ゼロの使い魔~真心~   作:へドラ2

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続きです。仕事が休みなので一気に書きました。長いです。やっと出発したのに、まだ着きませんが。後、今回閲覧注意です。


ゼロの使い魔~真心~第38話

 朝、才人は外が暗いうちに目を覚ます。床で眠っていた為か体が軋むが、腰を回して関節を鳴らし紛らわす。

「ん~、もう朝か…」

 才人はルイズとワルドが眠っているのを確認すると、一応と思い部屋の前や窓の外を確認する。

(よかった…あの不審者はいないみたいだ…それにしても、ついにアルビオンに出発か…)

 才人は少しずつ出て来た日の光をぼんやり見つめる。なんだかんだあったが、ようやく本来の目的地に向けての出発だ。

(船が飛ぶってことは…アルビオンも空にあるのかな?…空にある大陸ってイメージかな?)

 才人は思わず身震いする。

(あーあ、ヤな事思い出しちまった…忘れよ忘れよ!)

 才人は考えたことを頭の奥にしまい込むと、眠る二人を起こす。ワルドはすぐに起きてくれたが、「もう五分~!」と言ってルイズは起きない。才人は、無理に起こそうとしたら飛んできたルイズの拳に意識を刈り取られ、結局ワルドにルイズを起こしてもらったのだった。

 

 

 

 

「もうこのバカ犬!いつまで寝てんのよ!」

 才人、ルイズ、ワルドの三人は『桟橋』へ向け全力で走っていた。出航の時間まであと五分程度しかないのだが、才人が起きなかった為に出発が遅くなってしまったのだ。

「怪我人の俺を無理やり寝かせたのはルイズだろうが!」

 痛い所をつかれ顔を赤くするルイズだが、小さく「ふんっ!」と鼻を鳴らして黙ってしまった。

「いいから急ぐよ君たち!」

 ワルドに促され家と家の間の階段を大急ぎで駆け上がり、船の発着場までやって来る。

「あそこの船だ!」

 三人は外されかけていたはしごを全力で駆け上り、滑り込んでどうにか間に合った。甲板に尻もちをついて着地したのを見て驚いた船員がやって来る。

「どっ、どうしたんですか!?定期便のお客様ですか!?」

「あ、ああ、そうだよ…」

 ワルドは息を整えるとゆっくりと立ち上がり、乗船許可証を三人分見せる。

「先日船長と交渉した者さ、言えばわかるよ」

 すぐに確認をとった船員に連れられ、三人は船室に招かれた。

「初航海頑張ってくれよ!船長!」

 船長らしき人物に挨拶をしたワルドは、一息つくと椅子に腰かける。

「…いやぁ間に合って良かった」

 三人は顔を合わせてほっと溜息をつく。才人は無理して走った為か、骨折した腕に鈍い痛みが走る。毎回慌ただしいが、何とかアルビオンへ向かう事が出来る。そこで才人がふと気になった事をルイズに尋ねる。

「なあ?そういや、何で定期船何か出てるんだ?前聞いた話じゃ今アルビオンって大変な時期なんだろ?定期船出せるくらいには落ち着いてんの?」

 才人は最初、武器商人の船に乗せてもらうのかな程度に考えていたのだが、定期船に乗れるとは思いもしなかった。

「ああ、それは…」

「それは僕が説明しよう」

 ワルドはルイズの代わりに事の理由を教えてくれる。何でも両軍とも軍部の重職達が暗殺や事故により軒並みいなくなってしまい、両軍ともにらみ合い状態になっているらしいのだ。

「僕たちがトリステインを離れている間に町を蝋に変えた怪物騒ぎがあっただろう?どうもその怪物にやられたらしい。その他にも各国の重職達が蝋に変えられた、切り刻まれていたなどの事件が報告されているのだ」

 才人はマグマ星人の時の事を思い出し、そんなに多くの犠牲者がいた事に驚き、胸を痛める。まぁ…それがマグマ星人達のかつての作戦と才人は知る由もないのだが。

「まぁおかげでアルビオン軍が勢力を盛り返してきていてね。港は取り返され、定期便が出るまでになったのさ」

「へ~」

 才人が聞いていると船はどんどん高度を上げていく。船室の窓から見えるのは遠く離れていくラ・ロシェールの街並みだ。

(やっぱり…空に行くのか…)

 才人は自分の考えが当たっていた事に喜ぶよりも先に、嫌な事の方を先に思いだす。

(空の大陸…あの事件も確か…)

 顔をしかめた才人にルイズは眉を寄せる。

「どうしたの?空は苦手?」

 才人は首を横に振る。

「いや、空の大陸って言うと…俺の世界である事件があってね…」

「「事件?」」

 ルイズとワルドは同時に首をかしげる。才人は言うのを拒んだがルイズに急かされ重い口を開く。

「昔な、俺の世界の空飛ぶ船…まぁこの世界の空飛ぶ船とはだいぶ違うんだけど…が突然現れた空の大陸に不時着して、そのまま行方不明って奴があったのさ。200人規模の救助隊が出たんだけど、結局見つからなかったのさ」

 ルイズとワルドは顔を青くして身震いする。

「何ちゅー話聞かせてんのよ!」

「これから空の旅なんだぞ!」

「だから言いたくなかったんだよ!」

 言い合って疲れ、三人で横になって一時間ほどたった時、船内に魔法で放送が入る。どうやらあの船長のようだ。

『乗船の皆さま、お待たせしました。只今アルビオンに到着しました。お降りの際はお忘れ物の無いよう…』

 やっと着いたか、と降りる準備を始める才人だが、ルイズとワルドは表情が固まる。

「ワルドさま…」

 ルイズは震えながらワルドの手を取る。

「何だい?ぼっ、僕のルイズ?」

 ワルドも震えながらルイズの手を握り返す。

「こんなに早く…アルビオンにつきましたっけ?」

 ルイズの怯える目線が、震えるワルドの視線と交わる。

「いや、いくらアルビオンが近づいて来ていても…三時間は、掛かるよ?」

 ルイズは、ぼそりと呟く。

「…早くない?そう言えばこの船の船長って初航海なのよね?」

「そうだよ…もしかするとアルビオンとの距離関係をそこまで分かって無いかもしれないね…」

 

 

 バァン!

 

 

 ルイズとワルドは船室の窓を開けると急いで飛び降りようとする。

「わー!?何やってんですか!?アンタらは!」

 才人が慌てて二人を捕まえて中に引きずり戻すと、誰も通さまいと窓の前に立ちふさがる。

「サイト!これは主人命令よ!どきなさい!」

「使い魔くん!ここは急がば回れだ!別の便でもいいだろう!」

「別の便が出る前にあの世へ直行便だよ!」

 慌てふためく二人を前に、才人は冷静に説得を試みる。

「待ってよ、もしかすると早く着いただけかもしれないじゃないか。降りてみればわかるさ」

 アルビオンの港町が目に映るはずさ。そう言われ落ち着いたルイズとワルドは降りる荷造りを整え、他の乗客と一緒に船を降りる準備をする。

 

 

 ドガガガガッ!

 

 

「「「うわぁぁ!?」」」

 その時だった。船に凄まじい衝撃が走り、大きく揺れる。ワルドの上にバランスを崩したルイズが倒れ込み、才人はすんでの所で踏ん張って転ばないようにする。

「なっ何だ!?」

 才人は慌てて甲板に出る。才人の視界に入ってきたのはアルビオンの港町…では無く、うっそうとした暗い雑木林だった。

「これは…?」

 どうやら船は突然現れたこの雑木林に不時着してしまったようだ。船の後方を見に行くと詳しい状況が見えて来た。どうやら船はスピードを抑えられずに着地したのか、地面を大きくえぐり傾いてめり込んでいた。

「何よ…これ…」

 いつの間にかやってきていたルイズは茫然と雑木林を見ていた。横にいるワルドも目を見開いていた。

「アンタが、才人があんな話するから~!」

 ルイズは涙目になりながら才人に掴みかかる。が、ワルドが冷静にルイズを抑える。

「待つんだルイズ、あくまで偶然だよ。それとこれとは別さ。僕たちはとにかく脱出経路を見つけないと、あと船を飛べる状態にしなければ帰るに帰られないぞ…」

 恐らく船底には大穴が開いているだろう。こぼれ出た風石が翡翠色に輝いている。

「僕は船長に掛け合ってくる。調査班と修理班に人を分けるんだ」

 流石は魔法衛士隊隊長、先ほどのまでの慌てた様子は何処へやら。テキパキと行動し周りを引っ張っていく。船長の所へ向かって十分後、直ぐに戻ってきた。

「お待だぜ、づがいばぶん。びにはぢょぶざばんだ」

 顔面ボコボコで。

「「ちょっと待って!?何があったの!?何で冷静なの!?」」

 才人とルイズは何故かボロボロになったワルドに肩を貸す。

「…実ば」

 どうやら船長に状況の説明を求めた乗客が殺到していたらしい。その中にいた四十代後半くらいの女性にぶつかり、痴漢を疑われて…だそうだ。

(どの世界もおばはんこえぇ)

 ともかく船長達と話はついたようで、船員たちが乗客30名(才人・ワルドを除く)を警護し船を修復する班。ワルドと才人、船長が調査をする班にしたらしい。ルイズは抗議したが、大人しく船の中で待っていてもらう事になった。その説得だけで一時間もたったが。

 

 

 

 

 

「これは…」

 調査に出て五分、船長は声が出なかった。目の前の光景がこの世の物とは思えない。自身のミスでこんなところに来てしまったとはいえ、ここは何処なのだろうか?何の為に存在しているんだろうか?

(絵具をぶちまけたような沼…人間を襲う植物…この世にこんなところが…)

 ここに来るまでに一度謎の植物に襲われたのだ。一緒に来てくれていた貴族様と剣士がいなければそこで死んでいたに違いない。

(何で…何で…僕の時に限って…)

 自分以外の誰かならいいのか?と言われればそうじゃない、と言いたいとは思う。しかし実際にそうなればこう思うのが普通だろう。きれいごと何て考えられない時もある。

「…やっぱり…ここ…」

 自己嫌悪する船長をよそに、才人は悪い予感が的中してしまった事をその目で確認してしまった。才人のノートパソコンの中に、古い新聞記事のデータが入っている。ウルトラ警備隊のスカイダイビング中の事故、その時の記者発表の記事だ。

「アマギ、ソガ両隊員の報告通りだ…やっぱりここは…」

 

 

 うわぁぁ!?

 

 

 才人は考え事をしていた為、『それ』の接近に気が付かなかった。船長がいつの間にか『それ』に襲われていた事にも。

「あいつは!」

 

 

『宇宙蜘蛛グモンガ』

 

 

 六本の足を持つ巨大な蜘蛛が船長に襲い掛かっていた。上からのしかかり、その巨大な顎で噛みつこうとしている。よく見ると他にも二匹、船長に迫っていた。駆け寄るワルドを才人は慌てて制止する。

「待ってワルド子爵!そいつは口から毒ガスを出すんだ!むやみに近づかないで!」

 ワルドは慌てて足を止めると素早く詠唱、『エア・ハンマー』をグモンガに放ち、その体を粉砕する。残る二匹の内一匹に肉迫した才人は、一匹を念力で拘束、デルフリンガーの突きで串刺しにし、逃げ出したもう一匹はデルフリンガーを下投げに投擲。木に縫い付け絶命させる。

(左腕しか使えないのは厳しいな…)

「危なかったよ使い魔くん、危うく毒ガスの餌食になる所だった」

 デルフリンガーを抜いた才人はワルドからの礼にこそばゆくなるが、直ぐに気持ちを引き締める。

「ワルド子爵、俺があの蜘蛛の事を知ってるってことは…」

「ここが例の事故を起こしたところと同じという事…なんだね?」

 ワルドの冷静な判断、理解力に感謝する才人だった。

「えぇ。正確には場所が違いますが、首謀者は同じでしょう。首謀者は…」

 

 

 

 リリリリリリリリリリリリリリリッッッ!!!

 

 

 

 突如として三人の耳をつんざく気高い音。まるで鈴の鳴る音。突然のそれに三人は耳を塞ぐ。

「なっ!?これは!これは何だ!?使い魔くん!…使いまっ!?」

 ワルドの声が才人に届く事は無かった。何故なら才人は苦痛にのたうち回り、絶叫する事しか出来なかったからだ。船長が耳を塞ぎながら近づいていく。

「どうしたんだ!君!大丈夫か!」

 耳元で叫んでも才人は苦しむばかり。才人はウルトラマンになった事で人間以上の聴覚を得たが、今はそれがあだになっていた。

「人…間の脳波…を狂わ…す音波…間違い…ねぇ!」

 才人は陽炎のように揺らめく空間から現れた虫のような見た目の巨大な怪人を睨みつける。

 

 

『音波怪人・ベル星人』

 

 

「やっぱり…てめぇか!」

 才人はデルフリンガーを構え、変身しようとするが、立ち上がる事もままならない。雄たけびを上げ、デルフリンガーを振り上げるが変身することはかなわず、その場に倒れ込み気絶してしまった。

 

 

 

 

 

「うぅ…」

 酷い頭痛の中、ワルドは目を覚ました。めまいで起き上がれないが、ルイズに助け起こされる。

「あぁ…ありがとうルイズ…ルイズ!?」

 ワルドは船にいるはずのルイズがいる事に目を丸くする。見渡せばそこは先ほどまでいた雑木林では無く鉄格子の牢獄の中。よく見ると船の乗客や船員、船長も周りにいる。

「船の修理が終わった後、突然鈴の音がして…怪人が現れたの。そいつらに連れて来られて…」

 ワルドは杖を探すが何処にもない。武器は鉄格子の向こうにまとめられていた。何とか取ろうとするワルドだがいい案は浮かばない。そんな時、鉄格子の向こうからあの怪人が歩いてくる。大きさは人間と同じになってはいるが、その威圧感は隠せない。

「やあ皆さんこんにちは。私、ベル星人のカニバと申します」

 ベル星人は深々と頭を下げる。体つきからして女性のようだ。一度咳ばらいをすると、さらりと恐ろしい事を話し出す。

 

 

 

「あなた達はこれから食肉になって頂きます」

 

 

 

「何ですって!?」

 ルイズは鉄格子に掴みかかり、カニバを睨みつける。カニバは「はっはっはっ」と笑って聞き流し奥から人間が吊るされた台車を持ってくる。

「ッ!?サイト!?」

 そこに吊るされていたのは才人だった。ベル星人の殺人音波で憔悴しきっているのか、目には光が灯っていない。

(カッ…カニバ…)

「ん?」

 才人はテレパシーでカニバに問いかける。

(何故…こんな…事を?)

「ふふっあなた、テレパシー使えるのね」

 カニバは怪しく微笑む。

「私たちの星はもう住めない程に科学物質に汚染されてしまってね、以前『地球』という星で私たちが住めるかどうか実験したの。その時サンプルとして捕えた人間達をね、食用として買いたいという知的生命体がいたのよ」

 聞いていたルイズは顔を青くする。そんな奴がいるのか?と。

「結局その時はウルトラセブンに邪魔されて失敗してしまったわ。でも人間タイプの生命体を売る商売を始めたのよ。すごかったわ~、その時のサンプルだけで星人が全員居住できるだけのコロニーが買えたのよ?それからは同じ事を他の星々で繰り返したわ。只…最近、宇宙警備隊の監視が強くなってきてね…」

 カニバは才人の顔を覗き込む。

「そこで、この世界に来たの。あなた達『超高級食材』を手に入れる為にね。別にいいじゃないの。あなた達だって牛や馬を食べるでしょ?一緒よ」

 カニバはナイフを取り出し、シャン!シャン!と砥石で研ぎだす。

「さっ、見てなさいあなた達はこうなるのよ。男は捌くのに時間がかかるのよ」

 才人の首にナイフが当てられる。才人は暴れるだけの体力も残っていないようだ。ルイズの泣き叫ぶ声も聞こえていないようだ。

 

 スッ!

 

 カニバのナイフが一閃、頸動脈を切り裂く。才人の首からは血が流れ落ちバケツに溜まっていく。「これも商品よ」とカニバは血が出きるのを待つ。

「出た出た。さてと」

 

 ゴキンッ!

 

 ルイズからは影になって見えないが、カニバは何かをねじ切ったようだ。ルイズは全身から汗が吹き出す。考えたくない、考えたくない!

「よいしょ」

 カニバはねじ切ったそれを横に置いておいた杭に突き刺す。それは…

 

 

 

 才人の生首だった。

 

 

 

「いやあぁぁぁぁぁーーーーー!」

 ルイズの悲痛な絶叫は、他の人間達の恐怖の叫びにかき消された。

 

 

 

 




続きます。「え?続けられるの?」って感じですが、続きます。
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