ゼロの使い魔~真心~   作:へドラ2

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続きです。お待たせしました。頑張って書いたので見ていって下さい。ウルトラマン出ないんですけどね…


ゼロの使い魔~真心~第37話

 瓦礫の町の中、才人は目を覚ます。立ち上がって状況を確認しようとするが、右腕の激痛でのたうち回る。

「がぁっ…そういやぁ腕、折れてたっけ…」

「無理すんな相棒、その内救助隊とかが来るから。まぁ待ってろや」

 才人はその場で倒れ込むと、ぼんやりと空を見上げる。今までの戦いなんて無かった、夢だったとでも思わせるような澄んだ空。

「…守れたかな?俺」

「守れたさ」

「…なあデルフ?」

「ん?」

 才人はデルフリンガーに聞いてみたい事があると言い、考え込みながら話し出す。

「『青』の姿のまま、赤色になれねぇかな?」

「何でぇ相棒?イメチェンか?」

「いや、俺の憧れるウルトラマン達は基本的に赤色で…個人的にはそっちの方がカッコいいかな~…何て…」

 話の途中から声が小さくなる才人だった。デルフリンガーがもう一度言うよう促そうとすると…。

「お~い!」

 誰となく呼びかける声。その後、遠くから「誰かいるかー!」と別の人間の呼びかける声が聞こえる。どうやら救助が来たようだ。

「おーい!俺っち達はここだ~!」

 疲れている才人の代わりに、デルフリンガーが答える。これで何とか助かる、そう思って才人は安堵する。

 

 

「あ~!あの時のボクじゃない!?」

 救助に来たのが黒ローブの女性と知るまでは。

 

 

「えっ?」

 才人の瞳から光が消える。言い表せない悪寒、恐怖、絶望が身を包む。肌が泡立ち、少しずつ体が震えだす。しかし何故か体は強張り逃げ出す事が出来ない。

(あれ…何で?動かねぇ…あれ?マズイ、もしかして、さらわれる…?)

 気が付くとすぐ近くに黒ローブの女性が立っていた。その手が才人に近づいて来る。

「さっ、もう大丈夫よ」

 黒ローブの女性は才人を抱きかかえる。このままじゃ連れ去れる、と恐怖にかられ何とか身をよじるが逃れられない。凄まじい力で固定され体が動かないのだ。

「あら、安心して。怪我人を無理に連れ去る~なんてしないから。恩は売るけどね♡」

 可愛らしくウインクされるが、結局恩返しに何を要求されるか分かったもんじゃない。やっぱりダメだ、と逃げようとする。

「おりゃあ!」

「キャッ!?」

 地面を転がりながらデルフリンガーを支柱に立ち上がると、体を引きずりながら逃げ出す。

「逃がさないわ!」

 黒ローブの女性は飛び上がりダイブタックルで才人を押し倒そうとする。しかし才人に手が触れる寸前、巨大な爆発が起こり黒ローブの女性を吹き飛ばす。

「ちょっとアンタ!うちの使い魔に何してくれてんのよ!」

 ルイズとワルドが駆け付けてくれたのだ。おそらく合流できなかった才人を探しに来てくれたのだろう。才人にとってはまさに天からの助けだった。

「うわぁぁ!助かったぁぁ!」

 才人は思わずワルドに抱き着いてしまう。ルイズとワルドは杖を構えて黒ローブの女性を警戒するが、焦げた黒ローブの女性は鼻血を流しながら叫ぶ。

「年上と年下!それはそれでアリよ!」

「「知るか!」」

 『エア・ハンマー』と『ファイアボール…の様な爆発』が放たれ、黒ローブの女性が遥か遠くまで吹き飛ばされたのが、才人が意識を失う前に最後に見た光景だった。

 

 

 

 

 

 

 翌日、『女神の杵』の中に建てられた仮設医務室で治療を受けた才人は、自分たちの部屋に戻ってきていた。折れた腕をつられた痛々しい姿ではあったが、その顔は安堵の色に染められていた。

「ホントにありがとう二人とも、二人がいなかったら…」

 ルイズはハイハイ、と答えると才人の額を軽くつつく。

「あんな不審者に使い魔をとられる程、不甲斐無くないわよ。私はね」

 ルイズの笑顔に少し照れる才人だが、そこにワルドが割って入って来る。

「そうだ!ウルトラマンのおかげで火災も鎮火、早くも町の活気が戻ってきているんだ、少し買い物にでも出かけないかい?使い魔くんの快気祝いだ」

 ワルドは才人の脇腹をつつく。

(何君が良い感じになってるんだ!)

(すっ、すいません…まぁ、デートのいい口実になったでしょ?)

 ルイズは少し考え込んでいた。重要な任務を前に遊んでいていい物かどうか、不審者対策についてどうするか、という事だ。しかし、どうやっても出発できるのは明日、ルイズの心に若い女性としての遊びたい気持ちが勝ち残る。

「気持ちの切り替えも大切よね!よーし!遊びに行きましょ!」

 ルイズは二人の手を取ると、町へと駆けだした。町は戦いの傷跡が色濃く残っているが、人々は以前と同じように活気に包まれていた。

「もうこんなに活気が戻ってる何て…」

 才人は人々のたくましさに目を見張るが、ルイズは少し冷めた目で見ていた。

「まっ、図太いとも言うわね。あの時のパニックったら見てられなかったわ」

 ワルドから何があったのか聞いた才人は乾いた笑いしか出来なかった。並んでいる露店には土産物屋や軽食店、アクセサリーショップ等々ありルイズは目移りしてしょうがない。

「ほらっ!あそこのお店行きましょ!」

 ルイズが駆けだしていってしまうのに慌ててついて行く二人。その時、ワルドの瞳の奥が鋭く光る。少し足を速め才人に追いつくと、小声で耳打ちする。

「すまない、少し離れるよ。厠に行ってくる。僕のルイズを頼む、不審者にも気を付けたまえ」

 そう言われ才人が振り向くと、そこには既にワルドの姿は無かった。

 

 

 

 

 

 ワルドは商店の間の路地に入ると、唐突に振り向き忍び寄っていた人物に杖を突きつける。

「はーい♡」

 わざとらしくおどけて見せたのはあの黒ローブの女性だった。『女神の杵』を出てからずっと後をつけて来ていたようだ。

「貴様、まだつきまとうか?」

 ワルドは黒ローブの女性に全力の殺気をぶつけるが、それを物ともせず黒ローブの女性はおどけて見せる。

「残ね~ン!今はア・ナ・タに用事があるの♡」

 黒ローブの女性は流れる様にワルドの間合いに入り込み、耳元で囁く。

 

 

 

「我らが『レコン・キスタ』有志、魔法衛士隊隊長ワルド子爵?」

 

 

 ワルドは咄嗟に飛びのき、いつでも魔法を撃てるように構える。ワルドに気づかせない程の素早い身のこなしにも驚いたが、この黒ローブの女性は今何と言った?

「何故その事を…?」

 ワルドは、返答によっては殺さなければならない。と身構えるが、黒ローブの女性は「大丈夫、大丈夫」とへらへら笑っている。

「安心してワルド子爵。私も同志よ。任務でこの町に来たの」

 ワルドは一転、安堵のため息を漏らす。

「…そう言う事か、驚かせないでくれ。所で、何の任務だい?」

 黒ローブの女性は待っていたとでも言わんばかりの笑みを浮かべると、良く通る低い声で呟く。

「裏切り者の始末よ」

 ワルドは瞬間、背筋が凍る。心の臓を握りつぶす様な殺気、吹き出たそれに当てられワルドは身震いする。自分に該当していないはずなのに。

「また物騒だね、我らが同志に裏切り者が?」

 黒ローブの女性は残念そうに「えぇ」と呟く。

「今更怖気づいて逃げ出した奴が一人ね、船ごと吹っ飛んでもらったわ」

「ほう…?船ごと…船ごと!?」

 その時、ワルドの脳裏に映し出されたのは昨日の事件。巨大な怪物がラ・ロシェールを襲い、船の一つを吹き飛ばしたあの光景。

「まっまさか!?」

 驚くワルドを見て黒ローブの女性はクスクスと不気味に笑う。

 

 

 

「えぇそうよ。あの戦神を操っていたのは私。そしてあの戦神を作り出したのは我らが同志『オリヴァー・クロムウェル』よ」

 

 

 ワルドは目を見張る。あのウルトラマンを一方的に責め立て、追い詰めた怪物を操っていた?作り出したのは『オリヴァー・クロムウェル』?衝撃の事実に狼狽する。

「まぁ驚くわよね。私もウルトラマンが出て来た時にはどうなるかと思ったけど…でもこれでもう裏切り者は出ないでしょう。いい見せしめになったわ」

 言葉の出ないワルドを見て、黒ローブの女性が近づいて来る。その手を取ると、そっと何かを握らせてくる。

「…?」

「これはもう一つの任務、あなたに渡すようクロムウェル卿から頼まれていたの。必ずあなたの力になってくれるらしいわ」

 それは筒状のカプセルのような物だった。しかし、受け取ってよいのか?あんな怪物を作り出し、操るような連中から…。

「…ありがとう」

 ワルドは受け取るしかなかった。拒否して裏切りを疑われればあの怪物をけしかけられる。そうすれば確実に命は無いからだ。

「そう言えば話は変わるけど…」

 黒ローブの女性はまたワルドの耳元まで来ると、小声で囁く。

「お仲間の女の子の事が好きなのね♪」

「っ!?」

 ワルドは顔を真っ赤にして、どうしてわかったか黒ローブの女性に問いただす。

「あら、女は敏感なのよ?そういうの。…そうそう、あの女の子落としたら男の子の方私に頂戴よ」

「………それは…まぁ…」

 答えを渋るワルドに黒ローブの女性は頬を膨らませる。

「何よ、はっきりしないわね。まぁ、女の子がダメだったらあなたがうちの娼館に来ても…」

「断固断る!」

「即答じゃない」

 

 

 

「すまない遅くなった」

 黒ローブの女性から逃げるように離れたワルドはすぐにルイズ達と合流した。ルイズ達は出店で何か買ったのかキャイキャイ騒いでいる。

「あっ!ワルドさま~!手を出してください!」

 ルイズはワルドに走りよると、その左腕に何か装飾された腕輪をはめる。そこまで上等な物では無いだろう。よく見るとルイズの左腕にもはめられていた。

「これは?」

 ルイズは屈託のない笑みで答える。

「これ、幸運を呼ぶ腕輪らしいんです。今回の任務が無事に成功するようにって思って…三人で付けようかなって買ったんです」

 一瞬お揃いで喜んだワルドだが、三人というワードが引っかかり才人の腕を見る。確かに才人の腕にも腕輪が付いていた。しかし、どこか違和感を感じる。何と言うか…ボロボロで少し錆びていた。

「ああ、実は才人のは…新品が売り切れちゃって…」

「いいんですよ、俺のは中古で」

 口ではこう言う才人だが、ワルドにアイコンタクトで伝えてくる。

(これで貸し借りなしで…いいですか?)

(ああ!)

「さっ!この腕輪に誓いましょう!」

 ルイズは二人の肩を寄せると円陣を組み、三人の手を重ねる。

「絶対任務成功させるわよ!」

「「「オー!」」」

 

 

 

 声を合わせて叫んだが、ワルドは一人複雑な心境だった。自分がしようとしている事はこの誓いとは真逆の事なのだから。

(これでいいんだろうか…だが、裏切れば…っ!)

 ワルドは一人苦悶するのだった。

 

 

 

 

 




続きます。黒ローブの女性、大事なポジションです。次回、ラ・ロシェール出発(ようやく)

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