ゼロの使い魔~真心~   作:へドラ2

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続きです。本当にお待たせしました。読んでってください。


ウルトラマン出ないんですけどね…(ボソッ)


ゼロの使い魔~真心~第34話

 夜、草木も眠る頃。ラ・ロシェールに向かう道中最後の駅に続く街道を走る二つの影があった。一つはグリフォン、もう一つは馬だ。しかし、乗っている人間は夜の静寂を乱す馬の足音と反比例するかの様に静かだった。

「…」

 誰一人として喋ろうとしない。彼ら…ルイズ、サイト、ワルドの一行は一言も話す事も無く旅路を進めていた。

(…皆…)

 そんな中、一人ルイズは思い出していた。その日の夕刻の出来事を…。

 

 

 

 

 コスモスがイフェメラを連れて行ってから数時間後…ルイズとワルドは才人を探して廃墟と化した村を探し周っていた。住民たちはウルトラマンを敵に回してしまった事に恐怖し、また地下室に潜り込んでいた。

「サイト~!返事して~!」

 ワルドは倒壊した建物の残骸を『エア・ハンマー』で吹き飛ばしながら、くまなく探していく。

「使い魔くん!返事をするんだ!生きていてくれれば助けられる!」

 そうして探していると、二人はレーヌの遺体が横たわっている家の前にたどり着く。

「…ほっとく訳には…いかないわよね…」

 ワルドも頷く。

「…そうだね…」

 しかし、ワルドは小さいようで、大きい異変に気付く。中に進もうとしたルイズを引き留める。

「待つんだルイズ!あさった形跡がある!」

 ルイズは慌てて瓦礫を見る。そこには微かに瓦礫を動かした形跡が残っていた。だが、ここにあさる物は一つしかない。

「まさか…レーヌさんの遺体を?」

 ルイズはせっかく閉めた堪忍袋の緒が斬れるのを聞いた。

「…遺体を盗むなんて…許せない!必ず取り返してやるんだから!」

 ルイズは残っていた足跡の進む先へ走り出す。ワルドも続いて走り出すと、並走しながら足跡が続いている場所…村の裏手の雑木林へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 ルイズ達は雑木林の中に走っていくと、小高い丘に出る。そして、その上に二つの人影を見つける。犯人だと思い込んでいたルイズは杖を引き抜き人影に向けるが、ルイズ達に気が付いた人影が叫ぶ。

「ワルド子爵!ルイズの目を塞いでくれ!」

 叫んだのは二人にとって聞き覚えのある声だ。ワルドは咄嗟にルイズを自身のマントで覆い視界を隠す。ルイズは何か分からず困惑するが、鼻についた異臭が全てを二人に教えてくれた。

「使い魔くん…それから、町長婦人…」

 才人は一心に穴を掘っていた。ワルドは離れた所から見ていたが、その傍らにいる人物には見覚えがあった。町長ラハディの奥さんだ。しかし、服装は変わっており喪服だ。

「使い魔くん、君が掘っているのは…」

「…墓穴」

 簡潔な答えだ。しかし、誰の?と聞くにはワルドにはとても勇気が足りなかった。しかし、横たわる二人分の遺体と奥さん。これで誰の墓なのかは容易にわかる。

「…そうか…やはり町長さんも…」

 この会話の間も才人は掘り続け、二人分入る墓穴を掘る。しかし、尚も才人は掘り続ける。

「まだ…掘るのか?」

 ワルドに聞かれた才人は、後ろに置いておいた数個の大きな袋を指さす。…よく見ると袋には赤い染みが数多く広がっている。が、何よりも目を引くのは袋から飛び出た一本の『手』だろう。

「…っ!まさかそれは!」

 ワルドは中身が何かすぐに分かった。尚更ルイズに見せる訳にはいかない、とルイズを覆うマントに力が入る。

「あのでっかい亀がぺちゃんこにしちまったのさ…」

 才人の手には血がこびり付いていた。亀砲兵に踏みつぶされ原型を失った肉塊も集めていたのだろう。このまま放っておけばカラスについばまれ、疫病の広がる元になる。片付けるしかないのだ。しかし、才人にはもう一つ理由があった。

(俺が…俺が、殺したようなもんだ…)

 あの時…自分が怒りを抑えていれば…そう考えただけで才人は心臓をえぐり掘られ、胃の内容物が吹き出そうになる。才人はそれに耐えながら肉塊を集めたのだ。ワルドは才人の心内が分かるわけでは無いが、辛く苦しかった事だけは容易に理解出来た。

「もう少しで掘り終わる、そしたら手伝ってもらえません?結構数あるんで…」

「ねえ二人とも」

 ルイズはワルドのマントの下から声をかける。凛とした声だ。震えを押し隠しているようにも感じられる。ルイズは拳を握りはっきりと言い放つ。

「私にも手伝わせて」

 これにワルドと才人は心底驚く。今目の前にある光景がどんな物か、会話の流れで容易に理解できるはずだ。なのに何故?驚いて止めるよう強く言うワルドに対し、ルイズは静かに呟く。

「この目でしっかりと見たいの。私たち人間の愚かしさを…、醜さを。私だけ一人何も知らないままじゃいられない。…ちゃんと、向き合わなきゃ」

 ルイズの覚悟を聞いた二人は考え込むが、互いに頷き合い、意志を固める。

「分かった…後悔すんなよ」

 才人が言うと同時にワルドがマントからルイズを出す。ルイズは目の前の現実に息を飲み、崩れ落ちそうになるが、ワルドに支えられる前に力強く自分の足で立ち直す。

「ふぅ~…二人ともこんな光景を見ていたのね。確かに平気で何かいられないわ…」

 ルイズは二人に深々と頭を下げる。普段のルイズからは想像する事が出来ない行為に戸惑う二人だが、そんな二人をよそにルイズは続ける。

「ありがとう。私にちゃんと見せてくれて…。あなた達の苦しみを少し理解できたわ…それに、サイト…使い魔の気持ちを理解出来ないご主人様何てメイジ失格だもの」

 ルイズは強がってはいるが、体が震えていた。これが今のルイズに出来る精一杯なのだろう…。ワルドはそう思うと胸が苦しくなる。何とかルイズを元気付けたいが、掛ける言葉が見つからない。

 

 

 

 

 その後、三人は協力し遺体を埋葬していった。血みどろになり、吐き出したい感情の全てを押し殺しながら。

 

 

 

 

「ふぅ…」

 誰ともなくため息が出る。夕日が沈んだ頃、遺体の埋葬が終わり、墓の代わりに町長親子の名前を刻んだ棒切れを刺したところで三人は疲労でへたり込む。

「ありがとうございます。これで二人も浮かばれるでしょう…」

 町長夫人はそう言うと纏めていた荷物を手にする。ワルドは疲れた体を起こすと、夫人を呼び止める。

「…やはり、町を出るのですか?」

 いつの間にかルイズと才人も起き上がり視線を夫人に向けている。

「…はい、この町には家族の思い出が多すぎます。あの子が生まれてからずっと…」

 夫人は背を向けているので分からないが、恐らく泣いているのだろう。大切な人との思い出が多いこの町にいるのは、それだけで苦痛だ。しかし、夫人にはすぐにでも町を出なければいけない理由がもう一つあった。

「…また命を狙われないという保証、ないものね…」

 ルイズの言う通り。冷静になった住民が事実を隠蔽しようと命を狙われないとも限らないのだ。今はこの町から出るのが夫人にとって一番安全なのだ。

「…行く当て、あるんですか?」

 才人の問いに夫人は頷いて見せる。

「実家が一つ前の駅の町にあるので…そこに…」

 夫人は涙を拭くと馬にまたがり、出発しようとしたところで才人達の方に向き直る。

「…ありがとうございました。貴族様たちが弔ってくださった事で、夫も、娘も…浮かばれるでしょう…」

 

「さようなら」

 

 そう言うと、夫人は夜の闇に消えていった。三人はその背中に声をかける事が出来なかった。しばしの沈黙の後に、ワルドが口を開く。

「さあ、僕たちも出発しよう」

 才人も「そうだな」と呟き、腰を上げる。唯一、ルイズは驚いた声を上げる。

「まっ、待って!?こんな状態で出発何てそんな…」

 言い終わる前にワルドはルイズを抱きかかえ、口笛で呼んだグリフォンにまたがらせる。

「無理だよルイズ。急ぐ旅というのもあるが、夫人と同じ危険が僕たちにもあるんだ。ここにはとどまれない」

 ワルドに言われルイズはハッ!とした表情になる。そう、命を狙われる危険は何も夫人だけではないのだ。

「…いこう、ラ・ロシェールまで近いんだろ?夜明け前にはつけるはずさ」

 才人が馬にまたがると一行は出発した。その足は瞬く間に速くなる。この町から一刻も早く離れたかったのだ。軍人であり、戦場を経験しているワルドでさえ心労で苦しんでいる。才人とルイズには凄まじい心労を与えていたのだ。

 

 

 

「…ここまでくればいいだろう」

 ワルドの一言でルイズは意識を現実に戻す。たどり着いたのは巨木、見上げると何処までも続いているような感覚のする巨木だ。

「流石に休もう皆、この巨木なら木の上で休めるだろう」

 才人は馬とグリフォンを巨木の下につなぐとワルドの『レビテーション』で巨木の枝の上に上る。三人はルイズを真ん中に座り込む。

「…なんだか、物凄い一日だったわね…」

 ルイズの呟きに二人は無言で頷く。しかし、そこから会話が続く事は無い。誰も喋る気力が残っていないのだ。しかし眠る事も出来ない。眠るには目が冴えてしまっていた。その静寂をデルフリンガーが壊す。

「なぁ相棒、娘っ子、旦那。いつまで辛気臭くしてるんだ?こういう時は何か気晴らししろよ!」

 あっけらかんと言うデルフリンガーにワルドは苛立ちを覚えるが、才人は「いいな…そうするか」と背負っていたギターを降ろす。

「気晴らしに一曲…」

 弾こうとしたした才人の手をルイズが止める。

「止めて、今の私たちにあの歌は…ドンピシャだもの…『誰かを救えるはずの力で誰もがまた争う』」

 そう言って顔を埋め膝を抱えるルイズ。ワルドは聞いたことは無いが、ルイズの雰囲気から今聞いて心地良い物では無い、と直感的に理解したらしい。才人に向けて首を振る。

「いや…たまには別の歌さ」

 才人はルイズに優しく語りかけるとギターを弾き始める。それは『君にできるなにか』とはまた少し違う歌だった。

「まぁ俺のオリジナルじゃないし…只の流行歌何だけどさ。まっ、聞いてよ…」

 

 

『君だけを守りたい』

 

 悲しみがある限り…人は夜に惑うよ…心の中に君の未来があるのさ…誰よりも何よりも…愛だけを信じたい…愛しい人の胸に…

 

 

 

 ワルドとルイズは歌に聞き入っていた。ワルドにとっては初めての異世界の歌という事もあるが、理由はそれだけでは無いだろう。才人が歌っているというのもあるだろう…哀しみと励まし、愛を失ってはいけない、大切な物を守る事の大切さを投げかけてくる歌だった。

「うぅ、グスッ、グスッ…」

 ルイズは込み上げてくる涙を必死に抑える。覚悟を決めて現実と相対したはずなのに、涙なんてっ!、と。ワルドも自分がしっかりしなければならないと思い、歯を食いしばっているが、目頭が熱くなるのを抑えられない。

「なぁ娘っ子、旦那。無理すっこたねえんじゃねぇの?」

「「無理?」」

 二人からすれば、何も無理なんてという気持ちだが、ここまで分かりやすい物も少ない。デルフリンガーはやれやれと思いながら続ける。

「ヤな事あったらな、泣けばいいのさ。大声出して、なりふり構わず、全部流しちまえ。ヤな事溜めこんでると壊れちまう。涙と一緒に流しちまえば楽になるさ」

 それを聞いた途端、二人の涙腺は崩れた。プライドの全てを投げ捨てて大声で泣きわめく。才人も演奏が終わったところで一緒に泣き出す。

 

 

 その夜、ひたすらに泣きわめく声が響いていた。しかし、その声を聞いた者は誰もいない。

 

 

 

 

 




続きます。『君だけを守りたい』の歌の印象は私の主観的な物です。「違うよ」という人はごめんなさい。なるべく次は速めに。
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