ゼロの使い魔~真心~   作:へドラ2

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皆さまお久しぶりです。こんなに期間が開いてしまった理由を釈明させて下さい。分かりやすくお伝えます。


『車』(ブーン)     『私』

    ドーンッ!
    『車→私』

            血   
    『車』   血『私』血
            血
という感じです。



ゼロの使い魔~真心~第56話

 早朝、才人はマチルダの花壇に土を入れていた。シエスタの故郷の栄養土では無いが、穴を埋める全ての土に栄養土を使う必要は無い。ある程度は普通の土でも良いのだ。…まぁ足りないが。

「よっと…まぁこのくらいか」

 才人が一息ついた時、自分を呼ぶ声に気が付く。

「サ~イト~ッ!そろそろ行くわよ~!」

 早起きが出来るようになったルイズが才人に駆け寄ってくる。

「は~いっ!」

 才人は駆けだすと、待っていたキュルケ、タバサ、マチルダ、シエスタの所にやって来る。

「お待たせ、それじゃあ行こうか」

 それを聞いたタバサは口笛でシルフィードを呼ぶが、それには及ばないとキュルケが胸の谷間から拳銃の様な物を取り出す。

「…それは?」

 タバサの問いに皆が顔を見合わせる。そういえば、タバサはその時学院を離れていた為、キュルケが取り出したものが何か知らないのだ。

「ウフフッ!見ててねタバサ?」

 キュルケは悪戯っぽく笑うと、肩車していたチグリスを下ろす。

「じゃ、頼むわよっ!チグリスッ!」

「ピキュッ!」

 キュルケが持つ縮小光線銃から赤い光がチグリスに放たれる。何をするのか見守っていたタバサは目の前の光景に目を見開き、腰が抜けてしまった。

 

 

 

 

 

 

「グギャァァァァッ!」

『宇宙大怪獣・アストロモンス』

 

 

 

 

 

 シルフィードは巨大化したチグリスに驚き、怯えてタバサの後ろに隠れてきゅいきゅい泣いている。シルフィードは昨日まで一緒に遊んだり、お昼寝したりと面倒を見ていて、弟のように可愛がっていたチグリスが見上げる程に巨大化した分余計に驚く。そんなタバサ達の新鮮な反応にキュルケは笑みを浮かべる。

「どうどうどう?びっくりしたタバサ?チグリスの事ならいくら冷静な貴方でも驚くと思ったわっ!」

 驚かない方がおかしいというタバサの非難の視線を受け流しながら、キュルケは高らかに言い放つ。

「さっ、これで目的地にまでひとっとびよっ!」

 しゃがみ込んだチグリスの背中に乗る面々だが、才人、ルイズ、シエスタ、マチルダの心は一つだった。

 

 

 

 

((タバサじゃなくても絶対驚くと思うよ…)) 

 

 

 

 

「いざ、しゅっぱーつ!」

 非日常的な冒険のような状況に少しテンションが高いキュルケだった。シエスタも空の旅に興奮し「キャッホーッ!」と叫んでいる。才人はいつものように元気な面々にあの夜の惨劇は夢では無いかと思ってしまう。

(この旅の間はゆっくり出来るといいな…ダメダメ、こんな事を考えたらま~た何か起きる…止めよ)

 才人はシエスタによりかかると一息ついて全身の力を抜く。

「…シエスタ、俺が寝っ転がろうとした時急に後ろに来たよね?」

「…何のことですか?」

「とぼけな…えいっ!」

 才人は良くない未来が見えた。それから逃れる為に即座に跳ね起きると、他の誰の視界にも入らないよう高速で移動しタバサの横にいたシルフィードに寄りかかる。シエスタが気が付くころには才人は既に移動した後だった。

「ちっ」

「どうしたのシエスタ?」

「いえ、何もありませんよ?ミス・ヴァリエール。それよりも気持ちいいですね~っ!メイジの皆さんが『フライ』で空を飛ぶ感覚ってこんな感じなんですかね?」

 ルイズは即答できない。彼女自身『フライ』が使えない為、飛ぶ経験などチグリスの背中や飛行船程度だ。

「そっ、そそそ、そうね~!?まっまぁ、こんなもんかしらねぇ~!?」

 ルイズは冷や汗が頬をつたう感覚があるが、それを必死に誤魔化す。そんな様子を横目で見ていた才人だが、肩をとんとん、と叩く感覚に振り向く。どうやらタバサがその大きな杖で肩を叩いてきたようだ。

「?何だい?タバサ何か」

「ありがとう」

 才人は突然のお礼に疑問符が浮かぶが、タバサの視線が全てを物語っていた。その視線は楽し気にはしゃぐ人物に注がれていた。

「…キュルケの事か…?」

 タバサは無言で頷く。

「話はある程度聞いた…ありがとう…」

「たいした事してないよ。只、チグリスとキュルケをめぐり合わせるのに一役買っただけさ」

 タバサはそれを聞いて少しほほ笑んだ…ような気がした。あまり表情に出ない為才人には判断できないが。

「それでも、あの笑顔を取り戻してくれた…それで充分…」

 そっか、才人はそう呟くと騒いでいるキュルケとシエスタに視線を移す。

「あの笑顔を俺がね…そう言ってもらえると少しは嬉しい、かな?」

 キュルケが才人以外の男性を『汚物』と呼んでいる事はまだ問題だが、これから少しずつ良くなるだろうと才人は思う事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 八分後…

「※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※っ!」

「※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※っ!」

 才人達はタルブの村に向かう途中にある廃村にやって来ていた。理由は、シエスタとルイズの空を飛ぶことに慣れていない二人が酔ったのだ。現状は上記の通りである。

「おっおい…ルイズだいじょ」

「話しかけなっ※※※※っ!※※※※っ!※※※※※※※※っ!」

 ルイズはタバサに背中をさすられながら胃の内容物をばらまいている。一方のシエスタは…。

「※※※※っ!…お願いです才人さんみないっ※※※※※※※※※※※※っ!※※っ!」

 キュルケに背中をさすってもらっていた。これはもうしばらくかかるな。そう思った才人はマチルダに一声かけると、少し廃村の中を歩いてみる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この村、なんでこんな事になっちまったんだ…」

 家々は誰の修復も施されず雨風に撃たれボロボロに、生い茂った草は家を飲み込みそうな程に生い茂っている。崩れたレンガが道に散乱し足を取られそうになり、手を付いた壁はウルトラマンの力を完全に抑え込んでいる才人の手が触れただけで崩壊。風化してしまう。いったいいつからここには人がいないのだろう?才人がそう考えた時、コツンッ!と才人の足が何かを蹴りつける。

「こりゃぁ…」

 それは木と布で作られた人形だった。よく見ると頭と思われる部分に毛糸が縫い付けられている。才人は自分の幼少期の記憶に重なる物があった。

「…人形…」

 それは女の子たちがおままごとで使っていた人形だった。幼馴染で高校も一緒の『高凪春奈』も遊んでいたのを思い出す。恐らく今握っているこれも同じ用途だろう…この村にもかつて人が住んでいた。その証拠だ。才人は人形の頭を撫でようとするが、指先が触れた瞬間頭が取れ、足元に落ちる。その瞬間バラッと崩れてしまった。才人の手の中の人形の胴体もいつの間にか崩れてしまい、風に飛ばされてしまう。

(この村を離れる時に落として行ったのか…持っていく暇も無いくらい急いでこの村から逃げ出したのか…)

 才人はそう考えると同時、生い茂る木々の中に全速力で走り出していた。何故才人が『村人が逃げ出した』という考えを持ったのか?その答えが才人の向かう先にいた。

「へぇ…初めて見た…やっぱりこの世界はファンタジーなんだなぁ」

 才人が走り付いたのは木々に隠れ外界との関りを拒絶するように村の奥に鎮座する荒廃した寺院。木々の間から覗き込むと見えるそこにたむろする異形の存在。怪獣とも、宇宙人とも違う。才人にとっては正に『ファンタジー』の存在。

「オーク鬼…」

 才人は元の世界ではゲーム、漫画でしかその存在を見た事が無いし、そもそも現実には存在しない。才人にとっては怪獣よりも身近に存在しない生き物。身の丈はハルケギニアの単位で二メイル、中にはそれ以上の大きさの個体もいる。体重は優に人間の五倍以上はあるだろう醜く太った体。突き出た鼻の顔は文字通り豚だ。才人はこの豚鼻を鳴らす微かな音をウルトラマンの聴力で聞いてしまい、その存在に気が付いたのだ。

「早くみんなに伝えないと…」

 才人が踵を返そうとした時、人が歩いてくる気配がする。デルフリンガーを抜こうとした時、デルフリンガーに落ち着くよう諭される。

「大丈夫だ相棒。姐さん達だよ」

 気が付くとマチルダ達がやって来ていた。シエスタとルイズは吐き気も収まったようで一緒についてきていた。

「探したよ才人。どうしてこんなところに?もう出発するよ」

 才人は奥を見てみるよう指を指す。オーク鬼に気が付いた面々は目を丸くする。

「オーク鬼が…この村を廃村に…関わらない方がいい…」

 タバサの意見に同意した面々は物音を立てずにその場を去ろうとするが、才人の耳に微かな声が届きその足を止めさせる。

「待って」

 才人の一言がマチルダ達の足を止めさせる。才人はデルフリンガーを引き抜くと再び木々の間からオーク鬼の様子を覗き始めた。

「ちょっとサイト何し…なに、アレ?」

 キュルケが才人を連れて行こうと肩に手を置くが、才人の視線の先にある何かに気が付き傍で同じくオーク鬼の様子を伺い始める。シエスタやマチルダ達は悩んだが才人の事だから何かあると思い、動かなくなってしまった二人の側でオーク鬼達の様子を見る事にした。オーク鬼たちは突然騒ぎ始めると寺院の奥からやって来たオーク鬼を見て歓喜の咆哮を上げる。そのオーク鬼は何か大きな袋を持ってきていた。後から鎖に繋いだ何かを引きずり、もう一匹のオーク鬼が現れる。

「何か始まるんだ…才人、何かに気が付いたのかい?」

 マチルダの訝し気な問いに才人は短く答える。

「…聞こえたんだ。『助けて』って」

「え?」

 マチルダは才人の返答にまさか、という表情をするが、才人の視線はオーク鬼から離れていなかった。オーク鬼は木を組んで作ったのだろうか?十字架を立てるとそこに鎖で引きずっていた何かを引っ掛け、吊るす。それは赤黒く、一部を欠損しているのか骨も見えている。ところどころにハエがたかっていたが、とても分かりやすいシルエットをしていた。それを見た才人は無言で走り出す。マチルダ達の制止も聞かずに。

 

 

 

 

 

 

 

 そのシルエットは、『人間』だった。

 

 

 

 

 

 

 

 才人は十字架の側にいたオーク鬼の首をデルフリンガーの横なぎで切り飛ばし、目の前にいたオーク鬼に飛び掛かると素早く肩に登り後ろからオーク鬼の目に五指を突き刺す。

「プギャァァァァッ!?」

 流れ出る鮮血、響く苦痛の咆哮。突然の事にどのオーク鬼も動けず固まってしまう。そんなオーク鬼達の目の前で才人はその両腕を真横に広げる。

 

 

 

 バキバキッ、ゴキ、ブチッブチッ!

 

 

 

 頭蓋骨を真っ二つに砕かれ首をもぎ取られ、崩れ落ちるオーク鬼。驚き固まっていたオーク鬼達はそこで我に返り怒りの咆哮を上げる。

「プギャアァァァァァァァァッ!」

 オーク鬼達は棍棒を手に取ると乱暴に振り回し目の前の華奢な人間に振り下ろす。人間の剣士は五人がかりでオーク鬼一匹分の力しかない。長い人間との戦いの中でオーク鬼達は学習していた。奇襲のように見えたそれは一人の人間が勇気と無謀をはき違え飛び込んできただけ、オーク鬼達にはそう見えたのだ。

「フギィッ!」

 真っすぐに才人に直撃する棍棒。オーク鬼はぐしゃっという手ごたえを感じる…はずだった。

 

 

 

 バキバキッ!

 

 

 

「プギャアッ!?」

 棍棒はオーク鬼の手の中でバラバラに砕け散る。オーク鬼は何が起きたか分からなかった。分からないまま、絶命した。才人の拳は棍棒を真正面から砕き、オーク鬼の顔面に直撃、頭蓋を粉砕し脳みそを散乱させたのだ。オーク鬼達は目の前で起きた真実に怯え始める。才人はそんなオーク鬼達を無視して、オーク鬼達が運んでいた大きな袋に目を移す。それはもぞもぞと動いていた。才人は優しく袋の上からもぞもぞと動く物を撫でる。

「聞こえたよ、君だったんだね。『助けて』の声」

 袋の中のもぞもぞはビクンッ!と跳ねると、直ぐに泣き出す声がする。女性…鳴き声から感じる幼さからしてまだ少女のようだ。今まで恐怖で震えていたのだろう、安堵の鳴き声が聞こえる。オーク鬼は人間の子どもが好物なのだ。恐らく食用として攫ってきたに違いない。才人はオーク鬼が振り下ろす棍棒を蹴り砕くと、その巨体に勢いのまま足を叩きつけ肉を吹き飛ばし、風穴を開ける。

「大丈夫、直ぐに終わるから」

 才人は優しく言うとデルフリンガーを構える。オーク鬼達はこの時既に理解していた。こいつは自分達の適う相手じゃない。このままでは全滅する。その時、オーク鬼の鋭い嗅覚がうまそうな若い人間のメスの匂いを嗅ぎつけ、その場所を特定する。目の前のこいつにはどうやら仲間がいる。しかもメスだ。そいつらを人質にしてこの化け物を潰そう、メス共は喰ってしまおう、オーク鬼はそう考えた。

「ブヒィィィィィッ!」

 オーク鬼達は一目散に才人と反対側、マチルダ達の方へ走り出す。その矢先、吠えた一匹のオーク鬼の口の中に特大の『フレイム・ボール』が吸い込まれる。オーク鬼の頭は爆散した。

「サイト~ッ!一人で突っ走らないでよ?私たちがいるんだから、一緒に戦いましょ?」

 キュルケはそう言うと才人にウインクして見せる。才人はごめん、とジェスチャーして見せるがその間にもオーク鬼の剛腕がキュルケに迫る。

「まったく、あたし達の力を知らない訳じゃあるまいし。頼ってほしいね」

 マチルダはそう言うとゴーレムを作り出し、まとめて五匹ほどのオーク鬼をつかみ上げ地面に頭から叩きつける。オーク鬼達は目の前のメス共がメイジだったことに気が付き狼狽する。目の前にはメイジ、後ろには化け物、勝てる見込みは無い。その時、一匹のオーク鬼がゴーレムの上に青髪の少女が立っている事に気が付く。

「ブヒィ?」

 青髪の少女は飛び降りると同時、杖を振るう。マズイ、あいつもメイジだ。オーク鬼が周りのオーク鬼達に知らせようとした時、既に終わっていた。残りのオーク鬼達は一匹残らず倒れていたいったい何が起きたのか?よく見ると首筋に何かが突き刺さっている。それが何か確認する前に最後のオーク鬼の前にブロンドの髪の少女が現れる。

「くらいなさいっ!『フレイム・ボール』ッ!」

 最後のオーク鬼は『フレイム・ボール…のような爆発』を真正面からくらい、その頭を粉々に打ち砕かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦いが終わると、キュルケは『フライ』でゆっくり降りて来たタバサに抱き着き、その胸で挟み込む。

「や~んっ!さすっがタバサッ!頼りになるわ~!」

「苦しい」

 タバサは素っ気ない返事をするが、実は嬉しいのか口角が少し上がっていた。マチルダはそんな様子を見守りながら内心少し驚いていた。

(ミス・タバサ…意外とやるね…まさか一発でオーク鬼達の頚骨に『ウインディ・アイシクル』を撃つなんて…まるで裏の人間の手際だよ)

 シエスタは一騎当千の戦いを見せた才人に抱き着いていた。

「凄い!凄いですっ!あの凶暴なオーク鬼を一瞬でやっつけちゃうなんてっ!」

 才人はシエスタに笑い返すのもそこそこに十字架にかけられていた人を下ろすことにした。今治療すれば一命はとりとめるかも知れない。ルイズ達に袋の中の少女を任せると才人は十字架から人を下ろす。

「脈は…ある。喋れますか?」

 どうやら男性のようだ。全身は恐らく激しい暴行にあったのだろう、赤黒く変色している。両足と左腕はオーク鬼に食いちぎられたのだろうか?骨が見えている。壊死も酷く、何らかの感染症にも感染している様だ。恐らく、もう…。

「…ぁ」

 その時、男性が何か語りかけてくるが、声は弱弱しく消え入りそうだ。才人は優しく囁く。

「大丈夫、伝えたいことがあれば心の中で思うだけで俺には伝わります」

 そう言うと才人は意識を集中し、男性の記憶を、想いを受け取る。伝わってくるのは激しい憎悪と、憎しみ。悲しみに、悔しさ。

(これは…)

 才人に流れ込んでくる男性の記憶。男性はどうやら行商人の一団の一人らしい。馬車の列の中妻と、娘と談笑する姿が映る。幸せなひと時…それを突如森の中から襲い掛かってきたオーク鬼達が全てを破壊する。叩き殺される馬に、護衛の傭兵たち。才人は凄惨な光景を拒むことなく全てその目にした。目の前の男性は実際の被害者なのだ。目を逸らすわけにはいかない。

(ひでぇ…)

 次に移ったのは捕らわれた行商人たち、中には抵抗する人もいたが簡単にオーク鬼にその命を奪われ、肉片を捕食される。暫くするとオーク鬼達は今才人達がいる寺院の前に移動。子どもがいる父親達の足を乱雑に食いちぎり始める。その子のいる前で。すると今度は身動きできない父親を鎖でつなぎ…、

 

 

 

 

 

 

 父親の見ている前で子どもを捕食し始めた。オーク鬼達はほくそ笑んでいる。全て分かった上でやっているのだ。

 

 

 

 

 

 

「があぁっ!」

 瞬間、才人の脳裏にクイントータスの記憶がフラッシュバックする。こんな事をするのは何も人間だけではないらしい。その時、寺院の中に子どもたちの母親や女性が泣き叫びながら引きずられて連れて行かれる。目の前で子どもを食べられれば誰しもこうなるだろう。そういう意味で言えばクイントータスも人間の母も変わらないのだ。すると、何人かの子どもたちは袋に入れられ、その父親達は一緒に連れて行かれる。一度には全ての人間を食べない気らしい。しかし、その行動さえもオーク鬼達は計算していたのだ。寺院の中で行われている行為を見せるという楽しみの為に。

「キャーーーーーッ!」

 その時、寺院の中から先ほど聞いた少女の声が聞こえる。才人は直ぐに察してしまった。少女が何を見たのか。

「…ぁ…ぁぁっ!」

「大丈夫、娘さんは生きてるよ。只、貴方の奥さんを見ちまったみたいだ…大丈夫、もう無理しないでくれ。貴方の娘さんはしかるべき所に引き取ってもらうよ。だから…」

 才人の言葉に安心したのか男性は大きく一息つくとそのまま息を引き取った。才人は男性の瞼を閉じると、寺院の中へ向かった。

「才人さ~んっ!」

 入った途端にシエスタが泣き付いてくる。今まで鳴き声が聞こえなかったのは少女を励ましていたからだろうか?しかし才人の姿を見て我慢できなくなったのか。才人はシエスタをあやしながら周りを見渡すと少女の母親の遺体を見つけた。父親の記憶の通りの行為を受けたという証拠が遺体に見られた。

「あ…あぁ…」

 才人は言葉を失い、怯える少女をマチルダに預けると少女の母の遺体に手を合わせる。母親の遺体は凄まじい異臭を放つ白くドロドロした液体と血の混じった物の中に転がっており、下顎が引き裂かれて無くなっていた。喉は大きな棒を詰め込まれたかのように丸く押し広げられている。下腹部は下から張り裂け内臓にハエがたかっており、そこにも白いドロドロした液体が見られる。…よく見ると周りにも同じような女性の死体が数多くある。才人はいつの間にか手が震えていた。怒りが抑えられず拳を地面に叩きつけたい気持ちになる。そんな時、ルイズが才人の手を取る。

「才人…トリステインには…ハルケギニアにはね、領主が村人の訴えを無視して見捨てられたこういった村がいっぱいあるの。この事は姫様にも相談するわ。ほっておくとこういった被害が起きるって」

 才人はルイズの手を優しく握り返すとポツリと呟いた。

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 才人は母親の遺体を抱き上げると他の全ての遺体と一緒に運び出し、村から少し離れた所にある日の光がさんさんと降り注ぐ心地よい、見晴らしの良い丘の上に埋葬した。才人は土だらけになってまで手伝ってくれたキュルケやシエスタ達にお礼を言うと、木陰で少女をあやしていたマチルダの隣に座り込む。タバサやルイズ達も疲れて木陰に寝ころぶ中、才人はマチルダの胸の中で泣き疲れて眠る少女に視線を落とす。

「助けられたのはこの子だけか…」

 悲し気に呟く才人にマチルダが励ますように声を掛ける。

「生存者無しから生存者一人になったんだ。世の理不尽から救えた、それは誇るべきさね」

 言われて才人は眠る少女の頭を撫でる。

「あぁ…そうだね。生きていれば…生きてくれていれば…それで…」

 そう言うと才人はその場で寝ころび、ひと眠りする事にした。戦いで疲れたし、今は静かに休みたかった。眠る間際、才人は一人自身の戦う理由を考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(『ウルトラマン』として戦うのも…『人間』平賀才人として戦うのも…結局は理不尽な力に振り回される命を守る為なのかな…?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




続きます。タバサの技は『必殺仕事人・飾り職人の秀』みたいな感じです。(簪でブスッ!の人…古いの見ないと分かんないかも…)



令和一発目の内容がこれとは…。本当は「平成最後のーっ!」という感じでもう二話程出してる予定でした。まぁ、『ゼロの使い魔~真心~』が未完で終わらなくて良かったです。(利き手のヒビですんで良かったです。ホント)



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