ゼロの使い魔~真心~   作:へドラ2

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続きです。記念すべき?第50話。ようやく才人達の話に戻ります。…そう言えば、主人公って才人なんですよ…まさか忘れてる人いないでしょうね?


ゼロの使い魔~真心~第50話

 トリステインの王宮。ブルドンネ街の突き当りにあるそこでは、現在厳戒態勢が敷かれていた。当直の魔法衛士隊『マンティコア隊』の面々は幻獣に跨り、門の前を闊歩している。それというのも、今国中に広がる『ある噂』のせいだった。

 

 

 

 戦争が近い。隣国アルビオンを制圧した『レコン・キスタ軍』が侵攻してくる。

 

 

 

 この噂は王宮の警備体制が信憑性を高めていた。王宮の上空は幻獣、船を問わず飛行禁止令が出され、門をくぐる人物のチェックがいつもの十倍近く厳しくなっていた。いつもなら顔パスの仕立て屋や菓子屋の主人まで全員がチェックを受ける。

「待てっ!その者を取り押さえろっ!」

 青髪の女性とブロンドの髪の女性が門を通された時、背中に身の丈ほどもある大剣を背負った少年が兵士に取り押さえられる。…才人だ。

「おい何でだっ!身体チェックどころか何の用事かも聞かないのかよ!?」

「おいっ!早くこいつの剣を取り上げろっ!」

 才人達はチグリスにトリステインの町の近くに降ろしてもらい、アンリエッタ姫へ今回の密命について報告に来たのだ。

「俺は前二人の知り合いだっ!ルイズの使い魔だっ!」

 デルフリンガーを取り上げられた才人は必死に兵士に訴えるが、兵士は顔色一つ変えず言い放つ。

「無礼な平民だな。平民風情が貴族に話しかけるという法は無い。黙れ」

 この兵士の態度にカチンとくる才人だが、先に行っていたミシェルが戻ってきてくれた。

「お待ちください、彼は銃士隊副隊長ミシェルの付添人です。今朝がたの魔法学院立てこもり事件の被害者側の重要参考人として、ご同行をお願いしたのです」

 密命の事は誰にも口に出来ない。よってルイズと才人はこういった名目で王宮にやって来たのだ。これを聞いた兵士はミシェルを小ばかにしたような目で見る。

「ほ~う、どうやら副長殿はこのような男がご趣味なようで?いい趣味ですな~」

 ミシェルは頬が引きつるが、女ばかりの銃士隊が軍内で舐められているのはよく知っている。だからこそ無理に言い返して事を荒立てないよう愛想笑いをする。

(王宮内にはサイトを知っている人間も多い。彼等にもサイトの身の潔白の証明を…)

 ミシェルが周りを見て助けを求めようとした時、才人がポツリと呟く。

「お前ら…俺はいいけど、ミシェルをバカにすんな…」

 才人が怒りで今にも爆発しそうなのは誰が明らかだった。恐らく兵士はそれが狙いだろう。暴れた才人を逮捕するという状況を狙っているのだ。この兵士の明らかな点数稼ぎだと気が付いたミシェルは才人をなだめようとするが、それよりも早く、走って戻ってきたルイズが間に入り込む。

「お待ちくださいっ!この者はヴァリエール家三女、ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールの従者に間違いありません!」

 ルイズは兵士に何度も頭を下げる。それを見て兵士と才人は驚愕する。あのルイズが頭を下げる?

「あああっ頭をお上げ下さい!ヴァリエール嬢!これはあくまで警備の為でして!武器を所持している以上別室で一度取り調べをするだけですのでっ!頭を上げてください私の首が飛んでしまいます!」

 その時、一人の大柄でたくましい髭ずらの男がやって来る。マンティコア隊の隊長だ。

「これは失礼しました。どうぞお通り下さい。ただし、武器はこちらでお預かりします。よろしいですね?」

 ようやく解放された才人は差し出されたルイズの手を取らず、自分で立ち上がり、三人並んで歩き出す。

「ごめんルイズ。デルフがいないから今力加減が出来なくて…」

「いいわ。それより大丈夫?怪我はない?あんたが感情的になって暴れでもしたら、この国の軍隊は全滅よ?!」

 それを聞いたマンティコア隊隊長が眉をひそめる。自分たちが全滅?この男一人に?

「失礼、ヴァリエール嬢。聞き捨てなりませんな。このマンティコア隊隊長ド・ゼッサール、をその者が一人で倒すと?」

 ルイズははっ!と、言い過ぎたと後悔した。事実だが、この場では明らかに不適切だ。一気にマンティコア隊にピリピリとした雰囲気が広がる。

「平民風情がバカにしやがって!」

 先ほどの兵士が才人に手袋を投げつけてくる。決闘の申し込みだ。

「さっ、サイト?落ち着いて?これは任務なのよ?密命なのよ?最後までやり遂げて、初めて任務達成なの?」

「サイト、落ち着け。暴れれば死人が出てしまう」

 必死に才人をなだめるルイズとミシェル。しかし、才人はギーシュの時同様、既に頭に血が上っている様だ。

「大丈夫、手加減するから」

 この一言がマンティコア隊全員に火をつけた。全員が杖を引き抜き、飛び掛かって才人に襲い掛かって来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アンリエッタは、執務室で相変わらず書類仕事に追われていた。目の前の書類の山と格闘している時、城の城門の方から騒ぎ声が聞こえてくが、多少の事は無視して仕事を続ける。…その時。

 

 

 ドガァァン!

 

 

 突然の轟音。アンリエッタはその衝撃に目を丸くする。いったい城門近くで何が起きているのだろう?仕事よりも、そちらが気になってしまう。その時、マザリーニ枢機卿がドタドタと執務室に駆け込んでくる

「姫様一大事です!城門前でマンティコア隊が平民相手に決闘を行っているそうです!」

「何ですって!?」

 守るべき国民を相手に杖を向けるなど、ド・ゼッサールは何をやっているのか?一刻も早く止めなければとアンリエッタは城門へと足を急がせる。

「あなた達っ!杖を収めなっ…!?」

 アンリエッタは城門から宮殿内への中庭で起きているであろう、凄惨な光景を想像して声を荒げた。…確かに、目の前には凄惨な光景が広がっていた。しかし、アンリエッタの想像とはまるで違っている。その違いに驚き、アンリエッタは言葉が止まる。

 

 

「うあぁ…」「たしゅ…けてぇ…」「うえぇ…お、おがーちゃーん…」「いたいよぉ…いたいよぉ…」

 

 

 マンティコア隊の隊員がボロボロになって倒れていた。いったいどれ程の暴行を受けたのか?中には元の顔が分からない程に顔面が腫れあがっている者もいる。ド・ゼッサールの姿が見えず探して見ると城壁にめり込んでいる姿が確認できた。

「ごべん…ぱさい、ごぺんばさい…」

「っ!」

 目の前の光景にばかり気をとられ気が付かなかったが、その中心にマンティコア隊の隊員が一人、襟元を掴まれ持ち上げられていた。持ち上げていたのは見覚えのある人物だった。よく見ると二人の女性がその人物を必死に止めようとしている。

(あれは、ルイズに、ミシェル…そして、ルイズの使い魔の少年…まさか!?全部彼が一人で!?)

「ミシェルに言ったこと、取り消してくれるかい?」

 才人は笑顔で、それでいて相手を威圧する鋭い眼光で先ほどミシェルをバカにした兵士を締め上げる。

「ばい…どりげじまず…どりげじまずがら…ゆるじぃでぇ…」

 兵士の謝罪を聞いた才人は手を離し、解放する。それを確認したアンリエッタは恐る恐るルイズに声を掛ける。

「あの~、ルイ…ズ?おっ、お帰りなさ~い…」

「「ひっ!?、姫さまぁ!?」」

 ルイズとミシェルは、現状一番会いたくない人に出会い声が裏返ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「…そのような事が…ごめんなさいルイズ。無礼な部下が…失礼しましたわ…」

「いえっ…あの、そのような事はっ!」

 アンリエッタの私室。そこには気まずい雰囲気が充満していた。先ほどの事件はアンリエッタはマンティコア隊が平民に先に杖を向けた事実を追及。才人の行為を不問にしてくれた。だからと言って、それで全てが丸く収まるわけでは無いが。…才人は頭が冷えて冷静になったのか、部屋の隅で小さくなっている。

「あのルイズ!帰ってきたという事は…」

 アンリエッタに言われて、ルイズは慌てて手紙を取り出す。

「姫さまっ!件の手紙はこちらにっ!」

 ルイズは今回の任務の出来事をアンリエッタに伝えた。駅の町での悲劇、ラ・ロシェールでの鉄の怪物事件、謎の空間での事件、ワルドと自身の父の真実、ウェールズ皇太子の戦い…才人の正体以外全て報告した。

「…そうですか…では、ウェールズ皇太子もワルド子爵も生きているかもしれないのですね?」

「えぇ…と言っても、生死を確認できなかったので…なんとも言えないというだけですけれど…最後にワルド子爵と一緒に戦っていたのでもしかすると…というだけです」

 少し暗い顔になるアンリエッタ。その表情からして、やはり亡命してほしかったのだろう。才人はそれを見て、ウェールズ皇太子から言うように頼まれていた遺言を思い出す。しかし、それはあくまで遺言。生きているかもしれない時に言ってよいのか考えてしまい、結局言い出せなかった。アンリエッタは暗い気持ちを押し込めると笑顔を作り、ルイズに微笑む。

「ありがとうルイズ。おかげで私の婚姻を妨げようとする暗躍は未然に防がれました。これで無事に我が国はゲルマニアと同盟を結ぶことが出来ましょう。」

 アンリエッタは明るい声で話そうと努めているが、唇が震えていた。内心心配と不安が渦巻いているのだろう。ルイズはポケットから『水のルビー』を取り出す。

「姫様、これ、お返しいたします」

 アンリエッタは首を横に振る。

「忠誠には報いるところが必要です。今回の報酬として、受け取ってくださいな」

 アンリエッタの私室から出たルイズと才人はミシェルに案内され宮殿内を後にした。どうやら、ミシェルが馬車で学院まで送ってくれるらしい。

「いいの?ミシェル」

 才人が聞くと、ミシェルは気まずそうに答える。

「あぁ…これ以上変なのに絡まれて軍に被害を出すわけにはいかんからな…」

「ごめんなさい…」

 まぁ、銃士隊本隊はまだ学院にいるし、リムも迎えに行かないといけないし、もう一つ用があるからな。と言うとミシェルは馬車を走らせた。その様子を、アンリエッタは窓から眺めていた。

 

 

 

 

 

「彼が強いのかしら?それともマンティコア隊が弱かっただけ…?どちらにせよ、彼の力…この国の為に役立ててもらえないかしら…?」

 医務室に運び込まれるマンティコア隊の情けない姿を見て、頭が痛くなるアンリエッタだった。

 

 

 

 

 三日後、正式にトリステイン王国王女アンリエッタと帝政ゲルマニア皇帝アルブレヒト三世の婚姻が発表、式に先立ち軍事同盟が締結される事となった。締結式の翌日、アルビオンの新政府樹立が布告されトリステイン、ゲルマニア両国に緊張が走るが、アルビオン帝国初代皇帝クロムウェルは両国に特使を派遣。不可侵条約を打診した。これにより、ハルケギニアに表面上の平和が訪れた。…政治家にとっては、夜も眠れぬ日々だが。

 

 

 

 

 

 魔法学院に戻ったルイズと才人は事の全てをオスマンに報告。労をねぎらわれ褒められた二人は凄まじい疲労から、早々に休む事にした。ルイズの部屋に向かう途中、才人はふと気が付く。

「あれ?アスト…チグリスは?」

 言われてルイズも気が付いたらしい。確かに、宮殿から帰って来てからあの巨体を見ていない。するとルイズの前の部屋からドタドタと物音がする。そこはキュルケの部屋のはずだ。何を騒いでいるのだろうと二人が聞き耳を立てた時…。

「くきゅ~!」

 バタンッ!

 突然ドアが開かれ、才人の顔面に直撃する。

「ぐはっ?!」

 ドアを勢いよく開けたのは、才人の視界に写る限りでは、ちんちくりんの生き物。しかし、ここで疑問が一つ。リムはミシェルがおんぶして帰ったはずだ。では、この生き物は何だ?

「こら~!もう寝んねの時間よ!」

「くきゅ~!」

 ちんちくりんを追いかけて飛び出してきたのは寝間着姿のキュルケだ。すれ違いざまにちんちくりんを抱きかかえたキュルケはふぅっ、と一息つく。

「やっと捕まえた~、もう!やんちゃなんだから!」

 キュルケはそこで茫然と見つめるルイズと顔面が赤くなった才人に気が付く。

「あらお帰りなさい。どうしたのサイト?その顔?」

 そのちんちくりんのせいだ!と、言いたかったが、そのちんちくりんの正体に気が付いたルイズと才人は目を丸くする。

「「それってまさか…」」

 キュルケは愛おしそうにちんちくりんを抱きしめる。

「そっ!この子はチグリスよ?」

「「えぇ~!?」」

 ルイズと才人の声が重なる。目の前にいるのはリムと同じようなサイズにまで縮んだチグリスだった。チグリスは鞭をキュルケの頭に巻き付けると、よじ登って肩車の体勢になっている。

「銃士隊の副長さんがね『しゅくしょーこーせんじゅ』っていうのをくれてね、チグリスを小さくしてくれたのよ」

 キュルケは懐から縮小光線銃を取り出す。ミシェルが言っていた用とはこの事だったのかと才人は気が付く。ルイズは理解できず首をかしげる。

「『しゅくしょーこーせんじゅ』って、何?」

「『縮小光線銃』な?そっか、ミシェルがもう一個用意してくれたのか」

 その反応を見て、キュルケは真剣な表情になる。

 

 

 

 

 

「…それを知っているっていう事は、副長さんが言ってたサイトの秘密は本当って訳ね」

 

 

 

 

 

 それを聞いてルイズは目を丸くする。才人の秘密…それは才人がウルトラマンコスモスである事に他ならない。それを副長さんが知っていて、キュルケも知っている?どういう事だ?

「あ~、まぁそっか。そういうの洗いざらい伝えないと、縮小光線銃持ってる理由説明できないもんな」

 才人は一人納得すると、ルイズがまだ知らない事を全て伝えた。ミシェルがピット星人である事、以前から共に戦っていた事、マチルダ、シエスタ等正体を知っている人が他にもいること等。それを聞いたルイズは頭がパンクしそうになるが、自分で頭の中を整理する。

「なるほどねぇ…(そう言うのは一番にご主人様に教えるべきなんじゃないかしら?…そういう訳にもいかないか…聞く分にはしょうがない場面が多いし…本当は言えない秘密なんだものね)」

 キュルケはチグリスを肩から降ろすと、胸の前で抱きかかえる。

「さっ、今日はもう休みましょ?お互い疲れてるし…」

 その時、チグリスも「くきゃ~…」とあくびをする。キュルケに聞いた話では、チグリスも相当に頑張ったらしい。そのあくびを合図に三人はそれぞれの寝床に入った。

 

 

 

 

 

 

 

「おやす…」

 ルイズは言い終わる前に布団に倒れ込み眠り始める。才人はルイズを仰向けに寝かせてやると布団を掛ける。そうして自分は藁の上に寝転がる。

「デルフ、お休み」

「おうお休み、相棒っ!」

 才人はデルフリンガーにおやすみを言うと目を閉じる。疲れに支配され、眠りにつこうとする。しかし、どうしても眠りにつく寸前、昼間の光景が脳裏に浮かぶ。

(俺が…傷つけた。あの人たちを傷つけた…)

 朝方にワルドと死闘を演じたばかりだったというのもあるのだろうか?あの時の自分はやけに頭に血が上るのが早かった。そんな気がする。でも、問題はそこじゃない。

(人を傷つける事に…慣れて来てる…?…喜んで…っ!?)

 そう考えた時、才人は激しい自己嫌悪に陥る。慣れる?喜ぶ?何を考えているんだ?そんなの、俺じゃない。人間、平賀才人じゃない。今まで戦う時には、守りたいものがあった。それが相手の命を奪う行為でも、それにより悲しむ存在がいると分かっていても、守りたいモノがあった。その為に力を使い、敵の命を奪ってきた。でも、あの時は違った。

(イフェメラの時もそうだった…どうも…頭に血が上ると、俺は暴力的になっちまうらしい…)

 自分の感情の赴くまま快楽の為に、自身が満足感を得る為に相手を傷つける…それは才人が一番嫌な事だ。でもそれを自分はしてしまった。思い出すと手が震えだし、反対の手で抑えても止まらない。もしマチルダやルイズ、ミシェルにキュルケ。大切な人たちにまで怒りで我を忘れ危害を加えてしまったら…。

(ダメだ…ダメだダメだダメだっ!)

 今日の行いを激しく後悔し、反省した才人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、才人は認めざるを得なかった。自分の心の中にある争いを嫌う感情を隠れ蓑に、争いを求め、力で蹂躙する事を喜ぶ感情が少なからずある事を。それが人間だったころから眠っていた物なのか、はたまたウルトラマンコスモスになってからの物かは、才人自身分からなかったが。

 

 

 

 

 

 

 

 




続きます。人を傷つける事に慣れる。喜びを感じる。そんなふうになりたくはないですよね…。
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