前回よりは文字数多いぞ!やったね!
ザクザクザク。ザクザクザクザク。ふよふよふよ。ふよふよふよふよ。
ゴースを先頭に、俺がその後ろについて無言で歩く。ゴースとは話をしたいのだが、生憎俺の頭はこんがらがりやすい。周りを見渡しながら状況をより整理する。
先程の遭遇から数分ほど歩いているが、町はおろか整備された道も見えてこない。あるのは木、木、木。どうやら森のようだとあたりをつけるが、それにしては木と木の間が広い。
それに伴って決して見通しが悪いわけではない奥行きがわかる。まあわかるだけで暗すぎで見えはしないのだが。
森といえばもっと木も草も鬱蒼としているイメージなのだ。それから歩きにくいものだと思っていた。これでは森というより人工林なのかもしれない。
それに月明かりしか光源がないので断言はできないが、木は全てきれいな紅葉樹に見える。地面の落ち葉も緑っぽくはない。俺は京都の紅葉を思い浮かべた。
それならきっと人里も近い。疑問が1つ解消された。
「ゴー!ゴーッス!」
ゴースがこちらに何か話しかけてくる。流石にポケモンが何言ってるかは俺にはわからない。だが表情が豊かなのか、ニュアンスは読み取れそうだ。
どうやらもうすぐだぞ、と俺に教えてくれたらしい。
「もうすぐ人がいるところに出るんだな。ありがとうゴース」
そういうとゴースは嬉しそうに早々と先へと飛んでいく。あっ待てゴース!見失ったら迷子確定だから!
ゴースに合わせて急ぎ足で森を抜けていく。ゴースよ、お前は浮いてるからいいかもしれんが俺はもう走ってるといってもいいスピードになって足が痛い! 歩けるけど舗装されてないから歩きにくいんだって!
ダダダダッ! と大きな足音が響く。そしてようやく俺の足の裏に硬い、舗装されているであろう道の感触を掴んだ。
道に出た!そう思ったのもつかの間、俺の足がもつれて道(石畳で出来ていて固そう)にダイブした。
ズドンッ!!
鮮明と、鈍い音が夜道に響いた。俺は額を強く殴打した。いや、もう強いってレベルじゃねーぞ!ヒビ入ってないといいなあ…。
「うっ……てて……」
「!? 大丈夫かい君!」
鼻が低くて助かった。高かったら折れていたぞ。
額をさすりながら起き上がると同時に、近くにいたらしい通行人が駆け寄ってくる。優しそうな男の人の声だ、実際優しい。心に染みるね。
「大丈夫…です…イテテ…。いやはや…お恥ずかしいところをお見せして申し訳ない」
「! やっぱり痛いんだろう? えーっと…あぁ、何だって今日は手ぶらなんだ…」
こちらが痛み続けているのを見て手当をしようと通行人は自身のポケットを漁る。しかし手元に何も使えるものが無かったようだ。残念そうなつぶやきが聞こえる。
ゴースもスピードとテンションを上げすぎたことを悔やんでいるのか、慌てた様子で俺の頭の上を浮遊している。大丈夫大丈夫。そんなに痛くないから。
「……そうだな、とりあえず僕のうちにおいで。額の手当をしよう」
「いやいいですよ、真夜中だし。迷惑でしょう。
それにそんなにひどい怪我では…」
「血が出ているのが軽いのかい?」
「えっ」
額に置いていた手のひらを見ると、街灯に照らされた水…いや、うん。…テラテラと反射した血が付着していた。
「これはまた随分と派手にまあ……お願いしていいですか?」
「ああ、任せてくれ。手を貸そう。他に痛むところはないか?」
「今の所、特には」
通行人の手を借りて立ち上がる。ふらつくが、歩けないほどではない。
ところで、現在俺は道に出てきている。道にはそれなりに明るい街灯が等間隔、道の両サイドに設置されている。森の中と比べるまでもなく明るい。
隣のゴースや通行人の顔がはっきりわかるくらいに。
「あ〜えっと、俺はユジって言います。ちょっとお世話になります。貴方は?」
「僕かい?僕はマツバって言うんだ。真夜中だしポケモンセンターにも泊まれないだろう。うちに泊まるといい」
街灯の明るさのせいか、色の強くない金髪が印象に残った。俺は男を見上げる。
その通行人の男の格好は、頭には紫のバンダナ、オフの日の修験僧が着てそうな濃い紫色の服に、ラインの入った黒いジャージ。
寝間着のような服装を纏ったイケメンだった。イケメン滅べ(条件反射)。
もしかしたら本当に寝間着なのか、と疑問に思う。普段着……ではないかな。
夜中に外を出歩いていることも相まって只者ではない雰囲気の男。
その時俺は悟った。
こいつ、絶対に重要人物だな、と。
知識があやふやな俺にはこの時知る由もないが、この通行人の男は、エンジュジムのジムリーダー、マツバその人であった。
優しく俺の手を引っ張って歩いていく。まるで子供に対する扱いだ。気恥ずかしくはあるが、またもや俺は情報をまとめるのに必死だった。
道を抜け、日本家屋にありそうな大きな門をくぐり住宅街を歩いてゆく。現代日本の一般住宅が見えるがそれ以上に武家屋敷のような大きい家が目につく。本当に京都っぽい感じである。
マツバ…マツバ…聞き覚えはあるんだが……。う──ん…。
「ほらユジ君。着いたよ、ここが僕の家だよ」
「………」
どうやらもう到着したらしい。自然と俯きになっていた頭を上げ、絶句した。
「ん、本当にここが家かって顔をしているね?そうだね、僕はここで生活してるから家であっているのさ」
連れてこられたのは、明らかに通常の家屋にも、時代錯誤な建築物でも、ましては豪邸ですらない。
ポケモンジムだった。
外装は古い町並みに合わせるような落ち着いた山吹色をベースカラーとした暖色でまとまっている。他のジムはどうかはわからないが、建物の形は大人数で試合ができそうなドーム型のスポーツ施設を彷彿させた。
正直かなり動揺した。だって道で優しいお兄さんに連れられて着いたのがジムだぞ?
頭でポケモンの世界だから当たり前にあると理解している。しかし冷静に思考していても俺は『とりあえず知らない世界に来たことにして自分を無理矢理納得させた』だけであって、心の底では荒唐無稽だとすら感じている。
ポケモンだけならば自分の中で言い訳を立てられていた。
しかし実際のところ、俺にこの世界の特徴のような証拠を見せられて酷く、ひどく動揺していた。
頭が混乱しているわけではない。むしろ状況は整理し続けていたのだから正確に理解している。
ただ、現実が受け入れられなかった。キャパシティオーバーともいう。額の痛みと相まって最悪の気分だ。
マツバは俺の様子に(前を見たままだから当たり前だが)気づくことなく、手を引っ張って裏手の扉から中に入る。内部の通路や曲がり角の隙間から見えるジムは、所々に何か作業している人たちがいた。彼らの足元は真っ暗で、床など視認できない。人が居なければ俺には床が存在することもわからなかっただろう。
この街はエンジュシティ。
そして俺を助けた男はエンジュジムのジムリーダー、マツバ。ゴーストタイプの使い手。
肩書きが頭の中に思い浮かぶ。
頭がいたい。俺は空いた方の手で額を、頭を抑えた。額の痛みか頭の中の痛みか、俺にはわからなかった。
一緒について来ているゴースは心配そうに俺を見やる。安心させるように撫でる。本音を言うならもう少し心の整理がついてから遭いたかった。
「確かこの辺に救急セットが…あった。ほらユジ君、怪我を見せてごらん」
「……あ、はい」
リビングのような部屋のソファに座り治療を受ける。柔らかくて座り心地が良い。消毒をして薬を塗り、ガーゼが貼られる頃には眠気が襲って来た。寝ていて深夜に飛び起きたからか、まだ睡眠が足りなかったようだ。うとうとと船を漕ぎ始める。
「ハイ終わり。…おっと、もう寝そうだね。布団で悪いが敷くから寝るかい?」
「……ありがとうございます。何から何まで…」
…ああ眠い。先程までの情報量を受け止められなかったか。
睡魔に負けそうになりながら応える。一種の防衛本能だろうか。
「どういたしまして。でも寝るまでに1つだけ質問に答えてほしい」
うん?寝かせてくれるならなんだって応えるが…。
先程までの温和そうな顔つきが真剣な眼差しをこちらに向ける。真面目な話に答えられるだろうか。
目線をマツバに合わせると、彼は口を開いた。
「君がいたエリアはね、エンジュジムのバッジとにじいろのはねを持つトレーナーしか入れないようになっているんだ」
眠い頭で考える。バッジとはねを持つ者のみが入れる……なるほど、ホウオウが居るらしいスズのとう付近に俺は倒れていたわけだ。
今目の前のジムリーダーから質問、もとい詰問されていると言うことは、どうやって入ったのか知りたいのか。といっても俺だってわからないからなあ…。
「…すみません、俺も気づいたらあんなところにいたから、わからないです。入っちゃいけない所ならなら俺も入るわけないと思うんですが…」
故意ではないし、言外にこれからも入りません、という気持ちでマツバを見ると納得はしていないのか、諦めただけかはわからないが、小さく溜め息を吐いて緊張を解いた。俺だって何が何だかからないので質問攻めに発展しないようで助かった。
「…そうか、わかった。また明日話を聞いて良いかな?」
「アッハイ」
明日質問攻めに会う予定らしい。ちくしょう、言い訳を考えねば…。
しかし睡魔には勝てず、話が途切れた瞬間に眠りに落ちた。
あ、レポートくらい書くべきだったかも。
エンジュシティの町並みは金銀のマップ寄りのイメージです。スズのとうの前の道に名前あった気がして調べたらHGSSの方だけだったので今回名前は出してないです。でも表記ががしゃらくさいので名前出そうかとも思ってます。
それから今回のマツバの服装は金銀スタイルですけどやっぱスタイリッシュな方がいいと思うんで本来のスタイルがあのマフラー巻いてる方、ってことにします。今回のは体操服みたいなもんですね。
注意書きを2話目から破っていくスタイル