ハリー・ポッターと足掻く者   作:らはんん

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1982年9月24日 導きの本

 店内はひっそりと落ち着いた雰囲気をはっしていた。その一角に数段ある本棚が置かれ、中にぎっちりと本が詰まっている。その横には細長いテーブルが置かれいくつかの雑貨が置かれていた。

 

「いらっしゃい少年」

 

 不意に真横から声がしたので見てみると、そこに一人の老人が座っていた。

 

「わしがこの店の主人じゃ、会計もわしがするからな、ゆっくりと選んできなさい」

 

 コールはうなづくと、とりあえず本棚へと向かった。

 

 コールが買おうとしていたホグワーツの呪文学の教科書『基本呪文集』や、アメリカの魔法学校イルヴァーモニー校の教科書である『チャドウィックの呪文集』は全巻揃って見つかった。

 

 当初、買う予定だった物を見つけて手に取ったが、マイラの「掘り出し物が見つかるかも」と言う言葉を思い出して当たりを観察し始めた。

 

するとあるわあるわ、『オリバンダー~杖作り十代の記録~』といっためちゃくちゃ読みたい本や、『ウェンデリンの変わった魔術』といった一見なぜここにあるのかと言う本まで、ピンからキリまで揃っていた。

 

 すげぇ、どれも原作にはなかった本ばかりじゃん!と、夢中になって手にとってはペラペラ、手にとってはペラペラしていると、本棚の一段が耐えきれず横にガツッと倒れてしまった。

 

 あたりに埃が舞う。ゴホゴホ咳き込んでいると、倒れた一段の裏になにかが挟まっている事に気がついた。

 

 俺はそれがなぜか無性に気になった。

 

 おもむろにそれを引っこ抜く。本がドサドサッと落ちてしまった。

 

 手に取ったのは古ぼけた一冊の本だった。使い古してあるのか、手垢がびっしりとついている。

 

 本の題名は『闇の魔術教本』と、シンプルなもの。

 

 しかし、問題はその著者にあった。

 

ネリダ・ヴァルカノヴァ

 

 あー、わからない人も多いだろう。あのダームストラング校の創設者である。

 

 ホグワーツの創設者達には劣るかもしれないが、間違いなくビッグネーム。

 

 いや、闇の魔術に関しては彼等より抜きん出てたに違いない。かのグリンデルバルトを輩出した学校の創設者である。

 

 もしかしたら、と、思う。

 

 もしかしたら、ヴォルデモートに拮抗する力を持ってたのではないかと。

 

 そんな人が書いた教科書だ。最強を目指す俺にとっては自然この本が必要だと思った。

 

 ほしい、絶対に手元に置きたい!

 

 しかし、この本だけを持って出て行っては両親や姉兄に白い目で見られて、最悪取り上げられるのは目に見えている。

 

 俺は本を隠せるような雑貨がないかと机の方に移動した。

 

 細長い机に置いてある品々はこれまたピンからキリまで揃っていた。

 

 半分効果がなくなっている透明マントや、使用済みポートキーなぞ誰がいるのやらと思いながら物色を続けている先に、一つのポーチがあるのを見つけた。

 

 黒だが妙に光沢のある革製…。俺はそれがドラゴンの革製だと直感した。

 

 手にとって見る。軽い。

 

 これならちょうどいいかと思って開いて見ると、俺は思わずにやけてしまった。

 

「検知不可能拡大呪文…、完璧!」

 

 

 

 

 俺はホクホク顔で老人の元へ向かった。

 

 

 

「んん? 選んだかね?? どれどれ、……このポーチは、13シックルと14クヌートじゃな。検知不可能拡大呪文つきなんて掘り出し物じゃの。そしてこの本は……!?!?!?」

 

 

 

 そういえば家族にバレないようにとか以前に、この老人に見せるんだったよなぁ、失念してた。

 

 と、明後日の方向を見ながら現実逃避する俺。

 

 

 

 ミスったぁああァ。これじゃどっちにせよ手に入らんルートじゃん! やっちまったぁああァ……。

 

 

「クッ…ククッ……カッハッハッハッはぁ。いやいや久しぶりにたまげたわい。それで? 少年は何を欲していたんじゃね?」

 

 

 

 俺が内心orzってたら老人が笑い出した。

 

 あっなんか許されそう。

 

「一応、呪文学の本を探しに来てたんですけど…」

 

「違う違う、わしはそんな表向きの事なんぞ聞いておらん。少年、お主の心の中にある望みはなんじゃと聞いておるのじゃ!」

 

 望み? そう聞かれて答えられるものは一つしかない。でも……

 

 俺は少し考えた後、素直に答えることにした。

 

「望み、強いて言えるとすればそれは最強の魔法使いになりたいという望みです(原作キャラ救済のためにな!)」

 

「カッハッハッ。…最強を求める、か。言うは易し、じゃが成るは難し。しかしの、この本が現れる時点でお主の信念は相当なものじゃ」

 

 老人はそこで一旦言葉をきった。

 

「…少年、お主のその心意気を買おうじゃないか! フフッ、ネリダの爺も自分の魂がこんな聡い若いのに継がれて満足じゃろうて」

 

「あ、あの、そういうあなたはもしかして…」

 

「あぁ、ネリダがわかるなら、わしのこともわかるか。その通りじゃ、わしはハーファング・マンター。かつてはダームストラング校の長をやってたがの、今はただの爺じゃ。」

 

「なるほど、あの、ここにはこういうものがまだ沢山…?」

 

「うむ、ここにはダームストラング校で使わなくなった、忘れ去られたものがたくさんある。その中にはその本のように次の持ち主をずっと待ち続けているものもある、そういう店なのじゃ。そして、そういう品々は滅多に並べられることはない。」

 

 ここでハーファング老は身を乗り出していってきた。

 

「よいか? お主はその本を選んだのではない。その本に選ばれたのだ。そこをちゃんと頭に入れておくんじゃぞ?? …ネリダからは自分の所有物の継承者へ言伝を預かっておる。『私の遺品に選ばれし者へ。私の遺した物は強力だが危険で、魅力的だが、難解だ。自分の志した道に違わぬよう精進してほしい』…実はネリダに自分のやつには金をかけるなと言われてての。その本はタダじゃ持ってきなさい。 …他に何か買いたいものはないかね?」

 

 俺は本を買いに来てポーチだけを買って出てくるのもおかしいと思い、手頃な本を一冊買って店を出た。

 

 


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