アナスタシアさんはバカワイイ。   作:バナハロ

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最終手段は他に手がないかよく考えてから実行しよう。

 なんか気が付いたらアーニャさんの2日連続お泊まりが確定していた。おかしいな、俺ってこんなに流されやすい男だったか? なんつーか、断るべき所とかもなんだかんだ言って全部許可しちゃってる気がするんだけど。

 まぁ、別に悪い気がしてるわけじゃ無いんだけど……何故か、こう……申し訳なくなって来るんだよな……。ほんとに何でだろう……。

 ま、まぁでもほら、アーニャさんはベッドから動けないし、俺が血迷わなければ変なことは起こらないから、普段よりよっぽど心臓に優しい。だから落ち着こう、俺。

 とりあえず、居間でテレビを眺めてると、俺の部屋の扉が開いた。アーニャさんが顔を出してきた。

 

「ハルカ……」

「あ、どうも……」

 

 まだ若干、熱はあるようでフラフラした足取りで俺を眺めていた。

 

「どうした?」

 

 聞いた直後、ぐぅっとアーニャさんのお腹から音が鳴った。恥ずかしかったのか、頬を赤らめて俯くアーニャさん。

 まぁ、俺も察したし意地の悪いことを言うつもりもない。

 

「今、用意するから。椅子に座ってて」

「……す、すみません……」

 

 頬を赤らめたまま椅子に座るアーニャさん。

 俺は俺でうどんを茹でながら少しホッとした。何つーか、さっきピンク色の乳首……じゃなくて上半身裸を見た時も思ったが、アーニャさんも恥ずかしいっていう感情はあるんだな。

 普段は普通の恋する乙女が恥ずかしがりながらするようなアプローチを平気な顔でやるアーニャさんだから、案外恥じらわないんじゃねーかとか思ったりもしたが、そんな事はなかった。

 茹で上がったうどんをお椀にぶち込み、さっき作っといたスープを注ぎ、ネギを刻んでウルトラシンプルなかけうどんを作った。

 

「おら」

「スパスィーバ」

 

 コトっとアーニャさんの前にうどんと箸を置いた。

 ゾボボッとうどんを啜るアーニャさんを眺めながら、俺も前でうどんを啜った。本当は天かすくらいかけたかったけど、生憎買い置きがない。

 

「ん、美味しいです……」

「そいつは良かった」

 

 適当な返事を返しながら、俺もうどんを啜る。……やっぱ具がネギだけじゃ物足んねーな……。でも、アーニャさんでも食べれる内容にしないといけなかったし、仕方ないといえば仕方ないが……。

 

「体調はどうだ?」

「ハルカと一緒だから元気です」

「つまり、俺が帰って来るまでは余り体調が良くなかったと?」

「……」

 

 図星のようだ。やっぱ俺これ学校休んだ方が良いんじゃねぇのか。休まない方が良いにしても、やはり誰かここにつけるべきだろうが……よりにもよって俺にそういう友達はいない。いや、いてもアイドル襲える絶好の機会に友達なんか頼れるかよ。

 

「……はぁ」

 

 学校休むか? なんかその方が良い気がして来た。そもそもアーニャさんは何でうちに泊まりたがるんだろうな……。

 

「ハルカ」

「? 何?」

「もし……帰った方が良いのでしたら、私帰ります、よ……?」

 

 恐る恐る、と言った感じで俺の顔色を窺うようにそう言った。そんな顔して言われたら、俺としても帰すのは少し気が引ける。正直、帰した方が良い気もするが。

 ……仕方ないな。ここはやはり上に住んでる人に任せるべきだろう。アーニャさんの事を本気で心配してるようなので、なんか今朝連絡先交換しちゃったし。

 もちろん、向こうはちゃんと彼氏に説明したらしいけど、これ俺その彼氏さんに殺されるんじゃねぇかな……。

 とにかく、新田さんを頼るしかない。流石にアーニャさんが風邪だって分かった今ならそれも可能なはずだ。

 不安そうな顔をしたまま俺の顔を見てるアーニャさんにうどんを啜りながら言った。

 

「大丈夫、俺がちゃんと最後まで面倒見るから」

「……ハルカ」

「でも、流石に俺がいない間は他の人に頼る他ない。だから、その時は新田さんに頼むけど、それで良いか?」

「分かりました」

「よし。なら、さっさと食べて寝ちゃいな」

「ハイ」

 

 嬉しそうな顔をして、アーニャさんはうどんを啜った。まぁ、さっき約束したしな。やっぱり俺ってチョロい男なのかな。

 うどんを食べ終えると、二人分のうどんのお椀の洗い物を済ませた。引き出しから風邪薬を取り出し、コップに水を注いで食卓に戻った。

 

「アーニャさん、薬」

「ダー、ありがとうございます」

「薬一人で飲めるか?」

「そ、それくらい出来ます!」

 

 ぷんすかと怒りながら、粉薬を飲むアーニャさん。怒るならそんな嫌そうに涙目で粉薬を飲むな。まぁ、そういうとこも可愛いけどな。

 

「薬飲んだら歯磨きしろよ」

 

 薬飲むのに使ったコップを持って流しで軽く洗い流し、アーニャさんは洗面所に向かった。俺もコップを洗ってから洗面所で歯磨きを済ませた。

 アーニャさんが洗面所を出て行ったので、ついでにシャワーを浴びた。今日は湯船はいいや。

 身体を拭き終えて寝間着に着替えて洗面所を出ると、アーニャさんが居間で待っていた。

 

「あの、ハルカ……」

「まだいたのか? 早く寝ないと治らないよ」

「すみません……。でも、その……お願いがあって……」

「お願い?」

 

 頬を赤らめたアーニャさんは、恥ずかしい内容なのか呟くように言った。

 

「……その、寝汗で……下着が、濡れてしまいまして……」

「あー、まぁ仕方ないのでは?」

「それで…下着を今、干してあります……」

 

 アーニャさんの視線の先には、水色の下着が確かに干してあった。あまりジロジロ見るわけにもいかないので、目を逸らしてアーニャさんと目を合わせて話を進めようとしたが、気になってしまったのでついうっかり反射的に質問してしまった。

 

「え? じゃあ今、ノーブラノーパンなの?」

「っ、は、ハルカ!」

 

 キッと睨まれ、今更になって自分のミスを悟った。ついうっかり聞いちゃいけないことを聞いてしまった……。

 まぁ、あれだ。とりあえずあのジャージ洗濯するのやめよう。

 

「わ、悪い……。それで、お願いって?」

「……その、新しい下着が欲しい、です……」

「アーニャさんの家から取ってくれば良いのか?」

「いえ……私の暮らしてる家は事務所の寮なので……その、ハルカは入れないです……」

「え、じゃあどうしろと?」

「……その、買って来て……欲しいです……」

 

 今なんて言った? や、ほんとにこの子今なんて言ったの? よく聞こえなかったんだけど。

 

「ごめん、聞き間違えたかも。もっかい言ってくれる?」

「買ってきて、欲しいです……」

「あ、やっぱりそう言ってたんだ……」

 

 てか本気で言ってんのそれ? 通報待った無しなんだけど。

 

「いやいやいや、無理無理無理」

「っ、そ、そうです、よね……」

「ごめん、それはホント無理。人生終わっちゃうから」

「……すみません」

「……」

 

 だからその顔をやめろおおおおおおお! やってあげたくなるだろうがああああああああ!

 ああああどうすれば通報されずに下着とか買えるかなやっぱり妹の下着を買いにきたって事にすれば大丈夫かな。顔を隠せば逆に怪しいから、真顔でレジに一直線で向かって、店員さんに「妹のなんですけどこのサイズの下着ありますか?」とメモを見せながら聞けばワンチャン……。

 よし、それで行こう。でも、そのためにはアーニャさんの下着のサイズを知らねばならない。

 

「あの、アーニャさん。別に買って来ても良いんですけど……その、スリーサイズとか、知らなきゃなんですが……」

「分かってます。その……です」

「え?」

「……ですから……! ……0です」

「何?」

「で、ですから! 80/54/80です!」

「……なんのステータス? 力/防御/敏捷?」

「スリーサイズです! バスト/ウエスト/ヒップ!」

 

 顔を真っ赤にして叫ぶアーニャさんだった。そこに来て、ようやく俺の思考回路は復帰した。

 そ、そうか……。スリーサイズ、80/54/80か……。スリーサイズ……スリーサイズ……スリーサイズ⁉︎

 

「い、いきなり何を⁉︎」

「で、ですから! 下着を買って来てもらうためです!」

「そ、そんな簡単に教えて良いのかよ⁉︎」

「簡単にじゃ無いです! け、決心しました!」

「だ、だからってな……!」

「っ、そ、それに! ハルカだから良いと思ったんです!」

 

 っ……こ、この子は……! だからそういうことを平気で……。

 いや、まあ確かに決心したんだろうなとは思うよ? スリーサイズなんてある意味体重より知られたく無いだろうし……。

 でも、だからってなぁ……。

 

「……ウー……他の人には、スリーサイズなんて教えません……」

 

 俺を真っ赤な顔で涙目になりながら睨むアーニャさんは、その場で小さくうなずいていた。

 ……はぁ、そこまで信頼されてしまったら、俺としても決心せざるを得ない。

 

「……じゃ、行ってくる」

「……お願いします、ハルカ」

「……大丈夫だ。自慢じゃないが、俺は影の薄さには定評がある」

 

 レンタルビデオ屋で誰にも気付かれずにAVを借りたことすらあるからな。まぁ、セルフレジだったんだが。

 一度、部屋の中で深呼吸してから下着売り場に向かおうと思い、玄関に手を伸ばした時だ。

 インターホンが鳴り響き、俺もアーニャさんもビクビクっと肩が跳ね上がった。のぞき穴を見ると、新田さんが立っていた。

 ま、まさか下着買おうとしてるのもう勘付かれたのか……? だとしたらいつまでも開けないのはすっとぼけられない。

 玄関を開けると、新田さんが紙袋を手渡して来た。

 

「ごめんね、夜に」

「いえ。それよりこれは?」

「ん? アーニャちゃんの下着」

 

 ……こいつぁ驚いたぜベイベ。

 

「中見ちゃダメだよ? 天然かもしれないけど、アーニャちゃん女の子なんだから」

「……見ねーよ」

「じゃ、アーニャちゃんのことよろしくね?」

 

 それだけ言うと、新田さんは自分の部屋に引き返した。

 居間に戻ると、アーニャさんの姿はなかった。自室に行ってみると、布団の中で丸まってるアーニャさんが目に入った。

 

「……アーニャさん、下着」

「……置いておいて下さい」

「え、着替えないの?」

「……スリーサイズ、忘れて下さい」

「……」

 

 どうやら、相当恥ずかしくなってしまっているようだ。これ多分また熱上がったな。

 

 ×××

 

 夜中。俺も寝る事にしたので、挨拶だけしようとアーニャさんの寝てる部屋に行くと、もう眠っていた。

 ……まぁ、飯も食って薬も飲んで下着も変えて早く寝たし、明日には少しは熱下がっているだろう。

 何となくアーニャさんの寝てるベッドの隣に行って寝顔を見た。相変わらず、黙っていればクールビューティーであり、寝顔になればそれに幼さが混ざる可愛い顔していやがる。アイドルっつーのも頷ける。

 

「……」

 

 せっかくなので、寝顔をスマホに収めた。

 さて、俺も寝ようかな。明日も学校だし。部屋を出て行こうとすると、後ろからバサっという音がした。

 振り返ると、アーニャさんが自分に掛かっている布団を退かしてしまっていた。

 

「……風邪引いてんだろうがお前は……」

 

 引き返し、負担をかけ直してやると、ガシッと手を掴まれた。え、この人起きてんの? と思ったのもつかの間、ぐいっと引っ張られて抱き締められ、上半身だけベッドの上で下半身だけベッドから落ちているという、よく分からない姿勢になってしまった。というかこの姿勢、めっちゃ腰痛い。

 

「ちょっ、アーニャさん……!」

「……んっ」

 

 離れようとしたが、離れない。というか、少し寒いのか鳥肌が立っていた。

 ……ったく、仕方ねえな……。

 小さくため息をつくと、俺もベッドの上に乗って布団を被り一緒に眠ることにした。

 

 




オリ主をまとめた方がわかりやすいという感想をいただいたのでここで。
初代
鷹宮千秋
ふみふみの彼氏
オタク
アイドルオタク化感染源

二代目
水原鳴海
しぶりんの彼氏
ゲーマー
ゲーム実況者山手線「上野駅」

三代目
古川皐月
しまむーの彼氏
ビルダー
ツッコミ不在で付き合う前からバカップル

四代目
北山遊歩
美波の彼氏
田舎もんで運動神経抜群
性欲が一番強い

五代目
河村優衣
奏さんの彼氏
元ヤン
一番、自分の彼女と思考回路が似てる

六代目
白石遥
アーニャの相手
高二病
多分一番苦労する

三船さんの七種くんに関しては誠に申し訳ありませんが、どんな話にする予定か忘れたため、再投稿する可能性が濃厚なので飛ばしました。ほんとすみません。


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