…ミシェルごと。
「こらっ!リム!いきなり電撃をうつんじゃない!」
しかし、あの巨大なエレキングはどこにもいない。才人はどういう事かと見回してみると自身の腹部にちょこんと座る『何か』がいた。
「…え?これが…リム!?」
そこには真ん丸の体、短い手足、ほんの少ししかない尻尾、「ちんちくりん」と呼べるような、呼ぶしかないような、そんな生き物がいた。しかし、体の模様は間違いなくエレキングだった。
「ピキィィ!」
ちんちくりんのリムは才人の上でジャンプすると、ミシェルの頭に飛びつき肩車状態になり才人を威嚇してくる。
「すまない、ヒラガ。お前ばかりかまっていたからリムは嫉妬してるみたいだ」
「嫉妬?」
才人は何かした覚えも、された覚えも…膝枕の事だろうか?
「ここはリムの特等席だもんな」
ミシェルはひょいとリムを掴むと先ほどまで才人がいた自身の膝の上に座らせる。
「ピキィ♪」
その途端リムはご機嫌になりミシェルに甘え始める。なるほど、と才人は思った。この様子を見るに昔からの定位置なのだろう。
その幸せそうな様子を見て、頑張って良かったなと心から思った才人だった。
「私はリムが生まれたころからずっと世話してるんだ。子どもみたいなものさ」
ミシェルは疲れが溜まっていたのだろう眠ってしまったリムを、優しくなでていた。
「へぇ?ずっと?」
才人はミシェルの隣に座り、話に耳を傾ける。
「もうずっとさ、この子をたくましい子に育てたくてね…一緒に頑張ってきたんだ」
なるほど、十分味わったよ。と才人は呟く。
「そう言えば…何でこんなにちっちゃくなってるんだ?こういう能力か?」
才人が質問すると、ミシェルは懐から小型の銃を取り出す。
「縮小光線銃、これでリムを小さくしてるのさ。流石に大きいサイズのままじゃダメだろう?」
へ~、と才人が感心していると、ミシェルが才人の肩にもたれかかってきた。才人は驚くがなるべく平静を装う。
「なっ何!?ミシェルさん!」
「…ありがとう…ヒラガ…」
「え?」
ミシェルは才人の手の甲に自身の手を重ねる。
「お前がいなかったら、リムとは再会出来なかった…お前がいなかったら、そもそもアトラー星人の時に死んでいたかもしれない…本当に心から、感謝している」
才人は真正面から真剣な礼を言われ気恥ずかしくなる。しかし、そこからミシェルの口調が少し沈んだ物になる。
「…ヒラガ、聞いてくれ」
「何だよ急に?」
「今回の連続した宇宙人襲撃事件だが…黒幕が接触してきたんだ」
「黒幕が!?」
突然の情報に戸惑ってしまう。才人は「それで!」と、ミシェルに詰め寄る。
「この殺人ゲームを取り仕切っているのはサーベル暴君、マグマ星人。凶悪な宇宙人だよ」
「マグマ星人…」
マグマ星人はかつて才人のいた地球にも来たことがある。あまりにも甚大な被害を出したことで有名で、教科書にも書かれている程有名な宇宙人だ。
「そんな奴がどうし、危ない!」
才人はミシェルを突き飛ばす。ミシェルは突然何をするのかと驚くが、その瞬間才人の腹部を見えない何かが貫く。
「ヒラガ!?グボッ…なっ、何だ…?」
今度はミシェルの首に見えない何かが巻き付き締め上げる。すると突然人影が現れる。それは人間の姿をしてはいるが、どうやら見えない何かはそいつから伸びている様だ。
「何…者…だ…」
「へっ、弱っちいピット星人に何か言うこたぁ無いね!ウルトラマンも不意打ち一発たぁ拍子抜けだぁ」
ミシェルは才人に目線を動かす。才人はピクリとも動かない。意識を失っている様だ。才人は度重なる変身で体力を消耗していた。その隙に襲われてはどうしようも無いだろう。
「まぁ、何はともあれ特別点はいただきだ。ウルトラマン、エレキング合わせて10000点だぜ!」
「えれ…?まさ…っか、リム!?」
「ピキィィ!」
そいつはいつの間にかリムの首根っこを掴んでいた。
「こいつを主催者さんがご所望なのよ!…あらよっ!」
そいつはミシェルを脳天から地面に叩きつける。ミシェルは血を流しながらも立ち上がろうとするが、力尽き、崩れ落ちてしまった。
ミシェルが最後に見たのは、高笑いをするそいつと、もがくリムの姿だった。
次回に続きます。頑張って早く更新したいです。