とあるHACHIMANがあの世界に行った   作:はチまン

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HACHIMANの反撃

「なんだよ! なんなんだよお前らは!! なんで俺の思い通りにならねえんだよ、ああっ!?」

「優木……」

 俺が連中に向かって叫んだ途端に、全員の表情が険しくなって息を飲むのがわかった。

 だが俺はもうこいつらと『ラブコメごっこ』をするつもりは毛頭ない。もはやこの優木とかいう訳のわからないモブの振りをするつもりもなければ、八幡のために彼女を用意しようなんてこともどうでも良かった。

 今思っているのはただひとつ。

 この糞みたいな全てをぶち壊して終わりにしたい。ただそれだけだ。

 俺の思い通りにならないこんな場所なんて、もはやどうでも良かったから。

「あのなあお前ら。何か勘違いしているようだから教えてやるが、おまえらはみんなただの『アニメのキャラクター』だ。そんなお前らごときが、物語を書く立場のこの俺様……『作者』様に楯突こうなんて100万年早いんだよ」

「優木……? お前はいったい何を言っているんだ?」

「うるせえよ、このクソ平塚!! てめえみてえな暴力教師が偉そうに人に指図とかしようとしてんじゃねえよ!!」

「!?」

 平塚は俺の言葉に絶句して立ちすくんでしまった。くくく。ああ、良い面だぜぇ、俺はお前のそういう歪んだ面が大好きなんだよ。ほれほれ、もっと絶望しやがれ、独り身の負け組アラサー女が。

 さぁて、じゃあここで洗いざらい言いたいことを言ってやることにするかよ。どうせこんな世界には未練はないんだ。

 やることやってさっさとこの『夢の世界』から目を醒まして現実に戻ることにするぜ。

 だがその前に鬱憤を晴らさせてもらう。せっかくこんなにクオリティーの高い夢なんだからな。

「おい、葉山! てめえだてめえ。何を驚いた顔してんだよこのばーか。お前がどれだけ身勝手でどうしようもない屑かってことは、SSを読みまくったこの俺はよぅく分かっているんだぜ」

「え、えすえす? な、なんのことだ?」

「うるせえよばーか。黙って聞け。なにがみんな仲良くだ。てめえは千葉村でも文化祭でも全部失敗してるじゃねえか。結局全部八幡が肩代わりして成功させてよ。それなのになんだあれは! 文化祭では八幡を悪者に祭り上げ、修学旅行のときは八幡に汚れ役を全部押し付けた」

「ヒッキー……、よ、汚れ役ってなんのことなの?」

 八幡へ恐る恐る話しかけるクソガハマにむかつきつつ、俺は怒鳴り付けた。

「勝手に口開くんじゃねえよクソビッチが! てめえみてえな自分勝手な女はな、身ぐるみ剥がされて風俗にでも落ちればいいんだよ、くそガハマ! いいか? 修学旅行のとき葉山とガハマ、お前らは結託して八幡を陥れたんだ。あの戸部の告白を助ける依頼……本来は受ける必要はなかった、それなのにガハマが無理やりあれをひきうけたんだ。なぜか? それは、葉山に頼まれてお前らの関係を壊す必要があったからだ。葉山はな、雪ノ下を狙っていたんだよ。だけどな、仲の良い八幡のことが邪魔だった。だからガハマに無理に依頼を受けさせ、そのうえで八幡にはあの依頼が無かったことになるように頼んだんだ!」

「そんなこと知らないよ」

「言いがかりだ」

「いや、そういうことなんだよ。くくく……なんといってもこの展開は奉仕部崩壊にむけてのテンプレ鉄板ルートだからな、そうじゃないと話がおかしくなるんだよ、くくく」

 俺の発言に誰もなにも反応しなかった。これはつまり正論すぎてぐうの音も出ないってことに他ならないのだろう。そういうことか。

 だったら、もっと教えてやるぜ。

「それに葉山、お前は文化祭の時も八幡を陥れたよな。相模を見つけたあと、あの屋上で八幡がわざと相模をけなす発言をした。八幡なりに頑張ってとった行動じゃねえか。なのにお前は何をした? 訳も考えずにお前は相模達と一緒に八幡を糾弾しただろうが。ああすれば八幡は嫌われ者になることが分かっていたからな。お前は八幡を排除するためにあえてあの場で八幡を悪者にしたんだ。そうだろう? そうなんだよ! なあ、葉山!!」

 どうだ! ぐうの音も出まい。お前の腹黒を俺がこうやって晒してやったんだ。むしろこれは公開処刑に他ならない。 

 ああ、たまらないぜ! 暗躍して自分の地位を確立しようと頑張っていた悪の葉山を、俺はこうして自分の手で粛清しているんだ! 普通のSSだったらここで、『お、お前よくもばらしやがってー』とか言いつつ殴りかかってくるんだよな。ああ、いいぜ! 殴れよ。さっさと俺を殴って自分の馬鹿さ加減を世間様に晒せよ、さあ!!

 だが、葉山は全く動かなかった。いや、動かないどころか表情一つ変えなかった。ただまっすぐに俺を悲し気な顔で見つめているだけ。

 なんだよその顔は! いったいなんでそんな顔をするんだよ! まじでむかつく。

「隼人くんはそんなことしないよ。しないし、何も出来なかったことを後悔しちゃう人だよ」

「ああん?」

 急にガハマが口を開いたので俺は滅茶苦茶頭にきたが、すぐにその隣の雪ノ下も口を開いた。

「そうね。彼はいつだって迷いながらその場の全員にとっての最適解を探している。それが彼の弱さ上の行動であることを他の誰でもない、彼自身が一番よく理解しているの。そんな葉山君が比企谷君を排斥するために陥れるような行為をすると、あなたは本気で考えているのかしら?」

「ゆきの……下さん」

 雪ノ下は俺を射貫くような厳しい視線を向けていた。だが、俺にはそんな視線を受けるいわれはねえ。

「何を知ったような口を聞くんだよ雪ノ下。だいたいてめえが一番の悪じゃねえか。八幡の足を引っ張るのはいつもお前だ。なにもできない癖にしゃしゃりでて、八幡の尻ぬぐいがなければ何も解決できない。そのくせ、なんだ? 『あなたのやり方嫌いだわ』? はんっ! 笑わせるんじゃねえよ! てめえはそもそも何もしていねえじゃねえか! それなのに八幡を糾弾した挙句、悪口まで言いまくりやがって。俺はな! そういうてめえの陰険で陰湿なところが大嫌いなんだよ! この出来損ないが!」

 俺の言にまったく表情を変えない雪ノ下だったが、そのとなりでガハマがみっともなく号泣しながら叫んだ。

「ひ、ひどいよ! なんでそんなこと言うの!? ゆ、ゆきのんはいつだって真剣で一生懸命でだからあたしもヒッキーもゆきのんを助けたいって本気で思って……」

「うるせえよばーか。そもそも何も出来ねえのはお前の方だろうが。存在自体が害悪の最低最悪の屑女。おまえが何をしたのか覚えていないのかこのアホ。そもそもあの入学式の日に、お前が犬のリードを放したせいで、それを助けに飛び込んだ八幡が大けがすることになったんじゃねえか! それなのにお前はなんだ? 一年間もなにもせずにいきなり奉仕部にやって来たかと思ったら、あの木炭みたいなごみを八幡に食わせやがって、お前がしたのはただの自己満足で、そもそも八幡に五体投地で謝罪して許してでももらわない限りは会うことだって本来はだめなはずなんだ。それに雪ノ下の車の修理代。当然お前が払うべきじゃねえかよ! 数千万円。なのになんで平気で学校に通ってんだよ、お前のその考えが異常すぎるってなんでわからねえんだ!!」

 そう怒鳴ったついでに俺は平塚を睨んだ。そして言った。

「てめえもだ平塚!! てめえがそもそも八幡を奉仕部へ強制入部させたことからして違法なんだよ。てめえは教師のくせになんでそんな簡単な犯罪のことも知らねえんだよ。強制入部させた上に体罰をしたお前は当然懲戒解雇処分に決まっている。それなのに校長まで汚職に手を染めさせて、お前こそ最大の戦犯なんだよ。俺は絶対にお前を許さねえ」

 そう言った時だった。

 

「あーははははははははは、あーはっはっはっはっはははははは、あはははははははははあはっははははは」

「お、おい、陽乃……」

 

 急に笑い出したのは陽乃だ。彼女は大口を開けてそれはもうおかしいとお腹を抱えて大爆笑。

 そんな彼女に隣に立つ平塚が声を掛けるも、陽乃の哄笑は一向に止まらない。

 

「何がおかしいんだよ?」

「あははははははは、ご、ごめんごめんね、笑う気はなくて、ぷっ、くくく、くははは、こ、これはだめ、もうだめ、くはは」

 言いつつ本当に笑いが止まらない陽乃に、俺はなんと言っていいかわからないでいたそこへ、彼女の声が響いた。

「ごめんごめん君最高だよぉ。ほんと、いったいどこからそんな話を持ってきてくれたのか、もうね、お腹いたいくらい面白……じゃなくて本当に大変だよね、もうそんな話、大変過ぎて君も本当に大変だと思うからさ……」

 陽乃はそう言いつつ、比企谷の背中をポンと叩いた。

「ということで、比企谷君どうぞ」

「やっぱ、俺すか……」

 はあと、比企谷がため息を吐く。

 そして脇の陽乃へと文句の一つでも言うかと思いきや、彼はまっすぐに冷徹な瞳を向けてきた。

 万人はこの瞳を腐っているだなんだといっているが、俺はそうは思わない。非常に思慮深くて理知的で。だからこそ八幡はどの世界とのクロスオーバーしても映えるのだ。次はどんな作品のヒロインとカップリングさせようかな? とかそんなことを思ってしまっていた。

「なあお前。さっきから聞いてれば色々知っているみたいだな。いったい誰から話を聞いたのかは知らねえが正直良くそれだけ調べたよ、マジですげえと思う。マジで最高だ」

「そ、そんなことは……ないよ」

 真顔の八幡に褒められて、なにやらドギマギしてしまう。こいつやっぱり俺に感謝してるんじゃねえかよ。そうだよな。八幡はいつだって人に認められてこなかったんだもの。やっぱり俺みたいな仲間が必要なんだよ彼には。

 きっと八幡は俺に感謝している。きっとそう。そう確信しながら彼の言葉を待った。

 そして出た言葉、それは……

「お前の調べた内容……一つも合ってねえよ、くそ野郎」

 

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