ゼロの使い魔~真心~   作:へドラ2

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お待たせいたしました!続きです。ようやく出発します。その道中の話です。


ゼロの使い魔~真心~第31話

 翌朝。才人は起床後、寝不足の頭痛に苦しめられながら起き上がる。まだ空が明るくなり始めたばかり、小鳥のさえずりすら聞こえない時間だ。

「お~い…ルイズー、起き…あれ?」

 才人はベッドを見るが、いつもの寝坊助ルイズがそこにいない。何処だろうと見渡すと、窓の所に腰掛けるルイズが視界に入る。

「起きた?夜更かしバカ犬」

 朝っぱらから罵倒されるいわれは無いはずだが、先に起きて、いつもの制服に着替えまで済ませていたルイズには言い返す事は出来なかった。

「…早いな」

「そりゃぁね…とっても大事な事だもん…おちおち寝てらんないわ」

 昨日速攻寝たくせに、とはあえて言わない才人だった。しかし、そこである事に気が付く。ルイズが窓の所から動かず、顔がほんのり赤い。

「…どうした?ルイズ?顔が赤いぞ。大丈夫か?」

 才人が近寄ろうとすると、ルイズが手で制する。

「サイト…あんたには普段生活の世話させてるわよね、掃除とか、洗濯とか。色々」

 それがどうした?と疑問に思うが、すぐにルイズが教えてくれる。

「寝汗かいてね、着替えようと思ったの。で、脱いだんだけど…しばらく自分で着替えて無かったでしょ…?」

 才人はつまり…と、ルイズの状態が容易に想像できてしまう。ルイズはもじもじ、くねくねしながら…

「…下着どこ?」

 と、可愛く呟く。ルイズはノーブラ・ノーパンだった。才人は締まらねぇなぁ…と頭を抱えた。

 

 

 

 

 朝靄の中、才人とルイズは馬に鞍をつけていた。ルイズはいつもとは違い、乗馬用のブーツを履いていた。どうやら長く馬に乗るつもりらしい。

(そういや、アルビオンってここからどれくらいなんだ?…ていうか)

「なぁ?ルイズ、このギターいるか?」

 才人はデルフリンガーと一緒に、ギターも背負わされていたのだ。デルフリンガーと一緒になので、バランスがとりづらい。

「当たり前じゃない!いざという時はあんたの歌で路銀を稼ぐのよ!姫様の大切なルビーを売り払う訳にはいかないんだから!」

 ルイズが言うには、姫様の大切な物を簡単に売り払うような恥知らずになる訳にはいかないらしい。才人は自身の歌が認められている事に笑みをこぼすが、同時に複雑な気持ちになる。こんな事で今回の任務をやり遂げる事が出来るだろうか?…その時。

「…ーい…」

 どこからか声が聞こえる。こんな朝靄の中、誰か来たのか?と二人が入口の方を向くと馬より大きい何かがやって来る。しかし、才人には見覚えがあった。

「グリフォンだ!」

 以前一度だけ見た事のあるグリフォン。しかし乗っている人間には最近よく合う。

「おーい!やあ!会いたかったよ、僕のルイズ!」

 乗っていた人物はグリフォンの上からルイズをかっさらい、お姫様抱っこをする。その意外な人物の登場に才人とルイズは声を合わせる。

「「ワルド子爵!」」

 ルイズをかっこつけて抱き抱えたワルドは、ルイズと見つめ合いながらキスをしようとする。

「待って待って待って!?急すぎですワルドさま!?まず何故ここに!?」

 おお、すまないね。と、ワルドは咳払いをする。

「実はマザリーニ枢機卿が、様子のおかしかった姫様を問うたところ、君たちへの密命が明らかになってね。やはり心ともないという事から僕が使わされたんだ」

 一個部隊を動かせない為、隊長のワルドが選ばれたとの事。たった一人でもこの任務を託されるとは、実力の証明だろう。

「さあ!出発…の前に」

 ワルドは才人に向き直る。

「使い魔くん…実は急いでいた為汗をかいてしまってね、シャツを用意してもらえないかな?」

 才人は心の中で一言。お前もか、と呟いた。

 

 

 

「それでは気を取り直して、諸君!いざ出撃だ!」

 こうしてようやく出発した一行。グリフォンと馬で並走する才人だったが、今回の旅の行程を聞いて才人は驚く。

「一日!?馬で二日も掛かる距離を一日で行くってか!?」

 今回の旅の最初の目的地の港町ラ・ロシェールはトリステインから馬で二日の距離にあるという。駅で馬を乗り変えつつ向かうらしいが、どう考えてもペースが速い。

「「急ぎの任務だから仕方ない(じゃないの!)」」

 二対一で負けた才人は渋々了承する。一人なら飛んで行くのになぁ…と考えるが、今は流石に無理である。才人は、グリフォンにまたがり背中をワルドに預けるルイズと、昔のことを思い出し、談笑するワルドが酷く羨ましく見える。

(談笑する余裕あるのか…いいなぁ…俺も話し相手が…あ、いた)

 才人はデルフリンガーを鞘から少し出す。

「よう相棒!なんだ?一人がさみしいかい?な~に!俺っちがいるさ!そういえば昨日の夜、あの姉さんやキュルケの嬢ちゃんと一発ヤッ…」

 余計な事、有りもしない事を言いそうなので、才人はデルフリンガーを鞘に戻す。

(話し相手…欲しいなぁ…)

 その様子をワルドはルイズとの談笑がてら横目で見ていた。

(ほう…馬で僕のグリフォンに追いつくか…それにしてもあの左手のルーン、どこかで見たような?いや、しかし…)

 才人がグリフォンの左側にいる為、しっかりと確認できないのでどうとも言えないが。そうこうしている内に駅を二か所越え、馬を交換しながら尚も走り続ける。三つ目の駅に差し掛かった時、道を遮るように何かが置かれているのが一行の視界に入った。

「何だありゃ?」

 三人は顔を近づけて見てみる。道の端から端に渡されたバリケードに紙が縫い付けてある。書いてある文字を才人は唯一読めないが、ワルドが声に出して読んでくれた。

「ふむ?通行禁止…だって!?」

 ワルドが驚きの声を上げたのと、ルイズと才人が顔を見合わせたのは同時だった。

「そんな!何でこんな何もないとこが通行禁止なのよ!こっちは急いでるのに!」

 ルイズが金切り声を上げるが才人が何とか抑える。

「まあまあまあ!何か事情があるのかもしれないじゃないか!」

 とは言いつつも、実は才人は内心喜んでいた。もう半日も走りっぱなしで流石に休みたかったからだ。その時、ワルドは仕方ない、と呟くとグリフォンから降りる。

「こうしていても埒が明かない。ここの代表と話してこよう」

 ここは駅と言っても、旅人が休めるような宿泊施設があり、ある程度の人口がある町でもある。ここの代表ならば事情を説明してくれるだろう。と思い一行は町中に向かった。

 

 

 

 

 

 町中に入ると人が慌ただしく行き来している。歩いていると視界の外から急に男性が走ってきて、ぶつかりそうになる。事実、何度かルイズがぶつかりそうになるが、才人とワルドがその度に壁になり守っていた。

「こりゃあただ事じゃねえな…」

 才人が右へ左へ、と行きかう人々を見ていると、ある共通点に気付く。

「皆持ってるの、非常食と水じゃないか?」

 言われてルイズ達も気付く。

「こんなに急いで非常用の準備を整えている何て…何か大きな災害でもあるのだろうか?」

 そんな急いでいる住民の一人をワルドが呼び止める。

「おい君!どうしてそんなに急いでいるんだ?」

 しかし無視される。この後、八人ほど声をかけるが…皆無視される。

「どうなってんのよ!?誰か一人ぐらいこっち見なさいよ!」

 ルイズのご機嫌がどんどん悪くなる。このままでは間違いなく炎が飛んでくる。よくわかっている才人はワルドとアイコンタクトを交わし、頷き合う。ちょうどその時、真横を通り過ぎた少女の手を掴み、少し強引に引き留める。

「なっ?!あなた誰!」

 驚いて足を止める少女。そこにワルドが紳士的な態度で割り入ってくる。

「やあ、私の従者が失礼した。しかし、どうしてもお嬢さんとお話がしたくてね。失礼、自己紹介がまだだった。私はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。魔法衛士隊グリフォン隊隊長だ」

 少女は紳士的な態度の男が貴族と分かり、驚きの声を上げる。

「きっ!、貴族様!?」

 ワルドはよし、と頷いているが、才人は少し驚いていた。

(ワルドが名前だと思ってた…ジャンなんだ、名前…ルイズのラ・ヴァリエールみたいなもんか?)

 そんな二人にルイズが冷たく、人を射殺すような敵意を込めて言い放つ。

「…なに、ナンパ?」

 ワルドと才人は背筋が凍り付く。

「「違う違う違う違う違う!誤解です誤解です!」」

 

 

 

 

 ワルドがナンパ、もとい呼び止めた女性はこの町の町長の娘さんで、名前はレーヌ。これから家に戻るところだったらしい。一行は今何が起きているのかを知る為、町長に話を聞くために同行する事にした。しかし、道中弾んだ会話はあまりない。ルイズの不機嫌がマックスに近いのだ。

「あの…あちらの方、大丈夫ですか?」

「「お気になさらず」」

 一行が到着すると家の中、の地下室に通される。そこには中年の男性と麗しい女性がいた。おそらくこの娘さんの両親…町長夫妻だろう。

「やあ、よくぞいらっしゃいました。旅の貴族様。私、この町の町長をしているラハディと申します。娘から聞きましたが、皆さまは交通規制の理由を知りたいとの事で」

 町長は静かに語り出す。

「実はこの町には魔獣伝説という物があるのです」

「「「魔獣伝説?」」」

 三人の声が重なる。イラついていたルイズも不穏な単語に落ち着きを取り戻す。

「五百年に一度、僅か一日ですが、ラ・ロシェールへの道から魔獣が現れ、破壊を尽くすという物です。その五百年目が…」

「「「今年…?」」」

「迷信と馬鹿にされるのも結構。しかし、こちらをご覧ください」

 町長が横にずれると、大きな石板が姿を現す。そこには無数の傷が、ある程度の規則性を持ってついていた。

「これは一年に一度、魔獣が現れるまでの残り年数を数える為に傷をつけている石板です。これを我が一族は使命として続けてきました。そして明日が五百目の傷をつける日なのです」

 説明を聞いてルイズが疑問を唱える。

「何故正確に五百なのですか?」

 町長はそれを聞いて奥さんに奥まで照らすように言う。

「ご覧ください…」

 そこには一行が息を飲む光景があった。先ほどの石板と同じものが十枚近く並んでいる。もちろんすべてに五百の傷がついている。

「これが証拠です。我が一族の使命の重みですよ。これのおかげで町の人も私を信じてくれるのです。」

 町長の一族は少なくとも五千年以上これを続けてきたことになる。この事実は一行に全てを信じさせるだけの説得力があった。

「だから皆、隠れる準備を…」

 一行は交通規制の理由をようやく理解した。そして地下室の意味も。地下室は身を守るためのシェルターになっているのだ。一行は少し考え込むが、ワルドが切り出す。

「ルイズ、今回の任務は急ぎの物だ。だが、急がば回れとも言う。伝説通り一日だけならまぁ…そこまで影響もないだろう。この町で魔獣とやらをやり過ごそう」

 ルイズと才人は異議なしと頷く。すると町長がそれならと手を叩く。

「それなら向かいの宿屋をご利用ください。地下に旅人用のシェルター兼、宿があります。もちろん貴族様でもご満足出来る部屋もございますから」

 一行は町長の紹介の下、その宿に一泊することにした。貴族用の部屋は他の部屋より蝋燭が多いだけだが、それでもありがたかった。

 

 

 

 

 一行はゆっくり休息し、魔獣が過ぎ去るのを待つことになった。

 

 

 

 




続きます。今回の最後の魔獣、分かる人には分かるかも?こいつどうしても出したかったんです。「ゼロの使い魔~真心~」を書くうえで絶対に書きたかった奴なんです。
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