ソードアート・オンライン —Raison d’être—   作:天狼レイン

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 昨日の今日で早速投稿です。
 五話以上続けてシリアス展開書いてた反動で、無駄に書きやすかったです、今回の話。あと作者お前何考えてんの?とか言われても仕方ないですね今回の話。悪いのは、シリアス展開とその場のノリと彼らです。ボク、ワルクナイ。






15.混乱招く誕生日

 

 

 

 

 

 

「———なるほど。良い目だ。君達は自分達の心意(こたえ)を見つけたようだ」

 

 

 五十五層主街区《グランザム》にある《血盟騎士団》本部。その一室にて、ある密談が交わされていた。中は塔の一フロアを丸ごと使った円形の部屋で、壁は全面透明のガラス張りだった。そこから差し込む灰色の光が、部屋をモノトーンに染め上げる。

 その中央には半円形の巨大な机が置かれ、その向こうに並んだ五脚の椅子がある。本来ならここに五人全員が揃って腰掛けているのだが、中央に座る人物の命を受けて、左右の四人は席を外していた。外した四人は《血盟騎士団》の有力な幹部達だ。そんな彼らに席を外すよう命を下せるのは一人しかいない。

 

 

 

 聖騎士、或いは《神聖剣》と名高い男。

 《血盟騎士団》団長にして、最強の男。生きる伝説などと称される、ヒースクリフだ。

 

 

 

 その彼が、他の四人に席を外すようにまで命を下して、密談を設けたのは、対峙する二人が名高き猛者であり、今後の攻略組において、尤も欠かすことのできない人材であったからだ。

 

 

 

 一人は、かつては《最前線狩り》の異名を戴き、現在においても《絶天》の二つ名を全階層に轟かせる最強のソロプレイヤー、アーカー。その彼が、度重なる行方不明、《笑う棺桶》討滅戦を経て、漸く、その姿を非公式ながらも見せた。

 

 

 

 もう一人は、絶対無敵の剣。絶対不滅の剣。空前絶後の剣などと称され、《絶剣》の二つ名を全階層に轟かせる、攻略組の勢力バランスを常に安定させてきたソロプレイヤー、ユウキ。最悪の殺人者ギルド《笑う棺桶》に拉致されながらも、生存したことで知られている。

 

 

 

「お蔭様でな。ギルド創立は近々してやるつもりだ。俺は相変わらず影の立ち回りをするが、文句ないだろ? それがあの時の約束だったからな。とはいえ、俺達はお互い傷心の身だ。暫く最前線を離れるが、文句あるか?」

 

「構わない。以前からユウキ君の様子を見て察していた。良い機会だ、英気を養ってくれたまえ。ギルド創立の件に関してだが、是非とも楽しみにさせてもらおう。君達二人がまたこうして並び立つ姿を見ることができただけでも、攻略組としては喜ばしきことだ———して、ギルドの名は決まっているのかね?」

 

 傲岸不遜に物申すアーカーに対し、ヒースクリフは何処か楽しげに会話を続ける。公私の〝私〟が死んでいるとすら思えたこの男でも、なかなか興味深そうだと言わんばかりの表情を見せると思っていなかったアーカーは食えない男だと思いながらも、そばでうずうずしているユウキにバトンタッチする。

 

 言ってもいいぞと言わんばかりに譲ってもらえたユウキは、興奮冷めやらぬ様子で、楽しげに告げる。当然、それに釣られるようにアホ毛は自己主張激しく屹立している。

 

 

 

「ボクとソラは、お互いに〝絶対〟の二つ名を冠したプレイヤーで、これからはずっと一緒。二つの〝絶対〟が、ずっと一緒にいるなら負けはない、ってボクは信じてるんだ。

 だから、ギルドの名前はその想いを取って———《絶対双刃》、〝アブソリュート・デュオ〟!」

 

 

 

 確実に何処かの方面に喧嘩売ったんじゃないかと心底不安げに思いながら、結局幼馴染の大暴走を止めることが叶わなかったアーカーは、どうか怒られませんようにと祈るしかなかった。

 

 

 

 

 

———*———*———

 

 

 

 

 

「………いやホントお前な、あの名前はマジで不味いと思うんだが、そこのところどう思ってんのお前」

 

「カッコいいと思ったんだけどな〜」

 

「カッコいいってお前さ、女の子だよな? それ以前に著作権って知ってる? 十年程度じゃ著作権ってまだ元気に効力発揮し続けるんだからな?」

 

「むー、それってボクが女の子っぽくないってこと? 流石に著作権は知ってるよ? でも、他に思いつかなかったんだもん。そういうソラは他に何か思いついたものあったの? ボクが納得出来るようなものがあるなら、ボクだって文句言わないよ?」

 

「……あー、うーん、ソーダナー………《クラウ=ソラス》?」

 

「………………」

 

「オーケー俺が悪かった文句言わない《絶対双刃》ってカッコいいもんな少なくとも俺が突拍子もなく言ったモンよりここでの由来しっかりしてるもんな」

 

 まさか無言で返されるとは思ってもいなかったために、必死にユウキを褒める。実際そんなに良い名前がすぐに浮かぶほどボキャブラリー豊富と言えないアーカーは、素直に認めることにする。第一、ここが何処だか二人は分かっている。

 

「二人とも、いくら団長が良しって言っても他の人に怒られるよ?」

 

「だよなー、ンな気がしてた」

 

「はーい」

 

 まだ二人が歩いている場所は《血盟騎士団》ギルド本部の中なのだ。そもそも二人がヒースクリフの元に辿り着けたのは、前で案内してくれているアスナがいるからだ。前回の作戦会議のように会議室ではない以上、普段何処にいるかなど知る由もない。ただでさえ、ギルド本部は広いのだ。迷うに決まっている。

 

 そんな二人が他人の家でワイワイ騒いで怒られないのは、ヒースクリフのお気に入りであると共に、彼らの前に副団長であるアスナがいるからだ。そうでもなければ、擦れ違う者達全員がこちらを見て、これでもかと嫌な顔をしたり、文句を言いに来ても仕方がないのだ。

 

「それにね、私はもちろん、キリト君も驚いてるんだよ? ()()()()()()()()()()()()()こと」

 

 そう言ってアスナは二人を見る。見たのは顔ではなく、手。指先の方だ。二人の指先は、互いに絡め合っていた。お互いを離しはしないという確固たる意志がそこからでも強く窺える。

 つまるところ、これからは対立する敵になりかねない相手の本拠地で、この二人は日中から堂々と〝恋人繋ぎ〟なるものをしていたのだ。現在恋愛を未だしたことがない———ただし、片想いをしているアスナからしても、そんな姿を見せられると羨ましくて仕方がない。本当なら馴れ初めの辺りなどを突いて、少しずつその反応を楽しんでみたいという小悪魔的な考えもあったのだが、それを一度としてするまでもなく、想いが成就された二人———というより、ユウキに死角からの不意討ちを受けたような心境にあった。

 

「そうかな〜。ボクも自覚したのは昨日なんだよ?」

 

「昨日の今日で付き合ってる行動力が凄まじいと思うの、私だけかな……?」

 

「いや、その感性は間違ってない。俺も正直ビックリだ。こっちは四年間抱え込んでたんだぜ? しかも、先に告白してきたのユウキからなんだよなぁ……俺の行動力弱すぎ?」

 

「ソラは何事もすぐに抱え込んじゃうもんね。ボクだって、ちゃんと相談してくれたら、真剣に考えるよ?」

 

「おいコラちょっと待てお前。好きな相手目の前にして、ソイツに恋愛相談するってどんな拷問だよ……下手したらトラウマになるぞ………」

 

「ユウキって何処か天然だよね………」

 

「あーすごく分かる。絶対何処かで爆弾発言投下するぞコイツ俺が保証する」

 

「むー、二人とも酷いな〜もう」

 

 頰を膨らませ拗ねるユウキ。やりすぎたと思いながら、アーカーとアスナはきちんと謝りながら機嫌が直るように物で釣る。美味しいお菓子や綺麗な服などはアスナが、武器や防具に関してはアーカーがそれらしいものをピックアップしながら。途中で興味を示して、話に食い付くユウキだが、上手く釣り上げられているような気がしていたが、結局誘惑には勝てずに考えるのをやめる。チョロい、などとこの時二人が考えてしまったのは言うまでもない。

 

「ところでキリトは?」

 

「キリト君は………うん、外で待ってるよ」

 

「ん? アスナ、アイツ一緒に待ってなかったか?」

 

「えーっと、それがね………」

 

 アスナは語る。

 アーカーとユウキを待っている間、あの二人が恋仲になり付き合い始めたことをネタに話が盛り上がっていたことを。

 楽しそうに会話をしていると、それを目撃した団員達が群れを成して、「あの男を追い出せー!」などと叫びながら、彼らが物量でキリトをギルド本部の外へと押し出したことを。

 その時のキリトが「俺なんか悪いことしたかー!?」と叫びながら、遠くに消えてしまったことを。

 

「………キリト、災難だね」

 

「………全くだ。アイツ、女顔のくせに意外とモテるもんな。女難の相でもあるんじゃねぇか?」

 

「キリト君、ここ最近団のみんなから露骨な嫌がらせを受けていた気がするんだよね………って、アーカー君? キリト君がモテるってどういうことかしっかり聞かせてもらってもいい?」

 

「………あーうん、別にいいんだけどさ。今の笑顔だけがすごく怖いんだけどアスナさん…………」

 

「ソラ、女の子に笑顔が怖いなんて言っちゃダメだよ!」

 

「いやお前、今のアスナの顔ちゃんと見てから、もう一度俺に同じこと言えんの?」

 

「………………ごめんアスナ、ホントは少し怖いよ」

 

「アーカー君だけでなく、ユウキまで!?」

 

 結論。アスナさん、ところどころ怖い。

 この世界で個人的にユウキに続く美少女だと思うアーカーでも、彼女は人気が高いからキリトが受けた嫌がらせも仕方がないのだろうなと思う反面、彼女が結構嫉妬深いのではないかと思ってしまう。どんなことにも恐れず全速前進たるユウキも、今し方彼女が浮かべていた笑顔には恐怖を覚えて後退。この意味が分からない彼女ではないだろうなと思いながら、現在一人寂しく外で待つキリトが彼女の想いに気がつくのか、興味が湧いていた。

 

「ま、あと四十層弱あるんだ。あの馬鹿はしぶといから、チャンスはいくらでもあるだろうよ」

 

「そうそう! アスナは自分の持ち味を生かせばいいんだよ!」

 

「アーカー君、ユウキ………」

 

 二人のフォローで自信を取り戻すアスナ。

 一方でユウキが持ち味なんて言葉を使ったものだから、素直に驚いたアーカーが失言を洩らし、ユウキに拗ねられたのは言うまでもない。

 

 そうして、漸く三人がギルド本部から出てくると、外で待たされていたキリトが「やっとか」とボヤいていた。

 

「よぉ、追い出された人。外寒かったか?」

 

「お前喧嘩売ってるのか………。まだ五月だから外は暖かいよ。それで、ヒースクリフと何を話してたんだ?」

 

「えーっとね、これから暫く休暇を取るって話と、ギルドを創るって話だよ」

 

「二人ともずっと頑張りっぱなしだったから当然ね。それにしてもギルドかぁ……どれくらいの規模にするの?」

 

「ん? ()()()()()()()()()だぞ?」

 

 その言葉に、キリトとアスナはお互いの顔を見合わせてから、続いてこちらを見て叫んだ。

 

「いやいやいや、それってコンビと何も変わらないだろ!?」

 

「ギルドっていうから、もっと人数設けるんだと思ってたよ!」

 

「いや、そもそもヒースクリフがあの時出してきた条件は、〝《血盟騎士団》と《聖竜連合》を抑えることができる勢力〟でなければならないって話だ。人数の指定なんざなかっただろ?」

 

「いくら二人でも、あの人数を抑えることができるの……!?」

 

 アスナの言うことは正しい。実際アーカーとユウキだけで《血盟騎士団》か《聖竜連合》全員を抑えるのは厳しい。

 しかし———

 

「まずな、ヒースクリフが言うにはどっちかが暴走した際に不利になるように仕向けるのが役目なんだよ。暴走した側とは逆に、俺達が加担すれば、向こうは不利になる。つまるところは、そういうことだ」

 

 どちらが暴走しても、もう片方に二人が付くことで勢力バランスは拮抗しない。確実に暴走した方は押し負ける。天秤が釣り合わなくなることをアーカーは言っているのだ。

 とはいえ、これも最悪の可能性がある。

 

「《血盟騎士団》と《聖竜連合》が手を組んで叩きに来たらどうするんだ? その場合は流石にどうしようもなくないか?」

 

「うん、その場合は流石にね。

 でも、そうなった場合って、まず()()()()()()()()()()()()()()()()()よね。勢力バランスは二つが担ってるけど、攻略組全体として見れば、ソロプレイヤーや他の中小ギルドも存在する。彼らが二大勢力の暴走を見逃すはずがない。そうなると、ソロプレイヤーのみんなや中小ギルドのみんなはボク達の側についてくれる、って寸法なんだ」

 

 それを聞いて、キリトとアスナは理解する。

 そもそも攻略もフロアボス戦も、何も《血盟騎士団》と《聖竜連合》だけのものではない。ソロプレイヤーや他の中小ギルドも参加している。その戦力は当然無下に扱えるものでもない。二大巨頭が暴走すれば、それを便乗して新たな巨頭となるため、打ち砕かんと動く者達がいるはずだ。そういうことも含めて、第三勢力の筆頭となる二人の考えは間違っていない。

 そして、これを最初に構想したのは———

 

「末恐ろしいな、アイツ」

 

「団長はそこまで考えて、あの時アーカー君にそう言ったんだね」

 

「ま、そういうことだ。あとな、これ忘れてた」

 

 そう言うとアーカーは素早くメニューを操作し、キリトとアスナに通達する。二人の前に展開されたウィンドウには、『フレンド申請』の画面が広がっていた。

 

「………その、なんて言うんだろうな。突然切って悪かったな」

 

「「………………」」

 

 少し恥ずかしいのか顔を反らして言うアーカーに、二人は可笑しそうに笑った後、すぐに〝承認〟すると、一言告げた。

 

「男のツンデレなんて需要ないぞ」

 

「これからもよろしくね」

 

「おう、アスナはこれからもよろしく。でもキリト、テメェはダメだ。全力でぶっ飛ばすから大人しくそこに直れェッ!」

 

 古びた長剣を抜くか抜かないかのところまで殺気だったせいか、門番達が駆け込んでくるという事件に発展しかけたが、アスナとユウキに全力で止められることとなる。

 原因を作ったキリトは、あとでこってり絞られたそうだが、どう絞られたのかは不明である。

 

 

 

 

 

———*———*———

 

 

 

 

 

 それから、数時間後。

 キリトとアスナとのフレンドを繋ぎ直したとなれば、当然他に切ってしまっていた縁を戻さない訳にはいかなかった。エギルやアルゴに謝罪ともう一度フレンド登録を済ませるアーカーだが、散々冷やかされたのは言うまでもなく、特にアルゴは酷かったとだけ言っておこう。これから先、果たして闇討ちされないかが非常に心配である。

 

 何はともあれ、縁を取り戻したアーカーは、漸く休めると思い、ユウキと何処かに家を買って住もうかという話になろうとした直後———

 

「そういえば、今日ってユウキの誕生日なのよね?」

 

「「「あ…………」」」

 

 ———というアスナの思い出し発言から、急遽この後ゆっくりするという予定が変更され、ユウキの誕生日パーティーが開催されることとなった。

 

 

 

 

 

「———で、テメェらは揃いも揃って、人様の新居に買って数十分で突撃とはいい度胸してやがるなぁおい」

 

「ボクは別に気にしてないから良いよ、ソラ。むしろ、こうやってみんなでワイワイ祝ってもらえるのは嬉しいもん!」

 

 場所は、賭けデュエルをした二十二層の南岸の端。そこにある二つ建てられたログハウスのうち、大きい方を買うこととなったアーカーとユウキは、ごっそりと減ったコルを眺めた後、数十分ほどは二人で過ごした。

 その後、ユウキの誕生日だと聞きつけた親友達による押しかけを受け、買ったばかりの新居は現在進行形で取り掛かられている《祝 ユウキ14歳おめでとう!パーティー》の会場として使われることとなった。一日も経たずに他人が大量に突撃してくるとは思いもしないアーカーは溜息を吐きながら、ユウキを大人しくさせるだけだった。

 

「ユウキ、お前このパーティーの主役なんだから大人しくしてろよ」

 

「えー、だって気になるんだもん。ソラもちゃんと匂い嗅いでみたら分かるよ! アスナの手料理すごく美味しいんだ〜!」

 

「ユウキ、アスナのことベタ褒めだな……」

 

「そんなに褒められると恥ずかしいな……」

 

 大きなログハウスに用意された大部屋。部屋に設置された備え付きのいくつかの机に、出来たての料理を並べていくキリトと、料理を作るアスナが擦れ違いざまに会話に入る。

 今回の誕生日パーティーの参加者は、九名。主役であるユウキと、その恋人であるアーカーを筆頭に、企画者であるキリトとアスナ、ユウキ達のフレンドであるリズベット、シリカ、エギル、クライン、アルゴが招待されていた。ちなみによく情報を洩らすアルゴには、しっかりとマイホームの場所に関する口止め料をアーカーの懐コルから支払われている。バラした場合は容赦しないつもりでいる彼の殺気に当てられたか、流石のアルゴも口止めには従うつもりのようだ。

 

 さて、言うまでもないが、アーカーはこの場に招待された者達のうち三人は全く知らない人物である。ユウキからある程度聞いたが、それまでだ。《鍛冶屋》と《ビーストテイマー》、あとは《野武士面》としか分かっていない。距離感はどうしたもんかと考えあぐねているのも事実だ。

 

「———ま、何とかなるか」

 

 ユウキに影響されたんだろうなと思いながら、自分が少しだけ単純になったことに苦笑する。これまで何事も不覚考えすぎていたせいか、今では逆に肩の力を抜き過ぎているような気もしなくはない。少し不安が残ってしまうのも仕方がないのだろう……などと考えていると、こちらを見つめる瞳に気がついた。

 

「大丈夫だよ、ソラ。ボクがそばにいるから」

 

「………そうだな」

 

 腹の底を見透かされたような気がしたが、それもコイツの特技なんだろうと思い、素直に励まされた礼として頭を優しく撫でてやる。すると、撫でられたことで「えへへ〜」とにやけた顔になるユウキにアーカーは、この世界に来る前の光景を思い出して、クスリと笑った。

 

「ぐぬぬぬ……盛大にいちゃつきおってぇ…………」

 

「もう、リズさん。お皿割らないでくださいよ」

 

 そんな二人を、遠目で見ている者が二人……と一匹がいた。以前は《竜使いシリカ》としてアイドル扱いを受けてきたダガー使いのシリカと、キリトとアスナ、ユウキがよく通っている《鍛冶屋》のリズベット。そして、シリカの相棒であるピナだ。二人と一匹は共に三人の知り合いで、彼らによく助けられた過去を持つ。今回はユウキの誕生日パーティーということで、是非とも参加させてくださいと二つ返事でやってきたのだが、準備の最中に見せつけられた二人の姿に、悶々とした思いをさせられていた。

 

「だってさぁ……いつの間にかユウキが恋人持ちなのよ?」

 

「た、確かに驚きましたよ。ユウキさんに好きな人がいて、昨日結ばれてたなんて」

 

「いやー、あたしも油断してたわ。少し前に会った時に探してる人がいるって言ってたけど、そいつが今そこでいちゃついてる相手なんてさ」

 

 リズベットは、そう言ってアーカーを指差す。全身灰一色の皮装備で、何処かキリトと似た見た目だが、ところどころ違う点がハッキリしている。キリトが何処か子供っぽさが残っているというのなら、アーカーは大人らしさのある少年というべきか。そういう少年に、子供っぽさが残るユウキが惹かれたのか、と。何処か合ってるようで、合っていない推測をしながら、二人は皿をテーブルへと運んでいく。

 

「でも、一番驚いたのはあそこよねー。キリトが勝てない相手がいるって話」

 

「あたしも驚きましたよー。キリトさんってすごく強いから、負けなしだったと思ってました」

 

 アーカーが《笑う棺桶》討滅戦以降、行方を眩ませていた頃、キリトは彼女らにも捜索を手伝ってもらっていたことがあった。その際聞かされたのは、先程の特徴と実力だ。オレンジプレイヤー達数人がかりでも圧倒的な強さを見せた姿。五十五層にいる白竜を圧倒した姿。あれほど強いキリトが、まさか負けるなど思う訳がなかったからだ。上には上がいると残念そうに呟いた彼の姿は印象に残ったが、未だに信じられない気持ちがあった。

 しかし———

 

「シリカ。あんたユウキの剣、見た?」

 

「見ましたよ、すごいですね。あの剣」

 

 今日再会してすぐ訊ねたリズベットは、自分の剣が《笑う棺桶》の奴らに奪われたことに関しては残念に思っていたが、その後彼女があの男から貰ったというあの剣の性能を見て度肝を抜かれた。以前キリトの《エリュシデータ》を見たことがあったため、あれ以上の剣を見ることなど早々ないと思っていた矢先に、《マクアフィテル》というさらに上の魔剣があることを知った。これまたそれが、プレイヤーメイドでないと来たものだから、かなり嫉妬したものだが、いざ手に入れた理由を当人に聞いて真っ青になった。

 

 クエスト名《絶対不滅の意志》。初めて聞いた名前だったが、聞いて見るとクエスト内容は、とんだド鬼畜なものだった。曰く『攻略組が壊滅しかけた五十層フロアボスと同等クラスの化け物を人数制限付きで倒せ』というもので、それをあの男は初見ソロでクリアしたという。実際、キリトの愛剣はその五十層のフロアボスのラストアタックボーナスなのだから、この話が嘘だとは断言することは不可能だった。それをキリトに「あんたなら同じこと出来る?」と聞いたリズベットもリズベットだが、さしもの《黒の剣士》も「勘弁してくれ」と溜息をついていたのだから、その強さがそれだけで窺えた。よくもまあ、そんな男をユウキは落とした———落とされたのかもしれないが———ものだと感心していた。

 

 そんな中、アルゴがひょこっとアーカーとユウキの背後から現れると、その手にはメモ帳らしきものが握られている。

 

「アー坊、ユーちゃん。二人に聞きたいことがあるんダ」

 

「絶対ロクな話じゃねぇだろお前」

 

「まあまあ。聞いてあげようよ、ソラ」

 

「ユーちゃんは天使だナ。それに比べて、アー坊は純粋さが足りないナ」

 

「ほっとけ」

 

 軽く毒を吐きながらも、大人しく話だけは聞いてやることにしたアーカーは、すでに嫌な予感を感じ始めていた。

 

 

 

 

 

「それじゃ、質問ダ———もうヤったのカ?」

 

 

 

 

 

「はぁっ!?」

 

「ふぇっ!?」

 

 突拍子も無さすぎる爆弾発言に、思わずアーカーとユウキは面食らった。当然そんな話を聞き流すようなヘマをしない奴らはたくさんいたわけで————

 

「アーカー、お前もう手を出したのか……?」

 

「ユウキってホントは私よりも大人………」

 

「ゆ、ゆゆゆ、ユウキ!? あ、あんた、そ、そこまでヤっちゃったの!?」

 

「は、はわわわ………」

 

「おいおい……若いことは良いことだが、衝動に任せすぎるのもどうかと思うぞ?」

 

「マジかよぉ……俺だって女の味知ら———」

 

 《野武士面》ことクラインが余計なことを口走りそうになったところを、キリトとアーカーが同時攻撃で排除するが、それでも事態は色々と変な方向に走っている。特にアスナを筆頭に可笑しい。エギルに関しては、実体験みたいな感じで言うから生々しさが洒落になっていない。隣にいるユウキは、あまりのことで思考回路がショートしたのか、変な声が漏れ続けたままだ。

 

「アルゴ、テメェ………」

 

「ニャハハッ、オレっちもこういう話には興味があってナ。これは個人的な趣味だからここだけの話だヨ」

 

「趣味でも洒落になってねぇよ馬鹿野郎。もしバラすつもりが少しでもあったら《牢獄》ぶち込むつもりだったぞテメェ………つーか、今ぶち込んでもいいかアァン!?」

 

 散々煽られたせいで、最早ガラの悪い奴になってきているが、アーカーはあくまでもユウキのためを思いながら発言する。この世界では、現実の顔とこちらの顔が同じなのだから、偶然すれ違っただけでも将来的にアカウントから身バレする恐れがあるのだ。そういう洒落にならない話は本気で潰してやろうと思うくらいに。

 ———などと思っていた矢先、ユウキが俯いたまま袖を引っ張った。

 

(………………いいよ…)

 

「ん? 今なんて言ったんだユウキ?」

 

(………ソラが………………いいよ………?)

 

「いや、ホント悪い。流石に小声過ぎて俺でも聞こえない」

 

 

 すると、真っ赤に顔を染めたユウキが、恥ずかしさで目尻に涙を少しばかり浮かばせながら、今度はハッキリと聞こえる声で告げた。

 

 

 

「………ソラがシたいなら…………いいよ…………? ボクも………頑張るから……………」

 

 

 

「………………へ?」

 

 

 

 腑抜けた返事がアーカーの口から漏れる中、ユウキの言葉を聞いた女達は黄色い歓声を上げる。まさかの台詞が聞けたのが嬉しかったのか、それとも恥ずかしいのが伝染しているのか。とにかく、場のテンションが総じて可笑しいことがよく分かった。床に伸びているクラインを除く男連中であるキリトやエギルも、賞賛するように口笛をピューと鳴らす。冷やかしてんのかテメェと普段なら真っ先にアーカーは言うのだが、それよりも先に言わなきゃいけないことが出来た。

 

 

 

「………おい誰だユウキにマセた知識教え込んだのはァッ!」

 

 

 

 少なくともこの世界に来る前のユウキは絶対に知らなかった知識だということは確信していた。加えて、二十五層まではずっと一緒にいたのだから、その時期も知らないはずだ。つまり、今日を含めた一年以上前の間に誰かが教えたことになる。

 その事実に真っ先に気がついたアーカーは、犯人がこの場にいると断定して探すことに躍起になった。勇気を出して言い切ったユウキは、恥ずかしさのあまりにまた思考回路をショートさせ、天井を見上げて固まったままだ。彼女から聞き出すことはできない。それでも、意地でも探してやらぁっ!とアーカー自身、普段よりもハイテンションで探そうと試み始めた。

 

「アスナぁっ! お前かお前なのかユウキにマセた知識教え込んだのはぁっ!」

 

「ち、違うよ!? さ、流石にそんなことしないよ!?」

 

「リズベットぉっ! お前かお前なのかユウキにマセた知識教え込んだのはぁっ!」

 

「ち、違うわよ!? あ、あたしじゃない!」

 

「ンじゃ、お前かシリカ………いや、違うか」

 

「な、なんでしょう……疑われなかったのに、何か悲しいです……」

 

 そこから続けてキリト、エギルを疑ったが、こいつらはその場のノリで変なことを宣うような奴らじゃないと分かっているため、軽く聞いてから除外する。残るは———

 

「《野武士面》かテメェだ、アルゴ」

 

「お、俺ぇっ!?」

 

「アー坊、ホント容赦ないナ……」

 

「クライン、悪いことは言わない。素直に自白しろ」

 

「そうだな。自白した方が罪が軽くなるかもしれんぞ」

 

「キリト、エギル。お前ら俺のこと疑ってンのか!?」

 

「「そうだが」」

 

 声を揃えて断言する二人に、クラインは見放されたことを知り、愕然とする。実際怪しいのはこの二人だ。それは仕方ない。クラインには初めて会ったアーカーも、先程の一言で「あー、コイツなら言ってそうだなぁー」とすかさずロックオンしたくらいだ。もし、また同じことが起きて、クラインがアーカーに泣きついてきたとしても最早諦めて自白しろとしか庇いようがないのを、この状況からも知らせていた。

 

「ンで、どっちが下手人だこの野郎。今自白するならデュエル《初撃決着モード》五連戦で許してやるよ」

 

「キリの字が勝てない奴相手に五連戦は死ぬだろっ!?」

 

「オレっちもものすごく遠慮したいナー………」

 

「問答無用。どっちが下手人だゴルァッ!」

 

 背負われた鞘をオブジェクト化し、今にもそこから長剣を抜き放ちそうなぐらい鬼気迫ったものがあるアーカーに、流石の二人も両手を上げて無罪を主張する。自白してもあれだけの刑罰を受けるなら、下手人が見つかった場合はそれ以上の刑罰になることは言うまでもない。どちらが下手人かはまだ分からないが、そう時間はかからないだろうとアーカーは踏んでいた。

 一歩ずつ、明確な足取りで迫っていく。それに答えるように後ろに下がる二人だが、当然壁というものが現れるのは仕方がないことだ。背中がペタンと壁に着くと同時に焦りが急激に募る。最早なんでここに壁なんかあるんだよ!と言わんばかりの表情すら窺えた。

 さあ、犯人はどっちだ?

 

 ———と思った矢先のことだった。

 いつの間にか復活していたユウキが顔を真っ赤にしたまま、近づいてくる。ちょうどいいから下手人の名前を直接聞くかと思ったアーカーは、彼女の言葉に耳を傾ける。何度か頷き、それから、「え?」と言う顔をして、最後に「アーウンソッカァー」と片言を漏らす。ユウキの言葉を全て聞き終わると、溜息を大きめについてからオブジェクト化された長剣を鞘ごとストレージに仕舞う。

 

「下手人が別で見つかった。疑って悪かったな」

 

 それだけを言うと、アーカーは二人を追い詰めるのをやめて、元の場所に戻っていく。その先にはまだ顔が赤いユウキがいて、何か呟いているように見える。ホッとしたアルゴとクラインは、そこで深呼吸を一度した後、命拾いしたような気持ちで会話する。

 

「なァ、アルゴよォ」

 

「どうかしたのカ?」

 

「アイツ怖ぇなー」

 

「全くだナー」

 

「そういえば、別に下手人見つかったって言ってやがったよな?」

 

「言ってたナー」

 

「もしかしてだと思うんだけどよォ、あれってユウ———」

 

 直後、言い切る前のクラインの顔面に、とある少女の慈悲も容赦もないドロップキックが炸裂した。《圏内》判定を受けたマイホーム内は当然ながらHPゲージは少し足りとも削らないのだが、《圏外》で受ければ下手をしなくとも即死していてもおかしくない威力を受けたクラインは、気絶したままその場に伸びていた。そんな光景をそばで見ていたアルゴは、彼を一撃で仕留めた少女に恐怖を初めて抱いた。

 

「ねぇ、アルゴ。キミは何も聞いてなかった。それでいいかな?」

 

 

 

 

 

 必死な面持ちで何度も頷くアルゴは、のちに語る。

 「一番怒らせちゃいけないのは、意外なところにいた」と。

 

 

 

 

 

———*———*———

 

 

 

 

 

 料理の準備が終わり、ユウキの誕生日パーティーが開催された。突然の知らせで、事前に準備ができていないこともあって、感謝の気持ちを込めた物を送れなかったことを悔やむ者達がいたが、こうやって祝ってくれるだけで満足している主役の言葉で、約一名を除いて全員が楽しく笑い合えていた。約一名が除かれたのは、当人が目を覚ますまでにかなりの時間を要したからである。これに関しては自業自得と言うしかない。

 

 料理を好きなだけ頬張り、全て空になった皿を片付けると、キリトから筆頭にプレゼントが渡された。彼が渡してきたのは、レア度の高い素材アイテムだった。これにはユウキも驚き、「ホントにいいの?」と聞き返した程だが、どうやら作れるものが今の彼の装備のようなものではなく、バトルドレスのような金属装甲混じりのものが出来上がりやすいとのこと。皮装備系で装備を作り上げているアーカーも、何となくキリトの気持ちが分かっていた。

 

 続いてはアスナ。彼女はユウキが絶対に喜んでくれるものが渡したいらしく、今度ユウキを連れてアシュレイというカリスマお針子のところで、誕生日プレゼントにぴったりなものを作ってもらい、それを渡すつもりらしい。その話を聞いたユウキは嬉しげに笑うと、その時を待つことにした。ユウキがオシャレに興味を持っていたことに驚いていたアーカーは、女性陣から軽い文句を言われることになった。

 

 リズベットからは何が貰えたかと言うと、タダで剣を打ってあげるという特典だそうだ。とはいえ、今の《マクアフィテル》が高性能すぎて出番があるのかと言われそうだが、二本目の刃くらい持っておきなさいと告げるリズベットに納得していた。もちろん、全身全霊をかけて、キリトに打ってあげたという《ダークリパルサー》なる剣と同等かそれ以上のものを仕上げてみせると息巻いていた。

 

 シリカからは、レアなアクセサリーを貰っていた。いわゆるシュシュというものだった。多少素朴な感じはしていたが、それでも、懐かしげな雰囲気があるシュシュを笑顔で受け取ると、ユウキはその場でそれを髪留めとして使ってみせた。すると、その姿を見たアーカーは、ユウキが懐かしそうにした理由に気がついた。なるほど、そういうことかと理解した彼は、静かにその姿を見て見守った。

 

 エギルからは、たまたま手に入ったレアアイテムだった。キリトとは違い、布系のアイテムで、なかなか生地が良い。最高級とは行かないが、今後裁縫スキルを習得した際には役に立つだろう。気まぐれで、アスナの言うアシュレイという人物が使ってくれる可能性もなくはないだろう。

 

 アルゴからは、欲しい情報を五つほど半額にするという約束だった。流石にタダにすると一つや二つに減ってしまうらしいので、ユウキは素直にそのプレゼントを喜んだ。これからも頼るのだから、これくらいの割引でも充分なものだそうだ。

 

 現在進行形で気絶しているクラインは、残念ながらこの場で渡すことは叶わず、次に出会った時に渡すこととなった。のちに何を渡されたのかをアーカーも知ることになるが、貰って嬉しいものだったらしい。具体的に何を貰ったかはユウキの口から聞けなかったので、多少なりとも気になるが。

 

 プレゼント渡しが無事に終わったということで、あとはゆっくり談笑でもしようかという話になる———はずだったが。

 

「ねぇ、アーカー。あんたプレゼント渡したの?」

 

「ん? プレゼント? いや、ほら、《マクアフィテル》は俺が昨日あげたんだから、あれはプレゼントじゃないのか?」

 

「あー、なるほどなぁ……」

 

 リズベットの指摘に、アーカーは正直に答えるが、キリトの妙に納得した声が聞こえてきた。おかしい、あれはプレゼントに入らないのか?と疑問符が頭の上で並び立つ男に対し、アスナから何か言われたのか、忙しそうに百面相を披露しながらユウキは、またも恥ずかしげな顔でこっちに来た。その後ろでは、アスナがアーカーやクラインを除く全員に何かを呟いているのが見えた。

 

「ねぇ、ソラ」

 

「ん?」

 

「《マクアフィテル》は確かにプレゼントだけど、あれってボクにソラの居場所を教えるためにくれたって意味合いもある、よね?」

 

「あー、そう言われたらそうかもなぁ……」

 

「だ、だったら、プレゼントは別で必要じゃないかな〜……って」

 

 「欲張っちゃってるかな?」と呟くユウキに、アーカーは悩みながらも納得する。確かにアレは居場所を伝え、俺を殺してもらうためにプレゼントした剣とも言える。生誕を祝う日に、そんな物騒な意味合いのものがプレゼントというのは流石にユウキに悪いと彼もそう感じたのだ。そう考えると、何か別でプレゼントが必要だなと思うわけであり、急ぎストレージを確認するが、特別プレゼントとして扱えるものが一切入ってないことに気がつく。攻略第一としか考えてこなかったツケがここで回ってきたかーと項垂れながら、どうしたもんかとプレゼントに値するものが無いかと考える。

 

 

 

 すると、ユウキが顔を赤くして、本当に今欲しいものを要求した。

 

 

 

「え、えーっとね、ソラ……その……えっと…………うん………」

 

 

 

「………………」

 

 

 

 ぷしゅーと頭から湯気が立ち上るユウキに、今し方アスナが囁いたのはそれくらい恥ずかしいことなんだろうなと思い、今度どうやって仕返してやろうかと思考が巡る。果たして何を唆されたのやら。アーカーは溜息を吐きながらも、プレゼントを要求する権利があるユウキがどんな願いであれ叶えてやろうとだけは決めた。流石にぶっ飛んだ願いはしてこないだろう。例えば………なんだろうなと、難解な自問に何度も思考が止まる。

 

 

 そんなことをしているうちに、ユウキが覚悟を決め、勇気を振り絞ると同時に、素早く耳元まで駆け寄って———告げた。それも、彼にだけしか伝わらない音量で。

 

 

 

 

 

「————————っ!」

 

 

 

 

 

 頑張って告げ切った後、ぷるぷると震えながらユウキは、真っ直ぐにこっちを向いていた。目尻に涙をほんの少し浮かべている。そんな姿が、先程の要求で多少なりとも理性を削られたアーカーには、とても愛らしくて仕方がなかった。流石に二度に渡る特大爆弾発言には耐性が無かったことを自覚しながら、下手人共を全員目視で確認する。ビクゥッ!と全身で殺気を感じたのか、次々と「あとは頑張ってねー!」や「あとは頑張れ!」などという声援をユウキに浴びせ、キリトとエギルは気絶したままのクラインを担いで、皆次々に帰っていった。

 

 

 

「あの下手人共め………」

 

 

 

「………………………ダメ、だったかな………?」

 

 

 

「……………いや、ダメなんて言わないさ。ただまぁ………お前も相当マセたなぁーって思っただけだ」

 

 

 

「………その様子だとソラは知ってたんだね」

 

 

 

「………まぁな」

 

 

 

「………そういうソラの方がマセてるんじゃないかな〜」

 

 

 

「………マジで否定できねぇ」

 

 

 

 「痛いところを突かれたな」と呻くと、ユウキはクスリと笑う。それから、顔が赤いのはそのままでアーカーに「お風呂入ってくるね」とだけ伝えていった。その場に残された彼は大きな溜息を吐くと、それからそっと呟いた。

 

 

 

 

 

「———《倫理コード解除設定》とか何考えてんだ、茅場晶彦(ムッツリ)め」

 

 

 

 

 

 届くはずもない暴言を吐くとアーカーは、今日はいつもより夜が長いんだろうなと思いながら、静かに待つことにした。

 

 

 

 

 

 混乱招く誕生日 —完—

 

 

 

 

 

 

 






 ヒースクリフから休暇を捥ぎ取り、一年以上久しぶりに

 二人きりの時間を作るアーカーとユウキ。

 色々あった後だが、いつも通りのテンションで、

 二人はただひたすら何故か料理に励む。

 次回 いつか手作りを君に

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