ソードアート・オンライン —Raison d’être—   作:天狼レイン

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 一週間に一度の更新みたいになってますが、早めに投稿できるよう頑張りたいです、ホント。
 さて、今回は作者の頭逝かれてんじゃねぇのか?回です。具体的には言えませんが、最後まで読むと笑えてきます。ぶっちゃけた話、現場に絶対に居たくないレベル。鬱展開がどうとかではなく、むしろ、愉悦の範囲内です。読んでて笑えてくる展開といいますか。ネタ要素ではないので悪しからず。




32.相対すべき敵は既に無く

 

 

 

 

 

 

 西暦2024年 11月7日

 

 

 

 デスゲーム《ソードアート・オンライン》のチュートリアルが開始されてから、ちょうど二年が過ぎた。二年。そう、二年だ。この二年は果たしてどう映っただろうか。

 

 ある者は現実世界以上に尊ぶべき日々となったことだろう。

 ある者はデスゲームの重圧に屈し、怯え続けた日々だっただろう。

 ある者は二年前の自分がどういう人間だったかを思い出せないほど、変わってしまったことだろう。

 

 一人一人、この二年の捉え方は違う。

 大切で貴重な二年となったか、現実を思い出し苦しんだ二年となったか。大きな違いはそれだけだ。

 

 そういう意味では、雨宮 蒼天()()()少年————アーカーにとって、この二年は悪くなかった日々だった。

 

 この二年間は間違いなく、死病HIVに正面切って挑戦した激闘の二年間と相対する価値があった。喪った者は後者の方が多かった。少年にとって、決して欠かすことのできない存在はユウキただ一人だったのだから、そう思うのも間違っていない。

 かつては、彼女の姉や両親の命まで救おうとし————(なく)したのだ。あの痛みは今も忘れていない。忘れていいものではない。あれほど痛い思いをしたのは、今後もそうないはずだと思いたかった。

 そういう面からして、大切なものがそう残っていなかった今回の二年間は、喪った者は少ないどころかいなかったことに違いない。

 

 しかし、今回の二年間がかつてと相対する価値があったのは、喪った痛みの重さ比べではない。

 

 この二年間は、前回とは転じて得るものが多かった。現実世界では得られなかった〝生きている〟という実感の多さは勿論のこと、過去を話しても繋がり続ける親友を得たことや、かつて以上に強く繋がりを感じるようになったユウキの存在は、間違いなく少年を変えるだけの成果を挙げた。口が悪くなったり、容赦なく他人を揶揄ったり、敵対心を顕にしやすくなったのは、かつての彼が持っていた寡黙さなどをすっかり無くしたりと非常に残念な点の数々だっただろうが、それは反面、彼が自分を晒け出せるようになったことの表れでもあり、同時に他人への興味や関心を抱き始めたことの証明でもあった。

 

 

 かつての二年間が、全てを捨てて一だけしか救えなかった日々だったのならば————

 この二年間は、一から全てを手に入れようと足掻いた日々だったのだろう。

 

 

 対比するかのように過ごした二つの二年間。どちらも激闘であり、どちらも少年を少年として構成するには必要不可欠の日々。そこにはたくさんの人々との縁があった。前者はユウキ達一家と倉橋医師。後者はユウキとキリト達。仮に片方だけ過ごしていたとしたら、きっと今の彼は存在し得なかっただろう。

 

 そういう意味では、雨宮 蒼天()()()少年は恵まれている。喪った痛みを知り、得た喜びを知った。人間らしさを持たなかった彼が、人間らしさを手に入れた。

 

 

 

 であれば—————

 〝この時〟が訪れるのは、必然だったのだろう。

 

 

 

 変わることができた少年と、変わることができなかった男性。

 同じ虚無を日常に覚え、互いを鏡だと感じた二人は、漸く明確な違いを手にした。

 人間は違うからこそ争う。同じであるならば、争いは起こり得ない。決して争うことがなかったはずの二人は、確実にその条件を満たしたのだ。

 

 

 

 故に今度こそ、彼らは争う。

 己が譲れぬ明日(みらい)を懸けて———————

 

 

 

 

 

 ———*———*———

 

 

 

 

 

 アーカーとユウキが自らの過去をキリト達に話してから、三日が経過した。最前線は尚も変わらず七十五層。一つ前の層を攻略してから二週間が経過しているが、フロアボス部屋までのマップデータは入手されており、先日それはヒースクリフの元に届けられている。数日以内にフロアボス攻略に対する会議などが催されるのは間違いのないことだ。無論、フロアボス攻略というのは、最も危険を犯す必要のある偵察隊がある程度の情報を持ち帰ってから始まることが常であり、その例に反した七十四層のフロアボス攻略は極めて例外であった。

 

 そういう面からしても、今回こそは通常通りの展開で攻略が開始され、五十層で戦線が崩壊しかけた経験を活かし、憎き《クォーター・ポイント》のフロアボスを犠牲を出さないように尽力できるはずだったのだ—————

 

 

 

 

 

「偵察隊が、全滅—————!?」

 

 

 二週間ぶりにグランザムの《血盟騎士団》本部に戻ったキリト達を待っていたのは、衝撃的な知らせだった。

 ギルド本部となっている鋼鉄塔の上部、かつてヒースクリフとの会談にも使われた硝子張りの会議室には、半円形の大きな机の中心にヒースクリフの賢者然としたローブ姿があった。本来ならば、左右にはギルドの幹部達が着席しているのだが、今回は〝ある事情〟によって退席している。

 護衛もいなければ、幹部達もいない状況下。すでにギルドのメンバーであるが、一度でも争った間柄であるキリトと対面するというのはなかなか落ち着かないはずだが、当のヒースクリフは全く気にすることなく、顔の前で骨ばった両手を組み合わせ、眉間に深い谷を刻んでゆっくり頷いていた。

 

 

「昨日のことだ。七十五層のマッピング自体は、例の如く()()が終了させていたため、犠牲者は出ることはなかった。

 だが、ボス戦はかなりの苦戦が予想された………」

 

 

 ヒースクリフがそう言うのにも理由がある。七十五層もまた、例に及ばず《クォーター・ポイント》と称される難関ボス階層の一つだ。

 

 その存在が初めて確認されたのは、二十五層。双頭巨人型ボスモンスターがこれまでの階層のフロアボスを凌ぐ強さであったことが原因である。まずこの敵により、《軍》の前身であった《解放隊》がほぼ全滅させられ弱体化し、再起を図った結果、現実でいう汚職塗れのゴミと成り果てた。

 

 続く五十層では、金属製の仏像めいた多腕型ボスの猛攻に怯み、勝手に緊急脱出する者が続出して戦線が一度崩壊、援護の部隊がもう少しでも遅れていれば、残るメンバーが全滅の憂き目を免れない状況下にすら追い込まれた。

 後にこの戦いがヒースクリフの勇猛さをアインクラッドに轟かせた一件となったが、彼は己が独力で支えたとは思っていない。確かに彼は戦線を支えること、つまるところ最後の砦となるには相応しい存在であったことは間違いない。ユニークスキル《神聖剣》の真価を発揮するには充分すぎる状況下であったことだし、彼の存在というものがどれほど残っていた者には希望となり得たかなど考えるまでもない。

 

 しかし、彼はあくまでも盾である。例え盾があろうとも、矛が無ければ攻め手にかけるのは言うまでもなく、よしんば援護の部隊があったからこそ、勝利を掴めたというのは嘘偽りない真実であったが、彼らが駆けつけるまでの間、その矛の役割を主に演じたのは他でもなく、キリトやアスナ、そして—————

 

 

「例のクエスト、完了したよー! ボスの詳細がちょっぴり判明————あ、わーいアスナだ〜!」

 

 

「おいコラユウキ、テメェ。さっき会談中だって言われたばっかじゃねぇか。せめてノックしてから突っ込めっての」

 

 

 ノックもなく会議室の扉を豪快に開け放った少女と少年が、三人しかいなかったその空間に足を踏み入れた。入って早々、アスナを見つけて駆けていくユウキの姿に、頭痛を覚えたアーカーが注意するが————違うそこじゃない。

 突然の闖入者により、真剣な空気が崩壊する。これには、さしものヒースクリフも苦笑いを零し、キリトはぽかーんと口を開けたままとなり、アスナは駆けつけた天真爛漫少女にされるがままとなった。具体的には抱き締めたり、両手を握って握手みたいに上下に振ったりと相変わらずの元気良さである。ふと、アスナの胸元辺りにあったネックレス、その中央にある大きな透明の涙滴型の宝石が強くとくんと、瞬く。

 

 その光景が数十秒ほど続いた後、アーカーがユウキをアスナから引き剥がしたところで、ヒースクリフが咳払いを入れて話を再開させる。勿論のことだが、これ以上下手に話の腰を折らないよう、二人は部屋の隅で自粛している。

 

 

「………そこで、我々は二名のみの《絶対双刃》を除く五ギルド合同のパーティー二十人を偵察隊として送り込んだ」

 

 

 抑揚の少ない声。半眼に閉じられた真鍮色の瞳からは表情を読み取ることができない。人間味が薄いとすら感じる様子に、真実を知るアーカーとユウキを除いたキリトとアスナには、彼がどういった人間なのかを把握することは容易ではない。

 

 

「偵察は慎重を期して行われた。十人が護衛としてボス部屋入り口で待機し……最初の十人が部屋の中心に到達して、ボスが出現した瞬間から、入り口の扉が閉じてしまったのだ。ここから先は後衛の十人の報告になる。扉は五分以上開かなかった。《鍵開け》スキルや直接の打撃等何をしても無駄だったらしい。漸く扉が開いた時————」

 

 

 ヒースクリフの口許が固く引き結ばれた。一瞬目を閉じ、言葉を続ける。不思議とその動きはアーカーと似たものがあった。

 

 

「部屋の中には何も無かったそうだ。十人の姿も、ボスも消えていた。単位脱出した形跡も無かった。彼らは帰ってこなかった……。念の為、基部フロアの《黒鉄宮》までモニュメントの名簿を確認しに行かせたが……」

 

 

 その先は言葉に出さず、首を左右に振った。キリトの隣に立つアスナが息を詰め、すぐに絞り出すように呟いた。

 

 

「十……人も………。なんでそんなことに……」

 

 

「結晶無効化空間……?」

 

 

 キリトの問いをヒースクリフが小さく首肯する。

 

 

「そうとしか考えられない。アスナ君の報告では七十四層とそうだったということだから、恐らく今後全てのボス部屋が無効化空間と思っていいだろう」

 

 

「バカな……」

 

 

 嘆息するキリト。その気持ちは大いに共感できるものだ。緊急脱出不可となれば、思わぬアクシデントで死亡する者が出る可能性が飛躍的に高まる。死者を出さない。それはこのデスゲームをクリアする上での大前提だが、フロアボス攻略とは犠牲が身近に存在する。クリアを目指すのならば、大前提を捨てることも視野に入れなければならない。

 しかし、結晶無効化空間とはそれだけではない。文字通り結晶アイテム全てが無効化されるのだ。つまるところ、即効性のあるアイテムは使用できない。回復結晶であれ、部位欠損回復結晶であれ、全てが時間継続回復(ヒール・オーバー・タイム)系であるポーションばかりに限られる。《スイッチ》の難易度は無論、《POTローテ》のタイミングも厳しくなることだろう。即効性がないということが、どれほど前線に立つ者にプレッシャーを与えるかなど考えるまでもない。

 

 

「いよいよ本格的なデスゲームになってきたわけだ……」

 

 

「だからと言って攻略を諦めることはできない」

 

 

 ヒースクリフは目を閉じると、囁くような、だがきっぱりとした声で言った。

 

 

「結晶による脱出が不可な上に、今回はボス出現と同時に背後の退路も絶たれてしまう構造らしい。ならば統制の取れる範囲で可能な限り大部隊を以て当たるしかない」

 

 

 そこで、漸くヒースクリフは部屋の隅で待っていたアーカーとユウキの方を振り向くと、ほんの少しだけ声音を変えた。

 

 

「————幸い我々が幸運だったのは、攻略組に最も頼りにできる《最前線狩り》が復帰していることだ。()()()とユウキ君には、昨日の偵察隊が全滅したと報告を受けた直後、フロアボスの情報が掴めないか、この階層に存在するクエスト全ての情報を整理、及び再確認してもらっていた」

 

 

 何故この場に三人しか残されていなかったのか。その理由はそこにあった。幹部達はいくら攻略を共にする者と言えど、他ギルドの輩が本部に足を踏み入れることを是としない。加えて《血盟騎士団》が《絶対双刃》に依頼することも是としない。それは《聖竜連合》との確執を招くからだ。要は、彼らがこの場に残っていると話が進まないのだ。つまるところ、この場に彼らがいないのは、邪魔だという意味合いの他にも、ヒースクリフが二人に()()()()()()()()()()()ということになる。

 

 結果はどうだった?と発言を促す素振りをヒースクリフが見せる。

 すると、アーカーとユウキが進み出た。

 

 

「良い知らせとして、だ。

 —————フロアボスの詳細がある程度判明した」

 

 

 キリト達の身体が強張り、続けて流石だという言葉を零す。やはりこの手のことでアーカーの右に出る者はいないようだ。改めて《最前線狩り》の妙技を披露してもらったことで、その認識が強まる。

 

 

「フロアボスの名前は《The Skullreaper》————骸骨の刈り手。名前の通り、全身が骨で出来た百足らしい。攻撃パターンの殆どが、頭骨の両脇から鎌状に尖った巨大な骨の腕による薙ぎ払い、振り下ろし、切り上げ………と、要するに骨の鎌で切り刻みにかかるとのことだ」

 

 

 「鎌にはあんまり良い思い出がねぇなぁ……」と戯けたように呟くアーカーに、覚えがあるキリト達は納得の声を洩らす。彼らが瞬時に思い浮かべたのは、一層隠し地下ダンジョンにて遭遇した死神のことだ。未だ七十五層攻略途中で九十層クラスのボスと出会うなんて不運にも程があった。出来ることなら、九十層に辿り着くまではあんな化け物と遭遇したくないだろう。

 

 

「………ふむ。他にも気になる情報はあったのかな?」

 

 

「気になる情報なぁ…………—————確かに一つだけあったな」

 

 

 他にも情報がないかと訊ねるヒースクリフに対し、何か思い出したようにアーカーが反応するとユウキも覚えがあったのか、今度は彼女がそれを伝える。

 

 

「ボク達が手に入れたこの情報を教えてくれたNPCが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「な—————」

 

 

 キリトが絶句する。アスナもまた息を詰め、そして、何よりも驚くべきことは、ヒースクリフが眉を(ひそ)めたことだ。彼は並大抵のことでは動じない。人間らしい反応一つ見せないこともある。そんな彼が怪訝そうな顔を見せたということは、事態は思っているよりも深刻な証とも取れた。

 ヒースクリフは知らないだろうが、キリトとアスナには全身にノイズを走らせるという現象に覚えがある。それは自分達の愛娘であるユイの時に遭遇している。あの時もやはりカーディナルのバグ絡みであったが、今回もその例に準ずるものではないかという不安が募り始めていた。

 

 その不安を更に大きくするかのように、ユウキがもう一言追加で告げた。

 

 

 

 

 

「その時、NPCが消滅する直前に、確かにボク達は聞いたんだ。

 —————()()()()()()、って」

 

 

 

 

 

「ミノタウロス—————!?」

 

 

 それは世界史や伝承、何よりもゲーマーとしてなら知っていないことの方が少ないだろう有名な名前だった。

 牛頭人身の怪物。ミノス王の牛。クレタ島の伝説。ギリシャ神話に登場する怪物の中でも、一、二位を争うレベルの有名さを持つ、強大な敵ボスとして知られるミノタウロス。その強さは基本的に尋常ではない。初心者殺しとして最初の難関として登場することもあれば、順々に力を付けたプレイヤーを屠るべく後半での強敵として現れることもしばしばあるほどの存在。

 前階層フロアボスであるグリームアイズは山羊頭人身の怪物ではあったが、あれもまた現実世界に存在する怪物の情報から生成されたものであるならば、ミノタウロスは存在して然るべき相手だろう。何せRPGでは定番の敵キャラなのだ。いくらデスゲームと言えど、この世界もまたRPGの一つ。名を聞かないはずがなかった。

 

 しかし、問題はそこではない。

 考えるべきは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、だ。

 

 嘘ではないな?と無言の圧力をかけるヒースクリフに、アーカーが溜息交じりに答える。

 

 

「こんな大事な時に法螺吹かすほど馬鹿じゃねぇさ。そういう疑いの目は、今は亡き《軍》の阿呆共にやってくれよ、ヒースクリフ」

 

 

「疑って済まなかったな。私もまた命を預かる者だ。心配の種はなるべく潰しておきたかったのだよ」

 

 

「ま、そういうことにしておいてやるよ

 ————ンで? フロアボスはどうするんだ?」

 

 

 アーカー達のお蔭で少なくとも情報は手に入った。不安要素は多い。下手に動けば、犠牲者を増やすかもしれない。今し方二人が告げた情報を整理し、他ギルドにも通達したとして、混乱を招く事態が起こらないとは限らない。

 

 けれど、この男は怯まない。

 

 

「確かに不確定要素はある。君達のお蔭で情報が幾分か手に入ったとしても、完全に備えることは出来ない。これまでの《クォーター・ポイント》でのボス攻略戦の経験から考えれば、今回もまた苦戦を強いられるだろう。犠牲者を出さないという希望的観測もそう易々と出来はしない。

 —————だが、我々が進まなければ、解放の日が有り得ないのもまた事実だ。ここで立ち止まる訳にもいかない」

 

 

 この場にいる彼らの心に語りかけるように名演説を行うヒースクリフは、確かに誰しもが描いた英雄像に近しい人物だ。間違いなく、この鋼鉄の浮遊城アインクラッドに、〝他者を率い〟〝他者を導き〟〝他者を進み続けさせる〟ことにおいて、彼の右に出る者はいない。彼もまたアスナのような例外を除く、ゲームに魅せられたコアゲーマーだというのなら、大規模なオンラインゲームでトップを走り続けるギルドの長をしていたのではないかと考えてもおかしくないほどだろう。この場において————否、この世界において、その真相を知る者は二人しか存在しない。果たして、彼らがその真実に辿り着いた時には、どんな顔をする羽目になるのだろうか—————と、アーカーが思考を過ぎらせたところで、ヒースクリフが席から立ち上がった。

 

 

「新婚の君達を召喚するのは本意ではなかったが、今回は君達の力を借りなければならないと判断した。了解してくれ給え」

 

 

 正しくこれは総力戦だ。打てる手を全て打たなければ、被害は甚大となる。それを誰よりも理解しているが故の判断である以上、キリト達にそれを拒む術はなかった。我が身可愛さに逃げる、という方法も取れるはずもない。何故なら、あの時ユイが警告した通り、エラーの深刻さは日に日に増している。フロアボスの情報を教えてくれるNPCが消滅したのが良い例だ。最早、逃げてはいられないのだ。

 

 肩を竦めて、キリトは答えた。

 

 

「協力はさせて貰いますよ。

 だが、俺にとってはアスナの安全が最優先です。もし危険な状況になったら、パーティー全体よりも彼女を守ります」

 

 

 それは一人の漢としての覚悟の表れでもあり—————

 

 

「それに、俺達はアーカーやユウキと現実世界(向こう)でまた会う約束をしている。

 ————あとは、言わなくても分かるはずだ」

 

 

 この世界で出会った、最高の親友達に向ける親愛でもあった。

 あのヒースクリフと対峙してなお、キリトは怯むことなく真っ直ぐに宣言する。その雄姿にアスナは嬉しそうに微笑み、アーカーは心のうちで悪くないと思い、ユウキは笑顔を浮かべた。

 そして、少年もまた、悪友が啖呵を切ったのならば、それに続かない訳にはいかなかった。

 

 

「ヒースクリフ。俺も同様だ。敢えて断言するが、昔の俺にとって、ユウキ以外の他者はどうでも良かった。それは間違いない。

 —————だが、この二年でその答えは少し変わったよ。相変わらず大多数の他者がどうなろうが知ったことじゃねぇのは変わらないが、少なくとも、ここにいる大切な俺の女(ユウキ)と、減らず口を叩く悪友(キリト)と、負けず嫌いな料理仲間(アスナ)だけは死ぬ気で守る。今更、ことの是非は問わないでくれよ?」

 

 

 その言葉には、彼が培ってきたこの二年での変化が籠っていた。

 

 ヒースクリフは—————茅場 晶彦は知っている。目の前に立つ少年が、どれほど虚無感に苛まれ、万物万象すら退屈と断じていたかを。鏡、生き写しとすら感じた似た者同士だったからこそ、その虚無(いたみ)を知っている。

 だからこそだろうか。不思議と、人間味の薄かったはずの男は、ふと—————

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、それで構わない。

 君の成長を言祝(ことほ)ごう—————ソラ君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 —————まるで、()()()()()()()()()()()()()()

 微かな喜びを噛み締めた様子を、隠すことなく露わにした。

 

 その姿に、この場にいる誰もが息を呑んだ。初めて見たから、というのもあったが、まさかこの男がそんな顔を見せる、或いは出来るとは思っていなかったからだ。そして、当然、この対応は確実に彼の首を絞めることになるだろう。他者との関わりを極限まで減らしていたアーカーと現実世界で関わりがあるのは、両手の指の数にも満たないどころではない。片手の指の数でも事足りる。

 恐らく、この瞬間、キリトどころかアスナも気付いただろう。彼が茅場 晶彦であることを。きっと当人はそれを理解している。理解していて—————そうしたのだ。

 

 微かな笑みを浮かべ直すと、ヒースクリフは告げる。

 

 

「何かを守ろうとする人間は強いものだ。君達の勇戦を期待するよ。攻略開始は三時間後。予定人数は君達を入れて三十四人。キリト君とアスナ君はソラ君とユウキ君のパーティーに参加し給え。七十五層コリニア市ゲートに午後一時集合だ。では解散」

 

 

 それだけ言うと、紅衣の聖騎士は部屋を出て行った。彼がいなくなった後になっても、アーカーはその場に立ち尽くす。浮かべた表情には明らかな動揺が残っていた。その原因は言わずもがな、あの男が浮かべた笑みだろう。両親の愛を知らず、けれど、ユウキと共に過ごしたことでそれを知り、求めているとしたら—————

 

 

 

 

 

「——————ああ、ホント卑怯だな…………あの人は」

 

 

 

 

 

 最早隠す必要はないと、アーカーは心許せる者のみが残った会議室の中で、喉を震わせながらそう呟くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アーカーが落ち着きを取り戻したのは、それから数分後のことだった。これほどまでに明らかな動揺を見せたのは、片手の指の数にも満たない。それほど彼が受けた衝撃というのは計り知れないものであった。当然、その様子から—————否、そうでなくとも、キリト達はヒースクリフの正体を悟ってしまった。二人だけの秘密が悟られた。知られた。バレてしまった。秘密が明らかとなった時、何が起こるかなど考えるまでもない。

 

 冷静さを取り戻した彼に、キリトが問う。

 

 

「なんで秘密にしていたのか、教えてくれるか? アーカー」

 

 

「…………単純なことだ。俺がケジメをつけるために、お前らを巻き込まないようにしてたんだよ」

 

 

 このデスゲームが開始した時、アーカーの—————雨宮 蒼天だった少年の目的は、ゲームマスターである叔父、茅場 晶彦の殺害だった。叔父の性格からして蚊帳の外で傍観者を気取ることはしないと判断し切っていた彼にとって、百層に奴が待ち受けているのは間違いないと断じた以上、そこに辿り着くことが出来れば、この世界の法則に倣って殺害できると考えたのは、かつてキリト達も聞いた話だ。

 

 だが、ここからの話は、ユウキですら知りもしなかった物語(かこ)の断片だ。

 

 

「この世界—————《ソードアート・オンライン》は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 思えば、あの日、あの場所で、彼と出会ったことが、この世界の始まりだったのだろう。

 思い返すようにアーカーは、記憶に残る鮮烈で斬新で、それでいて、何故自分が既にユウキだけとなっていたはずの他者との関わりを忘れずにいたのかを理解した。

 二年前の彼にとって、ユウキを含めた一家だけが信じるに値するものであったのは言うまでもない。その信用が最早ユウキを残して、死別という途絶え方をしたのも彼らは知っている。

 

 だが、唯一例外が存在した。信じてはいない。信用も信頼もしていない。けれど、間違いなく彼が他者とは全く別のカテゴライズをして考えていた人物がいた。

 

 —————茅場 晶彦。

 家系図的には、《雨宮家》に嫁いだ母親の兄に当たる人物であり、それ以上でもそれ以下でもなかった。単なる〝叔父〟でしかない。たったそれだけの関係性。そういう点では、《雨宮家》に属する者達も似たような間柄である以上、特別差別化する必要もないのだから、少年にとっては心底どうでもいいはずだった。

 

 けれど、そうならなかったのは、(ひとえ)に彼が余りにも自分と似過ぎていたから—————

 

 

「現実世界で俺は、あの人と会ったことがあった。ユウキには既に伝えたが、数ヶ月前にも三十九層《ノルフレト》でもヒースクリフとして出会ってる。俺が最初に確信したのは、その時だ。現実世界で見た夕焼けと全く同じ光景が、そこには広がっていたモンでな。見惚れてたんだよ、どういう訳か懐かしくてな」

 

 

 かつて、少年は彼と出会った。

 後に世界的に大成し世間を混乱の渦に飲み込んだ人物と、後に死病に打ち克ち一人の少女を救った人物が、偶然出会ったのだ。

 語らいはちっぽけなものだった。夕焼けの評価から始まった他愛もない雑談。子供に投げかけるにしては難儀な話題が多数存在したが、少年は苦労なく答えていた。異様だと思う。

 しかし、よく考えてみれば、子供と大人が同じ目線で語り合う時点で、その異様な光景は最初から広がっていたのだろう。

 

 

「そんな時だ。突然、叔父さんがさ。ある質問を投げかけてきた。今思えば、この時点で気付くべきだったんだろうな」

 

 

 語らいの果てに、彼らはお互いが鏡のようだと気付いていた。生き写しではないかと疑い、無意識に信じ、内に秘めた渇望を曝け出していた。

 少年は、退屈を掻き消してくれる他者と、その他者のために全てを賭しても守りたいと思える瞬間を。

 彼は—————現実世界のあらゆる枠や法則を超越した世界と、空に浮かぶ鉄の城の空想を。

 二人はそれぞれ違うものを求めながらも、手に入れることが出来ず、虚無感に苛まれ続けた似た者同士だった。前者の願いは、明らかに後者よりも難易度が低いと思えた。本人にもその実感はあったのは言うまでもない。

 

 けれど、少年は人間の悪性ばかりを見過ぎていた。《雨宮》という蠱毒の中で育つしかなかった捨て子は、人間に善性が存在するなどと信じることも出来ず、他者を疑ってかかり、予想の域を出ない時点で〝下らない有り触れたモノ〟と断じて切り捨てた。小学校に入学する前の子供が考えるにしては、悲観的で、悲愴的で、何よりも残酷過ぎた。茅場家に助けを求めた母親の姿すら〝下らない有り触れたモノ〟と判断していたのだから、どれほど少年が全てを俯瞰していたかなど断言するまでもない。

 

 そんな少年だったからこそ、同じ虚無を抱いていた茅場 晶彦という人間は、自身の渇望すら打ち明けることが出来たのだろう。

 

 

「あの人は、空に浮かぶ鉄の城の空想を抱き続けていた。この世のあらゆる枠口から解放され、法則をも超越した、理解のできない異世界を。そういう意味では、この世界は正しく彼の夢想した通りの世界だ」

 

 

 チュートリアルの時、彼は確かに告げた。

 〝すでに一切の目的も、理由も持たない〟と。

 〝この状況こそが、私にとっての最終的な目標だからだ〟と。

 そして何より—————〝全ては達成せしめられた〟と。

 

 そう、彼はこの世界の誕生と同時に、抱いていた空想(ねがい)現実(こたえ)へと塗り替えた。万人がその執念すら肌身で感じられるほどに、彼は大成してなお満足することなく、ここまで辿り着くために全てを賭したのだ。例えその後、自分がどう言われることになろうと、どんな扱いを受けるかなど気にすらせず、全てを捨てたのだ。

 

 あまりにも身勝手すぎると思うだろう。

 あまりにも狂っていると思うだろう。

 

 —————だが、それは奇しくも、少年が選んだ在り方と同じだった。

 少年は、退屈を掻き消してくれた他者(ユウキ)を知り、その彼女を守るために、約束された栄光(じんせい)も、恵まれた環境(しゃかい)も、死に怯えることのない未来(あした)までも全て(なげう)った。例えその後、自分がどう言われることになろうと、どんな扱いを受けるかなど気にすらせず、全てを捨てて少女の明日を守ろうとした。

 

 二人の在り方も、生き方も、恐ろしいまでに同じだった。

 

 

「あの人は、三十九層で再会した時、現実世界で見た夕焼けと全く同じ光景を見ながらこう言った。

 —————私にとっての〝決意の原風景〟だと。俺も漸くあの言葉の意味が思い出せたよ」

 

 

 何故この世界が自分の成長を促すために用意されたように思ったのか。彼の過去を知っていてもなお、意味が分からないその言葉の真意がその口から語られる。

 

 

「俺はあの人の願いを聞いて、こう返したんだよ。

 —————「そんな世界なら、きっとこの世界より幾分かマシだろうね。人間の善性と悪性がハッキリして、本当に信じるに足る人が見つかるかもしれない。確かにそれなら………僕の願いも叶う気がする」ってな。

 今考えてみれば—————ガッツリ唆してるんだよなぁ………いやはや、れっきとした共犯者じゃねぇか。全く呆れた話だろ?」

 

 

 日本には〝豚も煽てりゃ木に登る〟という諺がある。これは能力の低い者でも煽てられると気を良くして能力以上のことをやり遂げることを示すものだが、能力もあり実力もある茅場 晶彦を煽てた結果が異世界の創造を成し遂げるというオチに至るなど、当時の自分は全く以て想像していなかったのだろう。それを聞いていたキリト達どころかユウキまでもが唖然とし、それから呆れるように溜息を吐いた。どうして呆れられたかを分かっていない少年に、アスナの胸でとくんと瞬いていた涙滴型の宝石が、突然純白の光を爆発させ、その形状を人型へと構成させていき————

 

 

「—————にぃには、もう少し素直になるべきです!」

 

 

 ———とても見覚えのある白いワンピース姿の少女となって現れた。間違いなく、キリト達の愛娘ユイである。突然の登場に、今度はアーカーが唖然とし、ユウキはぽかーんと口を開けたまま硬直する。視界の端では悪戯が成功したような顔をするキリトとアスナが映る。よくよく考えてみれば、愛娘一人をログハウスに残していくことを良しとできなさそうなほどに親バカと化した二人が何の対策もしていないはずもなく、それ以前に、見覚えのないネックレスをアスナが付けている時点で疑うべきだったのだ。

 

 ………と思考が余計な方法に加速し始めるのを、辛うじてそこで切り離すと、アーカーはユイに目を向ける。そちらをまず視野に入れた理由は少女の言葉にあった。素直になるべき、そんなものが何故このタイミングで飛び出したのか理解できなかったからだ。

 

 

「………あのな、ユイ。どういうつもりで俺に素直になれって言ってくれてるのか、分かるように言ってくれねぇか? お前ほどじゃないがある程度頭は回る方だと自負してるつもりだが、今回ばかりは全く真意に気付けないんだが………」

 

 

 皆目見当がつかないと言う少年に対し、膨れっ面を見せるユイ。疑問符ばかりが頭に浮かぶ中で、視界内に収まっているキリトとアスナは既に察しと納得がいったらしい様子を見せ、驚くべきはユウキまでもが妹分の言いたいことが何なのかに気付いていることだった。それを目にし、流石の彼も不味いと思うも、やはり察することができない。思考が空回りをしているのかと考えそうになった辺りで、ユイが我慢の限界とばかりに言い放った。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ですから、もっとねぇねやわたし、パパやママ、皆さんを頼ってください!」

 

 

 

 

 

 その言葉は—————すとんと腑に落ちた。

 溶け落ちるように深く、深く沈んだ想いの言霊は、一度として反発されることもなく————けれど、確実に胸の奥に渦巻いていた()()を貫いた。ふいに視界がクリアとなって開けたような錯覚を覚え、己に突き付けられた自虐は霧と失せる。それは次第に広がっていき、至極当たり前のことが見えていなかったことを自覚させていく。

 

 

「またユイに助けられたな、アーカー」

 

 

「アーカー君は賢そうに見えて、実はかなりお馬鹿さんよね」

 

 

「だよねだよね!

 ホント………全く、も〜! 前にも言ったけど、ソラは抱え込み過ぎなんだよ。どうせボクにも言ってないことまだいくつかあるんじゃないかな〜?」

 

 

 切り込み隊長ユイに続けとばかりに畳み掛けていく一同。何気に酷い言葉がいくつか飛び出しているが、向けられた本人はそれを咎めることなく受け止める。

 

 確かにそうだ。数日前、彼らには過去を話した。それは信じていたからそうしたのだ。心のうちを晒け出せる気がしたから、一縷の望みに賭けてみた。そうして、本当に信じるに値する親友を手にしたと言うのに、また自分は無意識に一人で抱え込んでいたのだと理解する。これでは信じているとは言えまい。何より、最も信じている少女にも無意識で隠し通そうとしていたのだから、悪癖ここに極まれりと言える。これでは反論の余地などありはしない。例えケジメをつけることは譲らなくても、胸の内をスッキリさせておくぐらいはしておけば良かったのだ。全く、我ながら呆れたものだ………。

 クリアになっていく思考が、自虐無し、冗談無し、素直の一色にのみ染まった結論を出していくのをアーカーは自覚し、苦笑する。

 

 

「……………ったく、お前らも相当馬鹿だよ」

 

 

「「「「アーカー(アーカー君)(ソラ)(にぃに)ほどじゃない(よ)(です)」」」」

 

 

「—————上等だテメェら。

 そこまで言うなら、素直にでもなんでもなってやるから一時間たっぷり愚痴に付き合いやがれ。とことん暴露し尽くしてやらァッ!」

 

 

 半ばヤケクソ気味に少年は吠えた。揶揄われた子供が逆上するかのように、同時に、微笑ましいまでに挑発に乗る。それから赤裸々に語った内容が如何なものかは言うまでもない。

 

 彼は弱い。

 他者に興味・関心を示さなかったことや、信じることをしなかった—————否、出来なかった弊害は、今なお消えることはない。

 

 例え、それでも()()()()()()。省みることは必要だ。振り返ることは必要だ。思い出すことは必要だ。

 

 —————けれど、引き摺るものではない。

 

 本人が自覚しようがしなかろうが、間違いなく言えることは一つでも存在していた。

 

 

 

 

 

 雨宮 蒼天()()()少年は、今なお変わり続けている。

 

 

 

 

 

 ———*———*———

 

 

 

 

 

 七十五層主街区であるコリニア市のゲート広場には、すでに攻略チームと思しき、一見してハイレベルと判断できるプレイヤー達が集結していた。キリトとアスナを連れ立って現れたアーカーとユウキがゲートから転移してきたのを見ると、皆ぴたりと口を閉ざし緊張した表情を浮かべたまま目礼を送ってきた。中にはギルド式の敬礼————と思しきものがちらほらあったが、残念ながら二人だけのギルドである《絶対双刃》の副団長アーカーには、敬礼なんてものが存在しない。そのため、どう返そうか悩むところがあった。

 

 既に横ではキリトが大いに戸惑って立ち止まっているのだから、どうしたものかという気持ちが強まる。

 すると、隣に立つユウキが、元気よく片手をぶんぶん振り回して返事している————と思われる行動をしていたのが目に入った。

 

 気恥ずかしいながら、小さくではあるが軽く手を振ってやると、ゲート広場全域のどよめきが走った。中には「おいマジか」だの、「《絶天》が返事してくれた……だと………?」だの、挙句の果てには明日はゲリラ豪雨じゃねぇのか………」など、かなり失礼なことまで耳に届いた。

 

 

「…………人が返事したら、そんなに変かチクショウ」

 

 

「あはは………ソラが普段返事しないからだと思うよ?」

 

 

「………………」

 

 

 痛い所を突いてきやがったと嫌そうな顔をしつつも、アーカーは継続してぎこちない返事をし続ける。ちらりとキリトはどうなったと目を向けてみれば、アスナに諭されて敬礼を返している。とてもぎこちないが、自分も似たようなものだと分かっている以上、揶揄うにも揶揄えない。揃って尻に敷かれる未来が薄っすらと見えた。

 

 

「よう!」

 

 

 景気良く肩を叩かれて揃いも揃って振り返ると、カタナ使いのクラインがそこにはいた。相変わらず、悪趣味なバンダナの下でにやにやと笑っている。どうやら先程までのぎこちない姿を見ていたらしい。一瞬こちらも景気付けにぶっ飛ばしてやろうかという野蛮人な思考が脳裏を掠めたが、彼の横に両手斧を装備した知人の商人エギルの姿があることに気付く。

 

 

「なんだ…お前らも参加するのか」

 

 

 キリトが驚いたように反応する。それを受け、エギルが憤慨したように野太い声で返す。

 

 

「なんだってことはないだろう!

 今回はえらい苦戦しそうだって言うから、商売を投げ出して加勢に来たんじゃねぇか。この無視無欲の精神を理解できないたぁ……」

 

 

 大袈裟な身振りで喋る大男。彼の言ににやりと悪い顔をしたのは、キリトとアーカー。互いの顔を見合わせ、頷き合う。

 

 

「無私の精神はよーく解った。じゃあお前は戦利品の分配からは除外していいのな」

 

 

「喜べユウキ。エギルが戦利品いらねぇそうだから、俺達の戦利品が少しでも増えるぞ。無私無欲の化身様に礼を言ってやれ。戦利品ご馳走になりますってな」

 

 

「わーい! ありがと、エギル!」

 

 

 無邪気な笑顔をユウキが振り撒くと、一度は「おう!」と良い大人らしく返事をしそうになるも、辛うじて耐えた巨漢はつるつるの頭に手をやって眉を八の字に寄せた。

 

 

「いや、そ、それはだなぁ……。というか、お前のその手口は汚いぞ、アーカー」

 

 

「応とも、汚くて結構。お前もユウキの笑顔の礎となれ」

 

 

「ユウキちゃんのためなのは分かってやれるが、言ってることが悪役のそれじゃねぇのか!?」

 

 

 容赦のない追撃を受けるその姿を見てか、アスナとクラインの朗らかな笑い声が重なった。悪魔その一であるキリトとその二のアーカーが互いの拳をコツンと当てる姿に、ユウキも嬉しそうに笑う。この場に人型として存在していないが、アスナの胸の辺りにある涙滴型の宝石に変化したユイも答えるように何度か瞬いている。彼らの会話を耳にしていたらしいプレイヤー達にも笑顔は伝染し、過剰な緊張感はほぐれていった。

 

 それから午後一時ちょうどに、転移ゲートから新たな数名が出現した。真紅の長衣に巨大な十字盾を携えた《聖騎士》ヒースクリフと、彼によって選出されただろう《血盟騎士団》の精鋭だ。いざ彼らの姿を目にすると、これから死地に赴くのだという実感が強くなり、プレイヤー達の間に再び緊張感が走った。

 

 聖騎士と四人の配下は、プレイヤーの集団を二つに割りながら真っ直ぐアーカー達の方へと進んでいく。威圧されたようにクラインとエギルが数歩下がる中で、アスナは涼しい顔で敬礼を交わす。

 一方で《絶対双刃》の二人は全く動じることない。配下からの刺さるような視線も、真っ向から同様に返す。

 立ち止まったヒースクリフはこちらを向き、軽く頷きかけると、集団に向き直って言葉を発した。

 

 

「欠員はないようだな。よく集まってくれた。状況はすでに知っていると思う。厳しい戦いになるだろうが、諸君の力なら切り抜けられると信じている。————解放の日のために!」

 

 

 ヒースクリフの力強い叫びに、プレイヤー達は一斉に鬨の声で応えた。その光景に、アーカーとキリトは彼に磁力的なカリスマ性を感じていた。特に現実世界で彼と出会った少年は感嘆していた。かつて出会った頃に感じなかったもの。恐らく、この二年間。《血盟騎士団》を率いてきた経験がそれを生じさせたのだろうか。元々この世界を創り出すにあたって、他者を引っ張ることに慣れていたのもあるだろう。それでも、以前の彼とは少し違うのだと思うところがあった。

 

 

「キリト君、今日は頼りにしているよ。

 《二刀流》、存分に揮ってくれ給え」

 

 

 いつの間にかキリトの方を振り向いていたヒースクリフが、低くソフトな声で言葉を投げかけていた。予想される死闘を前にして、僅かな気負いもないのが声音から感じ取れる。いつかの交渉の際を思い出したアーカーは、その様子が相変わらずで安心すら覚えた。そんなこちらにも、彼はいつも通り声をかけてくる。

 

 

「ソラ君もユウキ君も、君達の奮戦にはいつも通り期待させてもらうよ。《天駆翔》、《至天剣》。()()()()()()()()()()()()を存分に魅せてくれ給え」

 

 

「上等。程よく戦場引っ掻き回してやるから、腑抜けたボスの土手っ腹に重い一撃叩き込んでくれよ?」

 

 

「うん、任せて。絶対に隙を作ってみせるよ!」

 

 

 平然と返答する二人。最強の男に対し、臆することのないその姿は、彼らが強者たる証拠なのだろう。ここに集ったプレイヤー達は、この戦いが終わった後、いずれ一度でいいから全力で戦ってみてほしい、そしてそれを目にしたいという欲求すら生まれ始める。

 

 満足のいく返答を耳にできたことで、ヒースクリフは再び集団を振り返り、軽く片手を上げた。

 

 

「では、出発しよう。

 目標のボスモンスタールーム直前の場所までコリドーを開く」

 

 

 ヒースクリフが腰のパックから濃紺色の結晶アイテムを取り出す。それは通常の転移結晶とは異なる《回廊結晶(コリドー・クリスタル)》と呼ばれるものだ。任意の地点を記録し、瞬間転移ゲートを開くことができるという代物であり、これまでPKにも使用されてきたものでもあった。極めて希少ではあるが、ヒースクリフほどの男ともなれば話は別だろう。

 

 周囲は驚きの声をあげていたが、当人は意を介せぬふうで、結晶を握った右手を高く掲げると「コリドー・オープン」と発声した。合図となるキーワードを受け、それは瞬時に砕け散り、彼の前の空間に青く揺らめく光の渦が出現した。

 

 

「では皆、ついてきてくれたまえ」

 

 

 全員をぐるりと見渡し、ヒースクリフは紅衣の裾を翻して青い光の中へと足を踏み入れた。その姿は瞬時に眩い閃光に包まれ、消滅する。間を置かず、四人の配下達がそれに続き、次々とその中へと身体を躍らせていく。いつの間にか集まってきていた、多くのプレイヤーからの激励の声が飛ぶ中、アーカーとユウキもまた、光のコリドーの中へと飛び込んでいく。

 

 軽い眩暈にも似た転移感覚の後、目を開くとそこはもう迷宮の中だった。広い回廊の壁際には太い柱が列を成し、その先には巨大な扉が待ち構えている。見慣れた光景でもあり、一度訪れている。

 七十五層迷宮区は、僅かに透明感のある黒曜石のような素材で組み上げられて、ごつごつと荒削りだった下層の迷宮とは違っていた。鏡のように磨き上げられたそれらが直線的に敷き詰められている。空気は冷たく湿り、薄い靄がゆっくりと床の上をたなびいている。何処と無くお化け屋敷のような雰囲気すらあった。

 

 遅れて転移してきたキリトとアスナが隣にまでやってくる。

 

「……なんか……やな感じだね……」

 

 

「ああ………」

 

 

「ホラーでよくありそうな雰囲気してるよなぁ………。つっても、今回のボスはお化けじゃねぇから問題ないだろ」

 

 

「そ、そうだよね! お化けじゃないよね! だ、大丈夫だよ、ボクは!」

 

 

「オーケー、まずはその明らかに怖がってるとこ治してから、大丈夫って言ってみろお前」

 

 

 ホラーやお化けといった単語に過剰反応を起こすアスナとユウキに、もしも本当に幽霊などのアストラル系がフロアボスに変更されていたらどうしたもんかとアーカーは考え込む。ユイの推測だと七十五層フロアボスはカーディナルの影響で何らかの不具合を起こしていてもおかしくないという。加えて、事前にNPCから情報を得ようとした際、ミノタウロスという名を耳にすることとなった。そのせいか、本当に情報通り、骸骨で出来た百足が姿を現わすのかという心配があったのだ。

 

 

「ま、何にせよ………」

 

 

 扉に向けていた目をちらりとヒースクリフへと向ける。

 

 

「たかだか一介のフロアボスに負ける訳にはいかねぇよ。俺達は向こうで会う約束をした。—————だったら、全力で叩き潰すまでだ」

 

 

 その一言で、アスナとユウキの認識が変わる。そうだ。お化けだろうが、幽霊だろうが関係ない。怖がってばかりいても進めないのだ。目指すべき場所は決まっている。倒すべき相手は決まっている。辿り着く場所は死ではない。勝って現実世界に帰る。それだけなのだ。

 

 回廊の中央で、十字盾をオブジェクト化させたヒースクリフががしゃりと装備を鳴らして言った。

 

 

「皆、準備はいいかな。今回《絶対双刃》の二人により、どのような姿をしているかの情報は手に入った。そこから推測される攻撃パターンを早々に見切り、柔軟に対応してほしい。それまでの間、我々が前衛で攻撃を食い止めよう」

 

 

 恐れることはないとヒースクリフは告げる。

 剣士達は頷く。同時に目指す。—————希望を。形ある勝利を。

 

 

「では————行こうか」

 

 

 先陣を切るヒースクリフが無造作に黒曜石の大扉に歩み寄り、中央に右手をかけた。全員に大なり小なり緊張が走る。

 

 

「殺るぞ、ユウキ!」

 

 

「うん殺ろう、ソラ!」

 

 

 大扉が重々しい響きを立てながら、ゆっくりと動き出す中で、二人は互いを鼓舞するようにいつも通りの言葉を交わす。プレイヤー達が一斉に抜刀する。それに便乗するように、アーカーとユウキもまた抜刀する。

 

 彼の手に握られたのは、いつかの古びた長剣ではなく、白銀に煌めく細身の長剣。小さく狼の意匠が施されたそれは、不思議と彼に似つかわしいものにすら感じられた。

 それは彼女とて同じ。同様に握られたのは、黒曜石で出来た細身の長剣だ。《絶対不滅の意志》というクエストにて手に入ったそれは、〝諦めない〟と謳う彼女にこそ相応しいものだ。

 キリトもまた得物を引き抜いた。《二刀流》の証たる二振りの剣。彼だけの唯一であり、例外を持たないそれは、勇者の資格にすら思えた。細剣を構えるアスナと目が合い、互いに頷きを交わす。

 

 最後に、十字盾の裏側から長剣を音高く抜いたヒースクリフが、右手を高く掲げ、叫んだ。

 

 

「—————戦闘、開始!」

 

 

 そのまま、完全に開き切った扉の中へと走り出す。全員がそれに続く。油断も、慢心も、何一つとして欠けたものはなかった。犠牲は出るかもしれない。それでも、多くが生き残ると思われた。

 

 

 

 だが、その思いは容易く踏み躙られることとなる。

 

 

 

 内部は、かなり広いドーム状の部屋となっていた。以前、キリトとヒースクリフがデュエルした闘技場ほどの大きさだ。円弧を描く黒い壁が高くせり上がり、遥か頭上で湾曲して閉じている。三十四人全員が部屋に走り込み、自然な陣形を作って立ち止まった直後————予想通り、背後で轟音を立てて大扉が閉まった。情報通りなら、最早開けることは不可能。ボスが死ぬか、こちらが全滅するか。次に開く時はそのどちらかだ。

 

 突入してから数秒が経った。何も起きない。いや、何も起きていない訳ではない。先程から、()()()()()()()()()()()()

 それから、ふと—————何かがおかしいことに、誰しもが気がついた。天井の方から何か粉のようなものが降ってきているのだ。身体に付着したそれを指先で取り、手触りを確認してみる。ザラザラとしているそれは、あまり覚えのないものだ。どういうことだろう。天井を構成する石材の欠片だろうかと思考が加速しかける。

 

 そこに、一人のプレイヤーの目前に巨大な何かが突き立てられた。突然のことに腰を抜かすも、辛うじて接触していないことからダメージはない。何が降ってだろうかと周囲のプレイヤーが確認に向かう。

 

 

「……なんだこれ、()………()?」

 

 

 その言葉を聞いた途端、アーカー達が即座に青褪めた。

 

 

「そこから急いで離れろォッ!!」

 

 

 アーカーが叫ぶ。骨という言葉で思い当たるのは、今回のフロアボス以外に存在しない。つまり、あれは奇襲の一つではないのか?と危機感が全身を駆け巡ったからだった。

 

 彼が叫んだと同時に、フロアボスを倒すことで開かれる出口付近に大質量の何かが天井から墜落してきた。衝撃波が床を揺らし、突風を生み出し、煙が舞った。

 

 幸い離れた場所だったため、誰も巻き込まれていない。ほぼ全員が煙に当てられ咳き込む中で、アーカーとユウキ、そしてヒースクリフが何が落ちてきたのかを知ろうと目を見張る。近づくのは危険だ。そう本能が語りかけてきている。ゆっくりと、はっきりと、少しずつ、確かな勢いで煙が晴れていく。何が落ちてきたのか、それを知る時が近づく。

 

 

 

 そして—————()()()()()()()()()

 

 煙の中に表示されたのは、()()()カーソル。うち一つには《The Skullreaper》————情報通り、〝骸骨の刈り手〟の名を持つエネミーの名前が。

 続いて、もう一つには《The Labyrinthlord》—————〝迷宮の主〟と銘打たれた、情報にはない名前が浮かび上がっていた。

 

 それだけではない。驚くべきことは、本来のフロアボスであろう骸骨百足が持つHPバー四本のうち三本が既に空となり、四本目もまた()()()()となっていることだった。今こうして突入した攻略組を除き、誰もここには突入していなかったはずが、何故かそこまで削れている。断言するが、偵察隊の手腕ではない。

 その一方で、〝迷宮の主〟という名を持つ存在—————未だ煙の中にある姿不明のボスに設定されたHPバーは()()。僅かに削れているものの、たったの一本目すら失われていない。今も僅かに減少しているが、それも微々たるものだ。第一、何故HPが減少しているのか、その疑問に答えるように、煙の中から骨の腕が飛び出した。

 

 飛び出したそれは、煙を裂くように振るわれ、間違いなく正体不明の敵へと直撃した。七十五層ともなれば、相当なダメージになるはずだろう。

 しかし、それは直撃したのにも関わらず、大したダメージ量にもならず、プレイヤーに弱めのソードスキルを叩きつけられた程度の量でしかなかった。その光景は、キリト達はおろかアーカーですら驚愕させた。何がどうなれば、そうなるんだとばかりに見開かれた目とは別に、彼は即座に《識別》スキルを発動し、正体不明の敵へと向ける。以前一層で九十層クラスの死神を目にしたことや、あれから少しまたレベルが上がったことで、あのレベルのボスが出てきても識別できるはずだと考えた上での行動である。例え出来なくても、どれほどの敵かを察することもできることから、無意味ではないと判断していたが、果たして—————

 

 

 

 

 

 

 

 

「——————おいおい………これは洒落になってねぇぞ、カーディナル…………ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 —————推定、()()()()()()()()

 間違いなく、あの時の死神をも上回る真性の化け物がそこにいた。ユイの推測は当たっていた。それも最悪過ぎる方へと。恐らく、今彼女はアスナの胸にある涙滴型の宝石の中で慌てふためいているだろう。それも詮無いことだ。流石にこれは予想外過ぎた。最早狂っている。

 

 今し方のことで、全てに合点がいった。

 何故、天井から謎の粉が降り、砕けるような音がしたのか。

 何故、骨の腕が天井から降ってきたのか。

 何故、骸骨百足があれほどの手傷を負わされていたのか。

 

 その原因、元凶は—————

 

 

 

 答えを導き出そうとした直後、とてつもない大咆哮が部屋全域に反響し、あまりの爆音に鼓膜が破れてしまいそうな程の思いをした。勿論、この世界にそこまで細かい部位はないだろうが、それでも、反射的に鼓膜を、聴覚を守ろうとしてしまうほどだった。

 

 ヒースクリフまでもが耳を塞いだ後、大咆哮を終えた正体不明の化け物が煙の中から巨腕を振り上げる。その手には、片刃の戦斧が握られていた。それは寸分違わず振り下ろされ、大音響を鳴らしながら、確実に骸骨百足の頭部を叩き割っていた。断末魔にも似た大絶叫が放たれるも、それは長く続くことはなく、プツリと途切れるように止まり、煙の奥で無数の欠片となったのか、ばしゃーんと破砕する音が耳朶を震わせた。先程、一人のプレイヤーの目前に突き立てられた骨の腕も続けて破砕し、消えていく。

 

 本来のフロアボスの死が訪れる。

 本来ならば、喜ぶべき状況だが、誰一人として喜ぶ者はいない。驚愕に身を委ねてしまっているからか?—————違う。

 答えは単純。()()()()()()()()()

 その事実が、全員の心に重くのしかかった。倒すべき敵は倒れたはずだ。けれど、扉は開かない。次の階層には進めない。つまり、どういうことかなど考えるまでもなかった。

 

 

 

 自分達が戦わなければならない敵は—————正真正銘の化け物なのだと。

 

 

 

 そうして、それは本来のフロアボスをさも邪魔者であるかのように殺し切ったところで、ついにその姿を露わにした。

 

 全身に刻まれた、痛々しいほどの無数の傷痕。体色は返り血にでも塗れたか赤黒く変色しており、七十四層で戦ったグリームアイズをも一回りほど上回る巨体。両手共にそれぞれ一本装備されているのは、先程骸骨百足の頭を一撃で砕き割った片刃の戦斧。頭部には、赤黒い血で染まった対の大角が存在し、両手両足には引き千切れたと思しき鎖と無数の拘束具。この場に存在するプレイヤー達を捉える真っ赤な瞳と真っ黒な網膜。

 極め付けは—————()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 間違いない、コイツは——————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「——————ミノ、タウロス…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最強にして、最悪。

 最凶にして、最大。

 これまでの全てのフロアボスの強さから逸脱する、神話級の化け物が人間に試練を与えるべく、姿を現した——————

 

 

 

 

 

 相対すべき敵は既に無く —完—

 

 

 

 

 

 

 






 ミノタウロス。

 それは英雄が討ち果たすべき敵の名。

 神話に名を轟かせる牛頭人身の化け物。

 その猛威が彼らを襲う。

 さあ、諍うがいい。

 死に怯えるな。

 死を恐れるな。

 立ち向かえ—————英雄達よ。

 次回、雷光轟く迷宮の獣人王


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