アナスタシアさんはバカワイイ。   作:バナハロ

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油断とフラグは紙一重、どう転んでも待つのは死。

 12月24日、明日はアーニャさんとデートの日だ。その前日なのに、受け取ってしまった、北山から。エロ本を。

 あーやばい、どうしようこれ。あの野郎「頼む! 美……彼女にバレるとマズイからこれ匿ってて! マジバレたら殺されるから!」じゃねーよ。彼女いて童貞じゃない癖にエロ本買ってんじゃねーよ……。

 大体、俺だってこれ持ってるとまずいってのに。明日はどうせ、アーニャさんのことだから「私、まだハルカと一緒にいたいです……」とか激かわいい事を言い出すのは目に見えている。

 さて、真面目にこれどうしようかな……。事情を説明すれば理解してくれると思うけど、前川さんも多田さんも長い話が苦手な人ばかりなんだよな……。結論から「エロ本どうしよう」と聞けば窓から捨てられそうだし……。

 

「……いや、待てよ?」

 

 新田さんならどうだろう。あの人は年上のお姉さんだし、話を聞いてくれるかもしれない。彼氏がいる分、そういうのは割と寛大かもしれないし。

 多分ー……上にいるかな? インターホン押してみよう。

 部屋を出て階段を上がり、インターホンを押した。しばらくして、ガチャっと扉が開いた。

 出て来たのは若干、服や髪が乱れた新田さんだった。……なんで乱れてるんだろう。意外とグータラなのか?

 

「あっ、し、白石くん……。どうしたの? こんな時に」

「へ? こんな時にって……忙しかったですか?」

「う、ううん。そんなことないの。えーっと……あー、アーニャちゃんと明日デートなんでしょ?」

「そうですよ。なんで知ってるんですか?」

「本人から聞いたから。それなのに他の女の人と会ってて良いの?」

「いや、むしろ明日のためにも新田さんにしか相談できないことなんですけど……」

 

 でも、タイミング悪かったみたいだな……。出直そうかな、と思ったが「ちょっと待ってて」と言って部屋の中に引っ込んでしまった。

 どうやら、例の彼氏が来てるみたいで、何か話し込んだ後に戻ってきた。

 

「良いよ、聞くよ。何?」

「あの、彼氏いるなら出直しますよ?」

「大丈夫、いつでも出来ることシてただけだし、アーニャちゃんの恋人の話の方が大事だから」

「いや全然付き合ってないんですけど」

「いいから、そういうの無駄だから。で、何?」

 

 まぁ、本人が良いと言うなら良いか。

 

「あの、じゃあ一ついいですか?」

「うん」

「胸のボタン、掛け違えてますよ」

「……ちょっと下で待っててね」

 

 また部屋に戻った。

 ……もしかして、彼氏と一緒なのにボタン掛け違えてたの? 割とおっちょこちょいなんだな。

 下で待ってろ、との事なので自分の部屋の玄関の前で待ってると、新田さんがやって来た。

 

「で、どうしたの?」

「えーっと……実はですね、明日アーニャさんとお出掛けなんですけど……」

「デートね?」

「あ、はい。デートなんですけど……デートの後にうちに来ることになると思うんですよ。あの子、甘えん坊だから」

「あー分かるかも。そこが可愛いんだよね、アーニャちゃん」

「う、うん……」

 

 この人、彼氏いるんだよね……? アーニャさんのこと好き過ぎない?

 

「で、そんな日なのにクラスメートが俺にエロ本を匿うように言ってきまして……」

「え、エロ本……?」

「強引に押し付けてきたんですよ。なんかそいつも彼女に見られたくないとか言って」

「あらー……そうなの」

「それでですね……まぁ、新田さんにも彼氏がいるので預かってもらうわけにも行きませんし、どうしたものかと……」

「それなら、事前に言っておいたらどうかな」

「言っておくんですか?」

「はい、正直に友達から押し付けられた、と。そうすればアーニャちゃんも怒らないし引かれないと思うよ?」

 

 なるほど……インドのピザ屋と一緒でつまみ食いされるくらいなら事前に配ってお腹いっぱいにさせるわけか……。

 

「……なるほど、じゃあそうします」

「うん。じゃあ明日のデート、頑張ってね」

「はい。エロ本は北山……じゃなくて持ち主に後日、返しておけば良いですよね?」

「今なんて言った?」

「へっ?」

「北山……?」

 

 あれ、いつのまにか新田さんの笑顔に青筋が……。

 

「き、北山ですけど……本貸してくれたの……」

「……ふーん、下の名前は?」

「ゆ、遊歩……」

「ごめんね、やっぱり私が預かるよ」

「へっ?」

「ほら、アーニャちゃんって割と嫉妬しちゃって、理屈より感情を優先するとこあるでしょ? そうなったら困るから、私が預かるよ」

「で、でも新田さんは……」

「いいから寄越しなさい」

「はい」

 

 何故か俺がエロ本没収されたみたいになった。

 うちにあるエロ本を全て持って行って、激おこの足取りで新田さんは階段を上がって行った。

 なにがあったのか分からないけど、なんか怒ってたなぁ。

 さて、どうしようかな。この後は暇だ。アーニャさんと約束してるわけでもないし暇だ。

 ゲームでもしようかと思って部屋に戻った時だ。上から男の人の悲鳴が聞こえてきた。聞き覚えがある気がするんだけど、相当酷い目にあってるようで怪獣の断末魔にしか聞こえないから判断しようがない。

 ……とりあえず、怖いから出掛けようかな。そう決めて、マフラーと手袋を装備し、スマホと財布だけ持って家を出た。

 さて、どうしようかな……。こんなクソ寒い中、なんで外に出てんだよ俺は……。いや、上の階のインファイトが怖いからだが。

 何処か暖かい所で時間潰すしかないか……。うん、そうしよう。ぬくぬくしよう。

 行くといえば、やはりネカフェかな。ネカフェでダラダラしよう、明日は多分、肉体的にも精神的にも体力を大幅に使うし。

 そう決めてネカフェに向かってる時だった。「ハルカー!」と体力を使う要因の声が聞こえた気がした。

 しかし、周りにその声の持ち主は見当たらない。どうやら難聴のようだ。また聞こえたら怖いので、イヤホンを装備することにした。

 

「ハルカー!」

 

 おかしいな、まだ聞こえるぞ。もしかして呪われてるのかな、俺。でも、ホラー映画とか見てて思うんだけど、あいつら正体不明の元を明かそうとするから怖い目に合うんだよな。

 つまり、我慢して何か起こったとしても見なければ何も問題はないわけだ。だから俺は見な……。

 

 「ハルカ!」

「ふぁい⁉︎」

 

 耳元で爆竹が鳴ったのかと思った。耳を抑えて振り向くと、アーニャさんがふくれっ面で俺を睨んでいた、

 

「ハルカ、なんで無視するんですか?」

「いや、全然聞こえなくて……」

「嘘です! さっきキョロキョロしてました!」

 

 バレてたか……。というか、よく私とあなた遭遇しますね。ライバルなの? ポケモンあたりの。

 まぁ、こうなってしまったら誤魔化すしかない。

 

「悪い悪い、てっきりイタズラ好きな雪の妖精が囁いてるのかと思ったんだよ。でも、こんなに美しい子が正体だったんだ、勘違いしても仕方ないだろ?」

「っ……も、もう、ハルカ……」

 

 ……ああ、ほんとアーニャさんは可愛いなぁ。こんな事でも真に受けちゃうから、こっちも平気でこういうこと言える。他の子……例えば猫やロックには絶対言えない。

 

「で、どうしたの?」

「じ、実は……ハルカに会いに来たんです。マンションの出口でウロウロしてれば会える気がして……」

 

 え、ストーカー? ちょっとそういうのは怖いから……。

 

「でも、毎日遊びに行ってたら流石に迷惑な気もして……そうこうしてるうちにハルカが出かけてしまったので、後をつけてました」

 

 ……この子、実はかなり危ない子なんじゃ……いや、考えないようにしよう。大体、ストーキングじゃなくて構って欲しいだけだ。アーニャさんは純粋な子なんだ……!

 

「ハルカ?」

「っ、な、何?」

「それで、どこ行きますか?」

 

 あ、もう一緒に行動することになってるんだ。まぁ、良いけどさ。

 でも明日は一日一緒にいるのに、今日くらいは……いや、俺も一緒にいたいとは思うけど。

 まぁ、アーニャさんと一緒ならネカフェに行く必要はないな。

 

「アーニャさんが行きたいとこで良いよ」

「……ハルカは行きたいところがあったのでは?」

「いや、暇潰しに表出ただけだから」

「では、ハルカとくっ付いていられればどこでも良いです♪」

「……あそう」

 

 ……ホント、猫だよなぁ。猫、猫だ。全然、俺に好意を寄せてる女の子とかじゃない。だから惚れるな、俺。

 

「……なら、テキトーに買い物でも行くか。欲しいものあったら何か奢るよ」

「ホントですかっ?」

「キャットフードで良いか?」

「なんでですか⁉︎」

 

 冗談ですよ。

 二人で街を歩き、大型ショッピングモールに向かった。特に用はないけど、女の子が楽しめそうなのはここだろう。

 え? アーニャさんが俺にくっつけない? いやいや、くっ付いてるから。出発直後に腕にしがみついてる。暖かいなぁ、大きいカイロだ。むしろ暑いくらいなんですけど。

 

「ん〜♪ ハルカ、暖かいです」

 

 ……本当、この子は俺のどこを気に入ってここまで懐いてくれてるのか。自分で言うのもなんだが、捻くれてるし他の奴からしても変わった感じするらしい。

 そんな俺にこんな頭擦り寄せてきて……もはや猫というより、意思疎通可能なポケモンだよね。多分、こおりタイプ。

 せっかくだ、ショッピングモールに行くんだし、おせちとか掃除に必要なもの買うか。

 目的地に到着し、二人で中を探索した。暖房が入ってるので、マフラーと手袋を外したが、アーニャさんは相変わらず俺から離れない。

 

「あの、アーニャさん。暑くね?」

「あったかいです♪」

「汗かいて何言ってんの」

「……ハルカは私と離れたいですか?」

「肌身離さず持ち歩きたいです」

 

 ……この子、本当にずるいわー。可愛いけど。

 エスカレーターを上がり、とりあえず今のうちに必要な掃除用具を買っておかないと。クイ○クルワイパーの布巾とか。

 すると、抱きつかれていた左腕が急に止まった。アーニャさんが足を止めたからだ。

 

「どうした?」

「あのお店行きたいです」

「了解。じゃ、俺クイ○クルワイパーの布巾買ってるから、あとで合流な」

「ハルカ。怒りますよ」

「え、なんで……」

 

 唐突だな、この生き物の感情の喜怒哀楽は。

 

「一緒にいなきゃ意味ないです」

「あそう……じゃ、付いて行くよ」

「当たり前です!」

 

 ……そんなに怒らんでもなぁ……。

 そんなわけで、アーニャさんの指差す服屋に入った。中はいかにも「おしゃれ」といった感じで男には入りづらい店だったが、アーニャさんが一緒だからなんとかなってる。

 服屋の中に入ると、ようやくアーニャさんは俺の腕から離れた。自分のお目当の服を身体に当てたり、し始めた。

 その様子を後ろから眺めながら、くあっと欠伸を浮かべた。

 

「ハルカー、これどうですか?」

「ん、おお……似合うんじゃね?」

 

 持ってきたのは白いコートだ。アーニャさんの雰囲気に合ってて本当にナチュラルだと思ったが、アーニャさんはなんか不満そうな顔だ。

 

「……むー、真面目に言っていますか?」

「言ってるよ。ホント、似合ってるって」

「……ハルカ、ずるいです」

「え、何が?」

「ハルカが私を褒めると、嘘でも喜んでしまいます」

「いや嘘じゃないんだけど……」

 

 というかこっちのセリフなんだけど……。うーん……仕方ないな。外でやるのは恥ずかしいんだが……。

 

「ほんとうに似合ってるよ、一瞬ロシアのお姫様かと思ったくらいだ」

「も、もう……ハルカのバカ……」

 

 ……ああ、ホントにうちのお姫様かわいいなぁ。

 そんな事を考えながらニヤついてると、聴き覚えのある声が店に入ってきた。

 

「あの、美波様……そろそろ、軍資金の方が……」

「何言ってるの? なくなったのなら下ろせば良いじゃない」

「勘弁してくれないと……生活費が……」

「エロ本買うお金はあるのに?」

「あっ」

「あっ」

 

 ……北山と新田さんと遭遇してしまった。

 

 




やってしまいました。まぁ、この人達はアレだけ絡みかけたり、同じクラスだったりしてたので、最後の方に絡ませないといけない気がしてたのですが。
一応、知らない方のために。

北山遊歩(17)
美波の彼氏
アーニャの信仰者
バカ
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