ゼロの使い魔~真心~   作:へドラ2

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続きです。今回から新しいお話です。キャラクターの性格がだいぶ違います(今更)ですが、今回は顕著です。

※脱字直しました。失礼しました。


ゼロの使い魔~真心~第24話

 この日、アンリエッタはゲルマニア訪問からの帰路についていた。その馬車の中、アンリエッタはひたすらにため息をついていた。

「これで本日ひゃ…」

「言わないで…マザリーニ枢機卿…」

 今回の、ゲルマニア訪問で、トリステイン復興支援を取り付ける為に、ゲルマニアの皇帝に嫁ぐ事に決まったのだ。しかし、これには他にマザリーニ枢機卿の一つの思惑があった。

「目下、ゲルマニアとの同盟は急務なのです。ご理解いただきたい」

 アンリエッタは口をへの字に曲げて言う。

「分かってますよ、アルビオンでの『革命』でしょう?今のトリステインだけで戦う事は出来ませんもの」

 アンリエッタは再びため息をつく。何か物思いにふけっている様だ。実は一回の訪問で全てが上手くいったのはもう一つの理由がある。その事を考えていた。

「まさかゲルマニア、その他諸国にも怪物が現れていたとは…」

 ゲルマニア、ガリア、ロマリアにも怪獣が現れているらしい。それらは各軍隊が撃退したらしい、あくまで『撃退』だ。倒してはいないのだ。

「トリステインに現れた『ウルトラマン』、これについてやたら質問されましたからなぁ…」

 ゲルマニア、その他諸国にとっても、怪物を倒してくれる『ウルトラマン』の存在は是が非でも知りたい情報のようだ。

 そんな会話中、二人に伝令が届く。

「何事だ?…何っ?トリステインの町が!?」

 アンリエッタは頬杖をつきながらマザリーニ枢機卿に尋ねる。

「また何か…?」

 マザリーニ枢機卿は言いにくそうに答える。

「実は…我々のゲルマニア訪問中にも、怪物の襲撃があったようで…『ウルトラマン』が全て倒してくれたようですが、…町は…」

 マザリーニ枢機卿から被害状況の資料を受け取ったアンリエッタは、もういいです、と言うと椅子の上に寝転がる。

「姫様!何とはしたない!」

 アンリエッタの瞳に光は無く、乾いた笑みで答える。

「ははは、今くらい良いではないですか…あぁ、もう嫁ぐどころか、国ごと売ってしまわないと、いけないのではないでしょうか?」

 マザリーニ枢機卿は痛ましく思い、一粒涙を流す。自分はなぜこんなに無力なのだろう。姫とはいえ、まだ十七歳の少女にこれだけの負担と苦しみを与えなければならないとは…

「姫様起きてください…ワルド君!」

 マザリーニ枢機卿は同行していた魔法衛士隊、グリフォン隊隊長ワルドを呼び出す。ワルドが馬車のすぐそばまで来る頃には、アンリエッタは起き上がり衣服の乱れを直していた。

「すまないが先行してトリステイン魔法学院へ行ってくれないかね?そこにいるラ・ヴァリエール嬢に文を届けてもらいたい」

 ワルドは一瞬驚いた表情をするが、すぐに平静を装う。

「了解しました、猊下」

 ワルドは文を受け取ると隊を離れ、グリフォンと共に飛んで行った。それを見送るとアンリエッタはマザリーニ枢機卿をにらみつける。

「ルイズに何様ですか?」

「いえ、我々が帰国しだい、すぐに王宮に来るように手配を。残念ながら、町にこれだけの被害が出ているとなれば寄り道する暇はありません。本来なら魔法学院に寄り、休養をと思っていたのですが…」

 アンリエッタはきょとんとする。そして直ぐにほほ笑む。

「へぇ…あなたも少しは気が利くのですねぇ」

 いえいえ、とマザリーニ枢機卿は肩をすぼめた。

 

 

 

 マグマ星人との戦いから早一週間。色々あったが、ミシェルは今も銃士隊で働きながら、日々頑張っているらしい。もちろんリムも一緒だ。ペットとして飼っているらしいが、他の人間に不思議がられると、軽い催眠術で誤魔化しているようだ。それでも不都合がある時は、セニカとアニエスが正体を知っている分、協力してもらっているらしい。

「ミシェルさんが救われて良かった」

 この一言を聞いたマチルダが、キスの件も有り問い詰めて来たが、何とかして誤解を解いた。実に一時間も掛かってしまったが。それ以来、マチルダは会えるときはやたらと引っ付いてくるようになってしまった。まぁ、才人は二つの柔らかい感触にご満悦だったので、拒みはしなかったが。

「また会おう、サイト!」

 ミシェルと別れ際にした約束。それを守る意味も込めて、才人は暇が出来れば、町に行って復興作業や銃士隊の手伝いをしていた。その度にルイズが睨み付けてくるが。

 

「~~~~♪」

 そんなある日、才人はマチルダの代わりに花の世話をしていた。普段マチルダが忙しい分、手伝いを申し出たのだ。今はコスモスの花と、ブーゲンビリア、チグリスフラワーを育てているのだ。

「しっかし、チグリスフラワーね、珍しい花だなぁ、地球では見た事ないぜ。しかも百年に一度か…上手くいけば直ぐに咲くらしいけどなぁ…」

 マチルダ曰くサハラから来たらしい。サハラとはこの世界での砂漠地帯との事。そんな花でも咲かせられるかもしれないとは、シエスタの故郷の土とはどれだけすごいのだろう。

「こりゃあ長い付き合いになりそうだな!」

 才人は必ず咲かせて見せるぞ!と決意を固めていた。

「そろそろいい頃だな」

 才人はブーゲンビリアの花を一房取ると、ルイズの自室、の前にあるキュルケの部屋に向かう。コンコンと軽くドアを叩く。

「…入るぜ?…いいか、キュルケ?」

 ドアから出てきたのはキュルケではなくタバサだ。

「…また、来てくれたの…?」

「ああ、流石に心配でな…」

 キュルケはツルク星人の一件以来、男性を才人以外近づけなくなり、部屋に引きこもってしまった。いつまでもキュルケと一緒にいれない才人は、励ますために、こうして時々花を届けるようになった。ルイズもこれに関しては何も言わなかった。

「…ありがとう。ブーゲンビリアの花言葉は…」

「『情熱』、あいつにピッタリさ」

 才人は、ブーゲンビリアをタバサに託すと、ルイズの所に戻る。キュルケが元気になる事を、立ち直る事を信じて。

 

 …その夜、魔法学院に一人の来客があり、マチルダが対応に当たっていた。魔法衛士隊グリフォン隊、隊長ワルドだ。

「お疲れ様です、ワルド子爵。お急ぎのご用件ですか?」

 マチルダに聞かれたワルドはいや、と一言答える。

「そこまで急ぐ事ではない。だが、今夜中にミス・ヴァリエールに合わせていただけないだろうか?姫殿下からの親書があるのだ」

 それを聞きマチルダはそういう事なら、と面会を許す。

「ただし!もう時間も遅いのであまり長くならないようにして下さい。彼女も学生ですので」

 気迫が込められたマチルダの態度に、思わずワルドはたじろぐ。

「あっああ!そこはわきまえるさ!」

 少し怪しい反応になってしまったかな、と少し後悔したワルドだった。

 

 コンコンッ!

 

 ワルドはルイズの自室の扉を叩く。

「久しぶりだな…当時彼女は十歳、覚えているだろうか…」

 ドアが開くとワルドは精一杯の笑顔で対面しようとする。…が、出てきたのはルイズでは無くパッとしない顔の少年だった。

「あれ?どちら様ですか?」

 少年はこちらが誰かわからないようだが、それはこちらも同じだった。それよりも問題の事がある。

「ここはミス・ヴァリエールの自室のはずだが…」

「ああ、俺はルイズの使い魔で、ここで厄介になってます」

 この一言がワルドの琴線に触れる。

「という事は…ここで二人一つ屋根の下…?ふざけるな…」

「え?」

 突如怒り狂ったワルドは少年、才人に掴みかかった。

「え?え!?何!?何事!?…ワルド子爵!?」

 騒がしさに驚いて飛び出してきたルイズが見た物は、幼き日以来の再会となるワルドが、才人を押し倒している様子だった。

「あっいや、ハハハ、久しぶりだねルイズ…」

 

 

 

 才人は訳が分からなかった。突然現れた貴族の男が押し倒してきたと思えば、そいつを見たルイズは顔を真っ赤にしてド緊張している。何でも、ルイズの『婚約者』らしい。才人はとりあえず部屋の隅で座って見ている事になった。

「そうかそうか!彼は使い魔で、そう言った関係ではないのだね!」

 ワルドは何か機嫌が良さそうだ。会えなかった間の事を喜々と話し始める。しかし、ルイズはごにょごにょ呟いている。

「あの…ワルド子爵?こっ婚約っていっても、その、そのっ親が決めた事…それに、好きと言ったのも子どもの、あっ、憧れの様な物で…」

 ワルドは聞こえていないのか、話すことに夢中なのか、まったくもって耳に入っていないようだ。すると、部屋の隅の才人に目線が写る。才人が気が付くと、ワルドは不自然な瞬きを繰り返す。

(何だ…?)

 その時、背中のデルフリンガーが囁く。

「気を利かせろってことだよ」

 才人はああ!と気が付く。

「すいません。気が付かなくて、今お茶を入れますね」

 ワルドはずっこける。

「そうじゃないだろ!」

 才人は、言われて赤面する。

「えっ、ああ!そういう事!ハイハイ!ごめんなさいね!?」

 才人は慌てて部屋を出ようとする。しかし、サラッとルイズに呟く。

「頑張れよ!お前にとっちゃ、滅多にないチャンスだ!」

「なっ!?あたしそんなんじゃ…」

 いいから、いいから、ごゆっくり~、と才人は部屋を出た。少し気まずいルイズはテーブルを叩くように立ち上がり、真っ赤な顔でワルドに話しかける。

「そっそそそ!それでごごごごごご用件は!?」

「あっああ!実は…」

 

 

 

 才人は、部屋を出てからどうしようか?とデルフリンガーに尋ねようとするが、その時才人の腹の虫が鳴る。

「シエスタの所に行くか、何か食べさせてもらおっと」

 才人はシエスタのいるはずの厨房にやって来る。時間も少し遅いがまだいるはずだ。

「シエスタ~!何か残って…あれ?」

 シエスタという単語を聞いた途端に厨房の雰囲気が極端に暗くなる。

「どっ、どうしたんです?マルトーさん?」

「ああ、『我らが剣』か…実はな…」

 マルトーというのは、この魔法学院のコック長だ。ギーシュとの決闘以来、才人の事を『我らが剣』と呼び、食事の面倒を見てくれていた。彼が言うには…。

「昨日シエスタが連れていかれた!?」

「ああ、王宮の勅使のジュール・ド・モットって奴がな…いつも気に入った平民の女を買って、持って行っちまうのさ。夜の相手をさせる為に!」

 マルトーは壁に拳を叩きつける。相当悔しい様だ。

「あの子がどんな目に合うかよくわかってるのに…俺たちは何も出来なかった!貴族と平民ではよくある事だ…そんなんで納得できるか!」

 すまない、とマルトーは呟く。

「シエスタがこれを…『我らが剣』にってさ…」

 それは手紙だった。別れをつづったのだろうか、シエスタの心境を考えると才人は苦しくなる。が、手紙を開けると才人の表情が一変する。

「マルトーさん…モットって奴は何処にいるんですか…?」

「え?」

「何処にいるんですか!」

 マルトーからモットの屋敷の場所を教えてもらうと、才人は厨房を飛び出し全力で走り出す。遠くからマルトーが止めるように叫んでいるが、それを聞いている暇はなかった。

「おいおい、相棒!どうしたんだ?何て書いてあったんだ!?てか、相棒字読めるのか!?」

「あぁ、すごいことが書いてあったよ!」

 

 

 手紙にはこう書かれていた。

 

 

 

「彼女は預かる。取り返したくば、我が屋敷まで来るのだ。ウルトラマン」

 

 

 

 才人の世界の言葉で…。

 

 

 

 




次回に続きます。モットさん?登場です。ワルドの違和感、すごいですよね。ゼロの使い魔~真心~ではこれで行きます。ご容赦ください。
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