嘘の仮面   作:妖魔夜行@

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どうも、文字数が少なくなった分、投稿ペースが上がることになった妖魔夜行です。このペースを維持できたらいいね。(他人事感)

それではどうぞ。


8話

「………………ここは?」

 

気がつくと僕は何も無い真っ白な空間にいた。

 

「僕…なんでこんな所に………」

 

………ダメだ、思い出せない。頭に霧がかかったみたいだ……。

 

とりあえず辺りを見渡してみる。目を凝らしても奥が見えない…まるで果てなど無いみたいだ。

 

やる事も無いし、俺は歩いてみる事にした。

 

「…あれ?」

 

振り向いて後ろを確認する。ついでにもう一度辺りを見渡してみる。だがそこには何も無く先程と変わらず、ただ白い空間が広がっているだけだ。

 

「今なにか違和感が……気のせいかな?」

 

まあ、いいだろ。今はとにかく歩こう。

 

時間は沢山あるんだからさ。

 

 

「ホントに入院してるよ…影山さん……」

 

アタシは今、影山さんの病室にいる。少し前に美咲ちゃんから影山さんが入院したっていう連絡があって、バイトを放って病室までやって来た。

さっきまで美咲ちゃんとこころちゃんが居たみたいなんだけど…ここに居ないってことは家に帰ったのかな?

 

ううん…そんなのどうでもいいや。今は、どうだっていい……。

 

「影山さん……」

 

ピッ、ピッ、と心電図の音がやけにうるさく感じる。

 

「知ってたかな?影山さん。アタシ、影山さんのことが好きだったみたいなんだ。みたいって言うのも変なんだけどね…あの日、皆に言われるまで気づかなかったんだもん。あはは……モカにでも知られたら大変だなー。毎日からかわれちゃうよ」

 

憧れの人は、ベッドの上で黙っている。目を閉じて、点滴を打たれて、呼吸器をつけられながら……。

 

「……あの時の影山さんが、本当の影山さんなんだよね?」

 

あの日、影山さんがCiRCLEから出て行った後にまりなさんに頼んで教えて貰った影山さんの抱えている闇について……。

あの時見せた無感情な顔や、まりなさんと出会った時のこと…。

 

「……」

 

影山さんの手に自分の手を重ねてみる。アタシの手はみっともなく震えているのに影山さんの手はピクリとも動かない。でも、その手はちゃんと体温があった。アタシよりは冷たいけど……確かに生きている…そんな手だった。

 

「あったかい……あったかいのに……生きてるのに………なんで…!なんで話せないの…?話したいよ……影山さんともう一度、話したいよ……!!起きてよ…目を覚ましてよ!影山さん…!!」

 

アタシの心の底から出た涙と叫びは、影山さんに届いたのだろうか……それから暫くの間、アタシは影山さんの手を握りしめて涙を流し続けていた。

 

 

…何時間経ったんだろう。ずっと代わり映えのしない景色を見ながら歩いていると方向感覚が狂ってくる。

 

その代わり、腹も減らないし喉も乾かない。結構居心地がいい所だと思うね。

 

「まあ思えなくもない、かな……んん…?」

 

何気なく呟くと、またしても違和感を覚える。なんと言うか…言葉に表すのが難しいのだが、妙な感じがする。

 

まあ気のせいだろ。気にする程でも無いな。

 

「うん、そうだ。気にする必要も……な、い…?」

 

やっぱり何かおかしい。

 

いや、どこもおかしくなんかないな。考えようとすると頭痛くなるし…また歩き始めるか。

 

「ぐっ……」

 

頭が痛い。僕はこれ以上考えるのをやめて、また歩き始めた。

 

―――!!

 

「……?なんだろう、今の?」

 

届きかけた声は、伝わらない。

 

 

「ついたね〜」

 

「意外と遠いんだな。つぐ、ひまり、大丈夫か?」

 

「う、うん…大丈夫だよ」

 

「私も覚悟は出来てるよ!」

 

「それってなんの覚悟…?」

 

今日まりなさんから連絡を貰ったあたしは、『After glow』のメンバー全員で影山さんの入院している病院へやって来た。

 

「でも蘭も来るって言った時は驚いたよー。影山さんのことあんなに毛嫌いしてたのにー」

 

「別に…皆が行くから着いてきてるだけだし…」

 

バツの悪そうな顔をしてそう答える蘭。

素直じゃないねー、と言うと怒られるので心の中に留めておく。

 

手続きをして影山さんがいる病室へ向かう。

歩いていると日菜さんが前から歩いてくるのが見えた。

 

「あれって日菜さんじゃないか?」

 

ともちんも気付いたみたいだ。ともちんの声が聞こえたのか日菜さんはあたし達の方に顔を向けた。

 

「あっ、After glowの皆……やっほー」

 

「ひ、日菜さん!?大丈夫ですか!!」

 

ともちんが慌てて駆け寄る。日菜さんは酷い顔をしていた。フラフラとした足取り、目の下にははっきりとクマが見える。とてもアイドルとは思えない顔だった。

 

「日菜さん…どうしたんですか?」

 

「まて蘭。取り敢えずどこか休める場所に行こう。日菜さんも立ちっぱなしじゃ辛いだろうしな」

 

蘭が日菜さんに話しかけるとともちんがそれを遮って提案した。確かにこの状態の日菜さんには辛いだろうし賛成だ。

 

それであたし達は休憩室へ移動した。休憩室には先客がおらず、ゆっくりと話せそうだった。

 

「日菜先輩、どうぞ」

 

「ありがとつぐちゃん…」

 

日菜さんはつぐからホットココアを受け取り口にする。

落ち着いたのを見計らってひーちゃんが聞き始めた。

 

「それで…日菜先輩どうしたんですか?目のクマとか…顔色も悪いですし……」

 

「あはは、そんな酷いかなあたし。そう言えば家出る時におねーちゃんにも言われたなぁ…」

 

乾いた笑いを零す日菜さん。またココアを一口飲む。

 

「みんなはまだ行ってないんだよね…あの人の病室に」

 

「そうですね〜、さっき行こうとしてたので」

 

「あーそっか…ごめんね、あたしに時間取らせちゃって。でもさ、今はまだ行かない方がいいかも……」

 

「なんでですか?」

 

あたしが聞くと日菜さんは俯いたまま話し始めた。

 

「リサちーがね、部屋にいるの。リサちー、すっごい泣いてた……。あたしさ、あの人と初めてあった日に酷いこと言っちゃったんだ。あの人のこと何も知らないのにね…なんにも考えずに自分の思ったことを話して、あの人は悪くないのに…あたしのワガママなのにさ……それで、あの人が倒れたって聞いた時、なんでか分かんないだけどすっごく悲しかったんだ……それで、さっきやっと分かったんだ。リサちーが話しているのを聞いて…やっと……」

 

日菜さんは話をしていくにつれて、段々と声が震えていった。そして一度黙ると顔を上げて蘭の方を向いた。

 

「ねぇ、蘭ちゃんって怒ったことある?」

 

「えっ?まぁ…ありますけど……」

 

「あたしは無いんだ。小さい頃おねーちゃんと何度かケンカして怒った時くらいで、他はなんにもない。どんどん学年が上がっていくのと一緒に皆が避けるようになって来たから、怒るって ことを忘れちゃったのかも知らない。パスパレの皆とも本気で怒りあったケンカなんかした事ないしさ……でも、あの人は何だか不思議と怒れたんだよね。と言ってもさっき言った通り自分のワガママなんだけどさ…。で、さっきやっと分かったって言ったじゃん?それがさ、あの人…影山さんはあたしにとって、ケンカ友達になれたと思うんだ」

 

「ケンカ、友達?」

 

どういう意味なのか分からず、あたしは思わず口に出してしまった。

 

「そう、ケンカ友達。彩ちゃんと千聖ちゃん、イヴちゃんと麻弥ちゃん。他のバンドの皆はあたしにとって大切な友達なんだ。でも影山さんはなんかそういう感じの友達にはなれそうに無いんだよね。多分るんってしてもなれないと思う。その代わり、軽口を言い合う関係にはなれると思うんだ」

 

「それが…ケンカ友達、なんですか?」

 

「うん。そうだよ。あたしにとってはね」

 

つぐの質問に日菜さんは頷いて答える。

 

「でもさ、気づくのが遅かったよ。あーあ…もうちょっと早く気づけたらなぁ……こんな、後悔しなくてすんだのになぁ……」

 

「日菜先輩………」

 

日菜さんのしゃくりあげる声が休憩室に響く。ひーちゃんは日菜さんの背中をさすって落ち着かせようとしている。

 

あたしはそれを見ている事しかできなかった。

 

 

どれくらい経ったんだろう…もう流石に疲れた……。

 

いや、疲れるはずがない。さっきまで疲れなんか感じなかったんだから。

 

「………またか」

 

ここで目が覚めた時から感じる違和感。それは僕が考えることが何故か矛盾しているのだ。

いや、正確には僕が考えた事が否定され(・・・・)修正されている(・・・・・・・)と言った方が正しいのか?

 

なぁーんだ、やっと気付いたのか。

 

突然、頭の中に声が響いた。

 

「っ!?誰だ!!」

 

おれだよ、おれ。

 

声は聞こえるが、姿は見えない。しかしこの声にはどこか聞き覚えがある……。

 

当たり前だろ、だっておれはおまえなんだから。

 

「……どこにいる」

 

『ここだよ。ここ』

 

後ろから声が聞こえたので、振り返ってみる。

 

『よお、やっと会えたな』

 

「なんで……」

 

チャラチャラとした雰囲気を出す茶髪に染められた髪の毛、人の嘘を見抜く忌々しい翡翠色の瞳、平均よりも高く伸びた身長、普段着ているカジュアルな服装、そこには―――

 

「僕……?」

 

『ご名答、と言いたいところなんだがなぁ…残念。仮面()(お前)の仮面だ。一応、初めましてになるのかね?(お前)が気付くの遅すぎてどうしようかと思ってたんだよ』

 

仮面をつけた時の僕がいた。




はい、どうだったでしょうか?
白い空間は『ハガ○ン』に出てくる真理の扉をイメージしてくれると嬉しいです。あ、グラトニーのお腹の中の方じゃありませんよ?
いや私にしてはかなり早い方だと思いますよ。その分、文字数が少ないですけど。そこは許して下さい。
なんだかいんすぴれぇしょんが溢れ出てきたので書き上げました。このまま最終話も書きたい……持っててくれよ、オラの身体!

それでは評価をして下さった方々と感想を書いて下さった方々の紹介です。

☆10の評価を付けてくださった
『アンカー』様、『風見なぎと』様、『きな粉ミント』様。

☆9の評価を付けてくださった
『師匠@ゲーム実況もしてます』様、『蒼葉』様。

☆8の評価を付けてくださった
『victoryimagination』様、『カプ・テテフ』様。

1話に感想を付けてくださった『諏訪』様。
7話に感想を付けてくださった『第八天黒鴉』様、『痴漢者トーマス』様、『穂乃果ちゃん推し』様。

評価と感想ありがとうございます!評価は新しく書かれた名前を見る度嬉しくなるし感想は嬉しいのに加えて返信を書くのが楽しみになってます!

さぁいよいよ次回は最終話。
やっと自分の気持ちに気付いたリサと日菜、しかし遅すぎた結果に涙を流す。

泣いている日菜の言葉を聞き、モカは何を思う…?

自分が今まで付けてきた仮面が現れ、影山はどうなるのか。

そしていつになったら薫さんとはぐみは出てくるのか。

次回、『嘘の仮面』…最終話。

乞うご期待。
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