「俺達を倒しても、へへへ、秘密兵器がある。お前らは終わりだァ!」
「うるせぇ!」
目を見開くヴィランの顔面を殴って鎮める。
秘密兵器とやらが何だろうが、知ったことではない。
「このあとどうしましょう、皆さんが心配ですわ」
「みんなの実力なら、そこら辺のチンピラには負けないと思うけど」
不安げな女子達を他所に、俺は周囲を見渡す。
さっき俺がいた場所はあっちだな、見覚えがる景色だ。
「なぁ八百万、ロケットって作れるか?」
「人が飛ぶほどのロケットを?無理ではないですが正気ですの?」
「絶対、それで向かおうとしてるよね」
こ、コイツらどうして俺の考えが……いや、まぁその通りなんだけどな。
でも、笑って災害地に飛び込んで殺そうとする相手を殺さずに捕まえる奴を正気とかおかしいと思う。
ヒーローになるってのは、英雄になるってのは、正義の味方ってのは人間じゃないだろう。
「出来るんだろ、やってくれ」
「でも」
「頼む、ヤラせてくれ。一発でいい、一発でいいから!」
「なんか迫られる百が、卑猥に見える」
「どういうことですの!?」
疲労からか顔を真っ赤にした八百万が仕方ないなとばかりにロケットを用意してくれた。
デカイな、意外とデカイぞこれ。
「ねぇ、本当にやるの?そのままクルって地面に激突しない?」
「怖いこと言うなよ耳郎、そういうとこだぞ耳郎」
「そういうとこって何!?」
出来るできないではない、やるのである。
八百万がスイッチを渡してくる、これを押せば行けるのか。
「いいですか、これからパラシュートを――」
「押せば良いんだな」
「ちょ、おま!?」
バシュっとロケットが発射する。
うお、ブレる筋肉で制御しないと!
とりあえず、真上に向けてロケットを整えて飛んでった。
意外と、コントロールが出来ない。
「あっ」
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
下で悲鳴が聞こえる。
この高さから落ちたら死ぬかな、死ぬかも。
「根性ォォォォ!」
体重を前にかけてとりあえず目的地まで行く。
落ちることは落ちた時に考えればいい。
「相澤先生、包帯ぐるぐるじゃねぇーか」
上から敵が戦っているのが見えた。
行くしかない、ロケットはもう必要ない。
なので、思い切りぶん殴った。
すると、なんか知らないが爆発した。
「「死んだぁぁぁぁぁ!」」
爆発は強く、俺は地面に向けてふっ飛ばされる。
なんかドーム近い、これアレだ、ぶつかるアレだ。
強、速、避……無理!受け身で?出来る?否、死!
「何だぁ、ボス!空から人間が」
「何だと、そんな訳が」
「あれは不屈君だ!」
「すまん」
俺はその言葉を最後に、ヴィランごと地面に落ちた。
不屈くぅぅぅんと叫ぶ緑谷の声がするがそれどころではない。
体の前面が完全にぶっ壊れた。
皮膚がぐちゃぐちゃになっているな、血管も破裂してるし、呼吸が出来ない。
骨も、衝撃が凄かったのか全部折れた。
筋肉も、力が入らないし駄目かもしれねぇ。
痛てぇ、つかなんで意識がはっきりしてんだよ。
「何だこいつ、何処から出てきた」
「痛てぇ、クソが勝手に来て勝手に死んだぞコイツ!」
「何してるんだ、さっさと片付けろ」
俺の下敷きになってたヴィランが、体を持って投げ捨てる。
完全に死んだと思われてるが、生きてます。
「待て、様子が可笑しくないか」
「フフフ、フハハハ!」
馬鹿め、俺の再生時間まで何もしないなんてな。
「し、死体が起き上がった」
「なんか、一回り大きくなってないか?」
飛び起きると同時にヴィランを殴った。
よく分かんねぇが、あの偉そうな奴をぶん殴ってやる。
なんだそのコスチューム、恥ずかしくねぇのかよ。
「最近の子供はすごいな、恥ずかしくなってくるぜ」
「恥ずかしいのはその格好だろ」
「……生意気なガキは嫌いだ、脳無」
眼の前に、すごい速さで黒い巨体が現れる。
顔は鳥のようで、脳は剥き出しだ。
異形型にしては異常すぎる見た目、何だコイツ?
「はぁ?」
気付けば、体がバラバラに砕けていた。
砕けて、そして俺は空を見ていた。
殴られた、いつの間に、見えなかった。
なんて速さとパワーだ、オールマイトがヴィランをふっとばす映像を見たことあるが一緒かよ。
「だが、死んで、ねぇ……」
俺の体表を緑の閃光が走る。
攻撃に備えるように、より丈夫となって、そして再生する。
ピンチだ、逆境である、いいね最高だね。
逆境こそ英雄の居場所だ。
「叛逆だ、俺の叛逆は今こそ始まる!」
空中に居るからなんだ、リミッターを外せ、俺なら出来るはずだ。
回復する、強化する、もっとそれ以外にも使えるはずだ。
再生する部位を必要最低限にコントロールする、俺の力だ、強化する力だってコントロールできる。
右足だけだ、右足だけに注ぐ、ありったけの回復エネルギーを強化エネルギーに回す。
「はは、やりゃぁ出来るじゃねぇか!」
片足がこれでもかと緑色に輝く、後は振り抜くのみだ。
蹴った、それだけで空気が裂けた。
皮膚が裂けた、血が舞った、そして進んだ。
空気を蹴り抜き、風圧にさらされ、音を置き去りにして敵に向かう。
「手、離せぇぇぇぇ!」
「よく分かんねぇが、俺が来た!」
手だらけのヴィランに向かって行く。
俺の体を黒い巨人が押さえようとするが、勢いは殺せない。
「クソが」
巨体が揺れ、それによって手だらけのヴィランが巨体に押し飛ばされる。
何しようとしたが、邪魔したらしいな。
その時、ドアが爆発した。
「オ、オールマイト!」
「嫌な予感がしてね、校長の話を振り切ってやって来たよ。来る途中で飯田少年と出会って、何があったかあらましは聞いた」
「うらぁぁぁぁ死ねぇぇぇぇ!」
「もう大丈夫!私が、来た!」
「待ってたよヒーロー、社会のゴミめ」
黒い巨人、怪人脳無とやらに挑みかかる。
目に負えない程の速度、だが思ったほどじゃない。
さっきとは違う、俺はふっ飛ばされない。
なぜなら、片足を地面に突き刺したからだ。
「…………」
「もっとだ、もっともっと、俺を痛めつけろ!痛みこそが、俺を強くする!」
俺のパンチが当たっても、脳無には効いてない。
異形型の個性にしてはおかしい、ダメージが入ってない。
強敵だ、全力を出しても倒せない強敵、いいぞ。
「おぉぉぉぉぉ!」
突き刺した片足を軸にして、俺は縦横無尽に殴り飛ばされる。
足の骨折が治れば元の状態に戻り、サンドバッグの用に殴られては足が折れて地面に叩きつけられる。
殴られ、復帰して、殴り、殴られ、倒され、復帰し、殴って、ボロボロになるだけの時間だ。
だが、いつか終わる、この戦いで俺は傷を負うごとに確実に強化されている。
いつか、いつか俺はコイツに届く。
「カロライナ、スラァァァシュ!」
「脳無」
一瞬で巨体が消えた。
見れば、さっき来ていたオールマイトが横取りしていた。
あの手だらけ野郎、命令してオールマイトとぶつけさせたのか。
「クソがぁぁぁぁぁぁ!」
「おいおい、今から脳無が殺すんだ。邪魔するなよ」
拳を握り、手だらけ野郎に向かって殴り掛かる。
そんな俺の喉をヤツの手が掴み、激痛が喉に走った。
だから、どうした!
「ぜぇッ!」
「ガッ!?」
全力の頭突きがやつに入る。
喉が回復してるのが分かるので、何かされたんだろ。
「痛てぇ……クソガキがぁ!」
「テメェが大将だろ、ぶっ潰してやる!」
「俺はガキが嫌いなんだ、殺してやるよ」
「やってみろよ、クソヴィラン!」
テンション上がるぜ、お前をぶっ飛ばしてハッピーエンドだ。
「さぁ、俺の愛を受け入れろ!圧制者ぁぁぁぁ!」
「何を言ってんだ、クソガキ!」