アナスタシアさんはバカワイイ。   作:バナハロ

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油断は禁物だってば。

 ドンキで仮装衣装を選びに来た。まぁ、基本的にはカボチャメインのものだったり魔女っぽいものだったりとそんなもんばかりだ。まぁ、女の子が着る分には可愛いんだろうが……もっと、こう……面白いもんはねぇのか。

 そう思って辺りを見回すが、そもそも今日はアーニャさんの着る衣装を探しに来てるんだった。面白い衣装なんて求めていないだろう。

 

「……ハラショー……」

「あ、なんかいいもんあった?」

 

 アーニャさんの目を輝かせてる先にはフランケンシュタインの衣装……というか頭に刺すネジの耳あてみたいなのがあった。どうやら、是が非でもゲテモノが良いらしい。

 

「アーニャさん……」

 

 や、まぁ案外似合いそうなものだが……。

 ……いや、待てよ? そもそも可愛い格好が目的じゃないんじゃないか? 考えてみりゃ、仕事で使うわけじゃないらしいし……。

 

「……なぁ、もしかして脅かしにかかりたいのか?」

「はい♪」

 

 すげぇ、いい返事でなんてこと言うんだこの子。しかし、アーニャさんがそういう風に考えるのは意外だな……。

 

「ミナミ、怖がりなんです。だから、ちょっとどんな反応するか楽しみです」

 

 おおっと、サドっ気に拍車をかけてきましたね。まぁ、それならそれで俺も協力するまでだ。

 

「じゃ、本格的にビビらせようか」

 

 そう言って、まずはテーピングから買いに行った。

 近くのテープに手を伸ばすと、アーニャさんがキョトンと首を傾げた。

 

「それは……?」

「これにリアルな傷口を描いて頬に貼るだけでかなり怖いと思わないか?」

「な、なるほど……!」

 

 天然サドって怖いわー……。とても楽しそうにしてやがるし……。

 そんなわけで、さらに怖がらせようと色々努力することにした。最近、うちのクラスでやった肝試しで妙な知識が入ったからな。人を怖がらせるのは少し得意になってきた。

 後はー……そうだな。アーニャさんは元から肌白いが、さらに白くなってもらおう。

 

「あとは、そうだな。フランケンにするなら傷とかもあった方が良いかも」

「えっ、傷、ですか……?」

「や、ほんとに作らないよ。さっきの傷口みたいなのに加えて縫った後みたいなシールも作ると良いかなって」

「あ、そういうことですか……」

 

 どこで安堵してんだよこの子……。純粋にもほどがあるだろ。

 

「じゃ、とりあえずフランケンシュタインっぽいので良いのか?」

「良いですよ」

 

 よし、方向が決まった。ビビらせるにしても方向性は必要だ。怖いものと怖いものを足したとしても怖くなるとは限らない、ヤクザのお化けとかギャグでしょだって。

 よし、方向性は決まった。あとは商品を買って一度、部屋に戻って組み合わせてみるしかないか……。

 そんな事を考えてると、アーニャさんが珍しく遠慮した感じの声をかけてきた。

 

「あの、ハルカ」

「何?」

「その……お願いがあるんですが……」

 

 お願い? なんだ急に。

 

「その……この仮装は、ミナミの部屋に直接行って驚かせたいので……その、衣装をハルカの部屋に置かせてくれると……」

「ああ、そんなことか。全然良いよ」

「本当ですか⁉︎ ありがとうございます……!」

「それより、脅かすならクオリティ上げよう」

「そうですねっ」

 

 そんな話をしながら、小道具や衣装を選び始めた。

 ……まぁ、正直アーニャさんの場合は可愛すぎてビビられる未来が見えないがな。

 

 ×××

 

 買い物を終え、二人でドンキを出た。さすがにこの前の文化祭ほどではないが、中々怖い仮装ができるんじゃないかと思ってる。ま、さっきも思ったが、仮装するのはアーニャさんだから絶対に可愛くなっちゃう気がするけどね。

 その辺はやってみなくちゃわからないし、可愛かったら可愛かったで写メ撮ればいいし、気にしても仕方ない。

 そんな事を考えながら歩いてると、アーニャさんが声をかけてきた。

 

「ハルカ、今日は付き合ってくれてありがとうございます」

「え? あーいいよ別に。そんなお礼言わなくても」

「いえ、ハルカのお陰でミナミをたくさん脅かせそうです!」

「あの、間違っても俺からアドバイスもらったとか言わないでね。俺、殺されたくないから」

「分かりました」

 

 信用できねぇ……。とりあえず、ハロウィンの次の日は居留守決め込むか……。

 そんな事を考えながらドンキを出て駅に歩き始めた。あとはアーニャさんを駅に送って終わりだ。

 

「そうだ、ハルカ」

「何?」

「温泉プール、いつ行きますか?」

「あー……」

 

 そういやそんな話ししてたな……。季節外れだが、確かに行かないと勿体無い。や、割引券がじゃなくてアーニャさんの水着姿を拝む機会が。

 

「アーニャさんの空いてる日で良いよ。俺は基本的に暇だから」

「分かりました。じゃあ、来月の1回目の土曜日はどうですか?」

「じゃ、その日で」

「はい。約束です」

 

 そう言うと、アーニャさんは小指を差し出してきた。

 

「……何?」

「知らないですか? 指切りです。約束はこれでするってミナミが言っていました」

 

 ……新田さんは割と子供っぽい、のか? あの外見で?

 別に俺としては別にそれを拒否する理由はないけど、指切りとか懐かしくて少し抵抗があってしまった。

 俺も小指を差し出して、アーニャさんの小指と結んだ。

 

「ゆっびきっりげんまん嘘ついたらアイアンクローの時間のーばす♪」

 

 あれ? 俺の知ってる指切りじゃないな……。そんなもん一回もされたことねぇんだけど……。

 

「ゆっびきった♪」

 

 しかし、アーニャさんは意味が分かってるのか分かってないのか知らないが、楽しそうに指切りを終えた。

 

「あの、一応聞きますけどその指切り誰に教わったの?」

「ミナミです♪」

 

 新田さん何を教えてんですか……。

 

「……アーニャさん、あまりその新田さんから教えてもらったことは鵜呑みにしない方が……」

「何でですか?」

「や、俺の知ってる指切りと随分違ったから……」

「色んな指切りがあるんですね! ハルカの知ってる奴も教えてもらって良いですかっ?」

 

 まぁ、人の数だけあるだろうな……。別に俺の知ってる奴を学ぶ必要なんかないし。

 

「別に俺の奴が特殊ってわけじゃないですよ。ようは今、アーニャさんが歌ってたアイアンクローの部分を変えれば良いんです」

「つまり?」

「俺なら『指切りげんまん、嘘ついたら三千円上納する、指切った』だから」

「ダー……サンゼンエンっていう罰があるのですか?」

「いや、金払ってもらいたいだけ」

「……」

 

 あ、アーニャさんの目が呆れて物も言えない目になった。こんな目でアーニャさんに睨まれるの初めてだわ。

 

「と、とにかく、そこを自由に変えれば何でも良いんだよ」

「んー……あ、じゃあ変えます」

 

 そう言って改めて小指を突き出して来るアーニャさん。仕方ないので再び俺も小指を差し出した。

 

「さっきのアイアンクローは無しです」

「分かってるよ」

「ゆっびきっりげんまん嘘ついたらまた一緒にお出掛けする! ゆっびきった!」

「……」

 

 ……だからこの可愛い生き物は平気でそういう不意打ちを……。

 あまりに的確に心の臓を貫いて来たので、赤くなってしまった顔を隠しながらボソッと小声で呟いた。

 

「……それはアーニャさんにとって罰なんだな」

「っ、ち、違います! じ、じゃあじゃあ変えます! ……あれ? でもそしたら一緒に出掛けられないんじゃ……」

「冗談だよ、真面目に考えんな」

「っ、あ、あー! またからかったですか⁉︎」

「うるせーよ」

「もー! なんでそういうこと……!」

 

 ポコポコと俺の肩を叩くアーニャさんの手が止まった。で、俺の顔を覗き込むように下から見て聞いてきた。

 

「……ハルカ? 顔赤いですよ?」

「……夕日の所為だろ」

「夕日?」

 

 そう言ってアーニャさんが空を見上げた時だ。ポツッと鼻の頭に水滴が降ってきた。

 

「……? あれ?」

「あっ……」

 

 その水滴の落下速度は徐々に上がっていき、やがてザアァァッとシャワーの上位互換の如く広がった。

 

「雨……?」

 

 チッ……夕日の言い訳が通じなくなったか。まぁ、アーニャさんのことだ、そんなこと覚えてられないだろう。

 とりあえず、普段から持ち歩いてる折り畳みの傘を鞄から出した。

 

「アーニャさん、入れよ」

「さすがです、ハルカ!」

 

 さすがってなんだ、と思いながら傘を開いてアーニャさんの頭上に置いた。

 

「よし、これで良いだろ」

「……」

「どうした?」

 

 なんかアーニャさんがボンヤリしてた。雨空を見上げて、いつになく楽しそうにはとても見えない表情……いや、むしろ嫌なことでも思い出したのか? って感じの表情だった。

 

「アーニャさん?」

「……」

 

 声をかけるも、返事はない。代わりに、俺の袖の裾を摘んだ。

 

「アーニャさん?」

「……ハルカのマンションまで行きます」

「は? いやいいよ、俺が送るって」

「いえ、泊まります」

 

 ……なんだよ、どうかしたのか?

 

「どうしたの?」

「……いえ、雨には良い思い出がないです。だから、ハルカと離れたくないって……」

 

 雨に良い思い出がない、ねぇ……。そういやうちのクラスにも夏休みに雨の中すっ転んで骨折した変わった夏休みデビューしてる奴がいたっけか。そんな感じのことがあったんだろう。

 

「……まぁ、別にうちに来るくらい良いけどよ」

「じゃあ、行きます」

「でもお前明日学校じゃないの?」

「……泊まります」

「おい、服とか下着は……!」

「ミナミの部屋にあるから大丈夫です」

 

 ……や、そういう問題じゃなくてな……。大体それサイズ違うだろ……。

 それに、新田さんの部屋ってインターホン押しても出る事がほとんど無いんだよな……。何してんだろうなあの人。

 ……あー、どうしよう。でも、なんか寂しそうにしてるしアーニャさん……。はぁ、ダメだ。まともな案が浮かばない。まぁ良いか。ていうかもう何でも良いや。

 

「……他の人に迷惑はかけんなよ。うちに泊めてやるから、その辺の店で買って来いよ」

「え、でも……異性の部屋に泊まってはダメだと……」

「今日くらい別に良いよ」

「……ありがとうございます、ハルカ」

 

 とりあえず、寝巻きは俺のジャージを使うとして、アーニャさんの下着を買いに行った。

 この時、俺は油断していた。前にも泊めたことあるし、最近はよく慣れてきたし大丈夫だろうという楽観的な考えた方だったかもしれない。

 それが、まさかあんな間違いを起こしてしまうとは夢にも思わなかった。

 

 ×××

 

 翌日、夜遅くまでゲームやってたら風邪を引いた。アーニャさんが。

 

 




すみません。結局、美波の奴の話を少し引きずってしまいました。ほんとすみません。
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