アインズ様Lv1   作:赤紫蘇 紫

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鈴木さんが食堂でご飯を食べるだけの話。捏造設定でオリジナルメイドが出て来ます。(ぷにっと萌えさんが創造した設定の子)次の話はオリジナルメイド視点です。(この話と同時更新)


すず散歩。その4

(……昨日は随分と濃厚な一日だった気がするな……)

 起きてすぐ、ふ、とそんな風に思う。だが、本日は階層巡りは休みにしている。のんびりと一般メイドの動向を見つつ、食堂で実際に食事をとり、ナザリックの福利厚生がちゃんとしているかを確認するだけである。

(ナザリックの食事はすごく美味しいけど、メイドたちもちゃんと満足出来てるんだろうか……?確か、ホムンクルスはもの凄い大食いだって設定があったけど……量とか、足りてるんだろうか?)

 ずっと悟が気に掛けていた事。それが今日漸く判明する。今までは忙しすぎて一般メイドの食事事情まで気を配れなかったが、レベルが1になってしまい気軽に外に出られなくなった今こそ、内部の事情をしっかりと把握すべきだと悟は思っていた。

「デミウルゴス。今日は、昼少し過ぎくらいに食堂へ向かおうと思う。ピーク時は避けた方が料理長も楽だろうしな」

 朝食後の紅茶を飲みながら悟がそう言うと、デミウルゴスはその大きな尻尾をぶん!と揺らしながら一礼する。

「畏まりました。では、そのように料理長には伝えておきます。……他の守護者には内密で、という事でよろしかったでしょうか?」

「……あぁ、そうだな。警護人数が増えすぎるのも問題だし……まぁ、彼女たちに知られると色々面倒だからな」

 既にやらかしているアルベドと、これからやらかす可能性が高いシャルティア。その二人にはなるべく悟のスケジュールは明かさないようにしていたが、本日もそれを継続するように、と悟は指示を出す。

「では、午前中はいかがいたしましょう?パンドラズ・アクターに何か装備でも持たせますか?」

「……そうだな。今のこの身では、何が毒となるか不明だから……毒耐性の装備を頼む。ホムンクルスには無害でも人間には有害となる物質もあるかもしれないからな」

 完全な人間で、飲食が必要な者はこのナザリックには存在しないため、悟は通常の食事(料理長が直々に作り、悟の為だけに用意した食事)以外は基本的に口にしていなかったが、食堂でまでデミウルゴスに毒味をさせる訳にもいかない。

「はい。では、パンドラズ・アクターを呼びましょう。毒の反応が出ましたら、今のアインズ様には何が有害なのかをしっかりと書き留めさせていただきます」

「まぁ、私に毒であってもメイドたちに問題が無いのなら構わないのだが……。念の為それも頼む。人間に対して何が有害なのかを把握しておくことは、ナザリックの利にも繋がるだろうからな」

 以前エンリたちを招待したときの食事には問題は無かったようだが、彼女たちが今の悟と同じレベル1な訳は無いし、そもそも現地の人間と悟の身体の作りが同じかどうかなど、まだ分かっていないのだ。用心するに越したことはない。と、悟はそう思っていた。

(プレイヤーの蘇生実験もまだしてないし……一度死んだら蘇生が出来ないかもしれない現状では、臆病者と言われようと慎重に動くのが正解だよなぁ……)

 そんな事を思いつつ、悟は紅茶を飲み干す。

「あぁ、デミウルゴス。午前中は本を読んで過ごすつもりだから古代図書館で人間についての記載がある本を何冊か見繕って持って来てくれ。私も人間についてそんなに詳しい訳ではないからな、生態などを学んでおきたいのだ」

(普通、医者でもないのに人体に詳しくないからな!!多分酒が毒物扱いになってるのは理解してるけど……あと、何だろ?毒耐性の装備してたら薬も効かないのかなぁ……)

「はい、では先にパンドラズ・アクターを呼んでおきます。では、私が居ない間は魔将と影の悪魔、八肢刀の暗殺蟲を配置しておきますので。……何かありましたら、即座に転移なさって下さい。彼らはその間の時間稼ぎくらいは出来ると思いますので」

「……あぁ」

 デミウルゴスの言葉に、彼が誰を敵として想定してるのかが分かってしまい……悟は苦笑した。

 

 

 

 そして、パンドラズ・アクターに毒耐性の装備(指輪)を持って来てもらい、それを装備してからのんびりと読書をして過ごす。

 人間の生態についてはあまり詳しい書物は無かったが、大昔の雑誌は適度に馬鹿らしくて。時間を潰すのには最適であった。

(ゴシップが多いし、リアルを知ってる俺は嘘だって分かるけど……コレ、NPCたちが見たら鵜呑みにするんじゃ……)

 と、そんな事を懸念しつつも、悟はその本を楽しんだ。周辺国のゴタゴタも忘れて。

 

 

 

「さて。そろそろ頃合いかと思うが……。デミウルゴス」

 そう呼ぶと、最上位悪魔は優雅に一礼して悟に応える。

「はい、アインズ様」

「食堂に向かう。あまり大仰にならないように、護衛は最小限でな」

 悟の言葉にデミウルゴスは頷く。

「少数精鋭の護衛を用意してございます。……守護者には及ばずとも、足止めは出来る面子です」

「……あぁ、そうか。まぁ、本気になった守護者相手に、足止めでも出来るのなら大したものだ。さて、今日は軽装で行くとするか。食堂はヒトが多いからな、ローブでは動きにくかろう」

 悟の今の装備は、生成りのジャケットとパンツに、淡いブルーのシャツ。営業の時に着ていたスーツよりはラフな姿だ。これまたユグドラシルの装備ガチャのハズレアイテムだったりする。性能的にもあまり良くない上、折角のファンタジー世界なのに何故リアルでも着られるような服!?とユーザーからの不満が噴出したという曰く付きの装備である。

(まぁ、今の俺にはありがたいけど。ファンタジーファンタジーした衣装だと流石に恥ずかしいし。骨の俺ならともかく、人間の俺だと豪奢なローブとか全然似合わないんだもんなぁ……)

「さようでございますか。では、本日はそのお召し物で過ごされるのですね」

「あぁ。レベル的にもあまり上質な装備は出来ないからな、ナザリックの外に出ないのであれば、この程度の装備で十分だろう」

 悟のその言葉に納得したのか、デミウルゴスは小さく一礼すると悟の椅子をサッと引く。もう慣れているのか、悟はスムーズに立ち上がると扉へ向かう。

「案内させていただきます」

 先回りして扉を開けるデミウルゴスに悟は微かに笑むと、

「頼む。頼りにしているぞ、デミウルゴス」

 と、言葉を掛ける。途端に大きく揺れる尻尾は、デミウルゴスの感情を如実に表しているかのようだった。

 

 

 

 広大なナザリックの、広大なワンフロア。ギルメンたちの居室もある第九階層には、メイドたちも利用する食堂もある。転移すれば一瞬だが、あえて悟は自室から歩いて行くことを選択した。実際の広さを感覚として知っておきたかったのだ。こんな機会はもう二度と無いかもしれない……そう思ったからだった。

「……歩くと、10分前後、ってところか。距離としては……1キロ弱、か?」

「はい、恐らくはそのくらいかと。日々ナザリック中を巡り、業務をこなしている彼女たちは中々に健脚のようですね」

「そうだな」

(……メイドさん、凄!!え、絶対今の俺より体力もあるよね!?あんなに嫋やかな見た目なのに!!その辺の設定ってどうなってるの、ぷにっと萌えさん、ホワイトブリムさん……!!)

 そんな風に脳内で突っ込んでいるうちに、食堂へ着く。デミウルゴスがさも当然のように扉を開き、悟もデミウルゴスのその従者のような行動に何の疑問も持たずにそれを受け入れる。もう慣れたのかもしれない。

「うわぁ……!広いっ……!!」

 思わず素を出してそう言ってしまう程、食堂は広かった。玉座の間に比するくらいに広大な部屋。そして、その部屋一杯に並べられた大量の料理。その迫力に、悟は圧倒される。

(見た事ある!!これ、高級ホテルのビュッフェだ!!)

 食糧が限られていたリアルでは見た事はなかったが、過去の映像や書籍のデータでは見た事があったそれが、今眼前に広がっている。様々な料理の良い匂いに、悟の興奮も収まらない。沈静化もされないこともあって、悟のテンションはうなぎ登りであった。

「……デミウルゴス。こちらでは各自食する分だけ自分で料理を取るという形式で合っているか?」

「さようでございます、アインズ様。メイドたちも好きなように料理を取り分けております。アインズ様もお好みの物をお選び下さい。一番奥がデザート類だそうです。主食や副食、メインは手前側に並んでおりますね」

 デミウルゴスの言葉に視線を動かすと、確かに一番奥が華やかなデザート類のコーナーとなっていた。その辺りには、特にメイドたちが密集している。

「デザートも気になるが、先に食事類を貰うとするか」

 悟のその言葉に、ざわめき立つ周囲のメイドたち。皆が悟が何を取るかが気になって仕方がないようだった。だが、悟はその視線に気付かず、キョロキョロと料理を見回している。色々と目移りしてしまっているようだった。

「……うーん。肉も良いしなぁ……。魚も美味しそうだし……オムライスも気になるなぁ……」

(俺はメイドたちみたいにあんなに大量には食べられないから、厳選しないとだしなー……。あー、どうしよう!)

 そんな風に瞳を輝かせて悩みまくる悟を、メイドだけではなく警護の者たちも微笑ましそうに見守っていた。

「お前たちのオススメはどれだ?どの料理も美味そうで、迷ってしまってな」

 料理の傍に居たメイドにそう声を掛けると、皆頬を赤く染めながらも口々にオススメ料理を悟に告げていた。

「あ、あの!私は昼からガッツリ食べたい方なので、ドラゴンのステーキをオススメします!赤身の部分はサッパリしてて食べやすいんです!!」

「私は、ふわふわ卵のオムライスがイチオシです!料理長に言うとハーフも作ってくれるので、少しだけ食べたいなーって時にも良いんです!」

「エンシェントサーモンのムニエルも味がしっかりしてて美味しいですよ!ソースもフルーツ系とオーソドックスなタルタル系で選べます!!」

「海鮮も美味しいんですよ!10種の海鮮丼!!エンシェントサーモンだとちょっと濃すぎるので通常のヘルヘイム産サーモンをメインに各種海鮮がたっぷりで……!!」

「ほぅ……。それだけの美味が多いと悩むな。全部は一度には食べられないのでな、また次回に頼むことにしようか」

(海鮮丼は確かに美味しそうだけど、それだけでお腹いっぱいになっちゃいそうだからなー。今回はちょっとずつ食べられるのがいいなぁ)

 メイドたちの発言からそう考えて、悟は少量でも食べられそうな物をチョイスしていく。メインとしてオムライスのハーフと、その他に肉類と魚類のおかずをバランス良く。メイドたちからしたら少量すぎる量ではあるが、悟からしたらデザートの入る余地を残したギリギリの盛り付けだった。

 事前に特別扱いはしないように、と通達していたおかげか、適度に空いている席に着く事が出来た。アインズ様がお越しになるので、と、特別席を用意するという話が出ていたが、それを必死に止めた甲斐があった、と悟は思っていた。

(うん、これくらいの距離感なら適度に視察出来ていいよなぁ……。あんまり遠巻きにされるのも困るし)

 そんな事を考えながら、トレーの上の食事を見て悟は微笑む。遙かな昔見た事がある、お子様ランチを再現したかのような盛り付けが自分でも気に入っていたのだ。当然だが、旗は立っていない。

 周りを見回すと、メイドたちはめいめい美味しそうに食事を食べている。会話にも花が咲いているようで、雰囲気がとても華やかだ。

「……そういえば、プレアデスたちもここで食事をしているんだったか?」

 訊くとも無しにそう口にすると、背後に控えているデミウルゴスが答える。

「さようでございます。ですが、時間はいつもバラバラのようですね。確かセバスもこちらで食事をとっている筈なのですが、彼もシフト通りに動いていますので毎日時間は違うようです」

「そうか、今日はタイミングが合わないようで残念だな。彼らの食の好みも知りたかったのだが」

 皆それぞれに仕事を受け持っているが、階層守護者と違って勤務場所が一定ではない。そのため、今回の階層巡りではまだ会っていないのだ。

(……ルプスレギナはカルネ村か。他の面子は……。あれ?セバスはまだ王国だったっけか……)

 そんな事を考えつつ、悟はフォークを手に取る。

「いただきます」

 いつもの習慣でそう口にしてから、食事に手をつける。ふわふわ卵のオムライスのハーフ。……何の卵かは謎だが、味は極上だった。

(……そういえば、ドラゴンの肉も出てるし……まさかの、ドラゴンの卵?だったらこの肉も……チキンライスじゃなくて、ドラゴンライス……?)

 母が作ってくれたオムライスはこんなに極上の味ではなかったけれど、それでもどうしても思い出さずにはいられなくて。ほんの少しだけ、悟は胸が痛むような気がした。

「……本当に、美味いな。うちの料理長は、やはり腕がいい。これだけ大量に作っても美味いのだから、皆が食堂での食事を喜ぶのも理解出来るな」

 悟に出す料理に比べたら素材も一段階は落ちるのだろうが、それでも悟からしたら十分に美味しいと感じられるレベルの食事だった。周囲のメイドたちは悟が驚く程の量をプレートに盛っていて、しかもそれをかなりの速度で食べていたが、それも納得出来る程の美味しさだった。

(……まぁ、それよりも胃袋の消化速度どうなってるんだ?って突っ込みたい気持ちでいっぱいだけどな……。あんなにウェスト細いのに、どこにあれだけの量の食事が入るんだ……)

 やはりナザリックの食事は一般メイド用の物でも十分に美味しい、と思いつつ悟は食事を終える。周囲を見回すと、シクススたちが一緒に食事をとっているのが見えた。

(あぁ、そういえばメイドたちの名付けにも法則があったっけか。シクススたちはホワイトブリムさんが数字ベースの名前って決めてて……他のメイドはぷにっと萌えさんが名付けてた筈。やっぱり創造主が一緒の子たちは仲がいいんだなー)

 そんな事を考えつつ穏やかな気持ちで周囲のメイドたちを見ていると、数人のメイドがデザートをトレイに乗せて悟に近付いて来た。

「アインズ様!デザート、私たちのオススメをお持ちしました!良かったら召し上がって下さい!!」

「ありがとう、リリー、ローザ」

 悟がそうメイドに声を掛けると、二人してより頬を紅潮させた。その瞳は歓喜に潤んでいる。

「!!アインズ様、私たちの名前をご存じなのですか!?」

「勿論だ。お前たちはぷにっと萌えさんが創造したメイドだろう?それに、先日も私付きで勤めてくれていただろう。覚えていて当然だ」

 ぷにっと萌えは自身が植物系であるからか、創造したメイドには花の名前を付けていた。それもあって、悟自身が思っていたよりもすんなりと名前を覚えられたのだった。

(……まぁ、それでも100人もメイドが居ると覚えるの結構大変なんだけどさ。仕えてくれている配下を覚えられないのは問題だし、これくらいは出来てないと支配者らしくないよな、うん!)

 と、どこか間違った支配者像を持っている悟だったが、誰もそんな彼に突っ込みを入れはしない。それどころか、慈悲深く寛大な支配者として深く感動していたりするので、悟は一般的な支配者とは微妙に異なったままなのだが……ナザリックでそれを指摘する者は存在しないのであった。

「アインズ様……!」

 リリーとローザは、悟の言葉に感極まったように小さく震えている。

「お前たちも好きな物を食べるがいい。今日の私は視察に来ただけだからな、お前たちが給仕をする必要はないんだ。私もお前たちと同じように自分で食事を運び、食器を戻すという事をやってみたいんだ」

 柔らかく微笑みながら悟がそう言うと、彼女たちは顔を真っ赤にしながらコクコクと大きく頷くとそっと悟から離れてくれた。

(……はー。これで安心して食べられる……って、量多いな!?俺、精々アイスくらいって考えてたのにケーキまであるぞ!?)

 目の前に置かれたトレイに乗っていたのは、ケーキ10種にアイス4種、パイが3種類だった。……どう考えても、さっき食事をしたばかりの悟が食べきれる量ではなかった。

「私には少し多すぎるな……。デミウルゴス、私はこれだけ食べるから、残りは皆で食べてくれないか?こんなに美味い料理を残すのも申し訳ないからな」

 そう言って警護に当たっているデミウルゴスと影の悪魔、八肢刀の暗殺蟲にそう勧めると、デミウルゴスはインベントリにデザートを収納する。

「畏まりました。では、後程皆でいただきます」

「頼む。……うん、デザートもやはり美味いな。これはメイドたちがあれだけ集まるのも理解出来るというものだ」

 滑らかでコクのあるアイスクリームをゆっくりと食べつつ悟がそう感想を述べると、料理の影からこっそりと悟の様子を窺っていた料理長が喜びのあまり身体を大きく震わせた。その様子は悟からは見えなかったが、デミウルゴスからは丸見えで。デミウルゴスはほんの少しだけ苦笑していた。

「……明日は第三階層に行こうと思う。第四階層はガルガンチュアだが、間違って作動した際に今の私では抑えられないから、視察は元に戻ってからになるな」

 デザートを食べ終わり一息吐いてから悟がそう言うと、デミウルゴスは目を細める。

「では、魅了への完全耐性の装備をご用意致します。また、通常よりも警護の人数を増やさせていただく所存です」

 その声は、低く、固い。余っ程シャルティアを警戒しているのだろう。それを察して、悟は苦笑する。

「そうだな。頼む。まぁ、シャルティアはアルベドのように我を忘れて襲うような真似はしないだろうが、念の為な」

 悟はそんな風に楽観的な事を言っていたが、デミウルゴスの神経は全く休まらなかったのだった……。

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