ミシェルは、トリステイン城にある女性更衣室に勢いよく入っていく。女性専用の部屋はミシェルが全て任されたのだ。女性達の了承をそこそこに、衣類をあさり爆弾を探す。三人目のロッカーを開けようとすると、鍵が掛かっているのか開かない。
「これは誰のロッカーだ!?」
女性達は互いに見合うが、誰一人難しい顔しかしない。どうやら分からないようだ。これ程ねらい目な所は無い。ミシェルは全力で引っ張ったり、剣で切り裂こうとしたりするが、びくともしない。
「ちっ…、リムーー!」
ドドド!という足音の後、ドアを勢いよく蹴破りちんちくりんの不思議な生き物が入って来る。
「ピキィー!」
縮小光線で縮んだリムだ。普段は銃士隊の待機室で他の銃士隊員達に可愛がられている。
「リム!頼む!」
リムは縮んでいても『宇宙怪獣エレキング』強力な力を持つ怪獣である。ロッカーのドアに引っ付くと全力でもぎ取る。リムがもげたドアの下敷きになってもがいているが、ちょっと可愛いので放っておきロッカーの中を物色する。
「…あった!」
そこには青いクリスタルのついた白くて細長い物体が握られていた。モット曰くバド星最新の爆弾らしい。ミシェルはリムの上のドアをどかして抱えると、次の部屋に向かう。
(バド星人が言うには、持ち出された爆弾は全部で八個、後七つ!)
モットは城内に飾られている鎧の中や絵画の裏、各部屋の家具の下を這いつくばって探す。以前のモットを知る貴族からは驚嘆の声が上がる。
「なっ!?何をしているんですか?」
「それではお汚れになってしまいます!おやめください!」
「下々の者にやらせればよいでしょう!?」
以前のモットに取り入っていた貴族たちだろうか?汚れにまみれ、爆弾を探すモットを止めようとする。
「いいや!駄目だ!この城にいる全ての人が危険にさらされている!汚れがなんだ!それよりも!」
モットは貴族たちに叫ぶ。
「避難指示に従い逃げるんだ、事態は一刻を争う!」
貴族たちはモットの変わりように驚いているが、指示に従い部屋から出て避難指示に従い避難する。
「…良かった、行ってくれて」
モットはベットをひっくり返し、裏についている爆弾を取り外す。
「彼らがいる時に爆発しなくて良かった…」
ミシェルからのテレパシーは既に届いている。
(残り六つ!)
ワルドは魔法衛士隊グリフォン隊の詰め所に来ると、ポーカーで盛り上がっている全員に喝を入れる。
「バカ者共!この非常時が分からんのか!」
喝を入れられた隊員たちは途端に背筋を伸ばし、敬礼をする。ワルドから事情を説明されると、避難誘導に行くように指示される。
「さあ行くんだ!総員、作戦開始!」
グリフォン隊が全員外に出ると、一応と思い部屋を探してみる。すると、自身のデスクの位置が微妙にずれている事に気付く。
(今朝より少し右にずれている…?)
ワルドは慎重にデスクに近づき、引き出しを開けてみるが、何も無い。しかし、デスクの上に置いてあった本の近くに、紙くずが落ちている。
(まさか…)
本を持ってみると中がくり抜かれており、モットから聞いていた爆弾が顔を覗かせる。
「やはりか!」(この部屋に入れるのはグリフォン隊のみ…まさか…?)
才人は城内の廊下を走っていた。各部屋を透視能力で見ながら爆弾を探す。見つけた!、才人は見えた部屋に飛び込む。
「見つけ…あ、すいません!」
入った中ではメイドと、兵隊?だろうか。二人で抱き合っていた。才人は入ってはいけないと思い、慌てて外に出る。
「…待てよ?」
才人はもう一度、中を透視能力で見てみる。よく見ると、爆弾は抱き合っている二人の間に挟まっている。才人は透視能力の感度を上げる。そして、その正体を見破る。
「やっぱり!お前らが!」
才人はドアを蹴り飛ばし中に飛び込み、剣を構えるが、既に二人は窓から飛び降りて逃げていた。見つかりそうになったから慌てて抱き合い、爆弾を隠したのだろう。
「くそっ!」
才人は部屋を出る前に、一応爆弾を探して見る。すると花瓶の中に一つ隠されていた。取り出すとモットとミシェルにテレパシーを送る。
(バド星人を見つけた!城の北西側だ!爆弾を四つは持っていた、急いで捕まえよう!)
ミシェル、モット、才人はワルドの位置をテレパシーで確認、合流する。
「どうだった皆?」
モットの問いに三人は回収した爆弾を取り出す。
「よし、解除は私が出来る。渡して欲しい」
その一言にワルドは少し懐疑的になる。当たり前ではあるが。
「…モット伯爵は解除できるのですか?」
モットはボロが出ないように冷静に答える。
「私は異国の技術に興味がありましてな。勉学に励んだ事があるので、出来ますよ」
ワルドはモットに爆弾を渡す。才人からバド星人の存在を聞いていたミシェルはワルドにそれとなく伝える。すると、逃げた北西という所に反応する。
「北西には姫様の避難場所が!」
才人達は急ぐワルドについて行き、アンリエッタの避難場所へ向かった。
城の北西部、王族の避難場所に三人はたどり着く。入るとアンリエッタの周りにグリフォン隊と、銃士隊員が護衛についていた。才人にはグリフォン隊の服装に見覚えがあった。
「あの服だ!」
才人が言うやいなや、ワルドが叫ぶ。
「風!」
その叫びにグリフォン隊が一斉に跪く。軍隊で用いられる、スパイを見破る為の合言葉だ。一人だけ反応できず立ち尽くしている。
「やはり我が隊に!」
ワルドは素早く杖を抜き、グリフォン隊に紛れ込んだバド星人に向けるが、それより早く才人がデルフリンガーを下投げでほうり、バド星人を仕留める。すぐ近くに怪人がいた事に動揺が走るが、ミシェルが一喝する。
「うろたえるな!分かっているぞ!出てこい!貴様がここにいるのは、分かっている!」
もう逃げられない、そう理解したのだろう。メイド服のバド星人はルイズを後ろから押さえつけ、銃を押し付けて人質にする。
「近づくな!近づけばこの女の命は無い!それと、この爆弾を起爆させるよ!」
メイドは腹部に隠していた爆弾を見せる。兵士たちはルイズが人質になっている為に手出しできない。
「どけ、どけ!どっ、がふっ…ゴホォ!」
逃げようとしていたバド星人が突如として口から血を吹き出す。バド星人の拘束が弱まり、抜け出したルイズが見たのは喉から『ブレイド』が生えたバド星人だった。
「なっ、何が…?」
「大丈夫かい?ルイズ!」
ルイズはワルドの手を取る。
「えっええ…あれ?」
目の前にはワルド、先ほどまで前方にいたはずのワルドが何故?
「僕の得意魔法だよ。『風の偏在』って言うんだ」
ワルドは魔法で分身をバド星人の後ろに作り出し、奇襲を仕掛けたのだ。とりあえずの危機を脱した事で、場に安堵の空気が流れる。ミシェルが爆弾を回収していると、突然アンリエッタの側にいた護衛の大男が爆弾の一つをかっさらう。大男が立ち上がると、顔がバド星人に変わっていた。最後の一人、バド星人侵略隊の隊長だ。
「ええい!1967421め焦りおって!こうなったら貴様らまとめて!」
隊長は爆弾を起爆させようとする。
「まずい!」
三人が飛び込むには遠く、『風の偏在』も間に合わない。全員吹き飛ぶ。そう覚悟した時、赤く細長い何かが伸び、隊長の腕に巻き付いて焼き焦がしていた。
「グわぁ!?」
取りこぼした爆弾をミシェルが滑り込んでかっさらう。何が起きたのか?誰もが細長い何かが伸びる大元を見ると、そこにいたのは何とコルベールだった。
「ふうっ…何とかなりましたな」
今のはコルベールの炎の魔法だったのだ。魔法を心得る貴族なら、今の芸当にどれだけの技量が必要か分からない者はいない。コルベールは何者なのだ?という皆の視線にコルベールは少しおどけて答える。
「まあ…これでも魔法学院の教師ですぞ!それ相応の物は持っとります!」
しかし、流石は侵略隊隊長。素早くドアに体当たりし、外に飛び出して逃げる。しかし、出た先にはモットがちょうど来たところだった。
「爆弾の解除が終わりまし…隊長!?」
モットと隊長は互いに武器を構え牽制する。しかし後ろから才人達が来たことで完全に劣勢になる。
「…そうか、1967221!貴様が裏切っていたのか!」
「元から仲間だったつもりは無いがな!」
隊長は突然全力で走り出し、噴水に飛び込む。数秒後、噴水が爆発する。ワルドは自害したか、と嘲笑しているがモットは慌てている。
「まずい!奴らは鏡の中を移動できるのだ!」
なんだって!?驚いているワルドをよそに、三人はテレパシーを使って隊長の脳波を追う。ミシェルが微かな脳波を捕えた。
「これは…モット、あなたの領地では無いか?」
モットにはすぐに隊長の意思が読める。自分が裏切った理由。恐らくそれがある場所に行き、全てを壊そうという事だろう。
「才人君!」
「分かってるさ!」
走り出そうとする二人をワルドが呼び止める。
「まっ待て!どうする気だ!?」
才人はワルドに急いで説明する。
「あいつは俺たちに任せてほしい、ワルド子爵はルイズや姫様を守ってくれ。お願いできるか?」
ワルドは誰に物を言っている、とでも言うように胸を張る。
「ああ、任せろ」
才人は走り出す直前ワルドに耳打ちする。
「うちのご主人様と仲良くするチャンスだぞ?」
ワルドはものにして見せるさ!と走り去る背中に呼びかけた。
別の鏡からモット邸に戻ってきた才人とモットは、外から聞こえた轟音を聞き、慌てて外に出る。そこには巨大化した隊長がいた。
「1967221!裏切りの報いを受けろ!」
モットは突っ込んでくる隊長の前に立ちふさがるように巨大化、受け止めてから蹴り飛ばす。
「ふん!たかが調査員のくせに、たてつきおって!」
隊長は右腕についていた機械を操作する。すると、中から数多くの機械部品が飛び出しその体に装着されていく。モットは訳も分からず、見ているしかできなかった。
「これは貴様も知らないだろう!わが軍のトップシークレットだ!」
全身に装着された鎧、バド星人特有の頭の形状に合わせられた兜、全身武装されたその姿。
「これぞ!『フルアーマード・バド星人』!私の最強兵器だ!」
モットはまったく知らない兵器が出て来て戸惑っている。その隙に隊長は懐に飛び込みモットをアッパーで吹き飛ばす。
「グホッ!…グアァ…」
モットを一撃でダウンさせた隊長は、モット邸に向き直る。すると鎧が展開し、各部からミサイルが顔を覗かせる。
「これで全てを失え!ハハハ!」
放たれるミサイルの雨、モットの脳裏に浮かぶアイや使用人たちの顔、全てを失う恐怖が悲痛な叫びを生む。
「やめろォォーー!」
「コスモーーース!」
巻き起こる爆炎。勝ち誇るバド星人隊長だが、その目に入ってきたのは瓦礫の山では無かった。赤く、異常なまでに膨れ上がった肉体。
『ウルトラマンコスモス・コロナモード』
「デヤァッ!(俺を忘れるなよ!)」
隊長は驚くが、余裕の笑いを上げる。
「ハハハハハ!いかにウルトラマンと言えど、この『フルアーマード・バド星人』の敵ではないわぁ!くらえ、ぺダン合金より硬いバド合金で作った特殊ブレードだ!」
手甲から現れたブレード、それが寸分の狂いも無くコスモスの首筋を捕える。
パキーン
簡単に折れる。
「馬鹿なぁ!?」
ぺダン合金より硬いというのはハッタリのようだ。隊長は諦めずコスモスに拳のラッシュを打ち込む。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァァーーー!」
「ギャァァーー!」
コスモスの体を殴りつける隊長の手甲が粉々に砕け、その手を痛めてしまう。
「デァァ…(見かけ倒しか…)」
コスモスは、目の前で苦しんでいる隊長の頭を掴みあげ、全力で放り投げる。
「デァァ!」
隊長は頭から地面に落下、地面に突き刺さる。コスモスは動けない隊長に両拳を突きつけ、その間にエネルギーを溜めていく。作り出すのは炎の超破壊球弾。
『プロミネンスボール!』
目標に吸い込まれたそれは、それを完全に粉砕。巨大な爆炎を生み出す。
コスモスはモットを助け起こし、硬い握手を交わす。
(終わったぜ)
(ありがとう…感謝の気持ちしか無いよ、ウルトラマン…)
二人の巨人は虚空に溶けるように、その姿を消したのだった。
続きます。フルアーマード・バド星人…自分で考えてて、「中二病だなぁ~」って思いました。