ゼロの使い魔~真心~   作:へドラ2

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2018年最後の投稿。そして恐らく過去最長。




一人暗闇に残され、悲しみに沈むキュルケ。その運命や…


ゼロの使い魔~真心~第48話

 暗闇…音も無く、風も無い孤独な空間。そこでキュルケは一人涙を拭う。何故自分がこんな目に合うのだろう?確かに、世界にはもっと苦しい、辛い目に合っている人は多くいるだろう。いや、いる。

「でも…受け止めきれないわよ…」

 しかし、それを受け止めて前向きに生きるには強い心が必要だ。キュルケも元々は気丈でたくましい、強い心を持っていた。今のキュルケになってしまったのは、全てはツルク星人のせいで被った死の恐怖の為である。

「探せー!まだいるはずだっ!」

 突然の怒声にキュルケは震える。どうやら『レコン・キスタ軍』がまだ探し回っているらしい。声は段々と近づいて来る。

(このままじゃここもばれちゃう…逃げなきゃ…)

 キュルケは杖を持ち、非常時に備え…ようとしたが、ここでキュルケは大変な事に気が付く。

(杖が無いっ!?)

 どうやらキュルケは薄暗い屋根裏の移動中、何処かで杖を落としてしまったようだ。このままではいざという時身を守る事も出来ない。その焦りが、キュルケの恐怖をかき立てる。

「逃げなきゃ…逃げなきゃ…嫌だ…嫌だ…サイト…サイトォ…」

 キュルケは屋根裏の降り口から出ると、声とは反対方向に逃げ出す。少しでも身を低くして見つからないように、見つからないように、慎重に逃亡する。後ろの男がこちらを向かないか確かめながら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…だから、気が付かなかった。目の前の男に。

 

 

 

 

 

 

 

 キュルケは突然体が浮き、首を締め上げられ羽交い絞めにされる。後ろしか見ていなかった為か、何が起きたか分からずパニックになる。

「ヒぃっ!?ひぃぁっ!ぁァァァァっ!?」

 後ろから締め上げて来た男は下卑た笑いを浮かべる。

「えへへへへぇ…おーい!いたぜ!ここだ!」

 呼ばれた男はキュルケの前まで来ると、キュルケの着ているブラウスを引きちぎり両の乳房を握り潰す。

「えへぇぇ…間違いねぇ…こいつだ、あの大将さまが欲しがってる女だぜっ!」

 男たちはキュルケをその場に組み伏せると、乱雑に下着を破り取る。

「あの大将様が抱きたがってる女だ。どんだけ良いもんなのか、先に楽しませてもらおうじゃねえか」

 キュルケは必死に暴れ、大声を出そうとする。しかし、口を押さえられ声も出せない。助けを求めることも出来ない。ここに才人がいたら、マチルダがいたら、フレイムがいたら…そう思うキュルケの脳内に響く二人の男の下卑た笑い声。

「そんじゃさっそく…おりゃっ、へへぇ、綺麗なもんだぜ。遊んでそうな見た目してよ」

 男の汚く、醜く、歪な欲望がキュルケに叩きつけられる。キュルケはどうすることも出来ない恐怖、絶望の中、その痛みを覚悟する。

「……?」

 キュルケは暫く全身に力を入れて、痛みに耐えようとしていた。が、その痛みがいつまでたってもやってこない。キュルケは閉じていた目を開けると、口を押さえていた手も外れている事に気が付く。

「ウソ…」

 キュルケは目の前で起きている光景から目を離すことが出来ない。『あの蔦』がキュルケの目の前で二人の男に巻き付き宙に浮かべ、首とその歪な物を締め上げている。男たちはもがき苦しみながら口を動かしている。助けを求めているのだろうか?

「誰が助けるもんですかっ!」

 キュルケは慌ててその場から走り出す。一歩でも遠くに逃げる為に。その時、キュルケの足に何かがぶつかる。キュルケはそれが何か直ぐに気が付き、慌てて拾う。

(私の杖!何でこんな所に!?)

 キュルケは全力で走りながら近くの部屋に飛び込み『ロック』の魔法で施錠する。一息ついたキュルケは部屋にあった女性ものの服を拝借する。

(ここは…モンモンの部屋かしら?服きっつ…)

 サイズどころか、体格まで違う二人だ。下着に関しては下がギリギリで、上は不可能だった。

「後で弁償するから、ごめんね?モンモン」

 キュルケは壁に寄りかかると、先ほどまでの恐怖が再び襲ってくる。が、今のキュルケは怯える以外に一つの考えが頭に浮かぶ。

(今の私は偶然助かった…でも、他の娘たちは?)

 フレイムが殺された時、学院の生徒達は全員集められていた。もしかすると女子生徒は自分と同じ目に合うかもしれない。それも、助けがくる確率は…無い。

(ミス・ロングビルがいるけど、いくら何でも一人では…)

 その時、キュルケの脳内に浮かぶのは自分と同じ目に合う女子生徒達、マチルダ。もしもそうなったら皆どうなるだろう?

 

 

 

 

 

 自分と同じように心に傷を負うに決まってる。自分よりも深い傷を。

 

 

 

 

「あたしの気持ちを理解してくれる人が増える…でもあたしは…そんな人、いらない」

 キュルケの中に猛烈な怒り、憎しみの感情が燃え上がり、今まで心を覆っていた恐怖を焼き尽くす。キュルケは立ち上がると杖を自分の胸の前に掲げる。

「…待っててねフレイム。貴方の仇、必ず取るから。…あたしは、あたしは許さない。あたし達をこんな目に合わせた奴らを…女を人とも思わない外道をっ!」

 あの蔦も気になるが、今一番危険なのは女子生徒達だ。彼女たちを救うためにキュルケは部屋を出て急いで食堂の方へ駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほぼ同時刻。マチルダは食堂の周りを取り囲んでいた教師たちと合流する。どうやら教師達は突入作戦の話し合いをしていたようだ。

「ミス・ロングビル、何か妙案は無いかね?」

 良い案が出なかったのか、マチルダは来てすぐにオスマンに問い詰められる。マチルダは自身が考えた突入作戦を伝えようとした時、食堂から怒鳴り声が聞こえる。

「オスマン学院長につぐっ!こちらの要求を受け入れたし!受け入れたし!受け入れられない場合、生徒たちの安全は保障しない!」

「要求?」

 オスマンはマチルダに聞かれると気まずそうな表情になる。

「実はの…ミス・ロングビル、君を人質半分と交換しようと奴らが持ちかけて来ておるのじゃ」

 マチルダは何となく理由が理解できた。今、敵の全体の指揮をとっているのはギトーだ。奴は昨日の事で自分を目の仇にしているんだろう。

「こちらに裏切り者がいた以上、今回ばかりはわし達だけでは解決できん。今しがた王宮に応援要請を出したところじゃ、それまで時間稼ぎが出来ればよい。奴らに屈しない為にも要求を呑む訳にはいかんっ!」

 力強く言うオスマンにマチルダは満面の笑顔を見せる。

「いいえぇ~呑んであげましょうよ?その要求」

 オスマン達教師陣は驚くが、マチルダの表情を見て途端に全員縮こまる。マチルダは満面の笑顔だったが、その目は猛禽類のような鋭い凶悪な物に豹変していた。

 

 

 

 

 

 

 

 食堂内ではフレイムを食べ終えた男たちが女子生徒たちに群がっていた。食堂内には女子生徒たちの悲鳴が響き渡っている。

「ちっ!うるせぇ!少しは静かにしやがれっ!」

 泣き叫ぶ少女たちに男達が暴行を加え、力づくで黙らせていく。

「へへぇ、大人しくなったぜ」

 顔面を腫れるほど殴られ、抵抗を止めた女子生徒に男がまたがった時、突如食堂の入り口のドアが勢いよく開けられ両手を上げたマチルダが入って来る。

「さぁ来てあげたわよっ!」

 マチルダが入ってきたと同時、ドアが勢いよく閉まる。

「…やっぱり、人質解放する気はさらさら無かったって事だね」

 マチルダが呟くと同時、全身に暴風が叩きつけられその体が床に叩きつけられる。

「ぐぼぉっ!」

 マチルダは内臓を激しく痛めつけられ吐血する。ふらつきながら立ち上がると、その顎に強烈な蹴り上げが叩き込まれる。床に倒れ込んだマチルダの背に足が叩きつけられ、踏みつけられる。

「やぁミス・ロングビル、いえ、『マチルダ』でしたっけ?いい格好ですねぇ?」

 マチルダを踏みつけていたのはギトーだ。何度も何度もマチルダの背中を踏みつける。

「抵抗してごらんなさいよぉ…ほらぁ…ほらぁっ!」

 人質がいるから手が出せない。それが分かっているからこその行動だ。見守る男たちからは下卑た笑い声、生徒たちからは悲鳴が上がる。

「さぁ…早速ヤらせてもらいましょうか?」

 ギトーは生徒たちに見せつけるようにマチルダを引きずり上げると、その服を引き裂こうとする。が、握力が無いのか引っ張るだけで服は破けない。

「…滑稽だねぇ…」

 マチルダの呟きにギトーは眉をひそめる。

「何ですか?」

「こんな大それた事して、女ヤるだけ、あんた何がしたいんだい?」

 ギトーは嘲笑すると、マチルダを地面に叩きつける。

「知れた事!私は魔法の中でも最強の属性『風』を操る偉大なる魔法使い!私は一介の教師で終わるような存在では無いのです!いずれはこの世の全てを!この手に!」

 ギトーはまるで物語の主人公にでもなったかのように大仰に体を動かし、演技をして見せる。しかし、マチルダは冷ややかな視線を送る。

「のわりには女を抵抗できないようにしてから襲う…卑怯もんさね…」

 ギトーはふらつきながら立ち上がったマチルダを睨むと、杖を構える。

「…もう加減は無しだ。徹底的に君を屈服させる。まずはその減らず口を叩き潰してやろう!」

 マチルダはほくそ笑む。

(私の演技と血糊に気付かんようじゃ…あんたは終わりさ)

 マチルダが服の袖に触れた時、突如食堂の奥の扉が開く。

「へへえへへぇ、大将~、もう一匹女がいましたぜ~!」

「いやぁ!離してぇ!」

 奥から男が薔薇の花飾りをした女性を羽交い絞めにして入って来る。杖は既に奪われているようで、全員の見ている前でへし折られる。

(ちっ!めんどくさい。あんな風に捕まってちゃ巻き込んじまう…他の人質の中に一緒に放り込まれるのを待つしかないか…?)

 その時、マチルダはある事に気が付く。

(…女?少しごつい気が…?)

 女性は辺りを見渡すと、急に落ち着き男に問いかける。

「…あなたを含めて13人。…いけるな」

 女性は全力で足を後ろに振り上げ、男の股間を強打する。

「ッッッ!?」

「てめぇふざけやがって!」

 各所で生徒たちを見張っていた男たちが女性を取り押さえようと駆け寄ってくる。そこでギトーは直ぐに違和感に気が付き、叫ぶ。

「待て!お前ら!」

 その時、マチルダも気が付く。違和感の正体に。

(へぇ…中々。頭が回る時もあるじゃないかアンタ、見直したよ。まっ、私一人でもどうにかなったけどね)

 女性は薔薇の花飾りを引き抜く。それを一振りすると花びらが舞い男たちの前に舞い落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行けっ!僕の華麗なるワルキューレ達!」

 女性はその服を脱ぎ捨て、その服でメイクをすかさずふき取る。生徒たちはその素顔を見て目を丸くする。

「「「ギーシュッ!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 ワルキューレは男達に飛び掛かると、その強固な体から繰り出される打撃で次々と沈めていく。中には剣で応戦する者もいたが、青銅で出来たワルキューレの体を切り裂けず逆に剣をへし折られラリアットや飛び蹴りをくらい吹き飛ばされる。

「大丈夫ですか!?ミス・ロングビル!」

 ギーシュはマチルダに駆け寄り体を支えようと手を貸すが、マチルダは何も無かったかのように平然と立っていた。

「あれ?」

「大丈夫、全部演技よ。それにしても、杖を偽装するなんて大胆ね?」

 ギーシュは照れ臭そうに頭をかく。

「いやぁ…はは…最初は怖くて隠れてたんですけど、それじゃダメかなって。サイトとの約束もありますから」

 突然出て来た才人の名前にマチルダは目を丸くする。

「サイトが出発する前、僕に頼んでいたんですよ。『何かあったら、学院を守るのはお前だぞ』って」

 マチルダは突然言いようの無い幸福感に包まれる。

(才人…あんたって奴は…何処にいても、私を守ってくれるんだね…)

 その時、凄まじい風が吹き荒れ、全てのワルキューレを木端微塵に吹き飛ばす。ギトーの『ウインド・ブレイク』だ。

「何っ!?」

 ギトーは怒りを隠そうともせず、怒鳴り散らす。

「雑魚の分際で!その体をバラバラに引き裂いてくれるっ!」

 ギトーが杖を構えるとギーシュは慌てふためくが、突然マチルダが笑い出す。

「お前の負けさっ、ギトーッ!」

 マチルダは袖の中に隠していた杖を取り出すと、ワルキューレによって一か所に集められていた男たちの足場に『錬金』をかけ、粘着性の高い泥に変える。

「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ?!」」」

 メイジの三人はすんでの所で『フライ』で逃れるが、他の男たちは皆その泥に飲み込まれる。首まで沈んだところでマチルダは再び『錬金』、元の足場に戻し完全に拘束する。

「ホントはバラバラだったあいつら全員同時に『錬金』するつもりだったんだけど、おかげで手間がはぶけたよ」

 ギーシュは目の前で起こった事に目を丸くする。別に自分は要らなかったのではないか?と思わせるほど。

「バカなっ!こんな事がっ!?」

 その時、ギトー達三人のメイジは突如巨大な何かに殴り飛ばされ、食堂の外に吹き飛ばされる。ギーシュは一瞬の事で理解が追い付かなかったが、それは食堂の床から生えた巨大なゴーレムの腕だった。食堂の外では、突然吹き飛ばされてきた三人に驚き、杖を構える。

「馬っ馬鹿な…いったい何が…?」

 鼻血を吹き出し、震えながら立ち上がるギトーの背中に強い衝撃が走る。マチルダが足で踏みつけていたのだ。

「アンタは間違いを二つ起こした。一つは実力に見合わない大それた事をしようとしたこと。二つ目は…」

 マチルダは他の二人をゴーレムの腕で拘束する。

「私を『マチルダ』と呼んだこと。その名で呼んで良いのは才人だけ…ふざけ半分で呼んだ奴がどうなるか…その身を持って教えてあげるわ!」

 ギトーは蹴り飛ばされ無様に地面を転がる。起き上がりマチルダの顔を見たギトーは恐怖に顔を歪ませる。それはこの世の憎しみを詰め込んだような表情だった。

(こっこれが、あのガキ以外がこの女を『マチルダ』と呼ばない理由か!?)

 マチルダの『ブレイド』がギトーの首を跳ね飛ばそうとした時…

 

 

 

 

 

 

 

 

「待って」

 

 

 

 

 

 

 

 突然呼び止められ、マチルダはその手を止める。振り向くとそこにはここにいないと思っていた人物がいた。

「ツェルプストーッ!何でここに!?」

 それはキュルケだった。服装の違い、そして服についた無数の血液に気が付いたマチルダは何があったのか問い詰めようとするが、キュルケは手で制すると、ギトーの前に立つ。

「あなたにチャンスをあげるわ。ミスタ・ギトー」

 キュルケは杖を構える。

「決闘よ」

 ギトーは訳が分からず一瞬惚けるが、直ぐに狡猾な表情になる。

「へぇ…で、内容は?」

「あなたが勝ったら、身の安全を保障するわ。後、私の実家の領地と私のこの体をあげる。あたしに『参った』と言わせればいいわ。それであなたの勝ち」

 マチルダは待つようにキュルケに詰め寄るが、キュルケはそっとマチルダに囁く。

「やらせて」

 と一言。ギトーはキュルケに問いかける。

「で、お前が私に求める物は?」

 キュルケは途端に表情を変える。

「お前の命」

 その瞬間、決闘が始まった。オスマン達が止めに入るが、それをマチルダが止める。「何故!」と言うオスマン達に一言。

「やらせてあげて。これはあの子の弔い合戦なんだ」

 しかし、マチルダには気になる事がある。

(あの子のトラウマは…?)

 その時、食堂からレイナールが青い顔で駆けてくる。

「タッ大変です!ミス・ロングビル!」

 レイナールから話を聞いたマチルダは同じく顔を青くする。

「ツェルプストーがレコンキスタの男たちを皆殺しにしたっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 キュルケは巨大な『フレイム・ボール』を作り出し、ギトー目掛け放つが、それはギトーの風で簡単に霧散してしまう。

「はははっ!一つ授業をしてやろうミス・ツェルプストー!この世で最強の属性は『風』だ!『微熱』の君が足元に及びもしない最強の属性なのだよ!」

 キュルケは何度も炎を打ち出し、ギトーに叩きつけるがその風の壁を超える事は出来ない。しかし、キュルケは打ち出す『フレイム・ボール』をドンドン大きくする。

「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」

 キュルケは魔力の使い過ぎで既に息切れを起こしていた。

「フハハハハハッ!所詮その程度だっ!では、私の奥義を見せてやろうっ!」

 ギトーの周りの風が集まり、ギトーが二人に分身する。

「『風の偏在』、君には手の届かない次元の魔法さっ!」

 二人になったギトーは激しい風を起こし、キュルケの炎を吹き飛ばす。そのまま二人のギトーは杖を合わせ、強力な魔法を放ってくる。

『ライトニング・クラウド』!

 それはキュルケの全身を打ち貫き、その体を焼き焦がす。その場に突っ伏すキュルケ、ギトーは勝利の笑い声を上げるが、キュルケがそれ以上の大笑いをする。

「「なっ、何が可笑しいっ!」」

 キュルケは立ち上がると、高らかに言い放つ。

「あたしの勝ちよ!」

 そう言った瞬間、二人のギトーの周りに巨大な火柱が立ち上る。それは瞬く間に円を作り出し、ギトーを包み込む。

「ウギャァァァァッ!熱い、熱いぃぃぃぃぃ!何故、なぜぇぇぇっ!?」

 キュルケは狂ったように笑い出す。

「アハハハハハハハッ!あんたは自分の力を過信しすぎたのさ!死ね、死ねぇ!薄汚い男め!この世に一片も残さず燃え尽きろォォォッ!アハハハハハハハッ!」

 キュルケが放っていた『フレイム・ボール』、それはギトーの風で霧散したかのように見えていたが、全てギトーの周りに燃え移っており、その力を隠していたのだ。機を待っていたキュルケはギトーが油断した隙に一気に魔力を解き放ち、焼き尽くしたのだ。

(あんたがワルド子爵のような実力者ならともかく、その程度ならあたしの足元にも及ばないわ…)

 ギトーは全身が燃える中、『何か』を取り出す。

(もうダメだ…おしまいだ…ならば、ならば…全てを壊してやるっ!)

 キュルケが狂った笑い声をあげていると、その炎が膨れ上がり、突如霧散。中から異形が姿を現す。

 

 

 

 

 

「ギシャァァァァッ!」

 

 

『異形進化怪獣・エボリュウ』

 

 

 

 

 突然の怪物の出現に教師達はパニックを起こす。マチルダはあまりの事に動けないでいるキュルケをかっさらいエボリュウが振り下ろした鞭から救い出す。

「ぼさっとしない!走るよ!」

「えっ、あ、はい!」

 キュルケとマチルダは迫るエボリュウから逃れようと全力で走る。しかし、エボリュウはギトーとしての意識が強く残っているのだろうか?オスマン達の攻撃を受けてもお構いなしに追いかけてくる。

「「ここは!?」」

 いつの間にか二人はマチルダの花壇の所まで逃げて来ていた。これ以上は逃げられない。二人は覚悟を決め花壇を背に杖を構える。

「いくよツェルプストーッ!」

「えぇっ!ミス・ロングビル!」

 振り下ろされるエボリュウの鞭、キュルケは全力の『フレイム・ボール』を打ち出し、マチルダは巨大なゴーレムを作り迎え撃つ。エボリュウの体にあたり弾ける『フレイム・ボール』、エボリュウの鞭で崩れ去るゴーレム。

((ここまでか…))

 二人は目を閉じようとしなかった。ギトーに負ける訳にはいかない。最後まで戦ってやる。という気持ちの表れだった。

 

 

 

 

 

 だからこそ、『その瞬間』を見逃さなかった。

 

 

 

 

 突然蔦が二人の後ろから無数に伸び、エボリュウの体を絡め取ったのだ。そのまま後ろに引きずり倒す。

「ギシャァァァァ!?」

 二人はあっけに取られていたが、その蔦の一本がキュルケに近づいてくる。身構えるキュルケだが、蔦は花壇からチグリスフラワーを一本取ると、それをキュルケの髪にさす。

「え?」

 次に蔦はキュルケの頭を優しく撫でまわす。まるで、甘えるように。キュルケはよく見ると蔦がチグリスフラワーと同じところから伸びている事に気が付く。そして、今までの蔦の行動を思い出す。

(最初の時、この蔦はあたしの頭を撫でていった。もしかして…あたしを励ますため?次は私を襲った男たちを殺した。あたしを守るため?まさかあたしの杖を持ってきてくれたのも?)

「まさか…あなたが?全部!?」

 蔦は頷くようにぴょこぴょこと上下する。マチルダは理解が追い付かず不思議そうな顔をしているが、キュルケは全てが繋がる。蔦はキュルケに頬ずりすると、その杖に巻き付く。キュルケはそれで何かを察する。

(まさか…でも…そうか…あなた…分かったわ!)

 キュルケは杖をとり、呪文を詠唱する。それを聞いたマチルダはぎょっとする。

「そっそれは!?」

 キュルケが杖を構えると、その傍らに黄緑色の鏡の様な物が現れる。

 

 

 

 

 

 

「サモン・サーヴァントッ!おいでっ!あたしの使い魔、チグリスフラワー、いえ、『チグリス』!」

 『サモン・サーヴァント』のゲートはキュルケの隣で凄まじい勢いで巨大化、膨張していく。それに比例するようにマチルダの花壇が陥没、沈んでいく。ゲートから現れたのは腹部に巨大なチグリスフラワーが生えた巨体。

 

 

 

 

「ピキューーーン!グギャァァァッ!」

 

 

 

『宇宙大怪獣・アストロモンス』

 

 

 

 

 

 

 




続きます。それでは、良いお年をお迎えください。(残り3分切って何言ってんだ)
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