警察署でヒーローと警察官に文句を言われる。
クソうぜぇ説教に申し訳ないふりをして、うつむいてりゃ話が勝手に終わる。
ヒーローの癖に見てるだけの奴とか、そんな贋作が何様だ。
「あー、疲れたぜ。ったく、人助けしてなんで怒られなきゃなんねぇんだ」
うぜぇうぜぇ、と言いながら警察署を出て家に帰る。
「うん?」
家に帰る途中、爆音が聞こえた。
おいおい、商店街から火が出てるじゃん。
なんだよ、ヴィランですかそーですか。
自然と足はヴィランのいる場所に向かう。
そこに人を虐げるヴィランがいるのなら、俺は立ち向かわないといけない。
俺が夢見たあの人ならそうしていた、圧政者ぶっ殺すってな。
「なんだありゃ」
ヴィランが商店街を壊してるのかと思ったら、人質になった子供が爆発していた。
爆発する個性なんだと思うが、そのせいで商店街が燃えている。
可哀想に、商店街の生活してる人達は被害がすごいだろう。
店を修理する金くらいは国が出してくれるだろうが、商品は破棄するから結局は損だ。
でもって、補填の資金は税金だ。
また日本の財政がピンチになる、やっぱりヴィランって最悪だわ。
しかもヘドロみたいなヴィランだ、ああいうのは特殊な刑務所に入れられるから労働とかしない。
つまり、税金で飯食うだけの害悪である。
「きゃー来た、ルーキーヒーローのマウントレディよ!」
「わわっ、ちょっと!私、二車線以上じゃなきゃ無理」
馬鹿が、なんで来たんだよ。
逆に消防車とかの邪魔になってんだろうが、何もするな小さくなれ。
もしくは野次馬をどけろ、二次災害が怖いだろ。
「爆炎系は我の苦手とするところ……今回は他に譲ってやろう」
苦手だからって戦わないのか、もういいから人命救助だけしてろ。
「そりゃサンキュ、消火で精一杯だよ。状況どうなってんの」
お前は……無駄にイケボだな、死ね。
「ベトベトで掴めねぇし、良い個性の子供が藻掻いてる」
馬鹿が、おかげで商店街は燃えてんだろう。
「ダメだ!これ解決出来んのは今この場にいねえぞ!」
いるだけか、戦えよ。
「誰か有利な個性が来るのを待つしかねえ!」
待つなよ、戦えよ。
「それまで被害をおさえよう」
「何、すぐに誰かくるさ」
「あの子には悪いがもう少し耐えてもらおう」
「クソ、奴を吹き飛ばすだけのパワーがあれば」
使えない使えない、ゴミばかりだ。
楽観的になって笑ってんじゃねぇよ、人任せにしてんじゃねぇよ。
悪いが耐えて貰う?悪いわ、耐えさせんなよ助けろ。
強いから戦わないのか、自分が弱いから見捨てるのか。
違うだろ、ヒーローってのは、なんで戦わねぇ!
「おい、邪魔だ」
「君、危ないだろ!」
「うるせぇ、俺がいかなくて誰が、あぁん?」
前に出る、ただそれだけだった。
その行為をする瞬間に、横を駆ける人影を見た。
誰だ、あの餓鬼の知り合いか?
見知らぬ少年が走っていた。
少年が走る、走ってカバンを投げた。
投げたせいでヴィランに当たり、ヴィランは仰け反り、その隙に少年が助けに行く。
「ハハッ、なにあれ最高だな」
「無駄死にだ、自殺志願かよ!」
後ろからヒーロー達が駆けていく、少年をヴィランが叩き潰そうとしていたからだ。
そんな彼らを黄金の風が追い越していく。
「プロはいつだって命懸け!」
「アレは……」
何者かの豪腕が振るわれる。
唸るように風圧が周囲を圧倒し、竜巻のような物が発生する。
その姿を知っている、アレは、アイツはオールマイト。
ナンバーワンヒーローのオールマイトだった。
「スゲェなぁ、右手一本で天候も変えれんのかよ」
身体強化もあそこまで突き詰めれば凄いに尽きる。
語彙力に乏しくなるが、取り敢えずスゲェ。
はぁ、さてヴィランも居なくなったし帰るか。
「ちょっと君、飛び出そうとしていたよね。困るんだよ」
「げっ」
俺は再び警察署に連れてかれ、またおまえかという顔を警察官にされた。
俺だってこんな所に来たくなかったよ。
不屈闘士それが俺の名前だ。
母親は治癒力強化の個性、父親は身体強化の個性、俺はそれが上手いこと噛み合って怪我を回復し、その上で肉体を強化する個性を持っている。
俺はその個性を不屈と名付けた、いつか見た夢の英雄に近づきたかったからだ。
餓鬼の頃に見た夢は鮮烈で、俺の中で篝火となって灯っている。
称賛も、金も、地位も、何も要らない。
助けたいから助ける、そのために戦う、それが俺のモットーで、何でか不良になっていた。
「何でだ」
登校する際に、絡まれてる奴がいるとホイホイ助けに行ってしまう。
結果遅刻、喧嘩ばかりで傷だらけ、悪い噂がたって友達は出来ない。
ヴィランになりきれない、半ヴィランのチンピラ共がお礼参りに来て遅刻する毎日。
出席日数が危うかった、義務教育だからいいが高校なんて行ったら卒業も怪しいかも知れない。
親も警察署で身元引受人をしてたら、諦めてきて何も言わなくなった。
まぁ、事情が事情ってのはあるんだろうがうんざりはしていただろう。
「何だ、また一人か」
母は個性の都合で看護婦を、親父は土方の仕事をしている。
どちらも個性を限定的に使って働いており、重宝されるから夜勤が多い。
今日はどちらも夜勤の日なのだろうな。
仕方ないので、帰ってきてそうそう家を出る。
ラーメン屋にでも行って、飯を食おうと思ったのだ。
「へいらっしゃい、ってまた来たのかよ」
「今どき個人経営の中華屋に来てんだ。チェーン店を選ばなかった俺に感謝しろ」
「なんでぇ、別に他所行ったって構わねぇんだよ」
「うるせぇ、ここのラーメンが好きなんだよ」
いつもみたいなやり取りを中華料理屋の親父としながら、席に着く。
豚の姿をした異形型の個性の持ち主で、見た目通り料理が上手い。
特にチャーシューに関しては美味すぎると思う。
まぁ、俺のチャーシューだとか俺で煮込んだスープだとか自虐ネタは、洒落にならないからやめてほしいがな。
「オメェよ、フラフラしてるとロクな大人になんねぇぞ」
「うるせぇ、好きでフラフラしてんじゃねぇよ。それに、ロクな大人って何だよ」
「そりゃ、警察とかヒーローとか公務員だろうなぁ」
「警察は嫌だな、アイツらヴィランとは戦えない。なるならヒーローだ」
「不良がヒーロー目指すなんて世も末だね、ほらさっさと食って勉強しな」
「あぁ、ヒーローって頭も良くないといけねぇのか」
「んなことしらねぇのか、偏差値ってのがあってだな。まぁ、頭良いに越したことはねぇ」
ラーメンを啜りながら親父の話を聞く。
親父も専門学校に通って就職した口で、勉強が好きじゃないから詳しくは何するか知らないらしい。
ただ、ヒーローってのは頭が良くないとなれないくらいは知ってるらしい。
「くだらねぇ、頭が悪いとなっちゃいけねぇのかヒーローってのは」
「そりゃ腕っぷしだけじゃな、事務処理とか色々あんだろ」
「戦うだけだろ?」
「戦った後に手続きとかあるんだろう、事務所とか税金とか部下の給料とか色々よ」
「そんなんヒーローじゃねぇよ」
事務処理に追われて、税金に頭を悩ませ、挙げ句メディアに露出して金儲け。
違うだろ、そんなんヒーローじゃねぇだろ。
「じゃあどうするだよ」
「馬鹿でもヒーローになってやるよ」
「なれるわけないだろ、真面目に勉強しろ」
「なるわボケ!ノー勉でヒーローなってやるわ!」
「おうおう、じゃあヒーロー科のある学校に受かったらラーメン奢ってやるわ。死ぬほど食わしてやる」
「上等だ、破産覚悟しとけよ。ごちそうさん!」
食い終わった皿を置いて、俺は店を出た。
取り敢えず、片っ端からヒーロー科のある学校に受ければ一個くらい受かるだろう。
資格が無いとヒーローになれないとか、世知辛いぜ。