幻想消滅録   作:猫噛み

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すみません。二年以上も期間を開けてしまいました。
これからは一週間に一回更新するかしないかというペースになると思いますが、よろしくお願いします。

タグの「見切り投稿」を「見切り発車」に変更しました。


第四話 思考回路

 僕にとって、今回のことは予想外の事態と言えた。

 博麗の巫女がこの世界に存在する。そのこと自体は転生者である僕にとって、容易に想像できた。想像して、想定することができた。

 しかし、想定外。

 僕が想定していたのは七億年後に八雲紫が幻想郷を創造し、そこで博麗霊夢が生まれ、巫女になる未来であって、七億年前である現在に彼女が存在し、僕と接触する未来ではない。

 

 普通に考えて、七億年後に生まれる人物が今にいること自体があり得ないことなのだ。

 

 だから僕も最初は“博麗霊夢”ではないと考えた。

 “博麗霊夢”ではなく、彼女の姿を模した何かだと。それこそ、自分と同じ転生者だと。

 その一番の要因として、彼女が霊力以外に妖力も発していたことだろう。発して、混ぜ合い、打ち消し合っていたことだろう。

 人間ではなく妖怪、妖怪ではなく人間。

 宙ぶらりんで浮いた存在だったから、僕は彼女が“博麗霊夢”ではない何かだと決めつけていた。

 

 だけど、違った。彼女は間違いなく“博麗霊夢”であり、楽園の素敵な巫女であった。

 

 存在面では間違いなく“博麗霊夢”ではない。人でもなく、妖怪でもなく、唯々“博麗霊夢”の姿を模した何か。

 だが、精神面では――中身は間違いなく“博麗霊夢”であり、博麗霊夢であった。

 

 何があったのかは僕も知らない。

 一つ理解できることは、確実に原作を逸脱しているということだ。

 逸脱し、脱線し、浮いているということ。

 

 まるで博麗の巫女が空を飛ぶように。『空を飛ぶ程度の能力』のように。

 

 僕は、再び布団の上で眠りに落ちている彼女の姿を、この目に映す。

 果物ナイフで傷つけた喉元の傷はもう既に見受けられることができない。

 僕が彼女の傷を治療したわけではない。そもそも、現在の僕の家にある機材ではいくら月の技術が混合しているとはいえ、彼女が生きているうちに喉の傷をふさぐことは不可能であった。機材を集めているうちに彼女は死んでいただろう。

 だけど現状、彼女は白い肌に傷一つなく布団の上でスヤスヤ寝息を立てている。

 寝息を立てて、眠りに落ちている。

 

 その姿を見ていたら彼女の現状について、ひいては原作外の現在について、曖昧だが予想がつく。

 その予想が正解だという保証は一切ない。現在進行形で予想外の事柄が起きているのだ、僕の予想が間違っているほうが高いだろう。

 それほど僕が考えていることは現実味がなく、突拍子のないことである。

 

 それこそ、唐突に彼女が自身の喉元に果物ナイフを突きつけた事が、そう動くしかなかったことしたら、

 それが彼女に与えられたプログラムだとしたら――――

 

 全能の神に近い存在は、この世界の変化を想像以上に嫌っているのだろう。

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