とあるHACHIMANがあの世界に行った 作:はチまン
くそっ……
朝から憂鬱だぜ。
修学旅行が終わり、さあいよいよテンプレの『奉仕部崩壊イベ』がスタートする最高のシチュエーションなのに俺は最悪の気分を味わっていた。
まさか、他人の家があんなにも居心地悪いものだとは思いもしなかったのだ。
この優木とかいう奴はまめなようで、自宅の住所などをスマホにも書いてあった。それに定期もあったので、それらを頼りに自宅へと向かうと、そこは閑静な住宅街の中の小さな一軒家。
帰ってみれば40歳程度の母親と思しき貧相な体形の女が居て俺にお帰りとか笑いながら言ったのだ。それから自分の部屋をなんとなく探り当てて入ってみれば、壁一面に頭のわるそうなアイドルグループのポスターが。
それに書棚にもアイドル関連の書籍がずらり。
どうやらこいつは相当な1次元オタらしい。まじで気持ち悪い、これは引く。
だが、我慢だ。ここを追い出されたら俺には生活できるあてはないんだからな、今のところ。
そう思い自室で耐えつつも、飯になれば呼ばれるわけで、仕方なく行ってみればやはり40くらいだろうか、なんだか貧乏たらしい男が座ってにやにやしながらビールを飲んでいた。うわぁ、こいつ間違いなく優柔不断な社畜野郎だろ。
俺のリアルの友達だってもっとパリッとしてるぞ。そもそもこんな貧相な女と結婚するくらいだから人生負け組に決まってる。うん、そうだ。
俺だったらこんな女とは絶対結婚しないな。絶世の美女でなくてもいいが、もっと美人で可愛くて優しくて健気で胸の大きな女を選ぶ。こんな奴じゃとても楽しめないだろ、くくく。
まあ、負け組のこいつには丁度いい相手なんだろうよ。俺は絶対こいつみたいにはならねえぞ、そのために今、無駄に働かずに小説だけを書いてるんだからな。いつか俺の作品が飛ぶように売れて印税ガポガポな最高の生活を送る予定なんだよ、くくく。
そうやって気持ちを無理矢理盛り上げつつ、俺は我慢してこの二日間生活してやったのだ。
だから疲れていて当たり前。
くそっ! くそくそくそっ! なんで俺ばっかりがこんな目に!!
俺は心で悪態をつきつつ総武高の二年F組の教室へと入った。
さて、今日もマスクをして具合が悪い振りをしなくては。他人の振りなんてまじで面倒くさい。だが、こうでもしなければ頭がおかしい認定されること間違いなしだからな。それだけは譲れない。
適当な奴に調子が悪いからとか言って自分の席まで連れて行って貰ってすわる。心配してくれているようだから特に違和感はないのだろう。
俺は席に座ったままで周囲を見渡した。すると、葉山グループがなにやらワイワイ騒いでいた。
「ディスティニー本気出しすぎだよな!」
は? 何話してんだこいつら? ディスティニー? 朝から浮かれてんじゃねえよクソどもが! そしてその会話にさらにガハマも加わりだして本気でムカついた。
こいつ、葉山と言いガハマといい、何もなかったかのように呑気にそんな世間話をしやがって。
お前らの所為でどれだけ八幡が傷ついたと思っているんだ! お前らが人の気持ちを考えてねえんだろうが!!
そうマスク越しに睨んでいた時だった。
ふっとガハマの視線がある一点に向かって硬直しやがった。
俺はその視線の先にゆっくり首を廻す。すると、そこには真っすぐにガハマを見つめる八幡の姿。だが、彼はすぐに視線を逸らした。そして無理やりに身を捩って眠りについたような格好になる。
くっそ、だからなんで八幡が逃げなきゃならねえんだよ! まじでムカつく状況だ。これは一刻も早くなんとかせねば!!
俺は具合が良くないことをいいことに思考をフル回転させる。
今の状況で考えられる最高の答え、それを見つけなくてはならない。
一つは八幡の状況回復。
今の八幡は最悪の心理状態だ。しかもこの後奉仕部女二人の辛辣な陰口を聞くことになるんだ、あの奉仕部の部室で。それなのに原作では我慢して奉仕部の二人の無理難題を解決するんだ。あんなのおかしい、間違っている。
だから、八幡がその被害に遭わないようにしつつ、さらに二人の悪辣非道を明らかにして、彼へと教えてやらないといけない。だが、その役を果たして俺がやってもいいものかどうか。
二つ目は八幡を貶めた連中への制裁だ。
葉山、ガハマ、雪ノ下は言うに及ばず、八幡を強制入部させた暴力教師・平塚も地獄を味合わせてやりたい。それこそ連中の悪事を万人の目の前に晒させて、もう二度と人前に出られないようにしてやりたい、くっくっく。まあ、その方法も既に考えてあるけどな、とにかくのうのうとしていられるのも今のうちだけだ。
それと三つ目、やはり八幡にはヒロインが必要なんだ。
色々考えてはみたが、やはり理想的なのは雪ノ下陽乃だろうと思う。個人的には留美ちゃんが良いと思うのだけど、確か都の条例で18歳以下との交際は法律違反にだったはずだし、そんなことで八幡が困ることだけは避けたいし。
後は折本かおりちゃんとか、城廻、いろはとかそんなところか? 個人的には書記ちゃんも好きなんだが……
折本は現在のところどこにいるのか全く分からねえのがネックだ。この後八幡と運命の再開を果たすことにはなるけど、一度八幡を振っているんだよな。でも、だからこそ愛が燃え上がる展開になるんだよ。
八幡に酷いことをしたって理由からの、申し訳ない、許されたいって思いからの献身、最高だよな。できたら玉縄の目の前で八幡と結ばれて欲しい。玉縄ムカつくからな、あいつは泣かしたい。
初期ちゃんは貴重な巨乳キャラだから是非ともアプローチしたいが、彼女の居場所も分からないしそもそも接点が少なすぎる。
城廻といろはは……まあ、流れ次第かな? よく考えたらこいつら八幡を侮辱したり、仕事を押し付けたりしているんだよな。折本と同じでそこからの、申し訳ないごめんなさいの告白は涎ものだが……ぬふふ。
だが、まあ、そう考えてみればみるほど、やはり陽乃が一番のような気がする。
だってあの姉、八幡大好きだものな。
八幡が好きだから何度も接触してきたのだし、このあとだってデートしたりするんだもの。これが一番脈がある。
よし、クリアーしなければならない問題はいろいろあるが、これを俺は同時進行でやらないとな。
なあに心配はない。
俺は今まで何百作品も俺ガイル小説を読んできたんだからな、ありとあらゆるパターンに対応できる。くくく。
さて、八幡、俺がお前を助けてやるからな。