アナスタシアさんはバカワイイ。   作:バナハロ

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共鳴編。
変人と天然は紙一重。


 十月の中間試験中。明後日で日程はすべて終わり。中間試験余裕の俺は自分のマンションの屋上で空を見上げていた。

 ここ最近「幕○志士」というゲーム実況者のチャンネル登録会員になった。で、過去の幕末ラジオを見ていたのだが、何でも「幕○志士星」とかいう星があるらしい。

 何となく気になったので空を見上げに来た次第なのだが……。

 

「……全然わかんねぇ……」

 

 星なんて詳しくないし、うちの学校に地学の授業なんてものはない。考えたらわかるはずもなかった。

 ……つーか、星なんてどう見ても一緒にしか見えねえんだけど……。どうやってあの群れの中から形を見出したんだよ。昔の人の想像力頭おかしいだろ……。

 だって俺でも星座作れそうだもん。例えば……そうだな。あそことあそこの星を繋いで紐座とか? おっと、どこの星を繋いでも紐座は完成しちまうな。

 ……まぁ、せっかく屋上に上がって来たんだし、もう少し星見て行こうかな。幸いにも、今日は雲ひとつない夜空だ。東京とは思えないほどに星空が広がっている。

 どうせなら写真でも撮ってうちで探しても良いかもしんない。……や、部屋に戻ったら流石に少し勉強するか。よって天体観測再開だ。

 そんなことを考えながらボンヤリ空を眺めてると、屋上の扉が開く音がした。

 

「ミナミ、早く行きましょう!」

「もう、走らないのアーニャちゃん。慌てなくても星は逃げないよ」

 

 女の人が二人ほど屋上に上がって来た。片方は銀髪の外国人、もう片方は茶髪のお姉さん。二人ともえらい可愛いな……。

 銀髪の方は天体望遠鏡を持っていて、それを組み立て始め、それを見て茶髪の方は申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「ごめんね、本当は丘の頂上に行く予定だったのに……」

「いえ、お仕事ですから仕方ないです」

 

 ……お仕事? 社会人か? 確かに可愛いというより綺麗な人だし、新人の社会人にも見える。

 ま、俺には関係ないが。とりあえず、りゅう座っぽいのだけでも見つけないとな。一応、動画で見たから形も覚えてるし。

 

「準備できました!」

「ごめんね、人いるからもう少し静かにしようか」

「あっ……スミマセン……」

 

 や、別に俺騒がしくても気にしないけど。結局、どこで誰が騒ごうが俺には無関係だからな。流石に図書館とか映画館で騒がれたら殺しちゃうけど。

 でも、銀髪の方はすごいおとなしい子に見えるんだが……もしかして今はテンションが上がった状況なのか? 例えば、社会人っぽい茶髪の方は割と忙しくて、そんな中見つけた天体観測出来る短い時間の中で空を見に来た、とか?しかし、そうなると俺は邪魔な気がするんだが……。

 ……でも、その、なんだろう。あの望遠鏡が気になる。控えめに言って羨ましいんだが……。もしかしたらアレなら幕○志士星が見えるかもしれないし。

 ……おっと、だからってジッと見つめるな。「え、何あの男?」「なんかすごいこっち見て来るんですけど〜」「通報しよ」「なんならそこから飛び降りて星になってもらおう」みたいになったら怖いし。

 ……でも、なんか声かけられたらそれはそれで嬉しいし、もう少しここにいよう。

 せっかく残るなら幕○志士星もう少し探そうかな……。スマホでググりながら空を見上げたりと頑張ってみたが、なかなか見つからない。

 やはり素人に天体観測は難しいのかな……。というか、オリオン座は見れば一発で分かるのはある意味すごいんだな。

 ……しかし、こうして見てると星が降るようでという表現はよく分かるような気がするわ。まぁ、俺のことを追いかけて来る「私」はいないわけだが。

 ……彼女が欲しい。彼女できる奴ってどうやって作ってんの? クラスメートの様子とか見ても好きな子を見つけたらそいつにだけ徹底的に優しくして惚れさせるなんていう方法を使ってるようにしか見えねえんだが……。あれで彼女できてもすぐに正体バレるだろ……。

 まぁ、周りの連中から見たら俺は変人らしく、その事で友達がいないわけではないが、何となくクラスから浮いてる俺に彼女なんて出来っこないけどな……。

 なんか考えれば考えるほどテンションが下がって来てる時だ。

 

「……あの、良かったら望遠鏡使いますか?」

「……へあ?」

 

 背後から女の人の声が聞こえて、思わず変な声を漏らしてしまった。後ろには銀髪の女の子が俺に声をかけて来ている。少し後ろには茶髪の女の人も。

 

「星見るなら、望遠鏡の方が良いですよ?」

「え、良いんですか?」

「はい。望遠鏡は月の表面まで見えるんですから」

「いや人の目より望遠鏡のが性能が高いってことは知ってますけど、俺も借りて良いんですかって」

「もちろんですよ?」

 

 ……まじか。まさか本当に声をかけてもらえるとは……。一応、茶髪の社会人さんの方を見ると、小さく会釈してくれた。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて……」

「……言葉に、甘える……?」

「あ、ありがたくお借りしますってことです」

 

 日本語にはまだ不慣れなんだな。まぁ、確かに日本語って難しいらしいからな。

 

「どの星が見たいですか?」

「あー……」

 

 言うの恥ずかしいな……。幕○志士星知ってるのかこの人? まぁいいか。言っておこう。

 

「……幕○志士星っていう星なんですけど……」

「……バクマツ……シシ?」

 

 だよな。日本語が微妙な銀髪さんだから純粋に興味津々になってくれてるが、純然たる社会人さんは微妙な顔になってる。茶化してんの? みたいな。

 なので、慌ててスマホでググった画面を見せた。すると、銀髪さんは予想以上に近寄って来て画面を見た良い匂い。

 

「これなんだけど」

「ダー……バク○ツシシ星、初めて聞きました……」

「え、待って。本当にあるの?」

 

 社会人さんが参加して来た。俺のスマホを覗き込んで来た。うおっ、美人二人に挟まれた良い匂い。

 

「へぇ〜……ちなみに、なんで幕○志士なの?」

「ゲーム実況者が2万円ちょっと払って星の名前を買ったらしいんですよ。オーストラリアのブルックリン天文台から」

「へ、へぇ〜……」

 

 あ、少し引いてる。まぁゲーム実況者が星買うってなんで? って思うかもしれないが、あの人達は少し特殊なんだよ。

 

「じゃあ、割と最近出来たんだ?」

「そうですね。りゅう座の頭のあたりにあるらしいんですが……」

「りゅう座……ということはおおぐま座やこぐま座も探したほうが良さそうですね」

 

 銀髪さん、詳しいな……。社会人さんもウンウンと頷いてるし、もしかしてこの人達すごく頭の良い人達なんじゃ……。

 

「な、なんか詳しいですね、お二人とも……」

「そうですか?」

「アーニャちゃんが星好きだからね。私も一緒に見てるうちに覚えちゃったって感じかな」

 

 なるほど……。そして名前はアーニャっていうのか……。

 しかし、自分が覚えるまで一緒に星見てあげるなんて付き合い良いな。さすがお姉さんっぽい人。

 

「あ、見つけましたよ。幕○志士星!」

 

 アーニャさんが声を張り上げた。早いな。さすが天文好き。

 手招きしてくれてるので、俺も望遠鏡を覗き込んだ。なるほど、これが幕○志士星か……。なんか、普通の星だな……。これに願いが叶うまでダンスをしなきゃいけないわけだが……今日は人いるしいいや。

 

「わざわざすみません、俺のために」

「いえ、私も知らなかった星を見ることが出来ましたから!」

「……まぁ、それは何より」

 

 うーん……なんか騙してるみたいで気が引けるぞ。純粋過ぎるだろこの人……。

 

「私にも見せてくれる?」

「あ、どうぞ、ミナミ」

 

 あの人はミナミというのか……。朝倉さんの事ではないだろうな。

 

「ほんとだ……りゅう座の頭にあるんだ……。なんでここにあるの?」

「幕○志士といえば坂本龍馬、坂本龍馬といえば龍、みたいな感じでりゅう座の頭の上にいるって事にしたらしいですよ」

「ふーん……ゲーム実況者ってロマンチストなんだね」

「……坂本だけはそうですね」

「二人いるの?」

「はい。もう片方は西郷さんです」

「……あ、幕○志士ってそういう……」

 

 返事をしながら星を眺めるミナミさん。星を買うような人に興味を持ったのか、続けて質問してきた。

 

「ゲーム実況って見てて楽しいの?」

「楽しいですよ。あいつらアホだから」

「ふーん……」

 

 最近では山手線とかいう連中も出て来たな。男女で乳繰り合いやがって……爆発しろ。あいつらあんまコメント読まないけどリア充爆発しろコメント超来てるからな。

 何故かイラついてきてると、アーニャさんの方が質問して来た。

 

「ゲーム実況ってなんですか?」

「ああ、文字通りゲームを実況した動画をあげてる人達ですよ」

「……?」

 

 イマイチ、ピンと来てないみたいだな……。まぁ、日本の文化として良いものかどうかは俺には分からないし、教えなくても良いか。

 

「まぁ、ググれば出ますよ」

  「ググ……?」

「ああ、検索するって事です」

「分かりました! 帰ったら見てみますね」

「や、別に見ても見なくても良いと思いますけど……」

「なんでですか?」

「『わ、面白そう! ミナミ、これやりたいです! 一緒にやりませんかっ?』ってなってゲーマーになるかと思うと恐ろしいので……」

「……それ、私の真似ですか?」

「ぷふっ……少し似てる……!」

「……ミナミ? グニェーフ……怒りますよ?」

「ごめんごめんっ。……ふふっ」

「っ、も、もうっ!」

 

 昔から人のモノマネは上手いんだこれが。

 なんとか笑いを堪えると、ミナミさんは続けて質問してきた。

 

「ていうか、私のこと知ってたんだ?」

「そりゃさっき名前呼ばれてましたから」

「あ、なるほど……」

「え、それだけ、ですか……?」

 

 アーニャさんがキョトンとした顔で聞いてきた。

 

「? はい。あ、アーニャさんも知ってますよ」

「いえ、そうではなく……」

 

 なんだ? 有名人か? まさかな……。

 すると、ミナミさんの方が改めて、といった感じで挨拶してきた。

 

「じゃあ、自己紹介しておくね。新田美波です」

「アー……アナスタシアです。アーニャとお呼びください」

 

 新田さんとアナスタシアさん、か。よし覚えた。

 ……ん? 新田? 新田って……あ、まさか……!

 

「新田って……!」

「! 知っていますかっ? ミナミの事……!」

「俺の上の階に住んでる方ですか?」

「へっ? ……あ、もしかして白石さんですか?」

「……」

 

 マジか。まぁ、父親が出張に出て母親もそれを追いかけて行ったからほぼ一人暮らし状態で挨拶とかした事なかったんだよな。

 っと、とりあえずアナスタシアさんに自己紹介しないと。

 

「あ、俺は白石遥です」

「ハルカ……ですね? あの、私達のことそれだけですか?」

「え、それだけって……あ、菓子折り包んだ方が良かったですか?」

「い、いえ……そうでは……」

 

 なんだろ。もしかしてマジで有名人か? まぁ、何でも良いが。

 ……さて、そろそろ時間かな。まぁ、それなりに楽しかった。久々に女の人と話せたし。さて、これ以上はいない方が良いかな。目的は果たしたし、それなのにここにいるとナンパみたいに思われるかもしれない。

 

「すみません。俺、そろそろ」

「あら、そう? もう少しいれば良いのに」

「目的は果たせましたし、星の方向も分かったんで今日の所は大丈夫です。一応、中間試験中ですしね」

「勉強はちゃんとしなきゃダメですよ?」

 

 アーニャさんに怒られてしまった。いや全くその通りだが、余裕なもんは仕方ないでしょ。

 まぁ、変に言い返したりはしないけどね。

 

「すみません。じゃ、おやすみなさい」

「はい、おやすみなさい」

「スパコーィナイ」

 

 ……今、なんて言ったの? と、思ったが、まぁ多分母国の「おやすみ」だと思うのでツッコミは入れなかった。

 出口から出ると、後ろから声が聞こえた。

 

「……なんか、変わった人だね」

「はい、変人ですね!」

「ちょっ、アーニャちゃん声……」

 

 アナスタシアさん、天然のあなたに言われたくないですよ。

 

 

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