アナスタシアさんはバカワイイ。   作:バナハロ

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またも他作品要素が出て来てしまいました。すみません


身内に出てるクセは外でも出る。

 冬休みも目前、うちの学校もイベントの多い二学期大トリイベント、期末試験を目前に、全生徒が勉強に集中している。

 俺もそれは例外ではなく、集中して勉強しなければ点は取れない。指定校推薦狙って一般受験は回避する予定だ。

 そんなわけで、とりあえず近くのカフェで勉強中。一人で無心で手を動かしていた。今やってるのは不定詞、toがどうだのなんだのと教科書の例文を暗記してると「あれっ?」と明るい声が聞こえて来た。

 ふと顔を上げると、うちのクラスの多田さんと男子生徒がこっちを見ていた。

 

「あ、どうも……」

「えーっと……白石、だっけ? 最近、北山と仲良い人」

 

 しまった、あまり仲が良いわけでもなく、修学旅行でたまたま同じ班になったってだけで声掛けてしまった……。

 まぁ、別にさっさと会話切り上げれば良いし、あまり悲観的になることはないか。

 

「どうも。勉強?」

「うん。そっちも?」

「そうだけど」

「じゃ、一緒に勉強しないっ?」

「えっ」

 

 多田さんがそう提案すると共に、隣にいる男の子がガッカリしたような声を漏らした。今の一言で何となく二人の関係を察してしまった俺は、断る事にした。

 

「いや、いいよ。俺そろそろ帰る予定だったし」

「そうなの?」

「うちに親いないから晩飯の準備とかしなきゃいけないの。お前らほど暇じゃないから」

「むっ、何その言い方ー」

「じゃ、また」

 

 そう言って席を立った。あの男子生徒、なんかよう分からんけど多田さんのこと好きみたいだし、良い人に見えるように少し皮肉言っておいた、あとは頑張れよ。

 そんな上から目線な事考えながら、購入した飲み物のカップを捨てて店を出た。

 しかし、もう少し勉強して帰ろうと思ってたんだけどな……。別の店でしようかな。いやでも別に帰ってから勉強しても良いけど、家だと幕末の動画見たくなっちゃうし。

 うん、そうしよう。夕飯は冷蔵庫に買い置きしてあるし、今日は少し八時頃までファミレスで勉強しよう。

 そう決めてファミレスに向かった。そういえば、あのファミレスでよくアーニャさんと待ち合わせしてたなー。今じゃ俺のマンションか学校の近くで出待ちされてるけど。

 そんな事を考えながらファミレスに到着し、勉強を始めた。しばらく勉強し、疲れたので小さく伸びをして、再び勉強を繰り返す事、大体三時間経過した。

 気が付けば八時半を回っていた。良い時間だし、そろそろ帰るか、そう思ってファミレスを出ると、多田さんが走ってるのが見えた。一緒にいた男の子がいない所を見ると、一度帰ってからまた外出て来たのか?

 

「多田さん、何してんの?」

 

 なんか慌ててるので声をかけてみた。

 

「財布落とした!」

「はぁ?」

「探さなきゃ! 手伝って!」

「お、おう……」

 

 や、それは良いけどよ……。

 

「一緒にいた奴は?」

「家に帰ってから気付いたの! 迷惑掛けられないじゃん!」

「俺には迷惑かけて良いのか」

「たまたま会ったんだから良いでしょ!」

「まぁ良いけどよ……」

 

 仕方ない……。探すだけ探してやるか。と言っても、やっぱり多田さんの行動を辿るのが一番だろう。

 

「多田さん、今日どこ行ったりしたん?」

「今日? え、なんで?」

「え、探し物探すときは普通、自分の来た道辿るでしょ」

「あ、な、なるほど……」

「え、今までどこを探してたの?」

「が、楽器屋とか……」

「寄ったのか?」

「……寄ってない」

 

 こいつ……アホなのか?

 

「……行くぞ」

「う、うん……」

 

 恥ずかしくなったようで、二人でさっきのカフェに向かった。ほんとは一人で行かせたいとこだったが、この時間で女の子一人は危ないと思ったのでついて行くことにした。

 

「いやー、しかし白石に会えて良かったなー。こんな簡単に財布見つかりそうになるなんて」

「まだ見つかってないけどな。つーか、普通はまず来た道を引き返すだろ」

「ううっ……だ、だって、もしかしたら財布が移動しちゃうかもしれないじゃん……」

「財布に意思はないでしょ。というか、財布をそもそも落とすな。高校生なら財布が人間が生きていく上で重要なライフラインになる事を自覚しろ。大人になったら財布に免許証や銀行のカード入れる人もいるし、多田さんもそうするとなったら尚更……」

「ううっ、わ、分かったよ! そこまで言わなくても良いじゃん!」

 

 ……あっ、やべっ。つい言い過ぎちまった。無防備すぎるアーニャさんに普段、よく話したりたまに説教したりしてたからついその癖で……。

 

「わ、悪い……」

「いや、いいけど……白石って意外と所帯染みてるんだね」

 

 うるせーよ。一応、両親が帰ってくる場所に一人で暮らしてるんだから、それくらい当たり前だ。

 まぁ、クラスメートに説教するのは流石に違う気もするが。

 

「ていうか、そもそもなんで白石は外にいるの? 帰ったんじゃないの?」

「へ? あ、あー……」

 

 そういやそう言って別れたんだったか……。

 

「や、邪魔しちゃ悪いと思ったからな」

「はぁ? 邪魔って……クラスメートと勉強に邪魔も何もないじゃん」

 

 ああ、これはあの男の子すごい苦労しそうだな。まぁ、俺の知ったことではないが。

 

「知ってる? 勉強ってのは基本的に一人でやった方が自分の身になるんだよ」

「え、そうなの?」

「ああ。友達と一緒なら分からない所があれば聞けるじゃん、って言うやつもいるかもしれないが、教科書なりスマホなりで自分で調べようとすれば、友達に聞くよりも自分の記憶に残るでしょ。他人に教えてもらう以外に友達と一緒に勉強するメリットなんかないし、むしろ話とかして勉強の邪魔になるだけだから」

「うわあ……なんていうか、白石って変な人だね……」

 

 唐突に失礼だなこいつ……。流石にアーニャさんほどアホではないか。まぁ「そうなんだ、すごいね! 今度から一人で勉強するね!」とかなられても困るしな。

 そんな話をしてるうちに、カフェに到着した。多田さんが店員さんに財布を取りに行ってる間、俺はぼんやりと店の前で待機した。

 しばらくすると楽しそうに財布を持って多田さんが出て来た。

 

「おーい、お待たせ! あったよ!」

「見りゃ分かるよ」

「本当にありがとう、お礼に何か奢るよ?」

「じゃあ今月のうちのガス代払って」

「普通飲み物とか食べ物じゃないの⁉︎ 本当変な人だな!」

 

 冗談に決まってるだろ。ていうか、別に奢られたくないし。

 

「別にいい。小学生でも分かることをそっと教えてやっただけだからな」

「一々、ムカつくなぁ! 皮肉は良いから何か言ってよ!」

「夏目漱石」

「いや人名じゃなくて奢って欲しいものを言ってよ!」

 

 ……こいつ、意外と面白いな。素ではすっとぼけてんのにツッコミ属性も高いわ。次は何言ったら面白い反応するかな……。

 

「何その『次は何言ったら面白い反応するかな』みたいな顔⁉︎ 次はないからね⁉︎」

「じゃあカシスオレンジ」

「お酒⁉︎ もう、怒るよ本当に⁉︎」

 

 そんな話をしてると「何してるにゃ?」とマヌケそうな声が聞こえた。最後のそれ語尾? と思ってそっちに顔を向けると、見覚えのない女の子が立っていた。

 

「あ、みくちゃん! 聞いてよ、この男がね……!」

「李衣菜チャン、誰なの?」

「ああ、うちのクラスの白石。あ、白石。この人は……知ってると思うけど、前川みく」

「普通に知らないけどよろしく」

「え? し、知らないの? テレビとか出てるんだけど……」

「え、有名人?」

「アイドルだよ……。みくも李衣菜チャンも」

 

 ……えっ、そうなの? ていうか、アイドル安くない? まるでアイドルのバーゲンセールだな……。

 

「ふーん、じゃあ前川さんの語尾はキャラ付けとか?」

「キャラ付けなんかじゃないにゃー!」

「え、素でそれ? 尚更……」

「ちょっ、ちょー! 白石タンマ! ストップストップ!」

 

 慌てて多田さんが割って入ってきて、俺と肩を組んで前川さんに背を向けて耳元でボソボソ囁いた。

 

「それ以上はダメっ。北山がそれ以上のことを言って大変な事になったんだから……!」

「大変って?」

「美波さんの背負い投げで北山が落ちた」

「……」

 

 あの人、見た目通り怖い人か……。思うことはいろいろあるが……なんつーか、うん。黙ろう。

 

「それで、二人は何してたの?」

 

 前川さんが気を取り直して質問して来た。

 

「ああ、多田さんが財布落としたから取りに来たとこ」

「げっ」

「財布を……落とした?」

 

 ジロッと前川さんが多田さんを睨んだ。

 

「もうっ! いつもいつもしっかりしてって言ってるのに、財布を落とすなんて何事にゃ⁉︎ 特にアイドルなんだし、財布の中に学生証も入ってるんだから、もし変な人に拾われたりなんてしたら……!」

「わー! もう、今白石に怒られた所なんだから勘弁してよー!」

 

 なんだ、語尾の割にしっかりした人なんだな、前川さん。

 ……そういえば、この二人もアイドルって事はアーニャさんと知り合いなのか? もし知り合いで事務所も一緒なのなら、前川さんにはアーニャさんのお世話を是非お願いしたいものだ。

 

「それで、一緒に財布を探してくれたから、今から白石に何か奢るとこ」

「ふーん……じゃ、みくはプリンで良いにゃ」

「なんでみくちゃんにまで奢る話になってるの⁉︎」

「けち臭い事言うな多田ー、女を見せろ多田ー」

「あんたは黙っててくれる⁉︎」

 

 そんな感じでギャーギャーと店の前で騒いでる時だ。突然、ドンっと後ろから何かがぶつかった。

 ぶつかった何かは後ろから俺の腰に抱き着き、俺の腹の前に腕を回してギュッと力を入れた。

 

「……え、誰? 通り魔?」

「……」

 

 返事はない。前川さんと多田さんに「誰が抱きついて来てんの?」と視線で聞くと、前川さんの方が口を開いた。

 

「あ、アーニャちゃん?」

「なんだ、アーニャさんか。どうしたの?」

「ハルカ、黙ってて下さい」

 

 腰の辺りに抱きつかれてて顔が見えない。というか、やはり二人の知り合いか。これは前川さんに後でよろしく頼んでおいた方が良いかもしれない。

 しかし、知り合いに会ったにしては、多田さんも前川さんも表情が気まずそうだな……。喧嘩でもしてんのか?

 ポカンとしてると、俺の腰のアーニャさんが二人を睨んで言った。

 

「ハルカは、私のです!」

「えっ」

「えっ」

「へっ?」

「失礼します!」

 

 そう言うと、アーニャさんは俺の腰を腕力で無理矢理方向転換させて俺のマンションの方に押し歩き始めた。

 

「お、おいアーニャさん⁉︎ な、なんだよいきなり⁉︎」

「うるさいです!」

「う、うるさいって……!」

「黙ってて下さい!」

 

 お、おいおいおい……! なんなんだよ、どうしたんだよこの人……。

 少し困りながらも、とりあえず足を止めた。このまま歩くのは危ない。

 

「ち、ちょっと落ち着けって! どうしたんだよ、いきなり……!」

 

 言いながら身体を翻して回避しつつ、前にずっこけそうになるアーニャさんの手を掴み、ちゃんと転ばないようにフォローした。

 手を掴まれ、アーニャさんが俺を睨んだ。その顔はとても憤怒していて、ぷくーっと頬を膨らませていた。

 

「ど、どうしたんだよ……?」

「……ハルカ、バカ」

「唐突に⁉︎」

「ハルカは、みくやリイナと仲良しですか?」

「いや全然? 多田さんとは学校でたまにしか話さないし、前川さんはさっきのが初対面だし」

「……ほんとですか?」

「ああ、そうだけど……」

 

 なんだよ、そんな強面で……。困惑してると、アーニャさんは突然ご機嫌な表情に変わって、ニコニコしながら俺の腕に飛び付いた。

 

「ふふ♪ 良かったです、ハルカ」

「ん、お、おお。何が?」

「教えません」

 

 ……教えてくれなかった。その後、どういうわけか俺の部屋で飯を食いに行った。

 

 

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