幻想消滅録   作:猫噛み

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はじめまして、“猫噛み”です。
駄文、不定期更新でもいい方は宜しくお願いします。



プロローグ

「ねえ、咲夜」

 

紅い屋敷の一室に、これまた紅い椅子に座った少女の声が響き渡る。

 

「お嬢様、何でございましょうか?」

 

少女のそばに控えた銀髪のメイドが、その言葉に返す。

 

「貴女、東方project、て知ってるかしら?」

 

「……東方projectですか?」

 

「そう、それよ」

 

正直に言うと、メイドはその言葉を知っていた。否、熟知していた。

 

「お嬢様が最近はまっている、弾幕シューティングゲームですよね」

 

しかし、メイドはそれをあまり知らないかのように言う。

 

「そうなのよ、最近パチュリーと、どちらが多く点数を稼げるか勝負しているのよ」

 

そう言う少女の顔は、どこか嬉しそうにしていて、勝負に勝ったのは容易に伺える。

 

「それでね咲夜、東方projectには沢山のシリーズがあって、その中に“東方紅魔郷”という作品があるの。それがまるで、私達を醸し出してるかの様なのよ」

 

そう言われたメイドは、一瞬背筋に寒気が走る思いをする。

 

 

 

「あら? どうしたの咲夜」

 

「いえ、何でも御座いません」

 

それでさえも、何でもないかの様に取り繕うメイド。

 

少女は一瞬不思議そうにした後、「……そう」と話を続ける。

 

「そして私は気づいたのよ、このゲームは実際にあった幻想をモチーフにしている。と」

 

メイドは今度こそ心臓を鷲掴みにされたような感覚に陥り、必死で言い訳を考える。

 

「なるほど、お嬢様の中二が再発したと言う事でしょうか?」

 

主人の失礼になろうと知ったこっちゃ無い、というメイドのもの言いに、「うーうー」と少女は先ほどまでのカリスマはどうしたと言うほど涙目でメイドの胸を叩き、メイドは鼻から忠誠心が出るのを堪えるのに必死だった。

 

「兎に角、貴女はこれを見てもそんな事が言えるかしら?」

 

少女はそう言い、一冊の古ぼけた本を取り出す。

 

その本を見て、メイドは再び背筋が凍る思いをするが、必死に平常心を保つ。

 

 

 

『幻想消滅録』

 

 

 

本の表紙には、その一文だけが書かれていた。

 

「私はね、これが本当に起こった事だと思うのよ」

 

何も少女は根拠無く言ってる訳ではない。

 

本の内容は単純だ。

 

一人の巫女が幻想郷を消す。ただそれだけの話。

 

「この物語に出ている幻想郷氷結と幻想郷灼熱と同時に世界は天変地異が起こっているし、何よりも──」

 

メイドは今度こそ心臓が凍ったかのように動かなくなり、目に見えて動揺する。

 

そして、非常にも少女の言葉は続く。

 

「──この本はどう考えても、東方projectが出来るずっと前、それこそ紅魔館に図書館が出来始めた当初からあった本よ」

 

 

 

その瞬間、世界が止まった。

 

 

 

それは、言葉の比喩とかではなく、実際に止まっている。

 

灰色に染まった世界でただ一人動く。

 

それは、先ほどまで心臓が凍るような感覚に陥ってたメイドだった。

 

メイドは一旦周りを見渡し、一つ溜め息をつき、落ち着きを取り戻す。

 

「私もダメダメね」

 

メイドは呟き、視線を少女の持つ本に向ける。

 

 

 

『幻想消滅録』

 

 

 

本の表紙には変わらずそう書かれていた。

 

「何でこんな物があるのかしら?」

 

メイドは少女の持つ本を取り、内容を確かめる。

 

 

 

『これは、一人の巫女の物語。巫女が死に、幻想を壊す迄の物語。誰にも知られず、誰にも覚えられずの寂しい物語。

 

 

 

著者 一星 彩月』

 

 

 

一頁目に物語のプロローグの様に、そう書かれていた。

 

「……これは、人目の付かない場所に置いときましょ」

 

メイドは遠い目をしてそう言い、指を一回パチン! と鳴らす。

 

 

 

瞬間、世界が巻き戻る。

 

全てがテレビの逆再生の様に、動いていく。

 

時計が逆に回り、その間にメイドは本を懐にしまう。

 

そして、メイドがもう一度指をパチン! と鳴らすと、灰色の世界に色がつき、再び動き始める。

 

 

 

 

 

「ねえ、咲夜」

 

紅い館の一室で、少女の声が響いた。

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