ゼロの使い魔~真心~   作:へドラ2

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続きです。運命の結婚式。


ゼロの使い魔~真心~第42話

 双月の光のみが差し込む寝室、疲れたルイズは食事もそこそこに、ワルドの胸に身を任せていた。ワルドは胸の高鳴りが聞こえないように心臓の反対側にルイズの頭を抱えている。

「落ち着いたかい?僕のルイズ」

 ルイズは小さく頷く。そのはかなげな目はワルドを下から見つめてくる。ワルドは今しかないのではないか?と自分に問う。

(今なら行けるのでは!?でもルイズの弱みに付け込むなんて卑劣な…!)

「ねぇ?ワルドさま?」

 ルイズはワルドの裾を掴む手に力を入れる。

「私、もう一度王子様を説得するわ」

 ワルドはバツの悪そうな顔をする。

「いや、それは…」

「無理だろうよ」

 突然の声に二人が振り向くと才人が入って来る。才人は暗い事に不平を言いながら部屋の蝋燭に灯りをつけていく。

「無理ってどういう事よ!」

 ルイズは才人に掴みかかる。顔は既に怒りで歪みかかっている。

「愛する者の為に戦うとよ」

 才人はウェールズに直接話をして来た事を伝え、床に座り込む。ルイズの体調が良くなったのを知り安心すると、持ってきていた水のボトルを一気に仰ぐ。

「ぷはっ…実はさ、その王子様からお知らせがあってさ…」

 才人のいつになくハッキリとしない態度にルイズがイラつきを募らせる。

「何よ、はっきり言いなさいよ!」

 才人は少し小さい声で呟く。

「あっ、あなた達の結婚式が明日執り行われる事が決まりました…」

 ワルドとルイズは「え?」と目を合わせる。聞こえていないと思った才人は、深呼吸してハッキリと言う。

「あなた達の結婚式が明日執り行われます!」

「「聞こえてる!(わよ!)」」

 二人の顔がどんどん赤くなっていくのが見て取れる。ワルドは混乱が激しくブツブツ何やら呟いている。

「たっ確かにこの旅で落としてやるとは考えていたがそんな急な…」

「急すぎない急すぎない急すぎない!?たっ確かに子爵はいい人よ?でもでもでも…」

 舞い上がるワルド、混乱するルイズに才人はウェールズからの伝言を伝える。

「…王子様がな、自分たちはもう無理だからって…代わりに、幸せな未来ある二人の婚姻の晩酌を務めたいって」

 舞い上がっていた二人は途端に冷静さを取り戻す。しかし、ルイズは少し晴れやかな顔になる。

「…そう、やっぱり王子様も少しは心残りなんだ…」

 ウェールズが完全に想いを捨てた訳じゃない。それが分かって晴れやかな気持ちなのだろう。ワルドはその様子を見て腹をくくる。

「使い魔くん、殿下に了承とお礼を伝えて来てくれないかい?」

 それを聞いた才人は立ち上がり、式の流れをある程度説明する。

「式は俺抜き、三人だけで行う。まあ、脱出の準備もあるし…何より決戦前だしな。それじゃあ伝えてくるよ」

 ルイズは才人が出ない事に残念そうだが、ワルドはついにここまで来たかと舞い上がっていた。

「すまないルイズ、トイレに行ってくるよ」

 本心は違う。にやけている顔を見られるのが恥ずかしいからだ。浮かれながら廊下を歩いていると声をかけられる。

「もし、もし。もしや魔法衛士隊隊長ワルド子爵ではないですか?」

 ワルドはこの声に聞き覚えがあった。物凄い猫なで声だが、忘れたくても忘れられない声だ。

「貴様っ!何故ここに!?」

 ワルドが振り向くとそこには黒ローブの女性が立っていた。ローブを深くかぶっているせいで顔が見えないのが、より不気味さを生み出している。

「ふふっ、ご結婚おめでとう。とでも言おうかしら?」

 黒ローブの女性は、まるで時を止めたかのような感覚に陥らせる程の速度でワルドに近づき押し倒す。

「『任務』、忘れてないでしょうね?」

 ワルドは抵抗しようとするが体がピクリとも動かない。物凄い怪力だ。

「…もっ、もちろんだとも!」

 黒ローブの女性の顔がワルドの顔に近づいてくる。

「話聞いてたわよ?三人だけになれるんでしょう?そこで殺っちゃいなさいよ」

 耳元で囁く声は甘く囁くものから凍り付くような冷たい声に変わる。

「じゃなきゃどうなるか解ってるわよね?」

 背筋が凍るワルド。しかし、今の状況から見た自身の見解を伝える。

「一つ問いたい。今、勝利が確定している今、『任務』を遂行する事に何の戦略的価値がある?」

「あら?気になる?」

 黒ローブの女性がワルドに説いたのはウェールズの戦術的価値だった。

「この戦いで王子様に逃げられれば、いつか興国のシンボルとしていつか奉られるでしょう。本人が望む望まないに関わらずね♪同志が求めているのは確実性よ?」

 黒ローブの女性はワルドの首筋に唇を押し当てる。同時に走る鋭い痛み。

「ッ!?」

 ワルドは慌てて手で押さえると、血が流れ出ている。いつの間にか離れていた黒ローブの女性は何処か楽しそうに話す。

「ふふっ…おいしい。もっともっと味わいたいけど…私も王子様を狙うわ。けど警備が多くて逃げられるかもしれない。だから、頼むわね♪」

「あっ!?」

 ワルドは思わず声を上げる。黒ローブの女性はすでにいなくなっていた。しかし、ワルドが声を上げたのは別の理由がある。去り際に、にやけて見せた黒ローブの女性の『それ』を見たのだ。黒ローブの女性の口が突如として耳元まで裂け、『それ』が見えた。

 

「あれは…牙?」

 

 見えたのは双月の光を反射する鋭い牙だった。

 

 

 

「そうかい、ありがとう」

 ウェールズにそう言われると才人はありがとうございます。と頭を下げ、部屋を後にする。才人はそのまま廊下をさまよう。別に戻る部屋を忘れた訳ではない。ただ、邪魔しちゃ悪い、そう思って廊下をさまよっていたのだ。

「なあ相棒?覗かねぇの?たぶん今頃しっぽり…」

「わー!わー!わー!」

 才人は顔を真っ赤にして、大声で誤魔化す。親父かよ…とデルフリンガーに文句を言うと、壁を背もたれにして床に座り込む。

「あーあ、これでルイズともお別れか…」

「何でぇ娘っ子の所出ちまうのか?」

 デルフリンガーは何で何でとしつこく聞いてくる。そりゃそうだろ、と才人は呟く。

「新婚の所に、使い魔とはいえ人間がいるとなったら邪魔だよ」

 才人は少し寂し気に呟く。

「さよなら、俺の可愛いご主人様…お幸せに…」

 デルフリンガーは、ははーん!と笑いかけてくる。

「相棒も娘っ子の事好きだったのかい?」

 才人は思わずせき込む。

「ブッ!ゴホッ!ゴホッ!そんなんじゃねえよ!…只、なんだかんだで…な。俺さ、あいつにこの世界に召喚されてからずっと一緒だったから少し寂しくなっちまった」

 デルフリンガーは突然黙り込むと才人に問いかける。

「なあ相棒?もう無理に娘っ子の所にいる必要はねえんだ。元の世界に帰っちまうのはどうだい?」

 才人は首を振る。

「帰り方が分かんねぇよ。そりゃあ…母さん父さんには何も言わないでこっち来たから心配してるだろうし…一度は帰らなきゃって考えたよ。でもさ、この世界は侵略者に狙われている。『ウルトラマンコスモス』が必要なんだ。それに、『ウルトラブレスレット』を残したシャプランを殺した怪獣がいつこの世界に来るかも分からないんだ。そしたら犠牲者が出る。帰れないよ」

 その化け物怪獣に勝てる保証は無いけどさ…、呟く才人にデルフリンガーは問いかける。

「ロングビルの姐さん守りたいもんな?」

「ああ」

 

 

「「……………」」

 

 

 

「やっぱりか!やっぱりか相棒!」

「だー!待て待て!話を聞け!」

 才人はさっき以上に顔を赤くする。

「違うんだよそういうのじゃなくて…」

 才人は一度咳払いをする。

「俺はこの世界に来て色んな人たちと関わっちまって…今更無関係でしたーはねぇだろ?マチルダさんもその一人だよ…それ以上は…まだ分かんない。今までウルトラマンが大好きで、そっちに夢中でさ…色恋なんてしたこと無かったんだよ。だから、自分の気持ちがどうだ何て…」

 

 

ドタンッ!

 

 

 

 突然の凄まじい音に才人とデルフリンガーは会話を止め臨戦態勢になる。曲者かもしれない、そう思いデルフリンガーを構えると、音の方へ静かに向かう。音の場所まで到着すると壁を背に覗き込む。

「…ワルド子爵?」

 見るとワルド子爵が押し倒され何か話し込んでいる。

(襲われている…のか?)

(別の意味で襲われてんじゃね?)

(ちょっと静かに、デルフ)

 

「三人だけになるんでしょ?そこで殺っちゃいなさいよ」

 

 何て冷たい声だろう。才人は背筋が凍る。…間違いない、あれは人間じゃ無い。まるで…そう、悪魔だ。才人は体が震え、デルフリンガーをにぎ握る手に自然と力が入る。しかし、ふとその言葉の意味が頭に引っかかる。

(…三人だけ?ワルド子爵に関する事で、三人だけって…え?殺る?殺るって言った?)

 

「…頼むわね」

 

 才人が考えている間にワルドに覆い被さっていた影は消え去ってしまう。才人は追えなかった事より、会話の内容で頭がいっぱいになっていた。

 

 

(殺る?殺る?犯る?ちがう。殺る?誰を?え?誰を?え?)

 

 

 

 寝室、一人残されたルイズは布団にくるまっていた。つい先ほどまで晴れやかな顔をしていたが、今は表情が暗い。男二人がいなくなった事で改めて冷静になって考えてみたのだ。

「ワルド子爵は私の婚約者…いつか私と結婚する運命にある人…」

 ルイズはこの旅で幾度となくワルドに助けられ、その人となりを見て来た。子どもの頃のあやふや記憶や、ぼんやりとした憧れという感情とは関係なしにワルドの事を好いているのは事実だろう。しかし…。

「サイト…私の使い魔、私のいぬっころ…」

 才人の事がルイズの頭から離れないのだ。あくまでも使い魔であるはずの才人の事がなぜこうも思い浮かぶのだろうか?…ルイズは自分の手を見つめる。

(まだ…残ってる…)

 先ほどルイズは才人の手を握りしめていた。ウェールズ達をどうにか助けたい、その手を伸ばしたいと思った時に半ば無意識に力強く握りしめていたのだ。その時の感触がまだ残っていた。

(不思議な所もあるけど、一緒に笑って、一緒に泣いて…思いのほか、頼りになって…何より、一緒にいると何だか楽しい…)

 確かにこの旅の前からモヤモヤした気持ちを抱えていたのは事実だ。そして、この旅でワルドへの好意を自覚すると同時に、才人との絆が以前より深まった気がする。

(私、もしかしてサイトの事……ダメ!…これじゃギーシュと一緒よ!サイテーッ!)

 ルイズは頭から布団をかぶると、ゆっくりと自分の手を握る。

(でも、サイト…握り返してくれなかったな…)

 どれだけ助けを求めても、どれだけすがっても、才人は手を握り返しては来なかった。拒絶こそしないが、気持ちを受け止めてはくれなかった。

(何よ、使い魔のくせに…私の、私の、使い魔のくせに…)

 ルイズは延々と考えを巡らせる。才人がどうして握り返さなかったのか、本当の理由の分からぬままどれくらい時間が過ぎたたろう?一日の疲れに襲われ、眠気が押し寄せてくる。

(こんな気持ちでワルドさまと結婚なんて…おこがましいわ…間違ってる…こんな…)

 ルイズはひたすら自分に問いかけ続け、自分の気持ちを推し量れぬまま悩み続け、眠りについた。

 

 

 

 

 

 翌日、ニューカッスル城内にある、始祖ブリミルの像が置かれた礼拝堂にて。ウェールズは皇太子の礼装に身を包み、新郎新婦の登場を待っていた。帽子で揺れる七色の羽はアルビオン王家の象徴だ。

 

 

バタン!

 

 

 扉が開き、ルイズとワルドが入って来る。ルイズの頭の上にはアルビオン王家より借り受けた新婦の冠がかぶせられていた。それは魔法の水で永久に枯れぬ花があしらわれ、ルイズの美しさをより高めている。

「いよいよだ…」

 ワルドは緊張で震えながらも、覚悟を決めた表情でどうどうと歩く。しかし、ルイズは表情が晴れない。結局悩みは解決しないままついにここまで来てしまったのだ。

(サイト…いる訳ないわよね…)

 ルイズは礼拝堂の中を一度見渡す。しかし、ふと我に返る。今は自分とワルドの結婚式、なのに無意識にサイトを探してしまった。今サイトは脱出船への非戦闘員乗船の手伝いに行っているのに。

(…私、無意識に…探してた?)

 そうしている間に、ルイズの肩に新婦のみが羽織る事の許される純白のマント…乙女のマントがかけられる。

「では、式を始める。」

 ウェールズの一言でついに式が始まってしまう。ルイズはどうすればいいんだろう、と考えるがあれよあれよと言う間に式は進み、誓いの言葉にまで来てしまった。

「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。汝は始祖ブリミルの名において、この者を敬い、如何なる時も支え合い、愛し、妻とする事を誓いますか?」

 ワルドは重々しく頷き、杖を持った手を胸の前に置く。

「誓います」

 ウェールズは頷くと、ルイズに視線を移す。

「新婦、ラ・ヴァリエール…」

 誓いの為の詔を読み上げるウェールズの声が礼拝堂に響く。今、目の前で起きているのは子どもの頃から想像してきた未来。なのに…気持ちが沈む。

「…誓いますか?…新婦?」

 ルイズは、はっと意識を取り戻す。言葉が出ず戸惑う。こんな時どうすればいい?誰も教えてはくれないだろうが、誰かに聞きたい衝動に駆られる。

「緊張しているのかい?まあ初めてだからね。仕方ないさ」

 ウェールズはワルドの「初めて以外あっては困るのですが?!」という呟きを聞き流してにっこりと笑い、続ける。

「…誓いますか?」

 目の前に迫る選択の時。ルイズは自分で答えを出さないといけない事に気付く。行きついたのは答えとは到底呼べないモノだが。

 

 

 

 

「…誓えません」

 

 

 

 

「「…え?」」

 ウェールズとワルドはルイズが何を言ったか分からない。いや、頭が受け付けない。ワルドは震えながらルイズに問いかける。

「るっ、ルイズ?きっ緊張してるんだね?そうだね?」

 ルイズは悲し気な表情になり首を横に振る。目じりからは涙が零れており、ルイズはその場に膝をつく。

「ごめんなさい、ごめんなさい…ごめんなさい!ごめんなさい!」

 ルイズは涙を振りまきながらワルドに謝罪の言葉を吐き出す。ワルドは突然のルイズの豹変に驚き、戸惑うしかない。あの気位の高いルイズがここまで取り乱し、許しを請うなんて。

「私、私ッ!自分の気持ちが分からなくって!全然ッ!理解出来なくて!ワルドさまが好きなはずなのに!子どもの頃から!好きだったのに…」

 ルイズはワルドにしがみつく。

「サイトがっ!サイトがっ!頭から離れないの!こんなのおかしい!あっちゃいけない!こんな気持ちで結婚なんて…こんな!こんな気持ちで!貴方と結婚なんて…そんな不貞、出来ないわ…」

 ワルドはルイズの肩を抱く。

「そうか、あの使い魔くんが君の中でそんなに大きな存在になっていたんだね」

 ワルドは正直才人を恨み、憎んだ。しかし、ルイズを苦しめたのは自分だと自分を責める。

(そうだよねルイズ。僕が散々君を放っておいたんだ…。急に来たのは僕の方。君を乱したのは僕だ、それに…使い魔くんは僕たちを応援してくれたんだ。恨む事は無いさ)

 その時、礼拝堂が微かに震える。どうやら攻撃が始まったようだ。礼拝堂に敵が押し寄せてくるのも時間の問題だろう。ワルドはその表情をいつもの優しいものから、冷酷な顔に変える。

「ルイズお願いがある」

 ルイズは不思議そうにワルドを見上げる。

「…え?」

「君の気持ちは分かった。でも僕は諦めない。必ず僕を好きにして見せる、だから…僕についてきて欲しい。詳しい事は後で話す。今は時間が無いんだ」

 ルイズはワルドに身を預ける。無言の了承だろう。

「僕は果たさなければならない任務がある。ルイズ、君を守るためにはこうするしかないんだ。僕はなんと罵られようが構わない。全ての汚名を身に受けよう」

 ワルドは完全に蚊帳の外になっていたウェールズに向き直る。

「殿下、お願いがあります」

 ウェールズは半ば茫然としていたが、ワルドに声をかけられ慌てて返事をする。

「なっ何だい子爵?まあ、今回は残念だが…今の僕に出来る事なら何でも言ってくれ」

 ワルドは素早く詠唱する。

 

 

 

 

「殿下のお命をいただきたい」

 

 

 

 

 瞬時に杖を引き抜くウェールズ。しかしワルドは既に詠唱を終えている。ルイズが声を上げる間もなく『ブレイド』がウェールズの胸に吸い込まれる。

 

 

 

 

 

 

 寸前ウェールズが消える。

 

 

 

 

 

 

「何!?」

 空を斬る『ブレイド』。ワルドは慌ててウェールズの立っていたところを見る。そこには大きな穴が開いていたのだ。

(まさか緊急用の脱出口!?)

 ワルドは穴を覗き込むが、ウェールズの姿を見る事は出来なかった。その前に何かが飛び出してきたのだ。

 

 

 

 

 

 

「何してんだ子爵ーーー!」

 飛び出してきた才人の拳にワルドは遥か後方まで吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 




続きます。ルイズが悩みます。自分で書いててもホントに悩みました。「これ●ッチじゃね?」って…賛否ありますがご了承ください。お願いします。



そして…サラッとけなされるギーシュ。
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