俺の青春ラブコメは間違っていた(過去形) 作:零崎と呼ばれる戯れ言使い
「ハァ...」
今、俺がため息を吐いたのには無論理由がある、むしろため息に理由がないわけがない。
千葉有数の進学校である、私立総武高校には難解で意味不明な部活があったとさ...いや、間違えた、今現在なおあるれっきとした部活だ。あぶねぇ、うっかり嫌いすぎて過去形にしちゃったよ。それにしても、いつ廃部になるんですかね、あの部は。早く家帰って読みかけの本読みたいんですけど。
まぁ、なんだ、単純に面倒のが1つの理由で、もう1つは雪ノ下雪乃というやつに貶されに行かなければならないからだ。雪ノ下というのは国際教養科に属するこの学校でもエリートなお嬢様で、模試でも常に1位を守り続ける英才だ。それに加え、容姿端麗、文武両道ときたもんだから完璧な存在に見える。あの毒舌ぶりと、友達のいなさを除けば。因みに、俺は毒舌を差し引いてもあいつに勝てるとこなかったわ...
そして、奉仕部と書かれた教室の前の扉の前に立ち、もう一度深呼吸の代わりにため息を吐くと、俺は扉に手をかけた。
ガラッと音をたて当たり前のようにいる人物を見た。
「あ!ヒッキー遅い!連絡してよねもう」
そうそう、俺がめんどくさい理由の人がもう一人いるんだった。
真っ先に噛みついてきたのが由比ヶ浜結依、多くのコミュニティを有していて、クラスのカースト中でも最上位である彼女は空気を読むのが得意な女子だ。毎日、俺をヒッキーとディスってくる。ほんとに酷いです。
本から少し目を離し雪ノ下がこちらを一瞥する。
「あら、こんにちは比企谷君、それにしても遅いわね、遅刻するのは登校時間だけにしてもらえないかしら」
「ウィース、てか何で俺が良く登校に遅刻して平塚先生に制裁食らってんの知ってんの?」
「そこまでは知らなかったのだけれど...これ以上部活を遅刻するのなら平塚先生に毎回指導をしてもらわなければならないわね」
雪ノ下さん凄い怖いです、そしてあなたはやると決めたら絶対やるからマジで恐いです。
「ハハ、ヒッキー怒られてるもんねいつも」
「説教食らうのは無料だからな、負担なのは鉄拳制裁と過重労働だけだ」
俺はいつもの定位置に着く。
「ハァ...あなたには呆れるわね。単位の取りこぼしや遅刻日数に対するペナルティには関心がないのかしら?」
「雪ノ下知ってるか?単位は最低限の成績を保持していると、俺レベルだと教員に頭下げればなんとかなるもんだぜ、補修ぐらいどうってことない」
「ヒッキープライド無さ過ぎ...」
「高校必須単位を何か履き違えていると思うのだけれど...なんにせよ、教鞭を執っている教師の善意につけ込むやり方は屑ね」
由比ヶ浜そんな遠い目をするな。教師も留年とかめんどいんだろ。まぁ、やってることはクズだな、俺が。
「もう1つの遅刻日数については弁明はあるかしら?」
え?何で俺が弁明する形になっちゃってんの、お前に。
「ヒッキー、ゆきのんには勝てないよ、諦めてちゃんと明日から遅刻しないようにしましょう!」
「おい、何で俺が雪ノ下と戦ってることになってんの?勝ち目ねえだろ」
ただ、遅刻しないようにするのは無理だからな、ちゃんとこの二人にも分かってもらうためにガツンと言うしかないな。
「ほら、俺去年は100回以上遅刻してるし、まだ、今年は73回目だから大丈夫だろ正確なことは知らんが。それに、強い意志をもって遅刻皆勤賞に勤しんでだよ俺は。皆がだらけずに来ている以上、人間羽休めが大事だということを証明するためなんだ」
「えー遅刻皆勤賞っておかしくない、皆が勤めてる賞でしょ」
うーん、由比ヶ浜、漢字を直訳して意味が大体わかるのは中国の漢字ぐらいだからな。しかし、由比ヶ浜に怪しまれたか、まずいな。
気付くと雪ノ下は本を完全に閉じ、ゴミを見るかの様に鋭く見詰める。
「計画性の皆無に、意志なんてとりようによっては体の良い言葉だわ。それに、あなたは証明をする相手なんかいないじゃない」
こいつ、なにふざけたこと言ってんだ、俺にだっているからな...小町とか、あ、あいつもう年中羽休め状態だったわ。
「ほら、それに平塚先生に考える遅刻の言い訳とか、あれ毎朝考えんのに結構頭使ってるから語学力が向上」
「既存の知識で言い訳を垂れているのなら全く意味がないわね、それに、あなたは言い訳大全集を覚えているのかしら?」
正直、その場しのぎだから覚えてねぇや。
「なら、社会に出た時の遅刻の言い訳とかに使える」
「結局、自分の存在価値を落としているから利益になっていないわね、だけど、あなたにもともと存在価値無かったわね」
・・・・・
「クッ、これはどうだ小町がこれから高校にはいるあたって、俺みたいに遅刻しないよう...とか」
「えー!小町ちゃんヒッキーに比べてビックリするぐらいしっかりしてるからちゃんとした言い訳ぐらい言えるよ!」
「ゲ!由比ヶ浜に指摘されたし!え!?というか遅刻はするの前提なのかよ!」
「あたしが指摘したらビックリすんのやめてよ!」
「あなたはさっき世のために羽休めが大事と言ったばかりなのだけれど...」
「つまりさヒッキーみたいに遅刻しちゃいけないってことだよね」
「そうね、比企谷君を見習ってわいけないということになるわね...結論からすると」
「あれ、遅刻は駄目だよで終わらせるだろ普通!何で俺みたいな人間になっちゃいけない話になってんの?」
その通りだけどよ!
「ヒッキー分かった?遅刻しちゃ駄目だよ?」
「あいあい」
適当な生返事を返す。
「由比ヶ浜さん駄目よこの男は性根が腐っているから、教育、体罰、洗脳が必要よ」
「おい、体罰とかPTAの人達に怒られちゃうだろ、洗脳とか、なんかの教壇紛いのことしなくても解ってるつうの」
こいつの発想がサイコパス過ぎて恐い、いつまでも居ると殺される。
俺はこれ以上刺激を与えないように机に顎を乗せうつ伏せになる。早く時間終わんねぇかな。
「ゆきのん♪お茶にしよ!」
「あら、そうね」
雪ノ下はそう言うと部室に持参しているケトルに水を入れ湯を沸かす。それを背に由比ヶ浜はティーポットに茶葉を積めていた。
大体、奉仕部の一日はこんなもので、奉仕部を目当てに人なんてそうそう来ない。プロットが出来たと持ってくるやつもいるが、そんなやつは知らない。戸塚来ねぇかな...
コトッ、と由比ヶ浜がソーサーに置いたカップを俺の横に置いた。勿論、砂糖は既にたくさん入っていると思う。
「サンキュ」
いつもがこんな感じだ、運動部と演奏部の喧騒を横目に、雪ノ下は本を読み由比ヶ浜の相手をし、由比ヶ浜は出来事をただしゃべる、そして俺は寝る。変わらない一日だ。むしろこのままの方が楽で良いんだがな。
俺はボケーとして家に帰ってからの予定を考えていると。
「誰も来ないね」
と、雪ノ下にも俺にも問うことはなく、部室の扉に視線注ぎぽそっと言った。
まーた言ってるよこいつ。テンプレにも程があるぜまったく。
「まぁ、そもそも奉仕部はあまり必要とされてないんだろ、学校生徒からしたら」
雪ノ下が横目で睨んできた。その、口が開く前に
「まぁ、平和だってことだ、世の中、警察も病院も人を守る為のものだからな、被害者が生まれる前の事態そのものがなくなれば結果論幸せだって事だろ」
「だよね、私たちが動く必要なければそれに越したことないもんね」
由比ヶ浜が空気を察してフォローに入った。
「警察も病院も人を守る為だけの存在ではないのだけれど、あなたにしては珍しくまともな意見ね、それを念頭に置いて、これからは遅刻に対しての言い訳で警察は自重しなさい。あなたが使うのには尊すぎるわね」
「だから何で平塚先生に使った言い訳を知っんだよ」
こいつは正義の塊だからな、愛は無くても勇気と自身と刃物携えたヒーローはほんとに怖いです。俺はその刃物で毎日の様に刺されてます。
「というか、ヒッキー何で今日遅刻したの?」
また、その話かよ。上手く俺のヒキトークで茶を濁したつもりだったんだがな...
由比ヶ浜は疑問の表情を浮かべこちらを見てくる。雪ノ下は興味がないかの様に本に目を落としていた。あぁ、もう僕の言い訳すら聞いてくれなくなったのですね...
由比ヶ浜がネネちゃんのママの料理ぐらいしつこそうだから適当に答えるか。
「あーほら、この前の体育祭の実行委員俺達だっただろ、それで、招集かけられて断ってたんだ」
「うそね。それならば私達にも声がかけられるはずでしょ」
「というか、招集を断るってどんだけよ...ヒッキー...」
「それに、あなたは空気からも嫌われているのに気付いてくれる人なんていないでしょ、この方が濃厚かしらね」
「いや、その補足要らねぇからな。もう、俺のこと殺しにかかってるとしか思えないんだけどさ!」
クソッ、駄目か、なら他しかない。
「あのークラスの女子の運動用のユニホーム無くなってさ、ヒキタニ怪しくねって戸部に言われてさ、ちょっと逃げ回ってたんだよね汗」
「なるほど」
「・・・最低」
「逆に認めんなよお前ら!まるで俺が卑猥な容疑者みたいじゃねぇか!」
嘘だからね、今度から君達にはもっとマシな嘘吐くことにするわ、警察を呼ばれかねないぜマジで。
「それも嘘ね、あなたは逃げなくたって居場所がいつも解らないもの、それに、あなたの噂が挙がることも無いに等しいわね」
良かった、これで変態痴漢猥褻卑猥容疑者から抜けられる...いや、良くない!ミスディレクション使ってねえんだけど俺...
「結局、何で遅刻したの?」
うーん、まずいこれ以上失言したら高校生活どころか、この先の未来も見えない。
「比企谷君、観念しなさい。これ以上戯言を言っていると・・・惜しいわよ」
その間は何を言いたいのか解るけど、それだけは勘弁してください、小町が悲しんじまうから。むしろ、小町しか悲しまない。そう信じたい。
「えーと...」
雪ノ下と由比ヶ浜は間合いを詰めてくる。
「お、時間だな小町待ってるから帰るわ」
俺はカバンを持ち席を立った。
「比企谷君逃げるのね、分かったわ、あなたがそのような対応をするなら私も考えがあるから」
後ろを見ちゃ駄目だ、ホラゲー張りに見たら絞殺される!
「ちょっとヒッキー!」
「じゃあな、明日からは遅刻しねえから勘弁してくれ」
そう言って返事を待たずして部室を出た。追ってくる様子もない、追われたらマジで逃げるけどな。
そうして、人影もない廊下を速足に歩く、そう言えば明日も部活に来るって言っちまった。いつからか、気付けばあそこに俺はいる。受け入れられないじゃなくて、俺が受け入れなかったはずなのに、俺はあの空気を自然と気にならない。
受け入れられないヤツはいつか変われば受け入れられる。いつから俺はあいつみたいに捨てた、いや、捨てられたのか。
俺は何かを考えながら学校を後にした