アナスタシアさんはバカワイイ。   作:バナハロ

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適応編。
何事も慣れと適応。


 10月も残りわずか、あと一週間で11月である。寒さも出てきて、徐々にコタツが欲しくなって来る季節。うちにはコタツあるし、親もいないのでコタツを出すタイミングとかは俺の自由である。まぁ、まだ出さないけどね。言うほど寒くないし。

 来月の11月は頑張れる季節だ。休日も2つあるし、何より12月の途中で冬休みに入るから、実質残り一ヶ月ちょっとみたいなもんだ。だから少しやる気が出る。

 というか、秋休みが存在しないからって二学期は長いみたいに思われてるけど、別に長くないよな。4ヶ月なんだから一学期と同じだし。

 まぁ、そんな話はともかく、あと一ヶ月ちょいで

 そう、高校は、だ。俺の楽しみは放課後にあった。高校を出て少し歩いた場所にスタバがある。そこで待ち合わせしてる女の子、アーニャさんと遊ぶ事だ。

 最初、出会って一週間程度の時はこの人と遊ぶのはなんて心臓に悪いんだと思っていたが、慣れればどうって事ない。「こいつ〜」みたいに流せるようになった。

 今日もアーニャさんと待ち合わせしている。前までサイゼ集合だったのだが、なんかドリンクバーのためにファミレスに集まるのは申し訳ない気がしてスタバで待ち合わせになった。

 しばらく待機してると、横から声がかかった。

 

「ハルカ、お待たせしました!」

「アーニャさん、別に待ってないよ」

「今日はどこに行きましょうか?」

 

 聞きながら俺の正面に座るアーニャさん。

 

「そうだな……」

「アー……もし、なければ今日は私におつきあいしてもらっても良いですか?」

「ん、良いよ。どこか行きたいの?」

「ハイ。その……ハロウィンが、もう少しですよね?」

「そうですね」

「それで、私も仮装したいです」

「他に誰がするのか知らないけどまぁいいわ。それで?」

「私の仮装の衣装を選んで欲しいです」

 

 なるほど、そういう話ね。

 

「良いよ。どこで買うの?」

「どこなら買えますか?」

 

 そこからか。まぁ、日本に慣れてないんだろうし気持ちは分かるわ。

 

「あー……そういうの買うならドンキかな」

「鈍器?」

「誰を撲殺すんだよ。ドンキな」

 

 しかしドンキって何屋なんだろうな。雑貨屋なのか? や、どうでもいいけど。

 とにかく、行きたい場所があるなら行こう。俺も全然問題ないし。

 

「了解。じゃ、飲み終わったら行こうか」

「はい」

 

 そう言ってコーヒーを一口飲んだ。

 

「そういえば、ハルカは学校ではどうですか?」

「ん、何急に」

「いえ、気になったので」

 

 学校ではって聞かれてもな……。

 

「別に普通だよ。基本は一人で本読んでる」

「ダー……本、ですか?」

「別に友達いないとかじゃないからな? ただ、最近は好奇心が旺盛になってきてて……」

「わかっています。私がいますから」

 

 ……あ、やばい。今、ドキッとしたのはときめきじゃない、嬉しさだ。アーニャさんの何気ない一言がたまらず嬉しかった。

 

「……アーニャさん、良い人だ……」

「? なんですか?」

「何でもない」

「む、なんですかっ?」

「良い子だなって思っただけだよ」

「……もしかして、また子供扱いですか?」

「そうとも言う」

「もー! ハルカってばまた……!」

「はいはい」

 

 頬を膨らませてぷんぷんと怒るアーニャさんを手で制しながら、砂糖入りのコーヒーを飲んだ。

 そんな俺の姿を見て、不満げにアーニャさんは頬を膨らませてつぶやいた。

 

「……ハルカだって、コーヒーに砂糖入れないと飲めない癖に」

「……」

 

 ……この子は、いつからそんな口答えするようになったのかな? ここは言っておくべきだろう。

 

「コーヒーに砂糖を入れて飲む事が子供だという考え方が子供だけどな」

「むっ」

「好きなものは好きと認めることの方がよっぽど大人だから」

「むーっ!」

 

 唸りながらぷんすかと頬を膨らませるアーニャさん。言い返せずに唸るしかないアーニャさんはこれまた可愛いものがあるな。

 

「むー……ハルカ、意地悪ですっ。他の男の子は、私がアイドルだから少し遠慮するのに、平気でそういうこと言います……」

「遠慮した方が良いのか?」

「いえ、そうではないですが……」

 

 言わんとすることは分かるけど。普通の男、というか普通の高校生ならアイドルと対面して遠慮しない方がおかしい。かくいう俺も別に遠慮してないわけでもないし。

 

「まぁ、結論を言うと、アーニャさんよりも俺の方が大人ってことだな」

「むー、納得いかないです」

 

 ふくれっ面になりながらもアーニャさんは甘い砂糖の入った抹茶ラテを飲んだ。

 ……ちょっとからかい過ぎたかな。これがきっかけで友達やめたなんて言われた暁には死にたくなる気がするし、何なら死んでる気がする。

 

「あー、アーニャさん。冗談だからね? 俺もこう見えてまだ子供っぽいところあるし……」

「?」

「そ、それにアーニャさん外見はかなり大人っぽいから! だから……」

「……もしかして、からかったのにフォローしてますか?」

「……」

 

 や、まぁその通りなんだが……。なんでそういうとこだけ分かるんだよこいつ……。

 こっちの気も知らずにアーニャさんはニコリと微笑むと、天使の笑顔でとんでもないことを言った。

 

「ハルカも子供っぽいですね」

 

 お前にだけは言われたくねえよ、と思ったが、もう口に出すのもバカらしかった。

 お互いに飲み物を飲み終えると、お店を出てようやく目的のドンキへ向かう。

 

「ちなみに、ハロウィンの仮装とか言ってたけどさ」

「はい」

「どんな仮装が良いとかあんの?」

 

 要するに化け物のコスプレって事でしょ。アーニャさんなら雪女とか似合いそうだが、ハロウィンに雪女とか斬新過ぎるからパス。まぁ、アーニャさんなら何着ても似合いそうだが……。

 

「ミイラ男になりたいです♪」

「お化けのチョイス!」

 

 なんでその綺麗な顔を隠す努力しちゃうのかな⁉︎

 そんな俺の顔をキョトンとした様子で眺めながら聞き返してきた。

 

「……チョイスがなんですか?」

「チョイスが悪いわ! なんでアイドルが顔隠してんだ⁉︎」

「ミナミが驚くと思いました」

「そりゃサプライズの選択肢としてはありだけどな……。……選ぶなよ」

 

 ……いや、待てよ? 考えてみろ。顔だけ出させたらどうなる? ミイラというのは全裸の上に包帯を巻いた生き物だ。

 だが、仮にもアイドルの顔を隠すわけにはいかない。だから、全裸の上に包帯を巻く事が出来れば、それはまた可愛くもエロスを醸し出す生き物に……。

 

「ああああ‼︎」

「っ⁉︎ は、ハルカ⁉︎」

 

 直後、その辺の電柱に頭を打ち付けた。

 

「俺は! アーニャさんで! 何を失礼な事を! 妄想してんだ!」

「ハルカ⁉︎ ど、どうしたんですか⁉︎」

「死ね! 煩悩! 消えろ! アバダケダブラ!」

「お、落ち着……! そ、そうだ、落ち着いて下さい!」

 

 煩悩を消そうと電柱に頭を打ち付けてると、後ろから手が伸びてさらに電柱に頭が軋んだ。

 恐る恐る後ろを見ると、アーニャさんが俺の頭から手を離した。

 

「落ち着きました?」

「……落ち着くっていうか、堕ち着くと思うんだが……」

「み、ミナミはよくこうして落ち着かせてるので……」

 

 おい、あの人は何をしてんだよ普段……。まぁ、お陰で落ち着いた。

 とりあえず、電柱から退いてアーニャさんに言った。

 

「……すまん、落ち着いた」

「驚かさないで下さいっ」

「わ、悪い……」

「私がミイラ、そんなにダメですか?」

「うん、それはダメ」

 

 仮に俺の考えたものを着るとしても風邪引くからな。季節が季節だし。

 

「じゃあ、どんなのが良いと思いますか?」

「んー……そうだな。魔女とか?」

「マジョ?」

「そう。見たことあるでしょ魔女くらい」

 

 というか、他のハロウィンコスプレって何があるかな。フランケンシュタインとかだと頭にネジ刺さないといけないし、カボチャの被り物頭に被せるわけにもいかない。

 

「……まぁ、決めるのは俺じゃねぇからな。とりあえず、ドンキで決めよう」

「はい」

 

 そんな話をしてるうちに、ドンキに到着した。改めて見ると派手だなここ。それとあのペンギンなんなんだろうな。針で突いたら破裂しそうなんだが。

 

「ここ、ですか?」

 

 圧倒されてる雰囲気でアーニャさんは声を漏らした。まぁ、そうだよな、派手だもんな。

 

「来たことないのか?」

「は、はい……。あまり……」

 

 まぁ、パーティでもしない限り用はないか。アーニャさんが参加するパーティなら、アイドルなんだからほとんどは用意されてるだろうし。

 

「楽しいぞ、売ってるものは」

「そ、そうですか……」

 

 二人でお店の中に入った。

 中に入れば、圧倒されてたアーニャさんの表情は一転し、楽しそうに店内を見回り初めていた。まぁ、売ってるものは面白いからな。中には手品のトランプとかも売ってるし。

 そんな事を思いながら、その辺にぶら下がってるリングの手品の見本を手に取った。こんなのも昔はあったなーとか思いながらいじってると「ハルカ!」と名前を呼ばれた。

 

「見てください!」

 

 はいはい、もう何を見せられても驚きませんよーと思って顔を向けると、鼻眼鏡を装備したアーニャさんが目に入り、思わず吹き出してしまった。

 

「ブハッ⁉︎」

「面白いですね、ドンキー!」

「面白いのはお前の方だろ……」

 

 DKはいねぇぞ。つーか、仮にもアイドルがそんなもんを……。

 や、まぁこういうとこがアーニャさんの可愛いとこでもあんのか。

 

「とりあえず、それ外せ」

「どうですか? 似合ってますか?」

「会話してくれ。つーか、似合ってるって言われて嬉しいのか?」

「ハイ!」

 

 こいつアホなんちゃうか。

 

「はいはい、超似合ってる可愛い可愛いベリーキュート。女神の生まれ変わりかと思ったわー」

「むー、テキトー過ぎます! ちゃんとほめてください!」

「鏡見てから言えよ……」

 

 どこを褒めろって? メガネから見える碧眼が綺麗ですねって? それ鼻眼鏡褒めてないよね、いつもの事だよね。

 しかし、アーニャさんは不機嫌さを隠そうとしないで頬を膨らませたまま鼻眼鏡を元の場所に戻してから聞いてきた。

 

「アー……ところて、それはなんですか?」

「ん? あー、これ?」

 

 手に持ってるリングの手品のおもちゃを指差した。まぁ、こういうのは見せた方が早いよな。

 アーニャさんが見やすいように正面でリングを掲げると、手首のスナップを利かせてカチンと輪に通してくっつけてみせた。

 

「おえっ⁉︎」

 

 吐瀉物をまき散らしたような驚きの声を上げるアーニャさんだったが、それ以上は何か説明をしようとはしなかった。手品の見本をその辺にぶら下げ、さっさと仮装する服が売ってる場所に歩き始めた。

 

「さ、行こうか」

「ま、待ってください! 今のどうやって……⁉︎」

「ハロウィンで仮装するんでしょ」

「もう一回だけですから!」

 

 あんなの、商品用にしてあるから何処かにつなぎ目があるに決まってるだろうに……。

 ……この子、もしかしてさ……。

 

「アーニャさん」

「? なんですか?」

 

 無言で左の親指を折り曲げ、右手の親指を曲げた後に人差し指で関節を包み、親指が取れたように見えるアレをやってみた。

 

「ーッ⁉︎」

 

 直後、唖然とするアーニャさん。この子、少し純粋過ぎやしませんかね……。

 

「……うん、まぁ、その……なんだ。行こうか」

「今の、今のはどうやったんですか⁉︎」

「歩きながら教えてあげるから」

 

 とりあえず、ようやくこの場所から移動できそうだ。

 

 

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